豪華なミュージシャンたちが集結
Title:Notes With Attachments
Musician:Pino Palladino&Blake Mills
今回紹介するアルバムは、レジェンドとも言えるベーシスト、Pino Palladinoが、新進気鋭のプロデューサー、Blake Millsと組んでリリースしたアルバム。御年64歳になる彼は、数多くのミュージシャンのアルバムに参加してきた伝説的とも言えるミュージシャンで、The Whoやジョン・メイヤー、さらにはD'Angeloの「Voodoo」「Black Messiah」にも参加しています。1980年代から活動を続け、既に40年近くにも及ぶキャリアを持つ彼ながら、意外なことにPino Palladino名義となるアルバムは本作がはじめて。まさに注目の1枚となりました。
本作は、最近いろいろと紹介している2021年のベストアルバムとして各種メディアで紹介されているアルバムを後追いで聴いてみた1枚。本作はMusic Magazine誌「ロック[アメリカ/カナダ]」部門で見事1位に選ばれた作品となります。Pino PalladinoとBlake Millsのタッグという段階でかなり胸熱な作品なのですが、さらに参加したバンドメンバーがかなり豪華。こちらもD'AngeloのアルバムやAdleのアルバムにも参加しているドラマーのChris Daveにこちらもジャズピアニストとして様々なミュージシャンとタッグを組んでいるLarry Goldings。ここでも紹介したことのある新進気鋭のサックス奏者Sam Gendelに同じく、現在のサックス界をリードするMarcus Strickland。さらにイスラエル出身のパーカッショニストBen Aylonと、かなり豪華なメンバーがアルバムに参加しています。
ただ、参加している主なミュージシャンがジャズ畑であることからもわかるように、アルバム自体はロックというよりもむしろジャズの方向性が強いアルバムになっています。実際、前述のMusic Magazine誌のベストアルバムではジャズ部門でも5位にランクインしているなど、むしろジャズのアルバムとしてとらえた方がいいのかもしれません。サックスが静かにメロディーを奏でる1曲目の「Just Wrong」といい、ちょっとメランコリックに分厚いサウンドでしんみり聴かせるタイトル曲「Notes With Attachments」といい、ジャジーな雰囲気で奏でる曲が目立ちます。
しかし、アルバム全体としてはジャズという路線をベースにしつつ、才能のあるミュージシャンが集まり、単純にジャズだとかロックだとかといったジャンルに留まらない、独特のサウンドやグルーヴ感を醸し出すアルバムになっています。例えば印象的だったのが「Ekute」。全編を流れるファンキーなベースラインに、ノイズ音を聴かせるギター、さらにはダイナミックなサックスの音が重なり、ジャズやファンク、ロックといった要素が縦横に重なるような楽曲に仕上げられています。さらに印象的だったのが「Djurkel」で、ちょっとトライバルな印象を受けるギターの音色からスタートし、分厚いホーンでメランコリックなメロを聴かせてくれるのですが、中盤あたりからバンドサウンドが加わりダイナミックに。さらに後半ではフリーキーなサックスのサウンドが加わって、全5分ながらもとても凝った展開の楽しめる作品になっています。
終盤の「Man From Molise」や「Off The Cuff」のようなベースラインが目立つ曲も少なくないのですが、ベーシストPino Palladinoのアルバムながらも、決してベースだけを前に押し出したような作品ではなく、バンド全体として一体感もって音を出しているアルバム。むしろPino自身が才気あふれる様々なミュージシャンを用いて、新たなサウンドの挑戦を試みている、そんな作品になっていました。64歳というベテランミュージシャンながらも、決して殻に閉じこもることなく、新たな世界に踏み出そうとしている点は驚くべき限り。だからこそ、レジェンドとして様々なミュージシャンに引っ張りだこなのかもしれません。新進気鋭のミュージシャンたちにより、独特のサウンド、グルーヴ感にはまってしまう、そんな傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
I Kaseta Tou Melodia/George Dalaras
2021年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。本作は、Music Magazine誌ワールドミュージック部門で第3位にランクインした1枚。トータルセールス1,500万枚を超えるというギリシャの国民的歌手George Dalarasのアルバム。ちなみにギリシャでの読み方ではヨルゴス・ダララスだそうです。アコースティックギターをベースとしたサウンドで、ラテン風の哀愁感たっぷりのメロディーラインを包容力ある歌声で歌い上げています。メロディーにはインパクトもあり、確かに、いい意味で広い層の支持が集まりそうな感じもして、国民的歌手としての貫禄も感じます。さすがと感じさせてくれる1枚でした。
評価:★★★★
George Dalaras 過去の作品
Pesto Gia Mena
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