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2022年2月12日 (土)

ストレートなアフロビートが心地よいが・・・

Title:Na Kozonga
Musician:Jupiter&Okwess

今回もまた、2021年のベストアルバムと紹介されたアルバムを後追いで聴いた1枚。今回もMusic Magazine誌。ワールドミュージック部門で5位にランクインしたアルバム。ジュピター率いるJupiter&Okwessのニューアルバム。ジュピターは30年以上にわたり活動を続けるコンゴのベテランミュージシャン。ブラーのデーモン・アルバーンが発起人となったアフリカ音楽のプロジェクトアルバム「キンシャサ・ワン・ツー」にも参加しています。

・・・・・・といっても、Jupiter&Okwessについては今回はじめて聴いた訳ではなく、2014年にリリースされた世界デビューアルバム「Hotel Univers」が日本でも大きな評判を呼び、私もこのアルバムに関してはリアルタイムで聴いたほか、彼らはその年の夏に、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドのために来日しライブを披露しているのですが、このライブには私も参加。彼らのステージについては生で体験済だったりします。それだけに今回のアルバムに関しては、後追いで聴いた、というよりもリアルタイムで情報をキャッチできず、聴き逃していた1枚。遅ればせながら、ようやくこのアルバムを聴いてみました。

ジュピターの「Hotel Univers」、さらにスキヤキでのステージを見て、まずは強く感じたのが非常にストレートなアフロビートで、心から気持ち良いサウンドだった、ということ。とにかくアップテンポでトライバルなビートが心地よく、特にライブでは我を忘れて踊りまくったことを、今でも覚えています。それだけアグレッシブで楽しいステージを見せてくれました。

今回のアルバムでも、冒頭から、疾走感あるアフロビートがとにかく気持ち良い曲が並びます。「Telejayi」「Mieux Que Ca」といずれも軽快なビートが楽しいリズミカルな楽曲でスタートし、一気にリスナーを惹きつけます。タイトルチューンとなる「Na Kozonga」はちょっとテンポを落としたナンバーとなるのですが、前半のハイライトとも言えるのが続く「You Sold Me A Dream」で、打ち込みのノイジーなビートがトライバルなアフロビートに加わり、これでもかというほどのアグレッシブでハイテンポなサウンドでテンションのあがる楽曲となっています。

ただ、ここから先の曲に関しては、アフロビートを取り入れつつも、むしろメランコリックなメロディーを聴かせるような曲も目立ちます。「Marco」「Jim Kata」もミディアムテンポのナンバーで、アフロビートを楽しませつつも歌を聴かせる楽曲になっていますし、さらに「Bakunda Ulu」は伸びやかでスケール感のあるコーラスを入れた壮大さを感じさせる楽曲。「Abalegele Gale」はホーンセッションを入れつつ、郷愁感あるメロが印象に残りますし、「Bolenge Seben」などもアフロビートを軽快に聴かせつつ、哀愁感たっぷりの歌が同時に印象に残る作品に。ジュピターの音楽的な幅を感じさせる曲が並んでいます。

ラスト前の「Muba」も、またグルーヴィーなアフロビートが心地よい作品になるのですが、最後を締めくくる「Bolingo(Ca va Sarava)」はちょっとボッサ的な要素も感じさせる楽曲となっており、最後までジュピターの奏でる音楽の幅の広さを感じさせる展開になっていました。特にこのラストナンバーはかなりあか抜けた都会的な作風になっており、全編トライバルという印象も強かったアルバムの中では意外性を感じさせる締めくくりとなっていました。

ストレートなアフロビートが心地よい作風なのですが、その一方、アフロビートの一言ではとどまらない音楽的な幅広さ、奥深さもあり、しっかりと聴かせる傑作アルバムに仕上がっていました。話題となった「Hotel Univers」を上回る出来の傑作アルバムだったと思います。またコロナが落ち着いたら来日して、あの素晴らしいライブを見せてほしいなぁ。最後まで文句なしにワクワクした気持ちで楽しめた傑作でした。

評価:★★★★★

Jupiter&Okwess 過去の作品
Hotel Univers


ほかに聴いたアルバム

Nouara/Kamel El Harrachi

こちらも2021年ベストアルバムの後追い。Music Magazine誌ワールドミュージック部門の、こちらは第4位の作品となります。アルジェリア出身のシンガーによる約11年ぶりの新作。父親のダフマヌ・エル・ハラチも、アルジェリアの大衆音楽であるシャアビの代表的な歌手だったそうですが、本作でも11曲中9曲は、その父親の楽曲のカバーだそうです。ギターを爪弾きつつ、メランコリックに歌い上げるエキゾチックな楽曲が魅力的。いかにもアラビアンな雰囲気の作風なのですが、哀愁感あふれるそのメロディーラインは日本人にとっても確実に心に響いてきそうです。

評価:★★★★

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