« ソウルをベースに多様な音楽性を盛り込む | トップページ | バラエティー富んだ作風で »

2022年2月21日 (月)

南イタリアのダンスミュージック

Title:Meridiana
Musician:Canzoniere Grecanico Salentino

今回もまた、2021年のベストアルバムとしてメディアで紹介されたアルバムを後追いで聴いた1枚になります。今回もまたMusic Magazine誌ワールドミュージック部門。本作は第8位にランクインしたアルバム。今回紹介するミュージシャンは南イタリアのサレント地方のダンスミュージックえあるピッツィカを演奏するバンド。結成が1975年といいますから、既に40年以上活動を続けるバンドということになります。

南イタリアのサレント地方というと、イタリアを長靴に見立てた場合、ちょうど踵の部分にあたるのがサレント半島。このピッツィカという音楽は、その地域で踊られるダンスミュージックだそうです。もともと、南イタリアに生息する毒蜘蛛に女性が刺された時に毒を抜くため踊りつづけたことに由来するのがこのピッツィカというダンスミュージックだそうで、「疫病退散」的な意味合いも含む音楽のため、このコロナ禍においても「コロナ退散」の意味を含めて踊られることもあったとか・・・。

作風としては基本的にアコーディオンや笛、バイオリンの音色にのせたリズミカルなダンスミュージックがメイン。ラテン音楽からの影響を強く感じるメロディーラインやアコースティックなサウンドからは哀愁感をたっぷり感じさせます。男女7人組のグループということもあって、軽快な男女のコーラスのやり取りも耳を惹く、トラッドなダンスミュージックらしい、メランコリックさと陽気さを兼ね備えたような音楽が魅力的でした。

アルバムでは後半の「Vulia」「Tic e tac」あたりは、まさにそんなラテン風のメランコリックなサウンドやメロディーラインをリズミカルなリズムにのせて軽快に聴かせるスタイルといっていいかもしれません。特に「Stornello alla memoria」などはヨーロッパのトラッド的な要素も強く感じられ、アコーディオンとアコギで奏でられる軽快なサウンドと共に、いかにもヨーロッパな雰囲気を感じされる作風になっています。

ただ一方で、イメージとしてのヨーロッパのトラッド音楽以上に、かなりトライバルな要素も強く感じられるのが大きな魅力でした。特にアルバムの冒頭を飾る「Balla nina」などは強いエレクトロビートも入った上に、トライバルなリズムが展開されて、むしろアフリカ的な要素すら感じさせます。ここでの男女のコーラスワークも、トライバルな雰囲気に拍車をかけていました。さらに続く「Orfeo」もエキゾチックな要素が強く、こちらはむしろ中東的な雰囲気も。いずれにしても、様々な音楽的な要素を感じされる構成になっています。

このピッツィカという音楽、音楽的な側面から特徴を説明しているサイトは見当たらず、「ピッツィカ」として紹介されている動画サイトなどで視聴すると、アコースティックなサウンドで軽快なリズムを奏でるラテン風の音楽が流れてきます。そのため、「ピッツィカ」の音楽的な特徴はわからず、彼らのこのトライバルなサウンドも含めて「ピッツィカ」の特徴なのかはわかりませんでした。ただよく考えると、このイタリアのサレント地方、地中海を挟んで中東地域にもアフリカにも比較的近い場所に位置します。ひょっとしたら彼らの多彩な音楽性も、どんなサレントの地理的な要因に大きく起因しているのかもしれません。

メランコリックで軽快なダンスミュージックが気持ちよかったこのアルバム。ちなみにラストのタイトルチューン「Meridiana」ではいきなりアコギ1本でのフォークソングが流れてきて、いままでの作風とガラッと変わってリスナーを驚かさせます。ただ、清涼感あるメロとサウンドに心地よさを感じつつアルバムに幕を下ろすことが出来ました。アグレッシブなスタートから、しんみり聴かせるラストまで、非常に心地よさを感じさせる傑作アルバム。「ピッツィカ」はちょっとなじみの薄いジャンルかもしれませんが、十二分に楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

|

« ソウルをベースに多様な音楽性を盛り込む | トップページ | バラエティー富んだ作風で »

アルバムレビュー(洋楽)2022年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ソウルをベースに多様な音楽性を盛り込む | トップページ | バラエティー富んだ作風で »