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2022年3月18日 (金)

貴重な音源ではあるが・・・

Title:広い世界と狭い世界
Musician:レイハラカミ

1998年にアルバム「Unrest」でデビュ―。1999年にリリ―スされたアルバム「Opa*q」や2001年にリリ―スされたアルバム「Red Curve」が高い評価を得て、一躍、注目のミュ―ジシャンとなったレイハラカミ。ぬくもりのあるような独特のエレクトロサウンドと、叙情あふれるメロディ―ラインが大きな魅力となり、矢野顕子はじめ多くのミュ―ジシャンたちともコラボ。リミックス作品を含めて、数多くの名曲を世に送り出してきました。

しかし、2011年、脳出血のため、わずか40歳という若さで急逝。そのあまりにも早い死は多くの人々に大きな衝撃を与えました。私もその突然の訃報にショックを受けたことを覚えています。

そんな彼の急逝から11年を経て、このたび、あらたなアルバムがリリースされました。死後に未発表音源がリリ―スされるというケ―スは少なくありませんが、今回の本作に関しては、いわゆる未発表音源ではなく、もともと彼がデビュ―前に、映像作家原神玲として活動していた時代の音源をカセットテ-プに収録し、ごく一部にリリ―スしていたもの。「広い世界」としてリリ―スされた1989年から1991年の作品と、「rei harakami selected works 1991〜1993」としてリリ―スされた1991年から1993年の作品を2枚組のCDとして収録しています。

デビューから5年以上前の作品を収録したアルバムとなる訳で、レイハラカミの源流と言える作品になるかもしれないのですが・・・率直に言って、内容的には厳しすぎます。内容的には、一介の素人の学生が身内ノリで作ったデモ音源集・・・厳しい言い方になるかもしれませんが、正直、そんな作品になっています。

Disc1「広い世界」の方は、前半は、いかにも学生が作ったかのようなチープなデモ音源風の作品が並び、後半はフリーキーな作風の曲が続きます。Disc2の「せまい世界」の方も、非常にチープな、学生が「現代音楽」を思いつきでまねたかのようなちょっと痛い感じすらする作品が並びます。当時は映像作家としての活動がメインだったようですので、映像を見て、それに音楽を合わせるとひょっとしたら印象が変わるのかもしれませんが、はっきりいって素人の学生レベルを超えていない音源を聴く限りだと、映像も推して知るべしといった感じで、映像まで見てみたいとは到底思えません。

こういうデビュー前の作品の感想だと、よく「後の才能の片りんが見える」という言い方をするのですが、残念ながらこのアルバムを聴く限りでは、後のレイハラカミにつながるような片りんはほとんど感じられません。あえていえば最後の最後「キャッチボールのテーマ」のアコースティックでメロディアスな作品に、若干、のちのレイハラカミにつながるようなメロディーセンスは感じられなくはないような・・・。

確かにこの作品は非常に貴重な音源ですし、一度は世に出ている以上、「未発表曲」でない以上、CDでリリースされても文句は言えないかもしれません。ただ正直、内容的にはフリーもしくは安価でのダウンロード販売で十分で、定価3,300円の価値があるとは到底思えません。この出来の作品をわざわざ掘り起こしてリリースすることをレイハラカミが望んでいたかどうかもかなり微妙な感じもします。少なくともレイハラカミの新作としては全くオススメ出来ません。レイハラカミの熱烈なファンで、世に出ている彼の音源をすべて聴いてしまったあとに、「レイハラカミの名前がつけばなんでも聴きたい」という意気込みの上で、はじめて聴いてみてもいいかな?くらいのレベルの作品。そうでなければ、この音源を手に取る必要性はありません。

純粋に音源の出来のみで言えば完全に★★程度の内容。ただ、それでもあのレイハラカミの貴重な音源だから、という意味でひとつ追加という評価で・・・。正直、全くオススメできない作品。あのレイハラカミの、というだけで間違えて聴かないように要注意です。

評価:★★★

レイハラカミ 過去の作品
あさげ-selected re-mix&re-arrangement works/1
ゆうげ-selected re-mix&re-arrangement works/2

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