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2022年1月 4日 (火)

メロディーラインは耳に残るが・・・

Title:FOREVER DAZE
Musician:RADWIMPS

今年3月にコンセプトアルバム「2+0+2+1+3+1+1=10 years 10 songs」、昨年にはミニアルバム「夏のせい ep」のリリースはあったものの、オリジナルアルバムとしては前作「ANTI ANTI GENERATION」から約3年ぶりとなるRADWIMPSの新作。一時期の新海誠監督アニメの主題歌効果はちょっと落ち着いた感のある現在ですが、今年9月、ギターの桑原彰の不倫報道で、彼の活動休止というバンドとしてショッキングなニュースが飛び込んできました。法律違反ではなく、夫婦間というプライベートの問題にすぎない不倫で活動休止というのは、あきらかに行き過ぎな反応だと思うだけに1日も早い復帰を望みたいところですが、一方で本作では彼も録音に参加しているそうです。

しかし、不倫騒動はありつつも、バンドとしてフルメンバーで臨んだ本作でしたが(もっとも不倫騒動の頃にはアルバムはほぼ完成していたのでしょうが・・・)アルバムとしては、正直なところ、あまりバンド色の強くないアルバムとなっていました。「桃源郷」などは疾走感あって心地よいギターロックに仕上がっているのですが、全体的にはストリングスやエレクトロサウンドなどを入れて、野田洋次郎の音楽的な興味を様々に盛り込んだスケール感ある作品に仕上がっていました。

1曲目の「海馬」からして、基本路線はバンドサウンドながらもピアノやエレクトロサウンドも取り入れたサウンドは非常に分厚くなっていますし、「TWILIGHT」も分厚いエレクトロサウンドでスペーシーな作風に。「MAKAFUKA」「犬じゃらし」に至っては、オーケストラサウンドで非常にスケール感ある作風に仕上がっていますし、「グランドエスケープ」「かたわれ」にしてもエレクトロサウンドでスケール感ある作品になっています。

HIP HOP系からの影響も顕著で、「SHIWAKUCHA」ではラッパーのAwichが参加しているほか「匿名希望」ではトラップ的なリズムを取り入れるなど、野田洋次郎のHIP HOPへの興味が強く感じられる作品になっています。エレクトロサウンドからHIP HOP、オーケストラまで自在に取り込み音楽性に野田洋次郎の音楽性の幅と実験精神を感じさせられるのですが、その一方、今回の作品に関しては、スケール感を出した作品については大味になった感があり、また様々な作風についても全体的に中途半端という印象が否めない出来になっていました。

オリジナルアルバムとしての前作「ANTI ANTI GENERATION」はそのバランスが上手く取れていた作品になっており、音楽的なバリエーションや挑戦精神と、RADWIMPSの核としてのバンドサウンドがほどよくバランスしていたように感じます。ただ今回の作品に関しては、野田洋次郎の作風が若干暴走気味といった感のある作品。彼のソロ作illionも暴走気味な作風で「がんばりすぎ」という印象を受けていたのですが、残念ながら今回のアルバムに関しても似たような方向性を感じてしまいました。

ただし一方今回のアルバムで非常に優れていたのはメロディーライン。前作から間があき、途中にリリースした配信シングルなどを多く収録している影響もあるのですが、どこか歌謡曲的でインパクトもある「海馬」をはじめ、フォーキーな作風とメロが胸をうつ「うたたか歌」など、しっかりとメロディーを聴かせてくれる曲も少なくありません。ここらへん、野田洋次郎のメロディーセンスの良さを感じられるのですが、逆にだからこそ、もうちょっとシンプルな作風の方がよかったのでは?とも感じてしまいました。

前作がバンドとしての勢いを感じさせる傑作で、バンドとしての状況は悪くはないのでしょうが、そんな状況だけに暴走しちゃったといった感じもあるのでしょうか。次回作に期待かなぁ。ちなみに歌詞の面でも、相変わらず社会派を目指した「匿名希望」の歌詞がどうにも浅さが目立ってしまって・・・正直、いろいろな意味で社会派を目指すのはやめた方がいいと思う・・・。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version
夏のせいep
2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs


ほかに聴いたアルバム

S.O.S. [Share One Sorrow]/東京スカパラダイスオーケストラ

タイトル曲を含め6曲が収録されたスカパラのミニアルバム。表題曲はロックテイストの強い疾走感あるナンバーでしたが、東京音頭が登場する「SKA! BON-DANCE〜We Welcome The Spirits」や民謡風のメロが登場する「A Night In Tokyo」など、和の要素が強い作品に。ちなみに「めでたしソング」はムロツヨシが参加したことでも話題になっています。

また、Disc2は今年7月に行われた東京ガーデンシアターでのライブの模様を収録したライブ盤。かなりポップテイストの強い作品から、くすんだ怪しげな雰囲気を醸し出すナンバーまで幅が広い作風も特徴的。ミスチル桜井和寿や長谷川白紙も登場。特に「innocent world」のスカ風のカバーはミスチルファンも要チェックかも。スカパラのライブは楽しそうなんで一度行きたいなぁ、とあらためて思う作品でした。

評価:★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~
Paradise Has NO BORDER
GLORIOUS
2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール" 2018.12.24
TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~
SKA=ALMIGHTY

SPEED 25th Anniversary TRIBUTE ALBUM "SPEED SPIRITS"

90年代後半に活躍し一世を風靡したアイドルグループSPEED。そのデビュー25周年を記念してトリビュートアルバムがリリースされました。正直、SPEED自体に興味はないのですが、氣志團やビッケブランカ、Crystal Kayや大森靖子が参加している、ということで聴いてみました。で、感想としては、まあ全体的なカバーとしては「普通」といった感じ。ただ、あらためて聴くと、やはり懐かしさを感じる曲が多く、なによりもメロディーラインのインパクト、強度の強さが半端ありません。ある意味、完全に「アイドルの販促グッズ」的に成り下がった最近のアイドルポップと比べて、当時は純粋に曲で勝負していたんだろうなぁ、ということを感じさせます。カバーとして秀逸だったのは中島美嘉の「my graduation」。正直、中島美嘉についてはいままで歌が上手いと思ったことがなかったのですが、以前不安定だった声量の安定感が出てきて、安心して聴けるようになり、グッと歌の内容が良くなったように感じます。参加ミュージシャンに興味があるのならば、聴いて損のない1枚だと思います。

評価:★★★★

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