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2022年1月

2022年1月31日 (月)

グラミー賞ノミネートの注目のSSW

Title:Collapsed in Sunbeams
Musician:Arlo Parks

今回紹介するミュージシャンもまた、2021年のベストアルバムとして取り上げられたアルバムのうち、まだ聴いていなかった作品を後追いで聴いた1枚。今回もamass「100の主要な音楽メディアの「2021年の年間ベスト・アルバム」を集計 TOP50リスト発表」で紹介されていたアルバムで9位に紹介されていたアルバム。イギリスのシンガーソングライター、Arlo Parksのデビューアルバムです。

彼女はイギリスはサウス・ロンドン出身の20歳のシンガーソングライター。イギリスで新人ミュージシャンの登竜門としておなじみのBBC Sound of 2020にもノミネートされて話題となりました。さらになんとグラミー賞の主要4部門のうち2部門にノミネート。世界的に注目のミュージシャンとなっています。

楽曲としてはメロウなネオソウルの影響を感じる作風の曲が並んでいます。ただ、全体的な作風としては、ソウルやR&Bの色合いが強いとはいえ、ポップなメロディーで聴かせる楽曲が並びます。ピアノでメロウに聴かせる「Hope」やアコギでしんみり聴かせ、むしろフォーキー的な色合いも強い「Black Dog」など、ネオソウル的なサウンドのようなグルーヴ感を聴かせるサウンドというよりも、アコースティック的な暖かさを感じさせるポップという印象を強く感じます。彼女の優しい歌声もそんなサウンドにピッタリとマッチしており、非常に暖かみのあるメロディーとサウンドが耳を惹くアルバムとなっています。

また、意外な影響としては、彼女自身、熱烈なRADIOHEADのファンらしく、「Eugene」のサウンドなどは、まんまRADIOHEADじゃん!!というようなサウンドなっています。どちらかというとソウル系の曲が並ぶ中で意外な組み合わせといった感もあるのですが、ただ、アルバムの中の1つのパーツとしてしっかりと当てはまっているのはユニークなところです。

そしてもうひとつの大きな特徴と言えるのが歌詞。彼女はもともと自作の詩を書いていたそうで、その詩にビートをつけたのがもともとミュージシャンへの第1歩だったそうです。アルバムでも冒頭のタイトル曲でもある「Collapsed in Sunbeams」はポエトリーリーディングになっており、詩に主眼を置いていることがわかります。

その他でも「Hurt」では歌詞の中に出てくるチャーリーという人物が、鬱やアルコール中毒に悩まされながらも乗り越えていこうという物語的な歌詞が印象的。「Black Dog」でも同じく、おそらく鬱に悩んでいる人のために"I Would do anything to get out your room"(あなたを部屋から連れ出すために何でもします)という前向きなメッセージ性の強い歌詞になっています。残念ながら日本人にとっては英語の歌詞なので、ストレートに訴えかけてはこないものの、コロナ禍の中で、非常に鬱々とした状況になっている世界の中で、それを乗り越えようとする前向きなメッセージを感じることが出来ます。

決して目立った明るさや派手な曲調が並ぶようなアルバムではないものの、暖かい歌声とサウンド、そしてメッセージに優しさと、そしてある種の力強さを感じさせる作品。ポップな作風なだけに広い層が楽しめるアルバムになっていますし、世界的な注目を受けるのも納得のアルバムです。グラミー賞がコロナ禍で延期になってしまった影響で、ノミネート作の動向はまだわかりませんが、今後、日本でも注目を集めること間違いなしのミュージシャン。年間ベストに各種メディアでランクインしてくるのも納得の作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Etemete/Rahel Getu

こちらも各種メディアの2021年ベストアルバムの後追い企画。こちらはミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門で2位を獲得した女性シンガー。哀愁たっぷりのメロディーをこぶしの利いたメロで聴かせる楽曲。エチオピアの歌謡曲というと、日本の演歌っぽい、というのは以前もここでも書いたと思うのですが、エキゾチックながらもどこか日本人の琴線に触れるようなメロと歌いまわしが印象的な作品となっています。ただ本作、歌詞の内容は内戦下のエチオピアにあって、政府側のプロパガンダ的な様相を呈しているとかで、その部分は賛否がある模様。エチオピア内戦については、詳しく知らないので、何とも言えないのですが・・・。

評価:★★★★

Barn/Neil Young&Crazy Horse

Neil Young&Carzy Horse名義では約2年ぶりとなるニューアルバム。全編メランコリックなメロが耳につく作品で、今回の作品はバンドサウンドを前に押し出したダイナミックなギターロックがメイン。比較的、王道的な印象を受ける作風になっています。ちなみにニール・ヤングといえば、最近、コロナワクチン否定論者の論説をアップしているという理由からSpotifyからの楽曲を引き上げました。そのため、本作も現在、Spotifyでは配信されていません。ちなみに私もSpotifyを利用しているのですが、他のサービスへの移管を検討中。AmazonもAppleもサービスにほとんど差異がなくなったから、サービスの移管に抵抗感はほとんどないんですよね。ニールの言うことは最もなので、サービスを切り替えようかなぁ。

評価:★★★★

Niel Young 過去の作品
Fork In The Road
Psychedelic Pill(Neil Young&Crazy Horse)
Storytone
The Monsanto Years(Neil Young+Promise Of The Real)
Peace Trail
The Visitor(Neil Young+Promise Of The Real)
Colorado(Neil Young&Crazy Horse)
Homegrown

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2022年1月30日 (日)

バラエティー富んだ楽しいポップ

Title:SOUR
Musician:Olivia Rodrigo

今回も、2021年のベストアルバムとして紹介されていたアルバムを後追いで聴いた作品。Japanse Breakfast同様、amass「100の主要な音楽メディアの「2021年の年間ベスト・アルバム」を集計 TOP50リスト発表」で紹介されていたアルバムで第5位にランクインしていたのが本作です。もともと女性としてデビューしていた彼女が、2021年にミュージシャンとしてシングル「drivers license」をリリース。同作が全米全英のシングルチャートで1位を獲得するなど世界的な大ヒットを記録し、一躍、話題のミュージシャンの仲間入りをしました。私自身もリアルタイムで彼女のことが話題となっていたことは知っているのですが、なんとなくアルバムはスルー。ただ、非常に高い評判を得ていることを知り、遅ればせながらアルバムを聴いてみました。

さて、そんな彼女のアルバムですが、まずアルバム全体の感想として強く感じるのは、ポップスのアルバムとして非常によく出来た作品だ、という点でした。まず非常にバラエティーに富んだ作風の展開に最後まで飽きさせません。冒頭を飾る「brutal」はヘヴィーなギターリフのロックチューンですし、大ヒットした「drivers license」は感情こもったボーカルで伸びやかに聴かせるスケール感あるミディアムチューン。「deja vu」は静かなエレクトロポップかと思えば、後半からはダイナミックなサウンドに変化していきますし、「enough for you」ではアコギ1本でしんみり聴かせるフォーキーな作品と、実にバラエティー豊か。

その後もピアノをバックにしんみり聴かせる「happier」にミディアムテンポのエレクトロサウンドにバンド色を加えて、インディーポップっぽい仕上げとなっている「jealousy,jealousy」、最後はストリングスを入れて重厚に聴かせる「hope ur ok」まで、最後の最後までバラエティーに富んだ展開がリスナーの耳を飽きさせません。

もちろん、このバラエティーに富んだ展開は、ある種の節操のなさにもつながるわけで、J-POPのアルバムでも、バラエティー富んだ楽曲を詰め込んだら、ミュージシャンとしての軸がなくなりチグハグで中途半端な作品になってしまった・・・というケースは少なくありません。実際、彼女のアルバムに関しても、そういう側面がない訳ではありません。

ただ、それ以上に今回のアルバムに関してはポップミュージックとしての楽しさが勝った作品だったように感じます。前述の「brutal」してもロックチューンながらもメロディーライン自体は非常にポップでキュート。大ヒットした「drivers license」にしてもちょっと切なさを感じるメロディーラインが耳に残ります。さすが話題となったアルバムなだけに、まずはポップミュージシャンとしての勢いを感じさせる作品になっていました。

しかし以前に紹介したJapanese Breakfastもそうですし、テイラー・スウィフトや例えばBTSなどもその範疇なのかもしれませんが、ここ最近はポップミュージシャンに勢いがありますね。コロナ禍で先行きが不透明な中では、ポップミュージックのような純粋に聴いていて楽しくなるようなミュージシャンが求められるのでしょうか?その是非はともかくとして、確かに本作は素直に聴いていて楽しくなるアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

BBC Sessions/GREEN DAY

これはいい!パンクバンドGREEN DAYが1994年から2001年の間に行ったイギリスはBBCで収録されたライブの模様を収録したライブ盤。今となってはかなり懐かしい、初期のGREEN DAYの演奏が聴けるのですが、若さあふれる勢いのある演奏で、サウンドもかなりパンキッシュ。特に1994年にリリースされたアルバム「Dookie」や、そこに収録された彼らの代表曲ともいえる「Basket Case」は日本でも大ヒットを記録したのですが、いまさらながらあらためて聴いてみると、メロディーラインのフックの強さといい、パンクバンドとしての勢いといい、今聴いてもずば抜けたものを感じます。GREEN DAYの原点として、彼らの魅力をあらためて実感できたアルバムでした。

評価:★★★★★

GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown
AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)
UNO!
DOS!

TRE!
爆発ライブ~渋谷編
DEMOLICIOUS
Revolution Radio
Greatest Hits:God's Favorite Band
Father of All...

An Orchestrated Songbook/Paul Weller

こちらも同じくBBCがらみのライブ盤。昨年5月に無観客で行われたロンドンのバービカン・センターでのイギリスBBC交響楽団との共演コンサートの模様を収録したライブアルバム。ほぼ全編、オーケストラアレンジで聴かせるアルバムで、終始爽やかさを感じるサウンドが特徴的。特に前半は、オーケストラを率いた盛大なアレンジがメインの一方、後半はアコギベースのしんみり聴かせる曲も目立ちます。いずれにしろ、彼の楽曲の、特にメロディーラインの良さを再認識できるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
In Anohter Room
Fat Pop

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2022年1月29日 (土)

爽やかなサウンドながらも湧き上がる高揚感

Title:Spot On
Musician:Femi Solar

今回も、前回に引き続き、2021年の「ベストアルバム」のうち、まだ聴いていなかったアルバムを後追いで聴いた1枚。今回はMusic Magazine誌の「ワールドミュージック」部門で1位を獲得したアルバムです。ナイジェリアのミュージシャン、Femi Solarによるアルバムで、紹介文によると「ナイジェリアのジュジュをアップデートし続ける音楽家」だそうです。

この「ジュジュ」というのは、ナイジェリアの音楽のジャンルで、もともと西アフリカの酒場などで演奏されていたパームワイン音楽や、その後、ガーナに伝わって伝統音楽の要素を取り入れたハイライフの影響を受け、ナイジェリアの南西部、ヨルバ族の地域で発達した音楽だそうです。特に80年代にはサニー・アデの人気もあって、一世を風靡したそうです。

さて、Femi Solarのアルバムは今回はじめて聴いた訳ですが、まず黄色をベースとした非常に爽やかな雰囲気のジャケット写真が目を惹きます。ちょっとチープな雰囲気が、いかにもアフリカ的といえばアフリカ的なのですが・・・。ポリリズムのサウンドが非常に心地よいリズミカルなビートが展開されるのですが、非常に優しく歌い上げるボーカルと、軽快なパーカッションのリズムで全体的にとても爽やかで明るいダンスポップに仕上がっています。パームワイン音楽やハイライフも西洋音楽の影響を受けてあか抜けた要素が強い音楽なのですが、彼の奏でるジュジュも、アフリカ的なポリリズムを取り入れつつも、一方であか抜けた雰囲気も存分に感じることが出来ます。

そんな中でアルバムの目玉となっているのがタイトルチューンである「Spot On」でしょう。20分にも及ぶこの曲は、疾走感あふれるサウンドにポリリズムのビートが心地よいダンスチューン。前述の通り、全体的には爽やかな雰囲気のサウンドが耳に入るため、この曲も最初に聴いた時の熱量はさほど強くありません。

しかし、序盤から疾走感のあるビートが延々と続くこのナンバー、最初は熱量が低く感じられるかもしれませんが、聴いているうちに徐々に気持ちが高ぶっていることに気が付かされます。徐々にあがっていく高揚感。気が付けば、気持ちが思いっきり盛り上がっている自分に気が付きます。決して熱量の高くない、爽やかさすら感じらせる曲だからこそ、聴いていくうちに感じる高揚感とのギャップが、非常に独特な感触を覚えるアルバムになっていました。

アルバムを聴いて非常に心地よさを感じるダンスミュージック。確かに、このアルバムが年間1位に選ばれる理由もわかるような傑作でした。こういう作品をライブで聴いたら気持ちいいんだろうなぁ。コロナ禍で今は難しいでしょうが、コロナが落ち着いたら来日してくれないかなぁ・・・。

評価:★★★★★

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2022年1月28日 (金)

「日本」とは直接関係ないのは残念ですが・・・。

Title:Jubilee
Musician:Japanese Breakfast

さて、今年もやってきました。2021年に各種メディアで年間ベストに選ばれたアルバムのうち、未聴のアルバムの後追いシリーズ。音楽系ニュースサイトamass「100の主要な音楽メディアの「2021年の年間ベスト・アルバム」を集計 TOP50リスト発表」という企画がありましたので、こちら集計されている上位ベスト10のうち、まだ聴いていないアルバムを聴いてみました。まずはJapanse Breakfastというミュージシャンの「Jubilee」というアルバム。上位サイトで第4位にランクインしています。

「Japanse Breakfast」という名前からして、日本人に親近感がわきそうですが、こちらはもともとリトル・ビッグ・リーグというバンドで活動していた女性ボーカリスト、ミシェル・ザウナーによるソロプロジェクト。彼女自身は日系ではなく朝鮮系らしいのですが、外国的な響きのある「ジャパニーズ」とアメリカ的な響きのある「ブレックファースト」の組み合わせがおもしろかった、というのがその命名の由来だそうです。「ジャパニーズ」という響きは、アメリカ人にとっては、やはりはるかな異国というイメージが強いのですね・・・。

ただし、そんなエキゾチックを意図した名前と反して、楽曲自体は非常にポップでいい意味で聴きやすい作品が並んでいます。「Jubilee」というタイトル自体、祝祭、祝典という意味であり、非常に明るい雰囲気にあふれたタイトルなのですが、1曲目「Paprika」(どこかで聴いたことあるようなタイトルだ・・・)からして、ホーンやストリングスも入って非常に祝祭色あふれた作品になっています。

続く「Be Sweet」も80年代的なエレクトロポップを彷彿とさせる非常に明るいポップチューン。「Kokomo,IN」もアコギやストリングスなどアコースティックなサウンド主体で、しんみり聴かせるナンバーながらも爽やかでメロディアスなポップに仕上がっているなど、特に前半は爽やかさを感じさせるポップチューンが私たちの耳を楽しませてくれます。

一方、中盤は「Posing In Bondage」のようなダウナーなエレクトロサウンドが入っていたり、「Sit」のような分厚いギターノイズが入っていたりと、前半に比べると、そのサウンドにダークな雰囲気が漂ってきます。ただ、この2曲に関しても、サウンドこそダウナーなのですが、そこに載るメロディーラインは至ってポップでメロディアス。基本的にはアルバムの雰囲気に沿いつつ、バラエティー富んだサウンドを楽しませてくれる構成となっています。

そして再び、明るいエレクトロポップの「Savage Good Boy」で楽しませてくれた後、後半の「In Hell」「Tactics」そしてラストの「Posing For Cars」はしんみりと聴かせる楽曲に。中盤の曲と異なり、アコースティックテイストのサウンドに、メロディアスな歌声が載った爽やかなナンバーに、彼女のメロディーメイカーとしての実力も感じさせます。そして「Posing For Cars」のラストは一転、バンドサウンドにノイジーなギターも響き渡りダイナミックな雰囲気に。いままでの軽快なポップというイメージからはちょっと異なった展開にちょっとビックリするのですが、最後までその聴き逃せない展開を楽しませてくれるアルバムに仕上がっていました。

