より「黒い」ウルフルズ
Title:フル盤
Musician:ウルフルズ
2022年にメジャーデビュー30周年を迎えるウルフルズ。その記念すべき年を迎えるにあたって、30周年30曲のセルフカバーを行うことを発表。8月に「ウル盤」として、まず第1弾の10曲のセルフカバーを発表しましたが、本作はそれに続く第2弾となります。「フルえるようなウルフルズ興奮の名曲選」をコンセプトに選ばれた10曲のセルフカバーが収録されています。
今回のアルバムに収録されている曲は、彼らの曲の中でもよりソウル、ファンク、ブルースといった、彼らが強く影響を受けたブラックミュージックの要素が強い曲が並びます。さらに今回のアルバムでは、そのような楽曲を、よりブラックミュージック的な要素が強くなるようにカバーを行っており、よりウルフルズのルーツが意識されるようなセルフカバーになっています。
もっとも、全体的にはアレンジについて大きな変更は加えられていません。基本的に原曲に準拠した演奏となっており、雰囲気が原曲と大きく異なった・・・といった作品はありません。ただ、その中で、例えばより演奏がグルーヴィーになったり、ボーカルがよりファンキーになったりと、より演奏に「黒さ」が増したという印象を受けます。
具体的には、例えば「ヤング ソウル ダイナマイト」では原曲とアレンジは大きく変わらないものの、若干重低音の迫力を増したような今の音にアップデートされています。彼らのライブのラストチューンの定番曲である「いい女」では、デビューアルバム「爆発オンパレード」収録の曲なのですが、オリジナルと比べるとボーカルの迫力やバンドのグルーヴ感がかなり増しており、30年の間の彼らの大きな成長を感じることが出来ます。また、この曲は1999年のベスト盤「Stupid&Honest」収録時に新バージョンとなっていますが、こちらはどちらかというとロックのテイストの強いアレンジとなっており、こちらのバージョンとの聴き比べも楽しいかもしれません。
ただ、おそらく一番変わっていたと思われるのは「バカサバイバー」で、こちらはもともとテレビアニメ「ボボボーボ・ボーボボ」のテーマソングということもあってか、比較的ポップにまとめあげられた原曲に比べると、かなりファンキーなアレンジに進化しています。もともとファンキーな作風であったことから、こちらのアレンジの方がひょっとしたらもともとの構想だったのかもしれません。また「チークタイム」もオリジナルの「ボンツビワイワイ」収録曲はライブ録音風のアレンジになっているのに対して、こちらはちゃんとしたスタジオ録音版になっており、より本格的なブルースナンバーに仕上がっています。
そんな感じで、基本的に原曲から大きな変化はないものの、いずれの曲もよりファンキーに、ソウルに仕上がったアレンジになっており、なによりもウルフルズのブラックミュージックに対する敬愛ぶりを強く感じさせるアレンジに仕上がっていました。何よりも、あらためて彼らのブラックミュージックからの影響の強さをひしひしと感じさせるアルバムになっており、さらにより「黒く」仕上がった彼らの演奏ぶりに、30年を迎えるバンドとしての実力も感じさせるセルフカバーになっていたと思います。ちなみに、30曲ということは、あと10曲のセルフカバーが残っているということで、次のアルバムは「ズ盤」になるのでしょうか??次回作も非常に楽しみです。
評価:★★★★★
ウルフルズ 過去の作品
KEEP ON,MOVING ON
ONE MIND
赤盤だぜ!
ボンツビワイワイ
人生
ウ!!!
ウル盤
ほかに聴いたアルバム
夜にしがみついて、朝で溶かして/クリープハイプ
約3年ぶりとなるニューアルバム。ノイジーなギターサウンド主体となるバンドサウンドをバックに、これでもかというほどメランコリックに歌われるメロディーラインがボーカル尾崎世界観のハイトーンボイスともピッタリマッチ。完全にクリープハイプとしての様式を確立させたようなアルバムに。ラップを取り入れたり、エレクトロサウンドを取り入れたりと、それなりに挑戦的な側面も垣間見せつつ、期待される楽曲にはしっかりと応えている感のあるアルバムになっています。ファンならば満足のいく作品になっていました。
評価:★★★★
クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に
どうにかなる日々
どんなことでも起こりうる/ウカスカジー
ミスチル桜井和寿とEAST ENDのMC、GAKU-MCによるユニットによる約5年半ぶりのニューアルバム。シンプルなポップソングに前向き応援歌的な作風の曲が多く、イメージとしてメロディーは桜井、歌詞はGAKU-MCの影響が大きいような印象を受けます。最近のミスチルにはあまり聴かれなくなったような、桜井の書くシンプルなポップソングは魅力的である一方、前作のミニアルバム「金色BITTER」あたりから、少々鼻につくようになってきた、あまりにも漂白されたきれいごとソングになってしまっているGAKU-MCの書く(と思われる)歌詞の世界観が、どうしても稚拙に感じてしまいます。ポップソングとしては非常に魅力的なので残念。さすがに50歳を過ぎた人の書く歌詞としては、もうちょっと深みが欲しいのですが・・・。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2022年」カテゴリの記事
- 未来を見据えた30周年の締めくくり(2022.12.27)
- YUKIの全てがつまた6時間(2022.12.25)
- タイアップ効果でよりポピュラリティーが増した作品(2022.12.26)
- 昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その3(2022.12.11)
- 昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その4(2022.12.12)
コメント