25年ぶりの「FRIENDS」シリーズ!
Title:FRIENDSIII
Musician:B'z
B'zが1992年以来続けているコンセプトアルバムシリーズ「FRIENDS」。映画のサントラ盤を意識したような構成に、冬をテーマとした心象風景を描いた内省的な歌詞とサウンドが特徴的なアルバムで、1992年に「FRIENDS」、1996年に「FRIENDSII」がリリースされ、さらにそこから25年という月日を経て、「FRIENDSIII」がリリースされました。今回のアルバムは昨年1月、松本孝弘がアメリカから帰国した時にコロナ禍の影響で2週間の隔離生活となり、その隔離生活を利用して「1日1曲」と決めて楽曲づくりをスタートさせたそうです。そのような中で生まれたのが今回のアルバムということで、そういう意味ではコロナ禍の副産物と言えるでしょう。
楽曲的には全編、AORのテイストと歌謡曲のテイストを強く感じる楽曲が並びます。良くも悪くも松本孝弘らしいフュージョン風のインスト「harunohi」からスタートし、ホーンセッションで分厚いサウンドを聴かせる哀愁感たっぷりの「シーズンエンド」から、本作唯一のアップテンポナンバー「ミダレチル」と続くのですが、こちらもホーンセッションを主軸としてメランコリックなメロを聴かせるナンバーとなっており、稲葉のボーカルスタイルこそハードロック風なのですが、サウンド的にはいつものB'zらしいハードロックテイストは抑え気味。
ピアノ弾き語りのインスト曲であるタイトルチューン「FriendsIII」を挟み、アコースティックなサウンドの「Butterfly」は女性視点のウェットな歌詞を含めて歌謡曲テイストの強い楽曲に。同じくミディアムチューン「こんな時だけあなたが恋しい」はギターサウンドが目立つ、本作の中では比較的ハードロックテイストの強い作風になっており、ラストの「GROW&GROW」はストリングスを入れてメランコリックな雰囲気に仕上げた作品で、日常生活を描きつつも前向きな未来を描いた歌詞もまた、B'zらしい感じがします。
ここ最近、よりハードロック志向の強い作品が続いていたB'zですが、その路線とは大きく異なる、AOR志向かつ歌謡曲志向の強い作品が並んだ本作。いかにも「FRIENDS」的な作風なのですが、松本孝弘が曲づくりをスタートした段階では特に「FRIENDS」を意識した訳ではなさそうで、結果としてこのような曲が生まれてきたらしいので、最近、ハードロック志向な曲が続いてきた反動なのかもしれません。また、コロナ禍での隔離生活の中で作品だったので、楽曲的にもより内省的な曲調になったのかもしれません。いずれにしろ今回の「FRIENDSIII」は間違いなく、コロナが起こったからこそ誕生した作品であり、歌詞的にコロナを意識したような作品はありませんが(最後の「GROW&GROW」は意識したもの、と読み取れないことはありませんが)いろいろな形で今回のコロナ禍が音楽作品に影響を与えているのは興味深く感じます。
ただ、全体的にはちょっと地味な作品だったかな、という点は否めません。もちろんミディアムテンポ中心の「FRIENDS」シリーズに派手な作品は望むべくもありません。しかし、1992年の「FRIENDS」には彼らの代表曲ともなった「いつかのメリークリスマス」も収録されているなど、インパクトの強い作品も残してきました(もっとも、リアルタイムに1992年の「FRIENDS」を聴いた時には、「かなり地味なアルバムだな・・・」と思ったのは今でも覚えていますが)。そういった意味では今回のアルバム、全体的には卒なくまとめている点も否めず、ハードロック志向は弱いとはいえ、いままでのB'zの曲にも登場してきたような曲調の楽曲がメイン。そういう意味でも全体的な印象はちょっと薄めでした。
直近のオリジナルアルバム「NEW LOVE」でも、楽曲のインパクトが弱めだっただけに、勢いの衰えはちょっと気になるところなのですが、それでも一定以上の水準の作品を作ってくるのはさすがといった感じでしょう。次はまたグイグイ派手なギターを聴かせるハードロック路線を期待したいところですが、たまにはこのような作品も聴いてみたい感もします。彼らの音楽的な幅も感じさせるミニアルバムでした。
評価:★★★★
B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012
EPIC DAY
DINOSAUR
NEW LOVE
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