聴いていて、素直に楽しくなるポップスアルバムで、年間ベスト入りも納得の傑作アルバムだったと思います。ただし、歌詞は暗くて重い内容が多いみたいで、例えば、上でも紹介した「Savage Good Boy」も明るい曲調とは裏腹に、歌詞は「世界の終わりに地下シェルターを買った富豪が、女の子とシェルターで暮らそう」と歌う内容だそうで、確かに暗い・・・。この歌詞の暗さとのアンバランスさもおもしろさの一因なのでしょうが、残念ながら私たちにはすぐにはわかりにくいのですが。もちろん、そんな点を差し引いても十分に楽しめる傑作アルバムだったと思います。今後、日本でも知名度が高くなりそう。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Atlas Underground Flood/Tom Morello

RAGE AGAINST THE MACHINEのギタリスト、トム・モレロによるソロアルバム。昨年秋にリリースされた「The Atlas Underground Fire」の続編的なアルバムで、本作も様々なゲストが参加し、エレクトロサウンドを取り入れた曲からアコースティックなナンバー、ラテン風の楽曲などバラエティー富んだ作品に仕上がっています。比較的、ポップな色合いが強いのも前作から共通的。ただ一方、様々な作風を試みた結果、中途半端な結果になってしまった前作に比べると、今回のアルバムは、前作以上にギターを主軸として押し出した作品になっており、その結果、ギターを軸にある種の統一感も保たれたナンバーとなり、内容もグッと良くなったように感じます。ソロアルバムらしい挑戦心も感じつつ、しっかりギタリストとしての良さも感じられた1枚でした。

評価:★★★★★

Tom Morello 過去の作品
The Atlas Underground
The Atlas Underground Fire

 

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2022年1月27日 (木)

なんだかんだ言ってもやはり強い

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

いろいろなことを言われていますが、なんだかんだいってもその人気は健在です。

今週1位初登場は木村拓哉「Next Destination」。CD販売数1位、PCによるCD読取数3位で総合順位で1位獲得となります。ソロ第2弾アルバムで、今回も山下達郎や真島昌利、MAN WITH A MISSIONといった豪華ミュージシャンが参加しています。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上7万1千枚で1位初登場。前作「Go with the Flow」の12万6千枚(1位)からダウンしています。

2位初登場は宇多田ヒカル「BADモード」。2月23日リリース予定のアルバムからの先行配信。ダウンロード数で1位を獲得し、配信オンリーながらもベスト3入りとなりました。彼女くらいの人気を誇るミュージシャンが、1ヶ月以上も早く先行配信でアルバムをリリースすることは珍しいケースかも。CDの売れ行きがどうなるか、気になるところです。

3位は優里「壱」が先週と同順位をキープ。2週連続のベスト3入りとなりました。CD販売数は今週4位から3位にアップ。ダウンロード数も1位こそ宇多田ヒカルに譲ったものの2位と高順位をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に「A3! FULL BLOOMING LP」がランクイン。CD販売数は2位ながらもPCによるCD読取数は41位に留まり、総合順位もこの位置に。イケメン役者育成ゲーム「A3!」からのアルバム。オリコンでは初動売上1万1千枚で2位初登場。同ゲームのアルバムとしては前作「A3! SUNNY AUTUMN EP」の8千枚(4位)からアップしています。

6位にはザ・クロマニヨンズ「SIX KICKS ROCK&ROLL」が初登場。CD販売数4位、PCによるCD読取数10位。出現15周年を記念して、昨年8月より6ヶ月連続シングルリリースを続けてきた彼らですが、その6枚のシングル+カップリングの12曲にボーナストラック2曲を加えたアルバムがリリースとなりました。オリコンでは初動売上1万1千枚で3位初登場。前作「MUD SHAKES」の1万3千枚(7位)よりダウン。

初登場は今週もう1枚。「にじさんじボイスドラマCD『常闇のクライノートEpisode1~The Beginning~」が10位にランクイン。タイトル通り、バーチャルライバーグループにじさんじによるボイスドラマCD。CD販売数9位、PCによるCD読取数40位。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。にじさんじによるボイスドラマCDの第1弾「にじさんじボイスドラマ -サイバーパンク- シンギュラリティ・オラトリオ」の2千枚(11位)よりアップしています。

一方、ロングヒット盤はまずYOASOBI「THE BOOK2」が先週の8位からワンランクアップの7位。ついに8週連続のベスト10ヒットとなりました。CD販売数は17位までダウンしていますが、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数2位とまだ上位をキープしています。またSnow Man「Snow Mania S1」は今週8位にアップ。こちらは通算11週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年1月26日 (水)

今週もAimer vs King Gnu

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き今週も、AimerとKing Gnuが上位を争うチャートとなりました。

まず1位獲得はAimer「残響散歌」が先週から同順位をキープ。CD販売数は2位から6位、ストリーミング数も4位から5位とダウンしましたが、一方、You Tube再生回数は3位から2位、ダウンロード数は2位から1位とアップし、総合順位でも見事2週連続の1位となりました。ただ一方、先週6位にランクインした「朝が来る」は今週25位までダウン。ダウンロード数は2位を獲得しているのですが、You Tube再生回数は42位までダウン。ストリーミング数も98位と伸び悩んでおり、2週連続の2曲同時ランクインはなりませんでした。

一方King Gnu「一途」が先週と変わらず3位をキープ。「逆夢」は2位から2ランクダウンの4位となりました。ただ、「一途」はストリーミング数3位、You Tube再生回数3位。さらに「逆夢」に至ってはストリーミング数及びYou Tube再生回数で1位を獲得しており、AimerとKing Gnuのアニメタイアップ対決はまだまだデッドヒートが繰り広げられそうです。

その両者に割り込んで2位にランクインしてきたのがジャニーズWEST「黎明」。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ラジオオンエア数19位、Twitterつぶやき数29位。テレビ朝日系テレビドラマ「鹿楓堂よついろ日和」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上19万4千枚で1位初登場。前作「でっかい愛」の初動20万3千枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場ですが、初登場は1曲のみ。9位に韓国の女性アイドルグループKep1er「WA DA DA」がランクイン。先週の16位からのランクアップで、初登場から3週目にして初のベスト10入り。ストリーミング数8位、You Tube再生回数で4位を獲得。一方、ダウンロード数は51位、ラジオオンエア数は92位に留まり、総合順位はこの位置となりました。

またベスト10返り咲きも1曲。Official髭男dism「Cry Baby」が先週の11位から10位にランクアップ。7週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。ただ、個別のチャート上ではストリーミング数が9位から10位にダウンしているほか、ダウンロード数23位、You Tube再生回数26位と決して上昇傾向ではありませんので、相対的な要素でランクを上げてきたようです。これで通算23週目のベスト10ヒットになりました。

ロングヒット勢ではまず優里「ベテルギウス」は4位から5位にダウン。一方「ドライフラワー」は先週から変わらず7位に留まっています。「ベテルギウス」はストリーミング数がここに来て3位から2位にアップ。「ドライフラワー」は相変わらずカラオケ歌唱回数が1位をキープしており、これで51週連続1位に。ベスト10ヒットは「ベテルギウス」が12週、「ドライフラワー」が62週連続の獲得となっています。

またback number「水平線」は先週と変わらず8位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず7位をキープしており、根強い人気を維持しています。ちなみにカラオケ歌唱回数で1位を驚異的な期間、維持し続ける「ドライフラワー」に対して、2位になっているのがこの曲。こちらは通算10週目の2位となっています。この順位、入れ替わる時が来るのでしょうか。これで通算22週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週までベスト10ヒットを続けてきた藤井風「きらり」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは通算13週で一度ストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年1月25日 (火)

2つの異なるスタイル

Title:KEYS
Musician:Alicia Keys

2020年にセルフタイトルアルバム「Alicia」をリリースしたAlicia Keys。それからわずか14ヶ月というスパンで早くもニューアルバムがリリースされました。アリシアといえば2001年にデビューしてから既に20年以上。ベテランとしての域に達しているシンガーですが、アルバムではミュージシャンとして様々な顔を見せています。前々作「Here」はブラックミュージック寄りにシフトした作品になっていたのに対して、セルフタイトルの前作「Alicia」はポップミュージック寄りにシフトした作品に仕上がっていました。

そして、前作「Alicia」に続いてのセルフタイトルのアルバムとなったのが本作「KEYS」。今回のアルバムでユニークなのは、1つの曲に対して「Originals ver.」と「Unlocked ver.」という2種類のバージョンが収録されているという点。2枚組のアルバムとなっており、1枚目に「Originals ver.」、2枚目の「Unlocked ver.」が収録されており、全26曲1時間半超というボリューミーな内容となっています。

この2種類のバージョンについて、アリシア本人は次のように語っているようです。

「<Originals ver.>は”帰郷”だと考えてます。自分がどこから来たのかを覚えていなければ、どこへ行くのかを真に理解することはできない。一方で<Unlocked ver.>では自分のルーツを理解した上で”磁気治療をうけたような、より充実した体験”をコンセプトに制作を進めたの。」

基本的に「Originals ver.」の方はシンプルなピアノのアレンジをベースとした、昔ながらのR&Bやソウルの影響を強く受けた楽曲。一方、「Unlocked ver.」はプロデューサーとしてBeyonceやケンドリック・ラマーなどの楽曲も手掛けるMike WiLL Made-Itが参加しており、エレクトロサウンドを入れつつ、今時のビートを強調したアレンジを聴かせてくれています。様々な音楽性を抱える彼女が、今回は意図的に、ルーツ志向の自分を見つめなおした方向性と、新たな挑戦を試みた方向性とに、明確に区分した構成となっています。

例えば事前にPVも公表された「Best Of Me」は伸びやかに彼女のボーカルを聴かせるミディアムチューン。「Originals」でもドラムのリズムを強調された楽曲となっているのですが、「Unlocked」ではベースラインがより強調された、今風のアレンジに仕上がっています。「Dead End Road」も、「Originals」ではピアノを主体としたシンプルなアレンジのゴスペルナンバーになっているに対して、「Unlocked」は重低音のビートがより強調されたアレンジとなっています。

今回、「Originals」に今風のアレンジを加えた「Unlocked」というバージョンを加えた構成になった影響でしょうか、楽曲自体については、シンプルなアレンジで「歌」を聴かせる、R&Bやソウルの要素を取り入れつつ、シンプルにまとめた作風が多かったように感じます。「Love When You Call My Name」なども伸びやかなボーカルを聴かせつつ、どこかかわいらしいポップチューンに仕上がっていますし、「Originals」の事実上のラストナンバーとなる「Like Water」もピアノをバックにしっかりと歌を聴かせるシンプルなナンバーに仕上がっています。「Unlocked」でアレンジ的な挑戦を試みた結果、原曲はよりシンプルに「歌」を聴かせる方向性となったのでしょう。

「歌」をしっかりと聴かせる構成なだけに楽曲的にもインパクトがあり、しっかりと心に残る名曲も多かった本作。純粋に曲の出来としては、ここ最近の作品の中で一番だったようにも思います。ただ一方で、「Originals」「Unlocked」共に、正直なところシンプルな方向性のため目新しさはありません。まあ「Originals」については原点回帰という意味のある方向性なだけに、目新しさがないのは当然と言えば当然でしょう。ただ問題なのは「Unlocked」の方。今風のアレンジには仕上げているのですが、こちらに関しても目新しさがほとんどなかったのは残念なところ。もっとも、無難と言えば無難なアレンジなだけに原曲を殺してはおらず、そういう意味では楽しめる作品にはなっていたのですが・・・。

そんな気になる部分もありつつも、ただ全体的にはやはり今風のアレンジという挑戦心は買いたいところですし、「Originals」とのバランスもよく出来ているように思います。かなりのボリューム感あるアルバムなのですが、それを気にせずに一気に楽しむことが出来ました。セルフタイトルが2作品続いただけに、今後は心機一転といった感じなのでしょうか。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Alicia Keys 過去の作品
As I Am
The Element Of Freedom
Girl On Fire
HERE
Alicia


ほかに聴いたアルバム

I'll Be Your Mirror: A Tribute to The Velvet Underground & Nico

タイトル通りのThe Velvet Undergroundの歴史的名盤「The Velvet Underground & Nico」の全曲カバーを試みたトリビュートアルバム。イギーポップや元R.E.M.のマイケル・スタイプといった大物ベテランミュージシャンから、St.Vincent、Kurt Vile、Courtney Barnettといった、最近注目のミュージシャンまで、かなり豪華なメンバーが名前を連ねたトリビュートアルバム。基本的にはノイジーなギターロックの作品が並んだ作品になっているのですが、曲によっては、ストリングスでエキゾチックな雰囲気を醸し出したり、ピアノでしんみり聴かせたり、フリーキーな作風になっていたりとミュージシャンによって多様な解釈が楽しい作品に。ただ、今聴いても楽曲自体の魅力は全く廃れておらず、名盤が名盤である理由のよくわかるトリビュートアルバムとなっていました。

評価:★★★★★

Meu Coco/Caetano Veloso

ブラジルを代表するシンガーソングライター、カエターノ・ヴェローゾの約9年ぶりとなるニューアルバム。60年代から活動を開始し、現在79歳になる彼。超がつくほどベテランシンガーなのですが、この年齢になっても、新作から現役感は全く失われていません。いまなお艶があるボーカルにアコースティックなサウンドを中心としたメランコリックなメロディーラインが魅力的。正直、80歳手前とは信じられない若々しさがあります。まだまだ引退には程遠い感じで、80歳になってもアルバムを作り続けそう・・・。

評価:★★★★

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2022年1月24日 (月)

伝説のネプワースライブ

1990年代半ば、全世界で圧倒的な人気を誇ったロックバンドoasis。特に1995年にリリースされた2枚目のアルバム「(What's The Story)Morning Glory」は全世界で2,500万枚というとんでもない売上を記録。まさに世界の頂点に立った瞬間でした。そのoasisが1996年に実施した伝説のライブとして語り継がれるのが、1996年8月10日、11日にイギリスはネプワースで実施した野外ライブ。25万人というとんでもない人数を集めて実施されたこの野外ライブでは、イギリスの全人口の2%に及ぶ250万人がチケットを申し込んだとも言われています。

昨年、ネプワースから25周年を記念して、この伝説のライブが映画化。伝説のステージながらもいままで、その全編の映像が世に出ることがなかっただけに大きな話題となりました。もちろん私も、その映画を観るために映画館に足を運び、当サイトでも紹介しています。

そして、その映画がDVD化された、ということであらためて購入しました。今回、映画の映像に加えて、なんと2日間のライブ映像がフルで収録されたDVD、さらには2枚組のライブCDまでリリース。リリース形態としては「映画のDVDのみ」「映画+当日のフルライブ映像」「映画のDVD+ライブCD2枚組」「ライブCD2枚組」という様々な形態でのリリースに。もちろん、「映画+当日のフルライブ映像」のDVD3枚組に、2枚組のライブCDというフルセットで購入してきました。

まずはDVD3枚組となる「ネプワース1996」。映画のDVD化というのももちろん大きな魅力ですが、なんといっても大きな目玉になっているのは、8月10日、11日の2日にわたるネプワース公演の模様がフルで映像化されて収録されている点でしょう。特に映画では、ライブチケット争奪戦を巡るファンの動向をはじめ、ライブに関するファンの言動にスポットをあてた構成が多く、結果としてライブの演奏がブツ切れでの収録となっており、その点、ちょっと物足りなさを感じていただけに、ライブの模様をフル収録という内容は、非常にうれしく感じつつ、映像を見てみました。

この2日間のライブ、セットチェンジは2日とも全く同じ。つまり、同じ曲の演奏を2回見ることになるのですが、これが見ていて全く飽きが来ることがありませんでした。とにかく全盛期とも言える彼らのパフォーマンス。その素晴らしさは映画でも感じていたのですが、このフルライブ映像でも否応なく惹きつけられます。

ライブパフォーマンスとしては、あらためてフルでの映像を見ても決して凝った演出があるわけではなく、正直、リアムにしても派手に踊りまくる、といった感じではありませんし、比較的淡々としたロックバンドのライブパフォーマンスが繰り広げられています。それにも関わらず、1日につき2時間、トータル4時間に及ぶライブパフォーマンスを最後まで目が離せないまま、一気に見ることができました。もちろん、全盛期の彼らの楽曲自体の良さもありますが、脂ののったリアムのボーカルにグルーヴィーなライブパフォーマンスが、もっとも勢いのあった時期だったからこそ、非常に魅力的だった、というのも大きな理由でしょう。

Title:KNEBWORTH 1996
Musician:oasis

そしてこちらがそのライブCD。2枚組になるのですが、こちらの大きな特徴は2日間のライブパフォーマンスがフルに入っているわけではなく、この2日間共通のセットリストに基づく曲順で、2日間のパフォーマンスのうちどちらか1日の音源が収録されているという内容。2日間のライブパフォーマンスがフル収録という、貴重な記録映像という意味もあったDVDに対して、こちらは音源で、その日のライブを疑似的に追体験できる構成となっています。

