清涼感あふれる歌声で35年!
今回紹介するのは、岡村孝子のソロデビュー35周年を記念してリリースされた2枚同時リリースのオールタイムベストです。
Title:T's Best season1
Musician:岡村孝子
Title:T's Best season 2
Musician:岡村孝子
岡村孝子といえば、2019年4月に急性白血病に罹患し、長期の休業に入りました。非常に重い病気であるために予後も心配されたのですが、臍帯血移植を経て9月に退院後、完全寛解状況であることを報告。その後、ライブ活動も再開させ元気な姿を見せて、ファンを安心させました。
そんな中でリリースされたのが今回のベストアルバム。ソロデビュー後35周年を記念してリリースされたオールタイムベストとなります。2組同時にリリースされた本作は、「season1」ではソニーミュージックから、「season2」は2011年に移籍したヤマハミュージックコミュニケーションズからのリリースとなりました。
さて、岡村孝子の楽曲を今回あらためて聴いてみたのですが・・・と言いたいところですが、ベストアルバム「DO MY BESTⅡ」のリリースからわずか5年。また、その前にもセレクションアルバム「After Tone Ⅳ」もリリースされており、若干「またか」という印象もあります。もっとも、その2枚のアルバムはいずれも比較的直近の曲をまとめたアルバムであり、初期の曲という意味では久々に彼女の曲をあらためて聴いてみた、ともいえる作品にもなっています。
その上で、彼女の曲を初期の作品から通して聴くと感じるのは、「夢をあきらめないで」が彼女の曲のひとつの到達点であり、その後の曲は良くも悪くも、その焼き直し的な側面が否めないという点でした。この曲自体、1987年リリースの5枚目のシングルであり、彼女の最初期の曲であるのですが、その後も正直似たような前向き応援歌的な曲が目立ちます。ただ、あらためて聴くと、その中でも「夢をあきらめないで」というストレートなメッセージ性、場面の風景描写から入って、リスナーを曲を惹きつける歌詞構成の妙、インパクトがあり一度聴いたら忘れられず、かつ曲のテーマ性にもマッチした清涼感あふれるメロディーライン、どれをとっても実によく出来た曲になっています。前向き応援歌というのは、J-POPの定番中の定番で、よくありがちなスタイルなのですが、「前向きJ-POP」という形で枠を広げても、この曲はある意味「完成形」と言えるかもしれません。
ただその結果、「夢をあきらめないで」よもう一度、的な前向き応援歌が乱発されてしまっているのは残念。それでも前半の曲に関しては「Good-Day ~思い出に変わるならば~」「笑顔にはかなわない」のような、それなりに「夢をあきらめないで」に近づいたような良曲もあるのですが、その割合は後半になればなるほど減っていってしまい、最近の曲に関しては、正直なところ、過去の曲をリメイクしたのでは?というほどの似たような曲が連発されており、完全にマンネリ状況になっているのは非常に残念です。
一方、彼女の曲に関して思うのは、この前向き応援歌よりも、女性の素直な心境を歌ったラブソングに大きな魅力があるという点。もともと彼女がブレイクしたきっかけとなっているあみんの「待つわ」もご存じの通り、女性の切ない心境を歌ったラブソングですが、「Believe」のような女性の切ない心境を歌ったラブソングが大きな魅力。もちろん、そういう曲はその後もリリースされているのですが、ラブソングでもどこか前向きな歌詞が加味されたような曲も多く、もうちょっと「待つわ」のような路線を突き進めてもいいのに、とも感じてしまいます。
また、今回のオールタイムベストで残念だったのは、代表曲が「Season1」に偏ってしまった点。ファンハウス所属時代が「Season1」、east west japan移籍以降が「Season2」となっています。期間的には「Season1」が1985年から94年の9年間であり、圧倒的に「Season2」の方が長いのですが、その間リリースされたオリジナルアルバムは「Season1」が10枚に対して「Season2」は8枚。内容的にもやはり彼女の活動が脂にのって充実していたのはファンハウス時代であり、特に「Season2」収録曲に関しては、以前の曲の焼き直しのようなマンネリ曲が目立っていました。
もっともマンネリ的な曲が目立ちつつ、35年という長い期間にわたり第一線で活躍をつづけた大きな要因の一つが、彼女の清涼感あふれる歌声でしょう。ルックス的にもお嬢様といった印象を受ける彼女ですが、歌声も、そんな彼女のイメージにピッタリマッチした、非常に透き通った清涼感あふれる歌声が耳を惹きますし、だからこそたとえマンネリ気味であろうとも、その歌に強く惹きつけられます。今回のベスト盤で、やはり一番魅了されたのは、そんな彼女の歌声でした。
一時期は体調をかなり心配したのですが無事復帰されたということで本当にほっとしました。これからも末永く、その美しい歌声が聴けそうでうれしい限り。お身体を無理せずに、これからの活躍も期待したいところです。
評価:
Season1 ★★★★
Season2 ★★★
岡村孝子 過去の作品
勇気
After Tone IV
DO MY BEST Ⅱ
fierte
ほかに聴いたアルバム
Crank Up/ストレイテナー
ストレイテナーの新作は5曲入りとなるミニアルバム。メランコリックなメロディーラインを聴かせつつ、分厚いバンドサウンドが魅力的な作品で、彼らのポップな側面とロックな側面がほどよくバランスされていた感のある作品に。これといってインパクトあるメロがなかったのはちょっと残念でしたが、直近のオリジナルアルバム「Applause」もよい出来でしたし、次のオリジナルアルバムが楽しみになってくる作品でした。
評価:★★★★
ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC
Future Soundtrack
BEST of U -side DAY-
BEST of U -side NIGHT-
Black Map
Applause
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2022年」カテゴリの記事
- 未来を見据えた30周年の締めくくり(2022.12.27)
- YUKIの全てがつまた6時間(2022.12.25)
- タイアップ効果でよりポピュラリティーが増した作品(2022.12.26)
- 昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その3(2022.12.11)
- 昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その4(2022.12.12)
コメント
ゆういちさん、こんばんは。
夢をあきらめないでについてですが、この曲って応援ソングではなく失恋ソングだって知ってました?実はこの曲も“女性の素直な心境を歌ったラブソング”なんですよ(待つわのような路線ではないですが)。この曲が応援ソングという本人の意図していない形で広まったことに対し最初は戸惑ってたみたいですが、今では聴いてくれる人を応援する気持ちでこの曲を歌っているそうです。
投稿: 通りすがりの読者 | 2022年1月17日 (月) 00時28分
>通りすがりの読者さん
なるほど、失恋ソングというのははじめて知りました。逆に下手に応援ソングを目指さない方が良い曲を書けるのでしょうか???
投稿: ゆういち | 2022年2月10日 (木) 00時22分