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2022年2月22日 (火)

バラエティー富んだ作風で

Title:ニュイ
Musician:パスピエ

前作「synonym」からちょうど1年というスパンでのリリースとなったパスピエのニューアルバム。前作「synonym」リリース前に、ユニバーサルミュージック内に自主レーベル「NEHAN RECORD」を立ち上げた彼女たち。コロナ禍の中でも積極的な活動が続いていましたが、「synonym」リリース後も、2021年5月から11月まで、ほぼ毎月配信シングルをリリース。実に7枚もの配信シングルを昨年はリリースしました。そして、その集大成的にリリースされたのが今回のアルバム。その配信シングル7曲を含む、全11曲が収録されたアルバムとなっています。

わずか1年というスパンでリリースされた今回のアルバム。前作「synonym」も非常にバラエティーに富んだ自由度の高いアルバムに仕上がっていましたが、今回もまた、バリエーションに富んだ内容になっており、彼女たちのある種の挑戦心を感じさせる1枚となっていました。

サウンドにHIP HOP的な要素を取り入れた「雨燕」、哀愁感たっぷりのメロディーラインとサウンドで、ある種、ベタな歌謡曲ともいえるような「影たちぬ」「見世物」は完全にプログレを取り入れた意欲作ですし、「グッド・バイ」はニューウェーブ風のサウンドを取り入れた楽曲。イメージとしては90年代のガールズポップに通じるポップチューンなっており、個人的には懐かしさすら感じらせる1曲になっていました。

さらにはエレクトロチューンの「はらりひらり」に、ラストの「PLAYER」も疾走感ある打ち込みが心地よいポップチューンとなっています。また「アンダスタンディング」「言わなきゃ」はノイジーなギターサウンド主導のバンドサウンドになっており、パスピエのロックバンドとしての側面も感じられる作品に仕上がっていました。前作もバンドとしての様々な側面を聴かせるアルバムに仕上がっていましたが、今回の作品については、前作以上にバラエティー富んだ、バンドの多様性を表に出した作品に仕上がっていました。

またユニークなのは歌詞の側面も。例えば「見世物」の歌詞は、完全に落語の「頭山」をモチーフにした歌詞になっており、かなりユニークな内容に仕上がっています。

そんな訳で、前作同様にバンドとしての挑戦心を感じさせる作品となっていた本作。ただ一方、楽曲のインパクトやメロディーラインという側面においては、前作の出来には及ばなかったかなぁ、というのが率直な印象。全11曲中7曲までが「シングル」としてリリースされている割には、シングル曲としてのインパクトは物足りなさを感じてしまいました。正直、ほぼ毎月リリースというペースだっただけに、若干乱発しすぎた感もあるのでしょうか。この点はちょっと残念でした。

もっとも、やはりバンドとしての様々な側面を感じられる挑戦心あふれるアルバムであることは確か。そういう意味ではバンドの次につながるアルバムであることは間違いありません。これからの活躍も楽しみ、ともいえる作品でした。

評価:★★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM
娑婆ラバ
&DNA
OTONARIさん
ネオンと虎
more humor
synonym


ほかに聴いたアルバム

15/cali≠gari

「メジャーからのフルアルバムとしては4年ぶり」という触れ込みのcali≠gariのニューアルバム。もっとも、その間に過去作のリメイクやミニアルバム、さらにはインディーズからのアルバムなどのリリースもあったため、さほど「久しぶり」という印象はありません。今回のアルバムに関して言えば、率直に言ってシンプルなギターロックがメインのアルバム。彼ららしいダークでユニーク、変態的でバリエーション豊富な音楽性は、今回に関しては若干鳴りを潜めた感じも。所々にノイズやエレクトロサウンドなどユニークな試みも感じられるものの、彼らにしてはちょっと薄味な印象も受けました。決して悪いアルバムではないのですが、「メジャー」ということで、ちょっと無難にまとめてしまった感も。

評価:★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12
13
この雨に撃たれて
ブルーフィルム-Revival-

LOGIC/LEX

Logic

こちらは2021年に各種メディアでベストアルバムとして取り上げられたアルバムを後追いで聴いた1枚。「なんでも言っちゃって」がTikTokを中心にスマッシュヒットを記録した19歳のMCによるアルバムで、Music Magazine誌ラップ/ヒップホップ[日本]部門で1位を獲得したアルバムとなります。トラップの影響を強く受けたエレクトロのトラックは、メランコリックな要素がたっぷり。メロディアスな要素も強く、いい意味で聴きやすさを感じます。今度のさらなる飛躍も期待できそうなアルバムでした。

評価:★★★★

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