この「ネプワース」が行われたころのoasisというと、大傑作「(What's The Story)Morning Glory」リリース直後で、その次の「BE HERE NOW」リリース前という時期。1stアルバム、2ndアルバムからの曲を中心として、「BE HERE NOW」に収録されることになった曲も披露されたセットリストは、間違いなくoasisのベストアルバム的な構成といっていい内容。ライブ音源ですが、ライブにあたって元曲のイメージを大きく崩す演奏はありませんし、oasis初心者にとっても最適な入門盤としての役割も果たせうる作品となっています。

全4時間というフルボリュームのDVDに対して、CDではDisc1が45分、Disc2が54分というちょうどよい長さという点もポイントが高いところ。また、この日の演奏はオリジナル音源に比べると、よりサウンドの分厚さが目立ち、よりグルーヴィーに聴かせてくれます。そういう意味では下手したら原曲よりも出来が良いのでは?と思うようなパフォーマンスも少なくなく、そういう意味でもoasis初心者にお勧めですし、またファンとしても聴き逃せないアルバムになっています。

しかしこのDVDにしろCDにしろ、その収録時間に関わらず、中だるみなく一気に聴き切れてしまうあたりに、oasisのすごさをあらためて感じます。oasisが解散して早くも12年が経過しましたが、その魅力は全く衰えていません。是非、今の若い世代にもこのDVDもしくはCDで彼らの魅力に触れてほしいところ。あらためてすごいバンドだったなぁ、ということを感じる作品でした。

評価:★★★★★

oasis 過去の作品
DIG OUT YOUR SOUL
Time Flies 1994-2009
Original 1993 Demos
Definitely Maybe (Remastered) (Deluxe)
(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY?(Remasterd)(Deluxe)
BE HERE NOW(Deluxe)


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2022年1月23日 (日)

個人の色が強く出たソロデビュー作

Title:日記を燃やして
Musician:橋本絵莉子

数多くのミュージシャンに影響を与えた女性ロックバンド、チャットモンチー。2018年に惜しまれつつ、その活動に幕を下ろしました。その後はデモテープなどをオンラインショップ限定で販売したり、ライブに出演したりとソロ活動を着実に進めてきましたが、そんな中、チャットモンチー解散から約3年、ようやくソロアルバムがリリースされました。

タイトルは「日記を燃やして」。ソロ活動開始後、初となるアルバムがそのようなタイトルだと、過去の否定か?ということで邪推してしまうのですが、そうではなく日々の生活を燃料として前に進んでいく、という意味だそうです。ひょっとしたら、過去を乗り越えていくという意味も含有している可能性もありそうですが・・・。

まずそんなソロ活動第1弾となる作品ですが、非常にシンプルなギターロックがメインとなっています。ギターにSuperflyやa flood of circleのサポートをつとめる曽根巧、ベースに□□□の村田シゲ、さらにドラムスにHi-STANDARDの恒岡章というメンバーを迎えての作品となっているため、アルバムとしてはバンドサウンドを前に出した構成。そういう意味ではチャットモンチーの延長線上にある、ともいえるかもしれません。

ただ、楽曲はバンドサウンドをバックに、しっかりと聴かせる歌がメイン。ミディアムテンポ主体の楽曲は、なによりも歌詞を届けることを主題としています。チャットモンチーでももちろん、歌詞がメインとなって歌を聴かせるようなナンバーも少なくありまえんでしたが、このソロアルバムではその方向性がより明確になっているように感じます。特に、個人的な心境を歌ったような曲も多く、そういう意味で非常にソロアルバムらしい作品となっていました。

そんな中で歌詞が印象的だったのが「今日がインフィニティ」でしょう。

「歌詞が書けそうよ
こんな夜は
どうしようもない気持ちに
なってからが本番」
(「今日がインフィニティ」より 作詞 橋本絵莉子)

という歌詞は、まさにミュージシャンである彼女の心境をそのままストレートに綴っていますし、さらにチャットモンチーファンとして聞き逃せないのが

「解散はできないように
もうバンドは組まない」
(「今日がインフィニティ」より 作詞 橋本絵莉子)

という一節。バンドに対する複雑な思いが垣間見れる一節に、チャットモンチーの解散への思いも想像してしまいます。

さらに「かえれない」でも

「初心には返れない
そんなこと思えない
これまで忘れてきたものは
たぶん少なくない」
(「かえれない」より 作詞 橋本絵莉子)

まさに今までの彼女の活動を振り返っての心境を歌っており、こちらもどこか過去に関する複雑な思いを感じてしまいます。

他にも母親への思いを歌った「あ、そ、か」など、非常に橋本絵莉子の個人の色合いが強い曲が並んでいる本作。まさにソロアルバムらしい作品となっていました。

今回、サウンド的にはチャットモンチーの延長のようなギターロックになっていましたが、この方向性もひょっとして今後のソロ活動の中であらたな挑戦を聴けたりするかもしれません。全体的にミディアムテンポのナンバーが多く、ちょっと地味という印象も受けるのですが、しっかりと彼女の思いをのせた歌は強い印象に残ります。今後の彼女のソロ活動も楽しみになってくるデビュー作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

旅人よ~The Longest Journey/サンプラザ中野くん

2018年の「Runner」から、過去の爆風スランプのヒット曲のリメイクをリリースし続けたサンプラザ中野くん。前作「感謝還暦」の紹介で「あと爆風スランプのヒット曲でめぼしいところは「リゾ・ラバ」と「旅人よ」くらい。」と書いたのですが、予想通り、その2曲のリメイクを組み込んできました。特に「リゾ・ラバ」はこのコロナ禍の中でのWebではじまった恋という形で「リモ・ラバ –Remote Lovers-」として歌詞もリメイクしています。

ただ、あらためて爆風スランプのヒット曲を聴くと、インパクトの塊のような曲で、一度聴いたらしばらくついつい口ずさんでしまうほどのメロディーラインに強いフックがあります。正直、バンドとして曲を出せばなんでもヒットという、トップクラスの人気があったのは80年代後半で、さほど長くなかった印象もあるのですが、バンドとして人気が一段落した後も、「涙2」やこの「旅人よ」のようなヒット曲を単発でも時々出してきていたというのは、この強いフックの効いたメロディーを書けるという点にあるのでしょうね。

ちなみに今回の作品、「旅人よ」をリリースしてから25周年を記念してリリースされたそうですが、まさかこの「旅人よ」が生まれるきっかけとなったテレビ企画に出ていた、明らかに売れない芸人が、25年を経って日本一売れっ子の芸能人になるとは、だれが予想していたでしょうか・・・。もう、若い世代はあの有吉がヒッチハイクをしていたというのを知らない人が大半なんだろうなぁ・・・。

評価:★★★★

サンプラザ中野くん 過去の作品
Runner
大きな玉ねぎの下で
感謝還暦

HELLO LOVE/MISIA

昨年は東京オリンピックでの「君が代」が話題となったり、紅白歌合戦でオオトリをつとめたりと話題に事欠かなかったMISIA。本作は約3年ぶりとなるニューアルバムとなります。タイアップ曲も多く、「想いはらはらと」では川谷絵音とのコラボが話題になったりと、目玉の曲も多い1枚なのですが・・・率直に言って、いまひとつピンと来ませんでした。彼女の歌唱力を存分に聴かせようと、スケール感をもってはりあげるような曲が多く、正直なところ、若干大味で一本調子にも感じてしまいます。特に大声で声をはりあげれば歌が上手いことにされがちな日本のシーンをいかにも体現化したようなボーカルにはかなり違和感も。悪い意味でMISIAに対する期待をそのまま体現してしまったような、そんなアルバムでした。

評価:★★★

MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING
MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE
MISIA SOUL JAZZ SESSION
Life is going on and on
MISIA SOUL JAZZ BEST
So Special Christmas

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2022年1月22日 (土)

Arcaの多彩な音楽性を4枚のアルバムで表現

バルセロナを拠点として活動するベネズエラ出身のプロデューサーArca。ビョークのアルバムへの参加により一気に注目を集め、その後も自らのアルバムが高い評価を受け、積極的な活動が続いています。そんな彼女は2020年にアルバム「Kick i」をリリースしましたが、昨年末に続く3枚のアルバムを同時にリリース。4部作として完結させています。

4枚同時リリースとなった今回のアルバム。1枚あたりは30分強という比較的、短めの構成となっています。とはいえ、それが4枚あつまるということで、まとまると全2時間強にも及ぶというかなりボリューミーな内容。聴きごたえ満点の作品となっています。

Title:KICK ii
Musician:Arca

ただ、今回のアルバムでユニークなのは、この4枚のアルバムがそれぞれ全く別の音楽性を持ったアルバムになっていたという点。まずこの2作目となる「KICK ii」では彼女らしい、アバンギャルドさを感じるエレクトロサウンドに加えて、トライバルな要素が加味されたという点が大きな特徴でしょう。

不気味な雰囲気のエレクトロビートの破壊音からスタートする1曲目「Dona」はいかにもArcaらしさを感じる楽曲と言えますが、続く「Prada」は軽快なトライバルビートが大きな特徴。どこか悲しげに感じられるメロディーが流れている点も強いインパクトを受けます。さらに前半はトライバルビートが載った作品が続く内容に。一方、後半はアバンギャルドなエレクトロサウンドが流れる「Confianza」「Born Yesterday」など、Arcaらしい独特のエレクトロビートがアルバム全体に炸裂するような作品になっていました。

Title:KicK iii
Musician:Arca

このアバンギャルドなエレクトロサウンドという路線をより推し進めたのはこの3作目でしょう。メタリックなビートを散発的なボーカルで構成される「Bruja」からスタートし、同じくメタリックなサウンドが耳を惹く「Incendio」「Morbo」など、強いエッジの効いたエレクトロビートが耳をつらぬくような作品が続いていきます。

ただ、この「iii」にしても「ii」にしても、アバンギャルドなサウンドが鳴っている割には、意外と聴きやすさを感じてしまうのも大きな特徴で、何気にポップなメロディーラインがしっかり流れていたりするのがユニークなところ。この「iii」でも、例えば「Ripples」では強いエレクトロビートの中に、意外とユーモラスやポピュラリティーを感じさせる作風になっていますし、前述の「Morbo」でもどこかメランコリックなメロが垣間見れたりします。

Title:kick iiii
Musician:Arca

そんなArcaの楽曲のメロディアスな側面が強調されたのが最後の2作で、本作では「Esuna」で郷愁感あふれるホーンのようなサウンドとメランコリックなファルセットボイスが大きな魅力に。「Hija」のようなアコースティックテイストのあるサウンドに、エフェクトをかかったボーカルながらも、メランコリックな歌を聴かせる作品もあったります。

一方、この「iiii」では、「Alien Inside」のようなダイナミックで分厚いサウンドのエレクトロナンバーもあったりと、バラエティーに富んだサウンドも楽しめます。ただ基本的にはメランコリックなメロが流れている作品がメインとなっており、Arcaのメロディーメイカー的な側面を味わえる作品になっています。

Title:kiCK iiiii
Musician:Arca

そして、メランコリックという側面をさらに推し進めたのがこの4作目。この作品ではArcaらしいエレクトロビートは鳴りを潜め、代わりにピアノの音色を主体としたサウンドでメランコリックなメロディーを聴かせるという作品になっています。彼らしいアバンギャルドなエレクトロビートが若干聴こえるのは「Musculos」と最後の「Crown」くらいでしょうか。ただ、その2作品についてもメランコリックなメロが前面に押し出されています。

むしろ「Ether」のような優しいピアノ曲が目立つ作品に。ピアノといっても、むろんエレクトロピアノが取り入れられており、いろいろなピアノの音色が流れてくるのですが、どの曲も優しい雰囲気のサウンドとなっており、特に、最初の2作との違いが顕著にあらわれた作品になっています。ただ、最初の2作のようなエレクトロビートが炸裂というイメージの強いArcaですが、後の2作では非常に美しいサウンドやメロが主体となっており、Arcaのまた異なった側面を楽しむことの出来る作品になっていました。

そんな訳で、全4作というボリューム感あふれる作品になった本作。全2時間以上に及ぶボリュームなのですが、ただ意外なことに、聴いていてそれだけの長さはほとんど感じられませんでした。1枚毎にバラエティーに富んだ作風と、意外にポップでメランコリックなメロが流れる作品が多い点、アバンギャルドさを感じる作風でありながらも同時に聴きやすさがあり、途中、まったくだれることなく一気に楽しめる作品になっていたように感じます。なによりもArcaというミュージシャンの様々な側面に触れることの出来る傑作アルバムになっていました。年末近くにリリースされた作品なのですが、4作あわせて2021年のベスト盤候補といってもいい作品ではないでしょうか。あらためて彼女のすごさを感じさせる作品群でした。

評価:いずれも★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant
Arca
KiCk
Madre

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2022年1月21日 (金)

ソロらしい挑戦心あふれる意欲作

Title:crepuscular
Musician:KIRINJI

2013年に、キリンジの堀込泰行脱退後、まさかのバンド編成にシフト。その後はバンド「KIRINJI」として活動を続けるものの、2020年には今度はそのバンド体制を解除し、堀込高樹のソロプロジェクトとなったKIRINJI。本作は、ソロプロジェクトとなってから初のアルバムとなります。キリンジといえば兄弟デゥオとして続いていく・・・とかつては思っていただけに、2013年以降の変化の目まぐるしさについては、ちょっと驚いてしまう感もあります。ただ、兄弟デゥオでは、堀込兄弟が対等に楽曲制作に参加していた感があったのに対して、KIRINJIとなってからは、バンド活動にしても堀込高樹主導という点が強く感じられました。そういう意味ではバンドとしての活動をある程度やりつくして、あらたな音楽的な方向性に興味を持った堀込高樹が、もっと動きやすいソロプロジェクトにシフトする、というのは自然の流れだったのでしょう。

さて、そんなKIRINJIの最新作ですが、予想はしていたことですが、前作までに比べるとバンド色がグッと薄れて、音楽的な自由度が増して、ソロとしての色合いが強い作風になりました。まあ、バンドからソロプロジェクトに変化したので当たり前といえば当たり前なのですが。その結果、いままでのKIRINJI同様のシティポップを主軸としつつも、新たな挑戦心にあふれた意欲作になっているように感じます。

アルバムの1曲目はエレクトロサウンドを主軸にメロウに聴かせる「ただの風邪」からスタート。この「ただの風邪」という表現、新型コロナに対して・・・特にマスクやワクチンを否定するようなタイプの人たちが良く新型コロナに対しての物言いとして述べられることが多いだけに、タイトルにはちょっとドキリとさせられるのですが、内容的にはコロナと全く関係なし(ひょっとして、コロナに対するこの手の物言いにインスパイアされたのかもしれまえんが)。風邪をひいたかのような気だるさを感じるドリーミーな雰囲気の曲調が特徴的なナンバーになっています。

特に前半に関してソロプロジェクトらしい意欲作に感じるのは「薄明」でしょうか。女性シンガーソングライターのMaika Loubtéがボーカリストとして参加している同作は、メランコリックさがあふれる作品。ちょっと昔の歌謡曲のように、エキゾチックな雰囲気が流れる哀愁感ただようメロディーラインで、どこか懐かしさ、郷愁感を覚えるような作品になっています。

「曖昧me」もトライバルなビートにエキゾチックさを感じさせるギターが印象的なナンバー。続く「気化猫」と同様、現実をあいまいに捉える、ちょっと幻想的な雰囲気の歌詞が印象に残るナンバーで、どこか感じるユーモラスセンス共々、堀込高樹らしい楽曲と言えるでしょう。マリンバを取り入れたインスト「ブロッコロロマネスコ」も合わせて、様々なサウンド的要素を取り入れているあたりもソロプロジェクトならではといった感じでしょう。

さらにアルバムの目玉ともいうべきなのが「爆ぜる心臓」でしょう。いきなりヘヴィーなエレクトロサウンドからスタートしたかと思うと、まさの女性ラッパーが登場。かなりダイナミックなサウンドも耳に残るナンバー。もともと堀込高樹名義でリリースされた映画「鳩の撃退法」のサントラ盤に収録されていた曲なのですが、あきらかに2人組ユニットだったキリンジとも、バンドKIRINJIとも異なる方向性の作風。ラップも大胆に取り入れた意欲的な音楽性が特徴的で、これからのソロ活動を象徴するような曲になっていました。

もちろん「再会」のようなキリンジ時代から続くようなシティポップ路線は健在。ラストはピアノバラードの「知らない人」で締めくくり。楽曲としてのインパクトも申し分なく、KIRINJI堀込高樹の本領が存分に発揮された傑作アルバムに仕上がっていました。KIRINJI時代も傑作のリリースが相次いでいましたが、その勢いが続いているように感じる作品で、2021年の年間ベスト候補といって間違いないでしょう。あらためて堀込高樹の実力を強く感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11
ネオ
愛をあるだけ、すべて
Melancholy Mellow-甘い憂鬱-19982002
Melancholy Mellow II -甘い憂鬱- 20032013
cherish
KIRINJI 20132020


ほかに聴いたアルバム

LITTLE CHANGES/中田裕二

途中ベスト盤を挟みつつ、オリジナルアルバムとしてはちょうど1年ぶりとなる新作。ソロデビュー10周年という区切りのベスト盤リリース後の最初のオリジナルアルバムで、彼にとっては新たな一歩とも言えるのでしょう。ただ、方向性としては、今までの中田裕二の作風をさらに洗練化させたような作風。日本の歌謡曲や、それに連なるJ-POPのメランコリックでメロディアスな路線をさらに突き進んだような作品で、哀愁感たっぷりのメロディーがさらに突き進んだ感じも。正直、目新しさは感じないのですが、一方で今後もこの路線を突き進むという彼の力強い決意も感じさせる新作でした。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS
Sanctuary
DOUBLE STANDARD
PORTAS
TWILIGHT WANDERERS -BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -

GRAN ESPOIR/高橋幸宏

高橋幸宏がソロとしてもっとも充実した活躍ぶりをみせていた80年代前半の代表曲を集めたコンピレーションアルバム。自らの代表曲を並べたDisc1と、同時期の提供曲やプロデュース曲などを収録したDisc2の2枚組となります。楽曲的にはいかにも80年代的な空気を覚えるニューウェーヴなのですが、今なお続き、最近ではMETAFIVEなどにも引き継がれている、高橋幸宏らしいちょっと淡々とした雰囲気のメロやサウンドはこの時期から健在。いい意味で聴きやすい軽快なポップチューンも多く、高橋幸宏の入門盤としてもピッタリなコンピになっていました。

評価:★★★★★

高橋幸宏 過去の作品
Page by Page
GOLDEN☆BEST
LIFE ANEW
Saravah Saravah!

