ソウルをベースに多様な音楽性を盛り込む
Title:Indigo Borboleta Anil
Musician:Liniker
今回紹介するのも2021年にベストアルバムとして紹介されたアルバムを後追いで聴いた1曲。今回はMusic Magazine誌ブラジル部門で1位を獲得した1枚です。サンパウロのシンガーソングライターによる作品。もともとLiniker e osCaramelowsというバンドで活動していたそうですが、本作がソロ第1弾アルバムとなるそうです。
「ベストアルバム」として1位を獲得したのは「ブラジル」という部門においてですが、彼女の楽曲自体はいわゆるブラジルミュージックというカテゴリーに入る音楽ではありません。Liniker e osCaramelowsというバンド自体、ソウルミュージックのバンドだったそうですが、このソロアルバムも基本的にジャンルとしてはソウルにカテゴライズされる作品だと思います。実際、例えば「Psiu」ではメロウに聴かせるネオソウル風なバラードナンバーとなっていますし、「Baby95」もアコギやホーン、エレピの音でメランコリックに聴かせるメロウなソウルチューンが魅力的な楽曲に。全体的にはアーバンなソウルチューンが全編に流れており、ソウルやR&B、あるいはシティポップが好きなリスナーの壺をつきそうな音楽を聴かせてくれています。
ただ、そんなソウルミュージックを軸としつつ、様々なジャンルの要素を取り入れているのが本作の大きな魅力に感じます。例えば「Antes de Tudo」などは冒頭のパーカッションでラテン風のサウンドが流れてきますし、「Lili」はしんみりと聴かせるジャジーなサウンドが大きな魅力に。「Presente」ではトライバルなパーカッションと楽曲の絡みが大きな魅力になっていますし、「Diz Quanto Custa」などはソウルよりもむしろラテンの要素の強い作品になっています。
上にはブラジル音楽の要素はあまり感じられない、とは書いたのですが、ラスト2曲「Vitoriosa」「Mel」はブラジル音楽的な要素もしっかりと感じることが出来、彼女が取り入れている多様な音楽性の中ではしっかりとブラジル的な要素も組み込まれています。実に様々な音楽性を取り入れて、ソウルミュージックの枠にとらわれない自由な音楽性が魅力的。ひょっとしてこの音楽な自由度は、ソウルミュージックの本場、アメリカではなく、ブラジルというちょっと離れた地域だからこそ、発生しえた自由なのかもしれません。
ちなみに彼女、トランスジェンダーを公言しているそうで、歌詞にも性的マイノリティーをテーマとした社会派な歌詞も登場しているとか。だからということもあるのでしょうが、どこか中性的なボーカルも大きな魅力のひとつに感じました。
確かに、年間1位という結果も納得の傑作アルバム。ソウルの王道ともちょっと異なるような独特の音楽性が非常に魅力的なアルバム。日本では無名に近いシンガーですが、ソウルやシティポップが好きなら、文句なしに壺にはまりそうな1枚だと思います。お勧めです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Nancy10/Nancy Ajram
レバノンで絶大な人気を誇る女性シンガーの最新作。こちらも2021年ベストアルバムの後追いで聴いた1枚で、Music Magazine誌ワールドミュージック部門で第7位を獲得した作品。彼女の作品を聴くのはこれが2作目となりますが、こぶしの効いた歌いまわしは、いかにもアラブのポップソングという印象は前作と同様。ただ、全体的にメランコリックな曲調の作品が並びつつ、ポップにまとまった作品は、欧米の音楽からの影響も顕著で、私たちの耳にもなじみやすい作風。いい意味であか抜けた感もあり、確かにこういうタイプの曲が幅広い人気を確保するのも納得、という感も受けました。
評価:★★★★
Nancy Ajram 過去の作品
7
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