様々な音楽が混じりあう
Title:ZANZIBARA 10 - FIRST MODERN : TAARAB VIBES FROM MOMBASA & TANGA, 1970-1990
今回紹介するのも、ここ最近続いている2021年のベストアルバムとして各種メディアで紹介されたアルバムのうちの1枚。例によってMusic Magazine誌ワールドミュージック部門の第10位にランクインした曲となります。このアルバムは、アフリカの東海岸沿いに発達したターラブという大衆音楽を集めたコンピレーションアルバム。アフリカの音楽だけではなく、アラブやインド、西欧やラテンアメリカの音楽が融合されたジャンルだそうで、様々な文化が混じりあったような音楽性が大きな特徴のようです。
タイトル通り、10作目となる本作は、ケニア共和国のモンバサ島にあるモンバサからタンザニア連合共和国のタンガにおいて1970年代初頭からの20年間に登場したポップなテイストを持つターラブに焦点を当てた1枚。そのポップなターラブは愛情を込めて「ファースト・モダーン」と呼ばれているそうで、今回のアルバムタイトルの副題はそこから来ています。
様々な音楽的要素が混じりあったというこのターラブという音楽、確かに聴いていると国の音楽が垣間見れます。例えば冒頭のShakila&Black Starによる「Macho Yanacheka」では張りのある女性ボーカルやサウンドからはアラブ系の音楽の色合いが強く感じられますし、Zuhura &Partyによる「Moyo Usijizuzue」では、どこかインド音楽的な雰囲気も感じられます。
Matano&Morning Starの「Sikitiko」などは哀愁感たっぷりのエレピの音色で、レトロな歌謡ロックのような様相になっていますし、Moh’d Mrisho&Black Starの「Sikio」のフォーキーなアコーディオンのサウンドは、むしろヨーロッパのトラッドやラテンからの影響も感じます。
ただ、そんな様々な音楽性に加えて、アルバム全体を流れるのが、アフリカ音楽に由来するようなグルーヴィーなリズム。これがこのアルバムの中でも最大の魅力のように感じました。Malika&Partyによる「Si Bure Mambo」も、アラブ音楽的な楽曲ながらも、ポリリズムなパーカッションのリズムが独特のグルーヴ感を生み出していますし、Maulidi Musical Party「Kabibi」も、ちょっと古い音源のようで、音は悪いのですが、力強いパーカッションが耳を惹きます。
また、もうひとつ大きな魅力だったのが、妙にチープな感のあるシンセの音色。これもひと昔前のアフリカ音楽でよく聴かれたようなサウンドなのですが、このチープなシンセの音色が楽曲に何とも言えないグルーヴ感を与えており、大きな魅力となっています。そこらへんの魅力が一番よく出ていたのがMwanahela&Golden Starによる「Chombo」でしょうか。このシンセの音色とパーカッションの絡みにより、絶妙なグルーヴ感を作り出しており魅力的。非常に中毒性の高いリズムを作り出しています。
様々な音楽の魅力が混じりあった独特の楽曲に惹かれるコンピレーションアルバム。そのグルーヴィーなリズムやチープなシンセのサウンドも合わせて、非常に中毒性が高い音楽を聴かせてくれます。今回、このシリーズははじめて聴いたのですが、非常に魅力的なコンピレーションで、他の作品も聴くたくなってきました。年間ベスト入りも納得の、傑作コンピレーションでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Independencia/Paulo Flores
こちらも2021年ベストアルバムの後追い。Music Magazine誌ワールドミュージック部門で第9位を獲得した作品。現在のアンゴラを代表するシンガーソングライターによるアルバム。もともと、アンゴラ・モダン・ミュージックの父と言われるテタ・ランドが1975年にアンゴラ独立記念アルバムとして同タイトルのアルバムをリリースしており、本作は、同タイトルの「アンゴラ独立45周年記念アルバム」となるそうです。ただ、純粋にアンゴラ独立を祝福するのではなく、ジャケットの文字の配列からして、INの下に"DEPENDENCIA"(依存)という文字をあえて強調しているように、かなり皮肉めいた社会派な歌詞になっているようです。
さて、そんな楽曲自体は、ラテンベースとした哀愁たっぷりに聴かせる楽曲がメイン。シンセのサウンドを入れたり、アコギアルペジオを聴かせたりとバリエーションを出しつつも、基本的には哀愁たっぷりで聴かせる泣きのメロディーラインがメインとなっている曲が並びます。伸びやかなボーカルも印象的な作品。歌詞の内容自体はストレートにはわからないのですが、メロディーラインは私たちの琴線に触れそうな、そんな作品でした。
評価:★★★★
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