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2022年1月20日 (木)

今週も新譜が目立つチャートに

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週から引き続き、今週も比較的新譜の目立つチャートとなりました。

まず今週の1位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「DIMENSION:ANSWER」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数28位。本作はまた輸入盤なのですが、なぜかCD販売数もランキング上、加味されています。先週ランクインしたKep1erは同じく輸入盤でしたが、CD販売数は対象外。ここらへんの不透明さは、至急なんとかした方がよいと思うのですが・・・。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上11万7千枚で1位初登場。前作「DIMENSION:DILEMMA」の初動12万枚(1位)より若干のダウン。

2位は莉犬「シャッターチャンス」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数19位、PCによるCD読取数9位。You Tubeなどで活動するアイドルグループ、すとぷりのメンバーによるソロアルバム。オリコンでは初動売上7万5千枚で2位初登場。前作「タイムカプセル」の6万3千枚(2位)からアップ。

3位には優里「壱」が入ってきました。CD販売数4位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数7位。ご存じ昨年「ドライフラワー」が大ヒットを記録したシンガーソングライターによるデビュー作。同じようにバラードナンバー「香水」が大ヒットを記録した瑛人は、その後が奮わず、アルバムもHot100で最高位9位と「香水」のヒットに比べると今一つの結果に終わりました。優里も、似たようなタイプのバラードナンバーのヒットということで、その後が心配されたのですが、「ベテルギウス」が大ヒットを記録し、さらにアルバムもベスト3入りと、少なくとも「ドライフラワー」の一発屋になることは避けられました。オリコンでも初動売上3万7千枚で4位初登場と、ヒットを記録しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位にIDOLiSH7「Opus」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数13位。スマートフォン向けゲーム「アイドリッシュセブン」に登場するアイドルグループによる2枚目のアルバム。オリコンでは初動売上2万枚で5位初登場。前作「i7」の初動売上4万6千枚(2位)よりダウンしています。

6位初登場は女性アイドルグループGirls2「We are Girls2」。CD販売数6位、ダウンロード数72位、PCによるCD読取数37位。本作がフルアルバムとしてはデビュー作。オリコンでは初動売上1万5千枚で6位初登場。直近のEP盤「Enjou/Good Days」の1万1千枚(4位)よりアップ。

7位には、昨年末のレコード大賞で新人賞を受賞し、話題となったマカロニえんぴつの新作「ハッピーエンドへの期待は」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数33位。オリコンでは初動売上1万1千枚で8位初登場。直近作はミニアルバム「愛を知らずに魔法は使えない」で同作の1万6千枚(6位)からダウン。フルアルバムとしての前作「hope」(4位)からは横ばいという結果に。レコ大の影響で、Hot100では「なんでもないよ、」がヒットを記録していますが、アルバムチャートでは思ったほど売上が伸びていない模様。今後の動向が気になるところです。

またロングヒット盤ではジャニーズ系アイドルグループSnow Man「Snow Mania S1」が9位にランクイン。通算10週目のベスト10ヒットを記録しています。

今週のHot Albumは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年1月19日 (水)

Aimer × King Gnu

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ数週のチャートはAimerとKing Gnuが上位を争うチャートとなっていますが、今週も両者がベスト3を占める結果となりました。

そんな中で今週はCDのリリースが加わったため予想していたのですが、Aimer「残響散歌」が先週の3位から1位にアップし、3週ぶりの1位獲得。CD販売数2位で初登場。ストリーミング数2位、ダウンロード数4位も先週から変わらず。You Tube再生回数は4位から3位にアップ。さらにPCによるCD読取数も1位にランクインしています。オリコン週間シングルランキングでも初動売上4万4千枚で1位初登場。前作「SPARK-AGAIN」の1万4千枚(3位)から大幅アップ。以前も紹介した通り、テレビアニメ「鬼滅の刃『遊郭編』」オープニングテーマであり、鬼滅効果が強く出た結果となりました。

さらに今週、「鬼滅の刃」のエンディングテーマであり、CDでは「残響散歌」との両A面曲となっている「朝が来る」が6位に初登場。ダウンロード数1位、ストリーミング数100位、ラジオオンエア数98位、Twitterつぶやき数44位、You Tube再生回数17位。ダウンロード数とストリーミング数の極端な差が気になりますが・・・「鬼滅の刃」人気を実感させる結果となりました。

一方、King Gnuは先週2位にランクインした「逆夢」が2位をキープ。ダウンロード数は1位から3位にダウンしたものの、ストリーミング数は2位から1位にアップ。You Tube再生回数も3位から1位にアップしています。さらに先週1位だった「一途」もランクダウンしたものの3位をキープ。ストリーミング数は1位から2位、ダウンロード数も3位から5位にダウンしていますが、You Tube再生回数は2位をキープ。まだまだ圧倒的な強さを見せつける結果となりました。

King Gnuの方は、以前にも紹介しましたが、「劇場版 呪術廻戦」の主題歌(「一途」)及びエンディングテーマ(「逆夢」)。どちらも人気アニメの映像化に係るテーマ曲が上位にランクインする結果となりました。元となる漫画の人気と相まって、この4曲が今後、どれだけヒットを続けるか、注目されそうです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場はあと1曲。10位に男性11人組アイドルグループBLACK IRIS「Head Shot」がランクイン。CD販売数で1位を獲得しましたが、それ以外のチャートは全て圏外という結果に。オリコンでは初動売上2万4千枚で2位初登場となっています。

ほかのロングヒット曲では、まず優里「ベテルギウス」は先週と変わらず4位、「ドライフラワー」は5位から2ランクダウンの7位となりました。「ベテルギウス」は今週、You Tube再生回数が19位から9位に大きくランクアップ。You Tube再生回数では自己最高位を更新しています。「ドライフラワー」はさすがに失速気味ですが、こちらもYou Tube再生回数が12位から7位にアップしています。カラオケ歌唱回数は今週も1位をキープしており、これで1位獲得は連続50週となりました。これで「ベテルギウス」は11週連続、「ドライフラワー」は61週連続のベスト10入りとなりました。

先週、ベスト10に返り咲いたback number「水平線」は先週と変わらず8位をキープ。こちらはストリーミング数が8位から7位に若干のアップ。これでベスト10ヒットは通算21週目となります。

さらに藤井風「きらり」も7位から9位にダウンするもベスト10をキープ。ベスト10ヒットを通算13週に伸ばしています。ただし、ダウンロード数は5位から7位、ストリーミング数は7位から8位、You Tube再生回数も15位から34位にダウンしており、来週以降のベスト10入りはちょっと厳しい状況になってきています。

一方、先週ベスト10に返り咲いたYOASOBI「群青」は今週15位にダウン。残念ながらベスト10返り咲きは1週限りとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年1月18日 (火)

最も勢いのあるミュージシャンの新作2作

先日の紅白にも出演し、大きな注目を集めた、ある意味、今、最も勢いのあるミュージシャンの一組ともいえるYOASOBI。ここ最近、2枚のEPをリリースしました。

Title:E-SIDE
Musician:YOASOBI

Title:THE BOOK 2
Musician:YOASOBI

このうち「E-SIDE」は、彼女たちのヒット曲の英語によるセルフカバー。大ヒットした「夜に駆ける」が「Into The Night」、「群青」が「Blue」、「怪物」が「The Monster」と名前を変えて全英語詞で収録されています。ちょっとユニークなのは一部英語の「空耳」を利用して、英語詞でありながらも原曲の日本語詞と全く同じように聴こえる部分をわざと作っている点。例えば「夜に駆ける」の冒頭の歌いだしは「沈むように」からスタートするのですが、「Into The Night」でも「Seize a move,you're on me」と歌い方によって「沈むように」と聴こえる英語になっています。この遊び心は他のところでも見受けられて、なかなかユニークに感じました(でもこれ、英語、合ってるの?)。

今回YOASOBIの曲を2作品聴いたのですが、その上で感じるのは非常にメロディーラインのインパクトが強いということでした。特に「E-SIDE」であらためて彼女たちのヒット曲を聴いてみると、英語詞のため、原曲の日本語を気にせずにあくまでも楽曲を楽しめるということもあって、メロディーラインの輪郭がよりクッキリと耳に飛び込んでくることを感じます。正直、マイナーコード主体のメランコリックなメロディーラインは、悪い意味でよくありがちなボカロ系という印象も受けてしまうのですが、ただ一方、メロディーラインは一発で耳に残る強いフックを持っています。「THE BOOK 2」でもちょっと和風な要素が印象的な「大正浪漫」やエレクトロの打ち込みに疾走感あるメロが印象的な「怪物」など、メロディーラインのインパクトが光る曲が並んでいます。

また、歌詞についても、世界の中でどこか孤独を感じつつ、前向きな未来を信じている歌詞が特徴的で、ここら辺は良くも悪くもネット住民との親和性がありそうな印象も。個人的にはちょっと抽象的すぎる感のある歌詞が、例えばもっと具体的な世界観を提示してくるthe pillowsなどと比べると、いまひとつはまりきれない感はあるのですが、確かに強すぎる自我を抑えきれなくなるような思春期を迎える10代には心にヒットする歌詞のように感じます。「三原色」などは、今のコロナ禍を反映させたように感じる歌詞も印象的で、この歌詞の世界観は彼らの大きな魅力と言えるでしょう。

ただちょっと・・・というよりもかなり気になるのがそのサウンド。以前、プリセット音源のみ使用している点を批判的に書いて炎上した音楽評論家がいました。正直、この程度の批判で炎上したりするあたり、今の社会の余裕のなさを感じてしまいます。まあ、YOASOBIのファン層が、この手の批判にほとんど免疫なさそうな中高生世代がメインなのが理由なのかもしれませんが。ただ、確かに聴いていて、サウンドに関しては悪い意味でのこだわりのなさのような感じを抱いてしまいます。プリセット音源のみを使用するという点に関しては、(プリセット音源のみを使用したわけではないのかもしれませんが)電気グルーヴがGarage Bandのみを使用してアルバムを作り上げたり、かつてデーモン・アルバーンがiPadのみでアルバムを作ったりと話題になるように、安い音源や機材だからといって必ずしも悪い音になるわけではありません。

しかし、そんな点を差し引いても、彼らのサウンドはちょっとあまりにもチープというか、メロと歌詞を重視するあまりにサウンドにあまりに力を入れていないというか・・・これは彼らが音楽の中でどこを重視するかによるかとは思うのですが、もうちょっとサウンドにも気を配ってほしいなぁ、とは正直なところ思ってしまいます。サウンドが歌の単なる伴奏になっているのは、歌謡曲やJ-POPでよくありがちな悪い点なのですが、聴いていて厳しいなぁ、と思う点は多々ありました。

そういう意味では良くも悪くも、歌詞と歌にあくまでも重点を置く、典型的な日本の売れ筋ミュージシャンと言えるのかもしれません。それだけに2022年以降も快進撃は続くのでしょうか?これからの彼女たちの活躍にも注目したいところです。

評価:どちらも★★★★

YOASOBI 過去の作品
THE BOOK


ほかに聴いたアルバム

Twilight/土岐麻子

途中、カバーアルバムのリリースはあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。しんみりメランコリックに聴かせるシティポップ路線の楽曲が並ぶ本作。「Twilight」というタイトル通り、黄昏時に優雅に過ごせる楽曲を並べたというコンセプトらしい作品。全体的には落ち着いた「大人の」ポップスといった印象を受けるアルバムになっていました。その結果、全体的にはいつものシティポップ路線に落ち着いたといった感じの、安定感はあるものの目新しさのないポップスといった感も。安心して聴けるアルバムではありますが。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-
SAFARI
TOKI CHIC REMIX
PASSION BLUE
HOME TOWN~Cover Songs~

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2022年1月17日 (月)

偉大な作曲家の人間的側面も知れる

今回は、また最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

1960年代から2000年代に至るまで、数多くのヒット曲を世に送り出した、日本歌謡史を代表する大ヒットメーカーである作曲家、筒美京平。2020年に惜しまれつつこの世を去った彼ですが、本作は、そんな筒美京平の評伝。ミュージシャンであり、かつ最近では「考えるヒット」などで評論家的な活躍も目立つ近田春夫による筒美京平の評論本となります。

本書は2部から成っており、第1部は「近田春夫による筒美京平論」として、彼の筒美京平楽曲の経験も踏まえた上で、1960年代から晩年に至るまでの筒美京平の活躍を、同時期の日本のヒットシーンと絡めつつ、解読していっています。「考えるヒット」でも、様々なJ-POPのヒット曲を、ミュージシャンならではの音楽的側面からの分析も踏まえて解説していっている近田春夫ですが、筒美京平に対する解説も同様のスタイル。時として日本の音楽系雑誌では、歌詞の部分だけが語られて音楽的側面からの解説がほとんど行われないケースが少なくありません。ただ、そこは近田春夫。あらゆる音楽からの影響を受け、ある意味、その個性を捉えるのが非常に難しい筒美京平の作品を音楽的側面からしっかり解読しており、非常に興味深く読むことが出来ました。

また、なにげにそんな中で本書の中で貢献しているのが聴き手である下井草秀。彼自身も音楽ライターとして活動しているようですが、近田春夫へのインタビュアーとして、しっかりといい仕事をしています。特に90年代あたりのヒットシーンの評価に関しては、正直、リアルタイムで経験した立場からすると、近田春夫の見方には少々疑問を感じる部分があるのですが、そこを彼がしっかりと軌道修正していっているようにも感じました。

この前半に関して、個人的に非常に興味深かったのが、筒美京平が90年代のJ-POPミュージシャンに関して、気になるミュージシャンは誰か、と聴いたところ、スピッツの名前があがってきたという事実。これに関しては近田春夫もその理由がよくわからないようですが、特に90年代のヒットシーンの中でメロディーラインの良さはピカ一だった草野マサムネだっただけに、シンパシーを感じたのでしょうか。興味深く感じることが出来ました。

さらに同書の目玉はなんといっても後半戦。近田春夫が筒美京平の身近な人にインタビューを試みています。実弟で自らも音楽プロデューサーとして活躍する渡辺忠孝、盟友であり、こちらも日本を代表する作詞家のひとり、橋本淳、そして、筒美京平の秘蔵っ子とも言われたシンガーの平山みきの3人。それぞれが異なった側面から筒美京平について語っているのが印象的でした。

特に筒美京平本人、ほとんど表に出ることがなく、芸能界から距離を置いていたそうで、その人柄についてはいままでほとんど語られることがありませんでした。しかし、本書では、身近な人物にインタビューを試みた結果、筒美京平の生い立ちや人柄についてもしっかりと語られており、ひとりの人間としての筒美京平の姿を知ることが出来る構成となっています。ここらへんは、自らも長年音楽シーンに関わり、日本のヒットシーンの中では、既にレジェンド的な立ち位置になっている近田春夫がインタビューを試みているからこそ、筒美京平の身近な人物がインタビューに応じたのではないでしょうか。このインタビューの中でも、筒美京平の音楽性に関してしっかり語られており、ここらへんも音楽的な素養のある近田春夫がインタビュアーだからこその内容にも感じました。

筒美京平という偉大な作曲家の音楽的な功績とひとりの人物としての側面を知ることが出来る非常に興味深い1冊。これを読んで、あらためて筒美京平の曲に触れてみたくなりました。彼の楽曲を含めて日本のポピュラーミュージックシーンを振り返ることが出来る意味でも楽しめる本ですし、特に歌謡曲に興味があれば、是非とも読んでほしい1冊だと思います。

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2022年1月16日 (日)

念願の初CHAIライブ!

