おなじみのピアノ曲が並ぶが・・・
Title:Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020
Musician:坂本龍一
2020年12月12日に、一夜限りのスペシャルライブとして実施された坂本龍一のオンラインピアノソロコンサート「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」。アーカイブも一切ない、まさに一夜限りの演奏だっただけに、かなり貴重なライブとなったそうです。私は残念ながら、このオンラインコンサートを見ていなかったのですが、その貴重な音源がライブアルバムとしてリリース。そのオンラインコンサートからちょうど1年後の2021年12月12日にリリースされました。
選曲としては彼のピアノ曲としてベスト盤と言えるような内容。ご存じ大ヒットを記録した「Energy Flow」に「Merry Christmas Mr.Lawrence」、さらには無印良品のCMソングであり、ボックスセット「2020S」の中でのみ聴くことが出来た「MUJI2020」など、ある意味、出し惜しみなしのベストの選曲が楽しめます。またライブ音源とはいえ、基本的に特別なアレンジがほどこされている訳ではなく、あくまでもピアノ1本で静かに聴かせる演奏。無観客ライブということもあって、もちろん客席の音も聴こえてこないため、事実上、ベストアルバムとしての楽しめるような内容になっていました。
しかし、今回のライブでの演奏、基本的にはいつも通りなはずなのですが、これが「すさまじい」という形容詞さえつけられそうなほどの気迫のこもった演奏になっていました。今回の演奏の大きな特徴として、いままでよりスローペースでの演奏という点。もちろん原曲のイメージを大きく変えるほどのゆっくりの演奏、という訳ではありません。しかし、1音1音、教授の強い意思が込められたような演奏となっており、緊迫感あふれる演奏に、聴いているだけでゾクゾクと来てしまいます。1曲目「Andata」を聴きはじめた段階で、教授の信念のこもった演奏に、いつもは音楽を聴きながら、ネットを見ていたり本を読んでいたり、何か作業をしている私ですが、そんな他事は出来なくなってしまい、その演奏にひたすら聴き入ってしまいました。
教授といえば、この演奏の直後の1月に直腸がんの手術を受けて、現在も病気療養中です。おそらく時期的に、既にがんが転移したことは発覚した後の演奏となるのでしょう。この演奏がこれだけ気迫のこもった演奏になっているのは、そんな彼の健康状態が大きく影響を受けたことは間違いありません。現在はがんから生還できる可能性もグッと増しましたし、事実、現在も病気療養中とはいえ、3月の「東北ユースオーケストラ」への出演が決まるなど、術後もそれなりに順調のようですが、それでもおそらく命を意識するような状況の中で、陳腐な表現になるかもしれませんが、文字通り、彼の命を削るような、そんな演奏になっていたようにすら感じました。
坂本龍一のピアノ曲の、例えば「Energy Flow」などは、一時期「癒し系」の代表のように語られていた時期もあります。しかし、この演奏は、そんな「癒し系」なんて陳腐な言葉からはほど遠い演奏になっています。そんなイメージでこのアルバムに臨むと、その演奏に驚かされるのではないでしょうか。とにかく、素晴らしい演奏となっていたライブ盤。ピアノのみでこれだけの表現が出来るのか・・・と坂本龍一の才能にあらためて驚かされるそんなアルバムでした。
評価:★★★★★
坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984
ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
BTTB-20th Anniversary Edition-
BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK
ほかに聴いたアルバム
ANSWER/フレデリック×須田景凪
アプリゲーム「テイルズ オブ ルミナリア」のオープニングがロックバンド、フレデリック、エンディングをボカロP出身のシンガーソングライターとして注目を集める須田景凪が担当。その2曲+お互いの楽曲をそれぞれがカバーした曲が2曲、さらに両者のコラボ作を収録した全5曲入りのEP。両者とも、メランコリックなメロディーラインが特徴的なミュージシャンですが、そのため全編、非常に哀愁感のある楽曲が並びます。メロディーラインのフックは十分でかなりインパクトはあるのですが、良くも悪くも似たようなミュージシャンがコラボしただけに、似たような曲が並んでしまったのは残念な限り・・・。メロディーセンスはある両者なだけに、もうちょっとバリエーションが欲しい感じなのですが。
評価:★★★★
フレデリック 過去の作品
フレデリズム
TOGENKYO
フレデリズム2
ASOVIVA
ANSWER/Nothing's Carved In Stone
ELLEGARDENの生形真一がストレイテナーなどで活躍する日向秀和らと結成した4人組バンドの新作。エッジの効いたバンドサウンドを疾走感もって聴かせる洋楽テイストの強いナンバーと、ベタで和風なメロを聴かせるJ-POP的なナンバーの振れ幅が大きく、良くも悪くもバラエティー富んで、ポップ方面とロック方面のバランスが取られていたアルバムになっていました。個人的には、もっと洋楽方面に入ってもよいとは思うのですが、「売れる」ことを考えるとJ-POP路線も仕方ないのかな・・・。
評価:★★★★
Nothing's Carved In Stone 過去の作品
Strangers In Heaven
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