爽やかなサウンドながらも湧き上がる高揚感
Title:Spot On
Musician:Femi Solar
今回も、前回に引き続き、2021年の「ベストアルバム」のうち、まだ聴いていなかったアルバムを後追いで聴いた1枚。今回はMusic Magazine誌の「ワールドミュージック」部門で1位を獲得したアルバムです。ナイジェリアのミュージシャン、Femi Solarによるアルバムで、紹介文によると「ナイジェリアのジュジュをアップデートし続ける音楽家」だそうです。
この「ジュジュ」というのは、ナイジェリアの音楽のジャンルで、もともと西アフリカの酒場などで演奏されていたパームワイン音楽や、その後、ガーナに伝わって伝統音楽の要素を取り入れたハイライフの影響を受け、ナイジェリアの南西部、ヨルバ族の地域で発達した音楽だそうです。特に80年代にはサニー・アデの人気もあって、一世を風靡したそうです。
さて、Femi Solarのアルバムは今回はじめて聴いた訳ですが、まず黄色をベースとした非常に爽やかな雰囲気のジャケット写真が目を惹きます。ちょっとチープな雰囲気が、いかにもアフリカ的といえばアフリカ的なのですが・・・。ポリリズムのサウンドが非常に心地よいリズミカルなビートが展開されるのですが、非常に優しく歌い上げるボーカルと、軽快なパーカッションのリズムで全体的にとても爽やかで明るいダンスポップに仕上がっています。パームワイン音楽やハイライフも西洋音楽の影響を受けてあか抜けた要素が強い音楽なのですが、彼の奏でるジュジュも、アフリカ的なポリリズムを取り入れつつも、一方であか抜けた雰囲気も存分に感じることが出来ます。
そんな中でアルバムの目玉となっているのがタイトルチューンである「Spot On」でしょう。20分にも及ぶこの曲は、疾走感あふれるサウンドにポリリズムのビートが心地よいダンスチューン。前述の通り、全体的には爽やかな雰囲気のサウンドが耳に入るため、この曲も最初に聴いた時の熱量はさほど強くありません。
しかし、序盤から疾走感のあるビートが延々と続くこのナンバー、最初は熱量が低く感じられるかもしれませんが、聴いているうちに徐々に気持ちが高ぶっていることに気が付かされます。徐々にあがっていく高揚感。気が付けば、気持ちが思いっきり盛り上がっている自分に気が付きます。決して熱量の高くない、爽やかさすら感じらせる曲だからこそ、聴いていくうちに感じる高揚感とのギャップが、非常に独特な感触を覚えるアルバムになっていました。
アルバムを聴いて非常に心地よさを感じるダンスミュージック。確かに、このアルバムが年間1位に選ばれる理由もわかるような傑作でした。こういう作品をライブで聴いたら気持ちいいんだろうなぁ。コロナ禍で今は難しいでしょうが、コロナが落ち着いたら来日してくれないかなぁ・・・。
評価:★★★★★
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