冬のCHAIまつり2022

CHAI/Mom

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2022年1月14日(金)19:00~

今年の初ライブに足を運んできました!オミクロン株によるコロナ患者の急増に少々心配しつつも足を運んできたのがCHAIのライブ。2017年のアルバム「PINK」ですっかり彼女たちにはまってしまい、その後も一度ライブに足を運びたいなぁ・・・と思いつつも、なかなか行けるタイミングが合わず、彼女たちのライブを経験しないままになっていました。そんな中、ようやく彼女たちのライブに足を運ぶことが出来、まさに念願のCHAI初ライブ参戦となります。

この日は対バン形式のライブということで、まずはこの日のゲスト、Momが登場。女性っぽい名前のミュージシャンですが、男性ソロシンガーソングライターで、音を聴くのもはじめてながら、名前を聞くのもはじめて。ある意味、名前から音楽のタイプが全く予想できないだけに、どんなミュージシャンなのか、期待しつつステージを見ていました。

ステージは、ボーカルをつとめるMomにDJが1人つく形式のステージ。1曲目は非常にフォーキーな雰囲気の楽曲だったのでちょっと意外に感じたのですが、その後はHIP HOP的なトラックを取り入れたり、Momがギターをかかえてのロック風の楽曲があったり、メロウなR&B風の楽曲があったりと非常にバラエティーに富んだ作風を聴かせてくれました。彼自身、MCで「自分は軸足のないタイプのミュージシャンだから」というようなことを語っていました。確かに、いろんなジャンルの曲を取り入れた作風が特徴的で、どんなタイプのミュージシャンなのか、一言では説明しにくいタイプのミュージシャンと言えるかもしれません。

そんなバラエティー富んだ音楽性がおもしろさを感じる反面、メロのインパクトがちょっと弱く、またジャンルが広いゆえに若干音楽的な方向性がぼやけた感もあるのも惜しさを感じます。ただ、いろんなジャンルの音楽を積極的かつ柔軟に取り込んでいるその姿勢は非常にユニークで、今後の活躍に期待したいミュージシャンでした。これからその名前を聞く機会も増えるかもしれません。

さて、そんなMomのステージが1時間弱続き、ようやく待望のCHAIが登場!まずメンバー全員、銀色の三角帽子と銀色のポンチョといういで立ちで、まるで銀色のテルテル坊主ような格好で登場。メンバーが最初は「NO MORE CAKE」を歌いながらもダンスするというちょっと意外な展開に。その後も「ACTION」で同じように踊りながら曲を披露するスタイル。途中、「アイム・ミー」ではバンドサウンドを聴かせてくれたりするのですが、その後も「IN PINK」「Nobody Knows We Are Fun」「チョコチップかもね」と最新アルバム「WINK」からの曲が続いていきます。打ち込みのポップソングがメインでバンド色が薄くなってしまっていた「WINK」は、正直あまりはまれなかったアルバム。この日の「WINK」からの曲も、確かにバンドというよりは欧米のポップグループの曲のようなステージなのですが、これはこれで新たな挑戦という感じでおもしろいかも・・・なんてことをステージを見つつ感じていました。

その後、曲にのせてメンバーそれぞれ自己紹介をする自己紹介ソングを挟んだ後、おなじみの「N.E.O.」へ!この曲が聴けたのは非常にうれしかったのですが、それ以上に衝撃的だったのは、彼女たちのバンドサウンド、めちゃくちゃカッコいい!!まずユウナとユキのベース&ドラムのビートが非常にヘヴィーで迫力があり、グッと惹きこまれます。そんなサウンドにのるカナの奏でるギターサウンドが、ちょっとメロウな感じがまた印象的で、ロックバンドCHAIの演奏はまさに聴いていて震えがくるほどのカッコよさを感じました。

続く「END」もバンドサウンドをしっかり聴かせてくれつつ、「PING PONG」では一転、打ち込みのエレクトロサウンドを前面に押し出したダンスチューン。ライブ会場は一瞬にしてライブフロアに大変身。みんなメンバーと一緒に踊ります。

そしてここから雰囲気は一転、「Wish Upon a Star」「ほれちゃった」そして「Donuts Mind If I Do」としんみり聴かせる曲が続きます。前半の元気がよいCHAIから大きく異なり、ここら辺の曲は、純粋に彼女たちがメロディーラインでも勝負できることをあらためて感じさせる展開になっていました。

ここで終盤。ユナのMCのコーナーとなり、この日のようなCHAIの「まつり」でのみ販売される「皿」を紹介する流れに。そしてライブは本編ラスト「フューチャー」へ。ここでもしっかり分厚いバンドサウンドを聴かせつつ、まずは本編終了となりました。

もちろんその後はアンコールへ。最初はメンバーの登場し、MCに。彼女たち、名古屋出身のバンドということですが、この日の本編では、そういう「地元のライブ」という話は一切なし。ただアンコールのMCではバリバリの名古屋弁での会話に(笑)。名古屋めしの話題になったのですが、ただ、名古屋めしというのは、名古屋以外のミュージシャンが名古屋アピールするために取り上げそうな題材で、地元なんだからもっとマニアックなネタに走ってほしかったような(笑)。

で、アンコールラストは、Momが再び登場。Momをゲストボーカルにむかえ「sayonara complex」で締めくくり。最後はバンドサウンドをしっかりと聴かせつつ、約1時間半のステージが幕を下ろしました。

さら今回はじめてのCHAIのステージになるのですが、まずバンドとして非常にカッコよかった!!もともとバンドとしてライブが良いという話はよく聴いていたのですが、特に「N.E.O.」の入りでベースとドラムスがスタートするあたりなど、本当に身震いがするようなカッコよさでバンドとしての実力をいやというほど感じることが出来ました。

一方、この日は最新アルバム「WINK」からの曲も多く、この「WINK」からの曲の多くは、打ち込みのサウンドを用いていました。こちらの曲に関しても、彼女たちの興味とあらたな挑戦を感じさせるのですが、やはりバンド色を前面に押し出している曲に比べると、若干物足りなさも感じてしまいました。やはりロックバンドとしての路線を軸足にしつつ、楽曲のバリエーションとして「WINK」のような曲を箸休め的に聴かせてくれた方がよかったのでは?なんてことをライブからも感じてしまいました。

そんな訳で、噂どおり非常にカッコいいCHAIのステージで大満足でした。唯一残念だったのはステージが1時間半という短さだった点・・・Momも悪くはなかったのですが、次は完全なワンマンライブで聴きたいなぁ。コロナ禍の中で、現在の患者数の増え方ですと、またしばらくライブは「お休み」ということになりそうですが、コロナが明けたら、またぜひともCHAIのライブに足を運びたい!そう強く感じた素晴らしいステージでした。

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2022年1月15日 (土)

清涼感あふれる歌声で35年!

今回紹介するのは、岡村孝子のソロデビュー35周年を記念してリリースされた2枚同時リリースのオールタイムベストです。

Title:T's Best season1
Musician:岡村孝子

Title:T's Best season 2
Musician:岡村孝子

岡村孝子といえば、2019年4月に急性白血病に罹患し、長期の休業に入りました。非常に重い病気であるために予後も心配されたのですが、臍帯血移植を経て9月に退院後、完全寛解状況であることを報告。その後、ライブ活動も再開させ元気な姿を見せて、ファンを安心させました。

そんな中でリリースされたのが今回のベストアルバム。ソロデビュー後35周年を記念してリリースされたオールタイムベストとなります。2組同時にリリースされた本作は、「season1」ではソニーミュージックから、「season2」は2011年に移籍したヤマハミュージックコミュニケーションズからのリリースとなりました。

さて、岡村孝子の楽曲を今回あらためて聴いてみたのですが・・・と言いたいところですが、ベストアルバム「DO MY BESTⅡ」のリリースからわずか5年。また、その前にもセレクションアルバム「After Tone Ⅳ」もリリースされており、若干「またか」という印象もあります。もっとも、その2枚のアルバムはいずれも比較的直近の曲をまとめたアルバムであり、初期の曲という意味では久々に彼女の曲をあらためて聴いてみた、ともいえる作品にもなっています。

その上で、彼女の曲を初期の作品から通して聴くと感じるのは、「夢をあきらめないで」が彼女の曲のひとつの到達点であり、その後の曲は良くも悪くも、その焼き直し的な側面が否めないという点でした。この曲自体、1987年リリースの5枚目のシングルであり、彼女の最初期の曲であるのですが、その後も正直似たような前向き応援歌的な曲が目立ちます。ただ、あらためて聴くと、その中でも「夢をあきらめないで」というストレートなメッセージ性、場面の風景描写から入って、リスナーを曲を惹きつける歌詞構成の妙、インパクトがあり一度聴いたら忘れられず、かつ曲のテーマ性にもマッチした清涼感あふれるメロディーライン、どれをとっても実によく出来た曲になっています。前向き応援歌というのは、J-POPの定番中の定番で、よくありがちなスタイルなのですが、「前向きJ-POP」という形で枠を広げても、この曲はある意味「完成形」と言えるかもしれません。

ただその結果、「夢をあきらめないで」よもう一度、的な前向き応援歌が乱発されてしまっているのは残念。それでも前半の曲に関しては「Good-Day ~思い出に変わるならば~」「笑顔にはかなわない」のような、それなりに「夢をあきらめないで」に近づいたような良曲もあるのですが、その割合は後半になればなるほど減っていってしまい、最近の曲に関しては、正直なところ、過去の曲をリメイクしたのでは?というほどの似たような曲が連発されており、完全にマンネリ状況になっているのは非常に残念です。

一方、彼女の曲に関して思うのは、この前向き応援歌よりも、女性の素直な心境を歌ったラブソングに大きな魅力があるという点。もともと彼女がブレイクしたきっかけとなっているあみんの「待つわ」もご存じの通り、女性の切ない心境を歌ったラブソングですが、「Believe」のような女性の切ない心境を歌ったラブソングが大きな魅力。もちろん、そういう曲はその後もリリースされているのですが、ラブソングでもどこか前向きな歌詞が加味されたような曲も多く、もうちょっと「待つわ」のような路線を突き進めてもいいのに、とも感じてしまいます。

また、今回のオールタイムベストで残念だったのは、代表曲が「Season1」に偏ってしまった点。ファンハウス所属時代が「Season1」、east west japan移籍以降が「Season2」となっています。期間的には「Season1」が1985年から94年の9年間であり、圧倒的に「Season2」の方が長いのですが、その間リリースされたオリジナルアルバムは「Season1」が10枚に対して「Season2」は8枚。内容的にもやはり彼女の活動が脂にのって充実していたのはファンハウス時代であり、特に「Season2」収録曲に関しては、以前の曲の焼き直しのようなマンネリ曲が目立っていました。

もっともマンネリ的な曲が目立ちつつ、35年という長い期間にわたり第一線で活躍をつづけた大きな要因の一つが、彼女の清涼感あふれる歌声でしょう。ルックス的にもお嬢様といった印象を受ける彼女ですが、歌声も、そんな彼女のイメージにピッタリマッチした、非常に透き通った清涼感あふれる歌声が耳を惹きますし、だからこそたとえマンネリ気味であろうとも、その歌に強く惹きつけられます。今回のベスト盤で、やはり一番魅了されたのは、そんな彼女の歌声でした。

一時期は体調をかなり心配したのですが無事復帰されたということで本当にほっとしました。これからも末永く、その美しい歌声が聴けそうでうれしい限り。お身体を無理せずに、これからの活躍も期待したいところです。

評価:
Season1 ★★★★
Season2 ★★★

岡村孝子 過去の作品
勇気
After Tone IV
DO MY BEST Ⅱ
fierte


ほかに聴いたアルバム

Crank Up/ストレイテナー

ストレイテナーの新作は5曲入りとなるミニアルバム。メランコリックなメロディーラインを聴かせつつ、分厚いバンドサウンドが魅力的な作品で、彼らのポップな側面とロックな側面がほどよくバランスされていた感のある作品に。これといってインパクトあるメロがなかったのはちょっと残念でしたが、直近のオリジナルアルバム「Applause」もよい出来でしたし、次のオリジナルアルバムが楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC
Future Soundtrack
BEST of U -side DAY-
BEST of U -side NIGHT-
Black Map
Applause

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2022年1月14日 (金)

Roots of 電気グルーヴ

Title:Nur Noch Einer
Musician:Robert Gorl&DAF

今回紹介するのは、ジャーマン・ニューウェーヴを代表する音楽ユニット、DAFの新作です。といっても、このDAFというユニットの音源をアルバム単位で聴くのは今回がはじめて。DAFというユニットはドイツのデュッセンドルフにて結成されたユニット。80年代に活躍した後、解散、再結成などを繰り返し、断続的に活動を続けているユニットだそうです。ちなみにDAFという名前は"Deutsch Amerikanische Freundschaft"の略称で、ドイツ語で「独米友好協会」という意味。これは旧東ドイツの独ソ友好協会や旧西ドイツの過激派ドイツ赤軍の名前のパロディーだそうです。

もともと、私がDAFというユニットを知ったのは電気グルーヴが自らの音楽的ルーツを語るYou Tube上の番組「Roots of 電気グルーヴ」で紹介されたことがきっかけ。

電気グルーヴが好きな私としては、この番組で紹介されている彼らに断然興味を抱き、そんなタイミングでニューアルバムリリースがあったため、今回、はじめてアルバムを聴いてみた、という次第です。

ただ今回のアルバムリリースのきっかけが、2020年の3月にメンバーのガビ・デルガド=ロペスが61歳という若さでこの世を去ったこと。その死の直前に相方であるロベルト・ゲアルとスタジオに入りレコーディングを開始。ガビが逝去した後もレコーディングが続けられ、このたび、Robert Gorl&DAF名義でのニューアルバムリリースとなりました。

上で紹介した電気グルーヴの動画がきっかけでDAFについては曲単位で何曲が聴いていたのですが、今回の作品に関しては、その時に感じたDAFのイメージそのまんま。80年代を彷彿とさせるニューウェーヴのサウンドがリズミカルに展開していくのですが、このサウンドが非常にダウナーで、力強さとパンキッシュな要素も感じさせます。さらに淡々としたロベルトのボーカルも非常にカッコよさを感じつつ、どこか中性的でもあり、不思議な雰囲気も醸し出しています。

一方で、どの楽曲も、80年代的なニューウェーヴな感じが非常にポップな印象を受ける作風に。さらにロベルトのボーカルもそうなのですが、どこかユーモラスも感じさせる内容になっており、何気にポピュラリティーが高く、広いリスナー層が楽しめる内容になっています。ミニマルテクノ的なサウンドも合わさり、確かに「Roots of 電気グルーヴ」で紹介されただけあって、電気グルーヴへの影響も強く感じさせますし、電気グルーヴが好きなら間違いなく気に入りそうな楽曲だと思います。

全15曲50分弱、楽曲的には似たような曲が並ぶのですが、意外とポップでユーモラスな作品がとても楽しく、一気に聴くことが出来た傑作アルバムに仕上がっていました。これを機に、昔の曲もアルバム単位で聴いてみなくては。遅ればせながらDAFの魅力を実感できた作品でした。

評価:★★★★★

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2022年1月13日 (木)

正月早々、新譜は多め

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

新曲の少なかったHot100と異なり、正月早々、新譜の目立つチャートとなりました。

そんな中、1位を獲得したのはジャニーズ系アイドルグループSixTONESのニューアルバム「CITY」。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得し、総合順位でも1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上46万9千枚で1位初登場。前作「1ST」の46万7千枚(1位)より若干のアップとなっています。

