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2022年1月28日 (金)

「日本」とは直接関係ないのは残念ですが・・・。

Title:Jubilee
Musician:Japanese Breakfast

さて、今年もやってきました。2021年に各種メディアで年間ベストに選ばれたアルバムのうち、未聴のアルバムの後追いシリーズ。音楽系ニュースサイトamass「100の主要な音楽メディアの「2021年の年間ベスト・アルバム」を集計 TOP50リスト発表」という企画がありましたので、こちら集計されている上位ベスト10のうち、まだ聴いていないアルバムを聴いてみました。まずはJapanse Breakfastというミュージシャンの「Jubilee」というアルバム。上位サイトで第4位にランクインしています。

「Japanse Breakfast」という名前からして、日本人に親近感がわきそうですが、こちらはもともとリトル・ビッグ・リーグというバンドで活動していた女性ボーカリスト、ミシェル・ザウナーによるソロプロジェクト。彼女自身は日系ではなく朝鮮系らしいのですが、外国的な響きのある「ジャパニーズ」とアメリカ的な響きのある「ブレックファースト」の組み合わせがおもしろかった、というのがその命名の由来だそうです。「ジャパニーズ」という響きは、アメリカ人にとっては、やはりはるかな異国というイメージが強いのですね・・・。

ただし、そんなエキゾチックを意図した名前と反して、楽曲自体は非常にポップでいい意味で聴きやすい作品が並んでいます。「Jubilee」というタイトル自体、祝祭、祝典という意味であり、非常に明るい雰囲気にあふれたタイトルなのですが、1曲目「Paprika」(どこかで聴いたことあるようなタイトルだ・・・)からして、ホーンやストリングスも入って非常に祝祭色あふれた作品になっています。

続く「Be Sweet」も80年代的なエレクトロポップを彷彿とさせる非常に明るいポップチューン。「Kokomo,IN」もアコギやストリングスなどアコースティックなサウンド主体で、しんみり聴かせるナンバーながらも爽やかでメロディアスなポップに仕上がっているなど、特に前半は爽やかさを感じさせるポップチューンが私たちの耳を楽しませてくれます。

一方、中盤は「Posing In Bondage」のようなダウナーなエレクトロサウンドが入っていたり、「Sit」のような分厚いギターノイズが入っていたりと、前半に比べると、そのサウンドにダークな雰囲気が漂ってきます。ただ、この2曲に関しても、サウンドこそダウナーなのですが、そこに載るメロディーラインは至ってポップでメロディアス。基本的にはアルバムの雰囲気に沿いつつ、バラエティー富んだサウンドを楽しませてくれる構成となっています。

そして再び、明るいエレクトロポップの「Savage Good Boy」で楽しませてくれた後、後半の「In Hell」「Tactics」そしてラストの「Posing For Cars」はしんみりと聴かせる楽曲に。中盤の曲と異なり、アコースティックテイストのサウンドに、メロディアスな歌声が載った爽やかなナンバーに、彼女のメロディーメイカーとしての実力も感じさせます。そして「Posing For Cars」のラストは一転、バンドサウンドにノイジーなギターも響き渡りダイナミックな雰囲気に。いままでの軽快なポップというイメージからはちょっと異なった展開にちょっとビックリするのですが、最後までその聴き逃せない展開を楽しませてくれるアルバムに仕上がっていました。

聴いていて、素直に楽しくなるポップスアルバムで、年間ベスト入りも納得の傑作アルバムだったと思います。ただし、歌詞は暗くて重い内容が多いみたいで、例えば、上でも紹介した「Savage Good Boy」も明るい曲調とは裏腹に、歌詞は「世界の終わりに地下シェルターを買った富豪が、女の子とシェルターで暮らそう」と歌う内容だそうで、確かに暗い・・・。この歌詞の暗さとのアンバランスさもおもしろさの一因なのでしょうが、残念ながら私たちにはすぐにはわかりにくいのですが。もちろん、そんな点を差し引いても十分に楽しめる傑作アルバムだったと思います。今後、日本でも知名度が高くなりそう。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Atlas Underground Flood/Tom Morello

RAGE AGAINST THE MACHINEのギタリスト、トム・モレロによるソロアルバム。昨年秋にリリースされた「The Atlas Underground Fire」の続編的なアルバムで、本作も様々なゲストが参加し、エレクトロサウンドを取り入れた曲からアコースティックなナンバー、ラテン風の楽曲などバラエティー富んだ作品に仕上がっています。比較的、ポップな色合いが強いのも前作から共通的。ただ一方、様々な作風を試みた結果、中途半端な結果になってしまった前作に比べると、今回のアルバムは、前作以上にギターを主軸として押し出した作品になっており、その結果、ギターを軸にある種の統一感も保たれたナンバーとなり、内容もグッと良くなったように感じます。ソロアルバムらしい挑戦心も感じつつ、しっかりギタリストとしての良さも感じられた1枚でした。

評価:★★★★★

Tom Morello 過去の作品
The Atlas Underground
The Atlas Underground Fire

 

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