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2022年2月28日 (月)

「初心者向け」としてはあまりお勧めできませんが・・・

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「マンガで読むロックの歴史」。韓国の漫画家、南武成による著書で、韓国で出版されたものを邦訳した1冊。副題として「ビートルズからクイーンまでロックの発展期がまるごとわかる」という表題がついています。ただ、率直な感想として、ロックをかじったばかりの方が、「ロックの歴史」を「お勉強」しようとして、この本を読み始めると、若干厳しいかなぁ・・・という印象を受ける作品でした。

同書は、基本的にロックバンドやミュージシャンをクローズアップし、そのミュージシャンについて詳しく紹介することによってロックの歴史を紐解いていっています。ただ、そんな中、いきなりトップに紹介されているのがブラック・サバス(!)。さらにディープ・パープルと続き、まずはいきなりヘヴィーメタルの歴史からスタートしています。

その後もハードロックやブルースロックなど70年代ロックを主軸としつつ展開。中盤はクイーンやエルトン・ジョン、デヴィット・ボウイ、後半にはパンクロックやトーキングヘッズ、ジョイディヴィジョンなどといったミュージシャンも登場するのですが、終盤にいきなり登場するのがプログレッシブロックからカンタベリーロックへとつながり、ソフトマシーンなどにもかなりの分量を割いています。

その一方で、「ロックの歴史」として語られる時、必ず登場しそうなミュージシャンが何組も出てきません。例えば、ローリングストーンズがほとんと登場しません。レッドツェッペリンもほとんど登場しませんし、ジミヘンドリックスやドアーズ、ジャニス・ジョプリンも登場しませんし、NIRVANAも登場しません。さらにビートルズも、紹介はされているのですが、解散後のソロでの活動がメインとなっています。おそらく著者の好みがヘヴィーメタルからハードロック、プログレからアートロック系に偏っている影響が強いとは思うのですが、そんな著者の趣味がまるごと反映されたミュージシャンのセレクションとなっています。

そのため、正直なところ、これを「ロックの歴史」として一般化して紹介するのはかな~~~り厳しいように感じます。著者の趣味が反映されすぎていて、一般的なロックの歴史として、まずはたどるべき道筋とはかなり離れています。著者の好みとしても、ロックの芸術性を必要以上に重視している傾向にあり、個人的にはその「聴き方」には賛同できない部分も。ロックを聴き始めた人が「ロックの歴史」としてこの本でロックのルーツを知ろうするのであれば、全くお勧めはできないどころか、最初の1冊としては避けるべきとすら思います。

ただし、そういった「偏り」を理解した上で読むのであれば、これはこれで非常に楽しめる「ロック史」の1冊となっていました。まず、基本的にひとつのミュージシャンにスポットをあてて話を進めていくだけに、ひとつの話の中でバンドやミュージシャンのエピソードが満載。ともすれば、楽曲重視になりがちな「ロック史」の中でミュージシャンのパーソナリティーにスポットがあてられており、よりミュージシャンに対して興味を持てるような展開になっていました。

さらには、クラトゥやシン・リジィのように、通常のロックのガイド本でもまずは取り上げられないようなミュージシャンも登場しており、ここも著者の趣味とはいえ、それはそれで「知られざるミュージシャン」を興味深く読むことが出来ました。そういう意味で、ある程度の偏りを承知の上であれば、よくありがちなロックのガイド本とはちょっと異なった視点からの「ロック史」を楽しめることが出来る内容だったと思います。特にマンガであるがゆえのユニークかつ軽快な語りぶりが非常に読みやすく、知らないミュージシャンであっても、気軽に楽しむことが出来る構成になっていました。

マンガ自体については、正直、トレースベースのキャラクターに説明文も多く、「マンガ」というよりも「絵物語」的な内容にすらなっており、若干読みにくい部分もあることは否めません。この点にも癖があり、最初はちょっと戸惑うかもしれませんが・・・ミュージシャンのセレクトといい、マンガ自体といい、全体的に癖の多い1冊だとは思いますが、少なくとも一通りのロックの通史を知った後であれば、十分楽しめて読める1冊だと思います。ある意味、よくありがちなロックの歴史とはまた一風変わったアナザーロック史を知ることが出来、ロックというジャンルの奥深さを感じることが出来るかもしれません。

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