2位にはYOASOBI「THE BOOK 2」が先週と同順位をキープ。CD販売数は7位から10位、PCによるCD読取数も1位から2位とダウンしていますが、ダウンロード数は先週と変わらず1位をキープし、総合順位も2位をキープしています。ただ一方、先週ベスト10に返り咲いた「THE BOOK」は今週12位にダウン。ベスト10返り咲きは1週に留まりました。

3位は-真天地開闢集団-ジグザグ「慈愚挫愚 参 -夢幻-」。かなりインパクトのある名前ですが、本作がフルアルバムとしては4作目となるヴィジュアル系バンドで、バンド名は「しんてんちかいびゃくしゅうだん じぐざぐ」と読むそうです。CD販売数及びダウンロード数4位、PCによるCD読取数23位。今、注目のバンドのようで、いきなりベスト10入り。オリコンでも初動売上8千枚で3位初登場。ベスト10入りどころかアルバムのベスト50入りも本作が初となるようです。

続いて4位以下の初登場盤です。まず7位に「A3! SUNNY AUTUMN EP」がランクイン。CD販売数2位、PCによるCD読取数78位。スマホ向けイケメン役者育成ゲーム「A3!」のキャラクターソング集。オリコンでは初動売上8千枚で4位初登場。同シリーズの前作「A3! SUNNY SUMMER EP」の初動6千枚(6位)よりアップしています。

8位は女性アイドルグループASP「PLACEBO」が初登場。CD販売数3位、そのほかは圏外となっています。オリコンでは初動売上6千枚で6位初登場。前作「ANAL SEX PENiS」の4千枚からアップしています。

9位には声優雨宮天「雨宮天 BEST ALBUM -RED-」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数39位。2枚同時リリースによるベストアルバム。オリコンでは同作が17位、もう1枚の「雨宮天 BEST ALBUM -BLUE-」が16位に並んでランクインしているのですが、Hot Albumsでは「BLUE」はなぜか24位と順位にかなり差がついています。ただ、1月5日リリースながらもフライング販売分が昨年末から店頭に並んでいたようで、オリコンでは先週のチャートで「BLUE」が15位、「RED」が17位にランクイン。Hot Albumsではフライング販売分も今週の売上に加味されているのか、どちらも今週初登場となっています。ただ、その中でこれだけ順位に差がつくのがかなり謎なのですが・・・。

最後10位には韓国の女性アイドルグループKep1er「FIRST IMPACT: 1st Mini Album」。ダウンロード数で2位を獲得。一方、オリコンでは輸入盤の売上が加味されて、初動売上1万枚で2位初登場となっています。輸入盤ということでHot AlbumsではCD販売数は加味されていません。ただ、先週1位を獲得したNCT「Universe:NCT Vol.3」はなぜか輸入盤のCD販売が反映されており、ここらへんの取り扱いの差がいまひとつわかりません。ここらへんの差が、チャートへの疑問につながってしまうのですが・・・。

そんな訳で、モヤモヤをかかえつつ今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年1月12日 (水)

King Gnuの活躍、続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に続いて、King Gnuの活躍が目立つチャートとなりました。

まずはKing Gnu「一途」が2週連続の1位を獲得。CD販売数は2位にダウンしましたが、ストリーミング数1位、ダウンロード数3位は先週から変わらず。You Tube再生回数も2位にランクインしており、見事2週連続の1位となりました。さらに先週3位にランクインした「逆夢」が今週2位にランクアップ。特にダウンロード数は3週連続の1位。ストリーミング数2位、You Tube再生回数も3位にランクイン。ダウンロード数、ストリーミング数及びYou Tube再生回数のいずれもKing Gnuが2曲ランクインする結果となりました。

そして3位にはAimer「残響散歌」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。こちらもダウンロード数2位、ストリーミング数4位、You Tube再生回数4位といずれも上位にランクインしています。こちらは1月12日にCDリリースが予定されており、来週以降のランクアップが期待されます。

続いて4位以下ですが、今週は集計対象週が1月3日から9日と正月休みに係ったため、新曲のランクインがゼロという結果となりました。一方で、ベスト10返り咲きも何曲か。まずback number「水平線」が11位から8位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これでベスト10ヒットは通算20週となります。

またYOASOBI「群青」も先週の16位から10位にランクアップ。9週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。紅白歌合戦の歌唱曲ですので、紅白出演の影響が大きい模様。これでベスト10入りは通算10週目になります。

さらにロングヒット勢も目立ちます。まず優里「ベテルギウス」が4位、「ドライフラワー」が5位と2曲並んでランクイン。「ベテルギウス」はこれで10週連続、「ドライフラワー」は60週連続のベスト10ヒットとなりました。

先週ベスト10に返り咲いた藤井風「きらり」は今週7位にアップ。こちらも通算12週目のベスト10ヒット。特に今週、ストリーミング数が16位から7位、You Tube再生回数も26位から15位と大幅にアップしており、さらなるロングヒットも期待できそうです。

一方、Awesome City Clubの「勿忘」は今週12位にダウン。残念ながらベスト10返り咲きは1週で終わりました。またBTS「Butter」が13位にダウン。ベスト10ヒットはとりあえず通算32週でストップしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年1月11日 (火)

ポップセンスは永遠に

今回は、ここ最近リリースされた、ブライアン・ウィルソンのアルバム2作の紹介です。

Title:Brian Wilson:Long Promised Road(Original Motion Picture Soundtrack)
Musician:Brian Wilson

まず最初に紹介するのはブライアン・ウィルソンの新しいドキュメンタリー映画「Brian Wilson: Long Promised Road」のサントラ盤。配信限定でリリースされた作品ですが、なんといっても話題となっているのが1曲目「Right Where I Belong」で、マイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェイムスと共作&共演したという新曲が収録されています。そして、この曲が、現在、既に79歳となっている(!)彼のポップスセンスが全く衰えていないことを感じさせる名曲。ちょっとひねくれた、独特の構成でありつつも、非常にキュートなポップソングに仕上がっていて、往年のビーチボーイズを彷彿とさせる楽曲に仕上がっています。

そしてアルバムの前半は、90年代にアンディ・ペイリーと様々なスタジオでセッションを行っていた、いわゆる「アンディ・ペイリー・セッション」でお蔵入りとなっていた音源などが収録。さらに後半にはビーチ・ボーイズ名義でリリースされた曲の新録バージョンなどが収録されているようです。

そんな訳で、ドキュメンタリー映画のサントラ盤といえ、楽曲構成に関しては、かなりマニア垂涎の内容といった感じになっています。ただ、だからといって、それ以外のリスナーを突き放しているのかと言われるとそうではなく、アルバム全体、ブライアンらしいキュートなポップソングが並んでおり、ライトなファン層でも十分に楽しめる内容に。軽快なダンスチューン「Rock&Roll Has Got a Hold on Me」に60年代風のキュートなポップソング「Honeycomb」、60年代の王道を行くようなギターポップチューン「I'm Broke」などなど、最後の最後までポップなナンバーが並ぶ楽曲に仕上がっています。

あらためてブライアンのポップスセンスの魅力に触れることの出来る作品。マニアからライトなリスナー層まで十分に楽しめるサントラ盤として仕上がっていました。実に魅力的なポップスアルバムです。

評価:★★★★★

Title:At My Piano
Musician:Brian Wilson

そして、こちらは純然たる新作。ビーチ・ボーイズ結成60周年を記念してリリースされた作品だそうで、彼にとって初となるピアノ・ソロ・アルバム。「God Only Knows」「Wouldn't It Be Nice」「Good Vibration」といったビーチ・ボーイズの名曲の数々をピアノ1本のみで聴かせるインストのアルバムとなっています。

まあ、ビーチ・ボーイズの曲をピアノでそのままカバー、演奏したアルバムということで、良くも悪くも印象そのまま。もともと、メロディーラインは非常に優れた曲なわけで、それをピアノ1本でカバーして悪い出来になるわけはありません。ただ一方、単なるインスト作なので、目新しさはほとんどなく・・・。あえて言えば、メロディーラインの良さを再認識させられて、演奏形態がどうであれ、ビーチボーイズの作品には変わらないということを再認識しました。

そういうこともあって、純然たる新作なのですが、アルバムの方向性としては、前述のサントラ盤以上にファン向けのアイテムといった感じだったかもしれません。もちろん、ピアノでカバーした作品は名曲揃いなだけに悪い内容な訳ありません。そういう意味ではファンとしては聴いて損のない1枚かと。まあ、それよりなにより、79歳になってまだまだ元気そうな彼の姿を感じられるのが一番うれしいのですが。

評価:★★★★

Brian Wilson 過去の作品
That Lucky Old Sun
Reimagines Gershwin
In The Key Of Disney
No Pier Pressure

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2022年1月10日 (月)

こちらも紅白の影響が・・・

すいません、昨日アップ予定でしたが1日延びてしまいました・・・。

今週のHot Albums(2022年1月5日付)

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

お正月休みに係るチャートということで新譜は少な目でした。

そんな中、1位を獲得したのは韓国の男性アイドルグループNCT「Universe: NCT Vol.3」。2週連続での1位となります。CD販売数1位、ダウンロード数75位、PCによるCD読取数45位で、総合順位では1位獲得となっています。

2位にはYOASOBI「THE BOOK 2」が先週の6位からランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲きに。PCによるCD読取数は先週から変わらず1位に、ダウンロード数が2位から1位にランクアップしているほか、CD販売数が先週の17位から7位に大幅アップしています。さらにYOASOBIは「THE BOOK」も先週の29位から9位にランクアップし、3週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。これで通算26週目のベスト10ヒットとなりました。

そして3位がようやく初登場組。EXILE「PHOENIX」が先週の76位からランクアップし、2週目にして1位獲得。CD販売数2位、ダウンロード数25位、PCによるCD読取数52位。1月1日リリースのアルバムだったため、フライング販売分が先週のチャートに加味されたため、今週、2週目という扱いのようです。オリコン週間アルバムランキングでも今週は4千枚の売り上げで7位にランクイン。先週、初動売上1万6千枚で6位に初登場。前作「STAR OF WISH」の初動14万5千枚(1位)より大幅ダウン。「PHOENIX」は今週分の売上を加味しても、2万枚ですので、激減という結果となっています。前作のリリースが約3年4ヶ月前とスパンが開いただけに、ストリーミングの普及などの影響もあるのですが、それを差し引いても厳しい結果となっています。

続いて4位以下の初登場ですが、初登場は1枚のみ。10位に黒澤ダイヤ(小宮有紗) from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Second Solo Concert Album ~THE STORY OF FEATHER~ starring Kurosawa Dia」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」より、アイドルグループAqoursソロコレクション第3弾。CD販売数5位、ダウンロード数63位。オリコンでは初動売上5千枚で3位初登場。

今週の初登場盤は以上でしたが、今週はHot100同様、特に紅白出場組のランクアップが目立つチャートとなりました。前述のYOASOBIもそうですが、まずSnow Man「Snow Mania S1」が先週の16位から6位にアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きで、通算8週目のベスト10ヒットに。特にCD販売数が15位から4位に大幅アップしています。

同じく紅白出場組のNiziU「U」も11位から7位にアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。こちらもCD販売数が14位から9位にアップしています。

さらに目立つのが藤井風「HELP EVER HURT NEVER」でこちらは63位から8位に一気にランクアップ。17週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。こちらは通算9週目のベスト10ヒットに。こちらも紅白出場の影響が大きそう。

そんな訳でHot100同様、なんだかんだいってもテレビ及び紅白の影響の大きさをうかがわせた今週のチャートとなりました。チャート評はまた水曜日に!

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2022年1月 9日 (日)

「奴隷」時代の歴史から脈々と・・・

今回紹介するのは、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回紹介するのはポール・オリヴァー著"The Story Of The Blues"の翻訳版、「ブルースの歴史」。ポール・オリヴァーはイギリスのブルース研究家で、以前、紹介した「ブルースと話し込む」の作者でもあります。本作は、もともと1969年に刊行した1冊。その後、1978年に翻訳出版されました。同作はブルースの名著として知られ、その後も版を重ねていったようですが、その後絶版。今回、その名著が再販され、話題となりました。

同誌の大きな特徴として、まず大判での印刷ということ。29.7cm×21.5cmと、ずっしりと大きな内容は、原著に準じた大きさとなっており、まず手に取ると大きなインパクトがあります。索引等も含めて全208ページからなる内容も重量感があり、中身もずっしり。かなり読み応えのある内容になっていました。

さらに本誌で目立つのは、かなりの枚数の写真が豊富に載せられているという点。全編白黒ということもあって、画質な決してよくないのですが、決して枚数の多くない戦前のブルースミュージシャンたちの貴重な写真が数多く載せられています。もっとも、戦前のブルースミュージシャンたちの写真は枚数も限られるため、見たことある写真も多いのですが、そのほかに当時の黒人社会の状況がわかるような写真も数多く載せられており、それらの写真を眺めるだけで、ブルースが奏でられた当時の状況が目に浮かぶような内容になっていました。

さて、肝心の内容の方ですが、大きな特徴としてもともと1969年に刊行した作品ということもあり、戦前のブルースシーンの描写が主となっています。そのような中で、「ブルースの歴史」のスタートとして、まだ奴隷制度がアメリカに残っていた頃の話からはじめている点が大きな特徴。その時代の記録に残っている黒人たちの歌から「歴史」をスタートさせており、その後、徐々にブルースというジャンルが確立してくるまでを、かなり丁寧に描いているのが印象的です。

普通、「ブルースの歴史」を描く場合は、W.C.ハンディが1903年に、駅のホームで黒人の男が歌う聴いたことのないような音楽と出会ったという有名なエピソードからスタートしていることがほとんどです。しかし、この本では、この有名なエピソードが登場するのは第3章になってから。さらにブルースを紹介する本で、しばしば最初に登場してくる戦前ブルースの代表的なミュージシャン、ロバート・ジョンソンの登場に至っては、134ページと、全体の3分の2程度近くになってようやく登場してきます。

その分、そこに至るまでの数多くのブルースの変遷が丁寧に描かれており、特に戦前のミュージシャンについては、名前を聴くのもはじめてなミュージシャンが数多く登場してきます。調べてみると、録音が残されているのが数曲だけだったり、あるいは録音が残されていないミュージシャンだったり・・・今、数多くの本で紹介される戦前のブルースシンガーというと、ロバート・ジョンソンをはじめ、ブラインド・レモン・ジェファスンやリロイ・カー、チャーリー・パットン、サンハウスといったミュージシャンたちで、そういうミュージシャンももちろん同書では登場し、かなり丁寧に語られているのですが、戦前のブルースシーン、ひいてはその後のミュージックシーンを形作ってきたのは、そんな著名なブルースシンガーだけではなく、彼らに影響を与えた数多くのミュージシャンたちが戦前には存在したんだ、ということをあらためて実感させられる内容になっていました。

非常に興味深い内容になっていた同書。ブルースの成り立ちが奴隷制度の時代から紐解かれており、しっかりと理解できる1冊に。かなり重い本ではあるため、ちょっと手を出しずらい部分もあるかもしれませんが、ブルース、特に戦前ブルースに興味がある方なら必読の1冊です。

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2022年1月 8日 (土)

King Gnu大活躍

今週のHot100(2022年1月5日付)

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

続いては、2022年1月5日付チャートとなります。集計対象期間が12月27日から1月2日となるため、レコード大賞や紅白の影響を大きく受けた結果となっています。

そんな中、1位を獲得したのがKing Gnu「一途」。先行配信によりベスト10入りしていましたが、今週、CDのリリースがあり、CD売上分を加算した結果、見事1位となりました。CD販売数で1位を獲得したほか、ストリーミング数、You Tube再生回数でも1位を獲得。ダウンロード数とPCによるCD読取数が3位、ラジオオンエア数14位、Twitterつぶやき数54位という結果に。King Gnuは大ヒットした「白日」では最高位2位だったため、1位獲得は意外なことにこれが初となります。オリコン週間シングルランキングでも初動売上4万7千枚で1位初登場。前作「三文小説」の5万4千枚(2位)からはダウン。

さらに今週、「逆夢」も先週の12位からランクアップし3位にランクイン。ベスト10初登場となりました。ダウンロード数では見事1位を獲得したほか、ストリーミング数4位、ラジオオンエア数3位、Twitterつぶやき数55位を獲得。「劇場版『呪術廻戦 0』」エンディングテーマで、CDでは「一途」と同作が両A面扱いとなっています。呪術廻戦人気を強く印象付ける結果となりました。

そんなKing Gnu2曲に挟まれる形で2位にランクインしたのが先週まで1位だったAimer「残響散歌」。「一途」に押し出される形でストリーミング数が1位から3位、You Tube再生回数も1位から2位にダウンしています。ただ、まだまだヒットは続きそうです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、冒頭にも書いた通り、レコード大賞や紅白歌合戦の影響を大きく受けた今週のチャート。唯一の初登場となったのもレコード大賞を受賞した男性アイドルグループDa-iCE「CITRUS」。先週の42位からランクアップし、ベスト10初登場となりました。ダウンロード数が86位から5位にアップ。他にもストリーミング数が32位から18位、You Tube再生回数も45位から10位に一気にアップしています。レコード大賞曲がベスト10入り未経験という時点で、レコ大の選考基準を疑わざるを得ないのですが、それはともかく、なんだんだいってもレコ大の影響力を感じる結果となっています。

さらにベスト10返り咲きとして、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」が先週の13位から6位にランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。こちらはレコード大賞の新人賞獲得ミュージシャンによる最新曲。ダウンロード数が88位から24位にランクアップしているほか、ラジオオンエア数も圏外から24位にアップしています。もっとも、ストリーミング数は4位から5位、You Tube再生回数は30位から31位にダウン。もともとチャート上位でヒット中の曲だっただけに、こちらの指標にはレコード大賞の影響は限定的だった模様です。

また藤井風「きらり」が37位から9位に、Awesome City Club「勿忘」が34位から10位にランクアップ。「きらり」は9月15日付チャート以来、「勿忘」は4月28日付チャート以来のベスト10返り咲きとなっています。またこの結果「きらり」は通算11週目、「勿忘」は通算12週目のベスト10ヒットとなりました。ご存じの通り、どちらも今年の紅白歌合戦出演ミュージシャンによる歌唱曲。紅白の影響が大きく表れた結果となりました。

今年の紅白歌合戦は史上最低を記録するなどして悪い意味でも話題になりましたし、若者を中心としたテレビ離れも大きく叫ばれています。ただ、今週のHot100の結果を見ると、まだまだ紅白及びテレビ番組の影響力の大きさをまざまざと見せつけられる結果となりました。よくよく考えれば、紅白の視聴率が史上最低とはいえ、視聴率が34.3%ということは単純換算で3,400万人以上の人が一時点で紅白を見ているという訳です。一方、例えばHIKAKINや東海オンエアというトップクラスのユーチューバーの動画でも、動画1本あたりの再生回数は累計値で数百万再生回数程度。そう考えると、テレビの影響力は、冷静に考えればまだまだYou Tubeなどと比べると桁違いであることは間違いありません。「テレビはオワコン」などと揶揄する風潮は見受けられますが、Twitterのトレンドでもテレビで取り上げられた結果、一気に上位に食い込んでくることはしょっちゅうですし、テレビの影響力を軽視する風潮は、あまりにもネット世論に毒されている意見のように感じます。

さて、チャートに戻ります。続いてはロングヒット曲ですが、優里「ベテルギウス」は先週の3位からダウンしたものの今週も4位をキープ。これで9週連続のベスト10ヒットに。一方、「ドライフラワー」は先週から変わらず5位をキープし、59週連続のベスト10ヒットとなりました。

またBTS「Butter」は先週の9位からワンランクアップして8位にランクイン。こちらは通算32週目のベスト10ヒットとなります。

一方、先週まで土俵際の粘りを見せていたback number「水平線」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは19週連続でストップとなりました。

1月5日付のHot100は以上。明日は1月5日付のHot Albums!

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2022年1月 7日 (金)

こちらも新年1発目のアルバムチャート

今週のHot Albums(2021年12月29日付)

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新年1発目のアルバムチャートは、またK-POPのアイドル勢から

まず1位は韓国の男性アイドルグループNCT「Universe: NCT Vol.3」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数49位、PCによるCD読取数27位。先週の16位からアップして2週目にしての1位獲得。リリース日は12月15日なのですが、輸入盤流通の都合か、CD売上が今週大幅に加味された模様で、オリコン週間アルバムランキングでもランクイン2週目にして5万7千枚を売り上げ、1位獲得となっています。相変わらず輸入盤がカウントされるのかカウントされないのか、いまひとつビルボードは不透明な状況なのですが・・・。

2位はロックバンドUVERworld「30」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数4位。「30」というタイトルは、バンドが30周年でも30枚目のアルバムでもなく、バンドの結成日である2000年6月6日からアルバム発売日の2021年12月22日の7869日の各位の数字を足した数だそうで、バンドとして30周年に向けての決意の意味を込めているそうで、こじつけに近いような。オリコンでは初動売上4万1千枚で2位初登場。前作「UNSER」の5万6千枚(1位)からダウン。

3位初登場は東京事変「総合」。ご存じ椎名林檎を中心としたバンドによる初となるオールタイムベスト。CD販売数及びダウンロード数3位、PCによるCD読取数9位。初回盤はミュージックビデオ集に砂原良徳リミックスによるカセットテープも付くという豪華盤なのですが、それでも11,000円という価格設定は高すぎるよ・・・。もう、彼女たちのような正統派のバンドですら、フィジカルは、完全なファンズアイテムになってしまったということなのでしょうか。オリコンでは初動売上3万4千枚で3位初登場。前作「音楽」の4万2千枚(2位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位にITZY「IT'z ITZY」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数21位。韓国の女性アイドルグループで、本作が日本でのデビュー作となります。オリコンでは初動売上3万枚で4位初登場。

7位には男性アイドルグループPARALLEL PROJECT「PARALLEL PROJECT」がランクイン。CD販売数6位で、その他のチャートは圏外となっています。本作がデビュー作。もともとAXXX1SやHONEY FANGなどとして活動している男性アイドルグループのメンバーによる派生グループだそうです。オリコンでは初動売上6千枚で15位初登場。

8位にはジャニーズ系アイドルグループNEWSの元メンバーである手越祐也のソロデビュー作「NEW FRONTIER」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数43位。オリコンでは初動売上1万1千枚で8位初登場。

9位には俳優の松下洸平によるミニアルバム「あなた」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数49位。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位に初登場しています。

初登場最後10位には「Fate/Grand Order Original Soundtrack V」がランクイン。CD販売数10位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数19位。スマホ向けゲーム「Fate/Grand Order」のサントラ盤の第5弾。オリコンでは初動売上1万枚で10位にランクイン。同シリーズの第4弾「Fate/Grand Order Original Soundtrack IV」の8千枚(6位)よりアップしています。

2021年12月29日付Hot Albumsは以上。続いて、2022年1月5日付Hot100について、明日の更新を予定しています。

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2022年1月 6日 (木)

新年1発目のチャート

今週のHot100(2021年12月29日付)

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

新年1発目のヒットチャート。ただし、集計対象期間は昨年の12月20日~26日となります。

まず1位はAimer「残響散歌」が獲得。2週ぶりの1位返り咲きとなりました。ストリーミング数及びYou Tube再生回数1位、ダウンロード数2位という結果に。1月12日にはCDのリリースも予定されており、さらにヒットは続きそうです。

2位はKing Gnu「一途」が先週の3位からワンランクアップで自己最高位を獲得。こちらはYou Tube再生回数、ストリーミング数及びダウンロード数でいずれも3位を獲得しています。

この両者、1位はテレビアニメ「鬼滅の刃『遊郭編』」オープニングテーマ、2位は劇場版「呪術廻戦0」主題歌と、奇しくも人気アニメの主題歌が並びました。ドラマやCMタイアップからのヒットがなかなか生まれなくなった中、唯一残ったタイアップ効果がアニメということになった感があります。アニメの視聴者層と、ビルボードで重要視されているストリーミングやYou Tubeなどのネット系メディアの相性がいいというのもあるのかもしれませんが。

3位には2021年を代表するヒットとして無視され続けている優里「ベテルギウス」が先週の5位からランクアップ。3週ぶりにベスト3に返り咲きました。これで8週目のベスト10ヒットに。大変申し訳ないのですが、正直、「ドライフラワー」の一発屋かと思っていましたが、この曲のヒットで優里としての人気も確立させた感もあります。一方、「ドライフラワー」も先週の8位から5位にアップ。これで58週連続のベスト10ヒットになりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、6位には(あえて書きますが)暴行事件で話題となったアイドルグループNGT48「ポンコツな君が好きだ」がランクイン。CD販売数2位、PCによるCD読取数73位。オリコン週間シングルランキングでは6万2千枚で2位初登場。前作「Awesome」の7万6千枚(4位)からダウン。

8位にはハロプロ系アイドルグループJuice=Juice「プラスティック・ラブ」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数39位、ラジオオンエア数23位、PCによるCD読取数22位、Twitterつぶやき数61位。竹内まりやの代表曲のカバー。彼女たちは前作「DOWN TOWN」でもシュガー・ベイブの代表曲をカバーしているので、この路線を続けるのでしょうか。オリコンでは初動売上4万6千枚で3位初登場。前作「DOWN TOWN」の4万3千枚(3位)より若干のアップとなりました。

さらに今週はベスト10返り咲きも。4位にBUMP OF CHICKEN「なないろ」が、CDリリースにあわせてランクアップ。昨年の5月26日付チャート以来のベスト10返り咲きとなりました。CD販売数で1位を獲得したほか、ラジオオンエア数52位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数46位。オリコンでも初動売上10万5千枚で1位初登場。前作「アカシア」の9万2千枚(2位)よりアップしています。先日の紅白歌合戦でも披露されたこの曲。ただ、紅白で事前録画というスタイルにはかなり疑問を持ってしまったのですが。また、同時に披露された「天体観測」が発売から20年という事実に軽く衝撃が・・・。もうそんなにたってしまうのですね・・・。

また今週のチャートではランキング対象週にクリスマスが重なるということでクリスマスソングが多くランクアップ。その中でも、タイトルそのままback number「クリスマスソング」が先週の19位からランクアップし、先週の2019年1月2日付チャート以来、3年ぶりのベスト10ヒットを記録しています。これで通算11週目のベスト10ヒットに。ただ、2015年のリリース以降、ほぼ毎年、クリスマスシーズンにベスト10近辺までランクアップしており、クリスマスソングの定番としてすっかり定着した模様です。

一方、長年のクリスマスソングの定番、マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」は今週17位に、山下達郎「クリスマス・イブ」も29位にランクアップ。ほかに桑田佳祐「白い恋人達」が46位、BoA「メリクリ」が47位、ワム「ラストクリスマス」が50位にランクアップし、クリスマスらしいチャートとなっています。

back numberは「水平線」も先週から変わらず10位にランクイン。3週連続10位と土俵際の粘りを見せています。これでベスト10ヒットを19週連続に伸ばしています。

ほかのロングヒット曲はBTS「Butter」が、こちらも先週と変わらず9位にランクイン。こちらも土俵際の粘りを見せる結果となりました。ベスト10入りは通算31週目となります。

12月29日付のHot100は以上。明日は同日付のHot Albums!

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2022年1月 5日 (水)

BOOM BOOM SATELLITES中野雅之との相性がピッタリ

Title:Break and Cross the Walls I
Musician:MAN WITH A MISSION

2020年は結成10周年としてベスト盤やコンピ盤のリリースなどが続いたMAN WITH A MISSION。配信を中心としてシングル曲のリリースも続くなど、積極的な活動が目立つ1年でした。ただ、オリジナルアルバムのリリースは2021年に入りEP盤のリリースがあっただけでしばらくご無沙汰していましたが、ここに来て、約3年ぶりとなるオリジナルアルバムがリリースされました。

MAN WITH A MISSIONといえば、楽曲によっては、洋楽のテイストの強い、躍動感あふれるカッコいいロックチューンを聴かせてくれたかと思えば、一方では悪い意味で歌謡曲的でベタな楽曲が出てくるなど、楽曲によって良い曲と悪い曲の振れ幅が大きいという印象がありました。特にアルバムに関しては、1曲単位では名曲を聴くことが出来るものの、アルバム全体としてはベタな路線が足を引っ張って今一つ・・・という印象を強く受けてしまっていました。

しかし、そんな彼らの作品ですが、結成から10年以上が経過し、オリジナルアルバムとして6枚目となる本作で、ようやくアルバム全体を通じてカッコいい!と感じる傑作に出会うことが出来たように感じます。今回のアルバムもベタなJ-POP路線の楽曲も並ぶ一方、アルバム全体としてはダイナミックなバンドサウンドを聴かせる迫力あるナンバーが並んでおり、いままでのオリジナルアルバムと比べるとカッコよさがグッと増したように感じます。

特にその要因として大きいように感じたのは、アレンジャーとして参加したBOOM BOOM SATELLITES中野雅之の存在。例えば1曲目を飾る「yoake」は、メロディーラインこそベタなJ-POP的になっているのですが、エレクトロを入れたダイナミックで高揚感あふれるサウンドがアルバムの1曲目として文句なくリスナーの耳を惹きつけます。さらに中野雅之の本領発揮ともいうべきなのが「INTO THE DEEP」。エレクトロビートで疾走感ふあれるデジタルロックチューンは、まさに彼の十八番ともいえる路線。BOOM BOOM SATELLITESを彷彿とさせるそのサウンドが文句なしにカッコいい作品になっています。

思えば、エレクトロビートの入ったダイナミックなロックチューンという路線は、BOOM BOOM SATELLITESに通じるものがあり、そういう意味でも両者の相性はピッタリといった感じなのでしょう。中野雅之は前作「Chasing the Horizon」から参加しているのですが、前作に引き続き参加したこのアルバムで、よりMWAMのメロディーラインとの一体感が増したように感じます。そして、それが本作を傑作ならしめる大きな要因になったように感じました。

他にもカッコよかったのが2曲目の「Thunderstruck」。AC/DCの曲のカバーだそうですが、エレクトロビートにラップも取り入れてMWAM色にしっかりとアップデート。スケール感があり非常にカッコいい楽曲に仕上がっています。洋楽テイストが強いといえば「86 Missed Calls」ではFall Out Boyのパトリック・スタンプがボーカルとアレンジャーとして参加。メランコリックなメロとヘヴィーなバンドサウンドが印象的な作品に仕上がっています。

ちなみに以前のメインアレンジャーだった大島こうすけ(元WANDS!)は本作も参加。「Remember Me」など、ギターやストリングスの使い方など、確かに良くも悪くもベタさを感じるアレンジで、良くも悪くもインパクトのある売れ線路線だなぁ、という印象は受けます。ただ、この路線はこの路線で、MWAMを人気バンドとして引き上げた大きな要因のようにも感じます。ちょっとベタな彼のアレンジも、中野雅之とのバランスにより、ほどよいインパクトして機能しているように感じました。

そんな訳でアルバムとしてグッと良くなった本作。中野雅之との相性はピッタリなだけに、今後も是非、このタッグでの制作を続けてほしいところ。文句なしの傑作アルバムとして最後まで耳の離せなかった1枚でした。

評価:★★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)
Dead End in Tokyo European Edition
Chasing the Horizon
MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION
MAN WITH A "REMIX" MISSION
MAN WITH A "BEST" MISSION
ONE WISH e.p.


ほかに聴いたアルバム

君だけが憶えている映画/筋肉少女帯

筋肉少女帯の約2年ぶりとなるニューアルバム。彼らにとってコロナ禍以降では初となるアルバムですが、タイトルそのまま「COVID-19」なんて曲を書いてしまうのはオーケンらしい感じ。マニアックな趣味を思いっきり肯定する「そこいじられたら~はぁ! ?」などもストレートな内容ながらも筋少らしさを感じます。ただ、久々の良作で、次回作に期待していた前作「LOVE」から考えると、若干インパクトは弱くなってしまった感も。筋少らしさを随所に感じさせつつも、全体的におとなしくまとまってしまった感もあるアルバムでした。

評価:★★★★

筋肉少女帯 過去の作品
新人
大公式2
シーズン2
蔦からまるQの惑星
公式セルフカバー4半世紀
THE SHOW MUST GO ON
おまけのいちにち(闘いの日々)
再結成10周年パーフェストベスト+2
Future!
ザ・シサ
LOVE

Paradise in life/To Be Continued

1994年にシングル「君だけを見ていた」が大ヒットを記録した音楽ユニットTo Be Continued。残念ながら大きなヒットはこの1曲のみで、2000年に無期限の活動休止となりました。ボーカルの岡田浩暉はその後俳優として活躍。今や数多くのドラマに出演する「売れっ子」になってしまったのでむしろ「あの岡田浩暉がかつて所属していたユニット」という説明の方がよいかもしれません。その後、一時的に再結成したのですが、この度、本格的に再結成。なんと約22年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムでは大ヒットした「君だけを見ていた」をはじめとして彼らの代表曲を再録。新曲も収録されているものの、セルフカバー的な内容になっています。ただ、彼らの作品を聴いてあらためて思うのは、良くも悪くもJ-POP的なバンドだな、という点。シティポップを志向したような作風にはなっているものの、ソウルミュージックからの影響は薄く、ルーツレスな印象を受ける音楽性。一方、メロのインパクトは一級品で、一度聴いたら忘れられないポップなメロも聴かせてくれます。ここらへん、インパクトあるメロ主体というJ-POP的な方向性を強く感じます。90年代的なサウンドといい、アラフォー世代には懐かしさを感じさせる1枚でした。

評価:★★★★

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2022年1月 4日 (火)

メロディーラインは耳に残るが・・・

Title:FOREVER DAZE
Musician:RADWIMPS

今年3月にコンセプトアルバム「2+0+2+1+3+1+1=10 years 10 songs」、昨年にはミニアルバム「夏のせい ep」のリリースはあったものの、オリジナルアルバムとしては前作「ANTI ANTI GENERATION」から約3年ぶりとなるRADWIMPSの新作。一時期の新海誠監督アニメの主題歌効果はちょっと落ち着いた感のある現在ですが、今年9月、ギターの桑原彰の不倫報道で、彼の活動休止というバンドとしてショッキングなニュースが飛び込んできました。法律違反ではなく、夫婦間というプライベートの問題にすぎない不倫で活動休止というのは、あきらかに行き過ぎな反応だと思うだけに1日も早い復帰を望みたいところですが、一方で本作では彼も録音に参加しているそうです。

しかし、不倫騒動はありつつも、バンドとしてフルメンバーで臨んだ本作でしたが(もっとも不倫騒動の頃にはアルバムはほぼ完成していたのでしょうが・・・)アルバムとしては、正直なところ、あまりバンド色の強くないアルバムとなっていました。「桃源郷」などは疾走感あって心地よいギターロックに仕上がっているのですが、全体的にはストリングスやエレクトロサウンドなどを入れて、野田洋次郎の音楽的な興味を様々に盛り込んだスケール感ある作品に仕上がっていました。

1曲目の「海馬」からして、基本路線はバンドサウンドながらもピアノやエレクトロサウンドも取り入れたサウンドは非常に分厚くなっていますし、「TWILIGHT」も分厚いエレクトロサウンドでスペーシーな作風に。「MAKAFUKA」「犬じゃらし」に至っては、オーケストラサウンドで非常にスケール感ある作風に仕上がっていますし、「グランドエスケープ」「かたわれ」にしてもエレクトロサウンドでスケール感ある作品になっています。

HIP HOP系からの影響も顕著で、「SHIWAKUCHA」ではラッパーのAwichが参加しているほか「匿名希望」ではトラップ的なリズムを取り入れるなど、野田洋次郎のHIP HOPへの興味が強く感じられる作品になっています。エレクトロサウンドからHIP HOP、オーケストラまで自在に取り込み音楽性に野田洋次郎の音楽性の幅と実験精神を感じさせられるのですが、その一方、今回の作品に関しては、スケール感を出した作品については大味になった感があり、また様々な作風についても全体的に中途半端という印象が否めない出来になっていました。

オリジナルアルバムとしての前作「ANTI ANTI GENERATION」はそのバランスが上手く取れていた作品になっており、音楽的なバリエーションや挑戦精神と、RADWIMPSの核としてのバンドサウンドがほどよくバランスしていたように感じます。ただ今回の作品に関しては、野田洋次郎の作風が若干暴走気味といった感のある作品。彼のソロ作illionも暴走気味な作風で「がんばりすぎ」という印象を受けていたのですが、残念ながら今回のアルバムに関しても似たような方向性を感じてしまいました。

ただし一方今回のアルバムで非常に優れていたのはメロディーライン。前作から間があき、途中にリリースした配信シングルなどを多く収録している影響もあるのですが、どこか歌謡曲的でインパクトもある「海馬」をはじめ、フォーキーな作風とメロが胸をうつ「うたたか歌」など、しっかりとメロディーを聴かせてくれる曲も少なくありません。ここらへん、野田洋次郎のメロディーセンスの良さを感じられるのですが、逆にだからこそ、もうちょっとシンプルな作風の方がよかったのでは?とも感じてしまいました。

前作がバンドとしての勢いを感じさせる傑作で、バンドとしての状況は悪くはないのでしょうが、そんな状況だけに暴走しちゃったといった感じもあるのでしょうか。次回作に期待かなぁ。ちなみに歌詞の面でも、相変わらず社会派を目指した「匿名希望」の歌詞がどうにも浅さが目立ってしまって・・・正直、いろいろな意味で社会派を目指すのはやめた方がいいと思う・・・。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version
夏のせいep
2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs


ほかに聴いたアルバム

S.O.S. [Share One Sorrow]/東京スカパラダイスオーケストラ

タイトル曲を含め6曲が収録されたスカパラのミニアルバム。表題曲はロックテイストの強い疾走感あるナンバーでしたが、東京音頭が登場する「SKA! BON-DANCE〜We Welcome The Spirits」や民謡風のメロが登場する「A Night In Tokyo」など、和の要素が強い作品に。ちなみに「めでたしソング」はムロツヨシが参加したことでも話題になっています。

また、Disc2は今年7月に行われた東京ガーデンシアターでのライブの模様を収録したライブ盤。かなりポップテイストの強い作品から、くすんだ怪しげな雰囲気を醸し出すナンバーまで幅が広い作風も特徴的。ミスチル桜井和寿や長谷川白紙も登場。特に「innocent world」のスカ風のカバーはミスチルファンも要チェックかも。スカパラのライブは楽しそうなんで一度行きたいなぁ、とあらためて思う作品でした。

評価:★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~
Paradise Has NO BORDER
GLORIOUS
2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール" 2018.12.24
TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~
SKA=ALMIGHTY

SPEED 25th Anniversary TRIBUTE ALBUM "SPEED SPIRITS"

90年代後半に活躍し一世を風靡したアイドルグループSPEED。そのデビュー25周年を記念してトリビュートアルバムがリリースされました。正直、SPEED自体に興味はないのですが、氣志團やビッケブランカ、Crystal Kayや大森靖子が参加している、ということで聴いてみました。で、感想としては、まあ全体的なカバーとしては「普通」といった感じ。ただ、あらためて聴くと、やはり懐かしさを感じる曲が多く、なによりもメロディーラインのインパクト、強度の強さが半端ありません。ある意味、完全に「アイドルの販促グッズ」的に成り下がった最近のアイドルポップと比べて、当時は純粋に曲で勝負していたんだろうなぁ、ということを感じさせます。カバーとして秀逸だったのは中島美嘉の「my graduation」。正直、中島美嘉についてはいままで歌が上手いと思ったことがなかったのですが、以前不安定だった声量の安定感が出てきて、安心して聴けるようになり、グッと歌の内容が良くなったように感じます。参加ミュージシャンに興味があるのならば、聴いて損のない1枚だと思います。

評価:★★★★

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2022年1月 3日 (月)

「混沌」とした世の中で

Title:Kong Tong Recordings
Musician:安藤裕子

「コントン・レコーディングス」というタイトルのついた、約2年3ヶ月ぶりとなる安藤裕子のニューアルバム。このちょっと妙なアルバムタイトルですが、もちろん「混沌」から来ているそうです。ただ、それだけにアバンギャルド風の作品が並ぶアルバム・・・と想像しつつ本作を聴き始めたのですが、1曲目「All the little things」は軽快で非常にポップな楽曲に仕上がっており、逆に驚かされました。続く「ReadyReady」も同じくちょっとメランコリックさは感じるものの、基本的に軽快でポップなナンバー。ただ、このコロナ禍で世の中が混沌とした中で、あえてポップな曲が生まれている点に混沌さを感じており、そこからこのアルバムタイトルがついたそうで、そういう意味ではユニークな発想のアルバムに感じます。

ただし、アルバムとして明るくポップという印象を受けたのは冒頭の2曲程度。その後の曲は、大人のポップスらしい落ち着いた雰囲気を醸し出しつつも、ちょっとダウナーでドリーミーな雰囲気のある作風が印象に残りました。ちょうどモノトーンで安藤裕子の2つの写真を重ねたようなちょっと不思議なジャケットにマッチしたような、そんな音楽といった感じでしょうか。

特にアルバムのもうひとつの核となっているのがラストの「衝撃」。テレビアニメ「『進撃の巨人』The Final Season」のエンディングテーマというタイアップがついたこの曲ですが、本作がアルバムのスタートとなったとか。ちょっとドリーミーな雰囲気にアバンギャルドな要素も加味されたような楽曲になっており、不思議な作風になっているこの曲であるが、ポップな1曲目から、ラストのこの曲に向かって、アルバムが徐々に変化して展開している構成、とも言えるかもしれません。

中盤からは落ち着いて聴かせる「恋を守って」から、「森の子ら」はタイトル通り、森の中をイメージさせるようなファンタジックな内容に。さらに悲しげなメロディーラインを聴かせる「少女小咄」から、「Toiki」ではムード感たっぷりの作風をしんみり聴かせる大人な雰囲気の楽曲に、と中盤にかけては大人な雰囲気を感じさせつつ、ちょっとドリーミーな要素も取り入れたポップスが並びます。

ピアノに静かな打ち込みのリズムで静かにしんみり聴かせる「僕を打つ雨」から、「Goodbye Halo」はちょっとアバンギャルドさを感じさせるサウンドが加わり、ラストの「衝撃」へとすんなりと展開していきます。このポップな作風の冒頭から、ラストへと、安藤裕子の様々な魅力を見せつつ、上手く展開していく構成は見事。バラエティーある作風ながらもアルバム全体に統一感を持たせる内容に仕上げています。

比較的ドリーミーな作品も目立つ点は、前作「Barometz」からの流れを感じさせつつも、様々な彼女の側面をしっかりと聴かせてくれた傑作アルバム。あらためて彼女の魅力を強く感じた作品でした。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に
頂き物
ITALAN
Barometz


ほかに聴いたアルバム

The GARDEN/the peggies

3ピースガールズバンドによる約2年半ぶりのニューアルバム。全10曲中、3曲にアニメのタイアップがつくなど、明らかに「売り」を狙った感がするアルバムになっています。ただ、その影響か、比較的ヘヴィーなバンドサウンドを聴かせてくれていた前作に比べると、ポップ寄りにシフト。3ピースのバンドサウンドだけではなく、様々な音も加わり、いかにもJ-POP的なサウンド構成になっています。直近のEP「アネモネEP」もその傾向があったので、基本的にその路線を踏襲した感じでしょうか。ポップ路線になって楽曲のインパクトは増したのですが、バンドとしての魅力が後ろに下がってしまった感があるのが、ちょっと残念でした。

評価:★★★★

the peggies 過去の作品
super boy! super girl!!
なつめきサマーEP
Hell like Heaven
アネモネEP

SKYE/SKYE

鈴木茂、小原礼、林立夫に、松任谷正隆を加えた4人組バンドのメジャーデビュー作。既に音楽業界の中で「レジェンド」の位置にいるようなメンバーによるスーパーグループ。もともと、松任谷正隆以外の3人が高校時代に組んでいたバンドだったそうで、佐野史郎のレコーディングに参加したことから、再結成となったそうです。高校時代はヤードバーズやクリームのカバーを手掛けていたバンドだったそうで、基本的にはその路線を踏襲したような60年代の空気感の強いブルースロックがメイン。高校時代を懐かしんだノスタルジックな要素も強い感じでしょうか。「レジェンド」4人のバンドなだけに、クオリティー的には申し分ない一方、目新しさはなかった感も。まあ、昔を懐かしんで、自由に音を鳴らしたバンドといった感じでしょうか。今後、コンスタントに活動を続ければ、なかなかおもしろくなりそう。

評価:★★★★

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2022年1月 2日 (日)

ベスト盤的なセットリストで

Title:Live at Levitation
Musician:Primal Scream

日本でも高い人気を誇るイギリスのロックバンドPrimal Scream。そのライブにも定評のある彼らですが、このほどライブアルバムがリリースされました。今回のアルバムは、リリース元のThe Reverberation Appreciation Societyが主催する、アメリカはテキサス州、オースティンで行われたフェスティバル「Levitation」での模様を収めたライブアルバム。「Live At Levitation」としてシリーズ化されているものの第3弾だそうで、2015年に行われたPrimal Screamのライブの模様を収録したアルバムとなります。

Primal Screamのライブとして個人的に非常に強く印象に残っているのは2000年のフジロックでのパフォーマンスです。4回目、苗場にうつってからは2度目となるフジロックですが、この年はヘッドライナーのうち2組は日本人、さらに最終日のヘッドライナーであるPrimal Screamも、いままでの出演者と比べてしまうと人気の面で若干見劣りがしてしまう感もあり、客の入りはさほど芳しくない年でした。もっとも、日本人ヘッドライナーといってもミッシェルとブランキーで、今考えると、とんでもなく豪華なのですが、当時は洋楽偏重が今より強かったため、結構不満の声も少なくなかったように覚えています。

私がはじめてフジロックに足を運んだのがこの年だったのですが、Primal Screamのステージの時も、比較的、余裕を持ってパフォーマンスを見ることが出来、事前に場所取りなどしなくてもかなり前方でライブを見ることが出来たことを覚えています。そして、そのようにして臨んだパフォーマンスの素晴らしかったこと!!この年は、彼らの傑作アルバム「XTRMNTR」がリリースされた年だったのですが、まさに脂ののりまくった迫力あるパフォーマンスが圧巻。我を忘れて踊りまくっていたことを、20年以上(!)たった今でも鮮明に記憶しています。

本作のライブはそこから15年後のパフォーマンス。まず驚いたのが、すっかりベテランの域に入った彼らのパフォーマンスですが、20年以上前のステージからライブ音源を聴く限りだとほとんど劣化していない、という点でした。非常に分厚いバンドサウンドで迫力あるパフォーマンスを繰り広げられており、その熱狂ぶりはライブ音源を通じても伝わってきます。ライブバンドとしてのその実力は、音源を通じても十分に伝わってきます。

また、この日のライブは彼らの過去の代表曲を披露するベスト盤的なセットリストになっているのも魅力的。もう6年前のステージですが、この間、彼らがリリースしたアルバムは2016年の「Chaosmosis」の1枚のみですので、現時点においてもほぼベストなセレクトと言えるでしょう。

Primal Screamといえば、アルバムによってそのスタイルを大きく変えてくるバンドですが、その結果、本作においてはサイケ色の強かった「Screamadelica」の「Loaded」や、エレクトロ期の「Accelerator」「Kill All Hippies」、さらにその後のギターロックチューンである「Country Girl」のような曲まで同列に並んでいます。ただ、それで素晴らしいのは、結果として全体がバラバラになるのではなく、バンドサウンドを軸として統一感あるパフォーマンスをしっかり見せていること。Primal Screamの楽曲としてそれぞれの曲が根底は類似したものであるんだな、ということを感じます。また、それにも関わらず原曲の魅力はしっかり残している点、ライブバンドとしての彼らの実力を強く感じました。

彼らのライブアルバムを聴いて、あらためてPrimal Screamのライブに行きたくなってしまったアルバム。コロナ禍の中、さらにオミクロン株のため、再び悪化している現状において、彼らのパフォーマンスがいつ日本で見れるのかわかりませんが・・・コロナが落ち着いたら、是非!あと、アルバムも5年、リリースしていないため、次はオリジナルアルバムが聴きたいなぁ。

評価:★★★★★

primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
Chaosmosis
Give Out But Don't Give Up:The Original Memphis Recordings
MAXIMUM ROCK ‘N’ ROLL: THE SINGLES
Demodelica


ほかに聴いたアルバム

The Bridge/STING

コンピ盤やセルフカバー作が続いたため、オリジナルアルバムとしては「57th&9th」以来、実に5年ぶりとなるニューアルバム。ミディアムテンポのナンバーで、メランコリックな作風の曲が並んでおり、ベテランらしい渋みのある楽曲を聴かせてくれる作品。派手さはありませんし、ある意味、目新しさもないのですが、ただ、現在70歳という年齢も感じさせない力強さも感じます。大人のミュージシャンとしての魅力を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★

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2022年1月 1日 (土)

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。今年も当「ゆういちの音楽研究所」をよろしくお願いします。

2021年は、紅白出場者発表やレコ大の候補曲決定の際などに「ヒット曲不在の1年」と言われました。確かに2021年のビルボードでは、ほぼ同じような曲が1年にわたってベスト10にランクインされ続けており、正直、かなりうんざりした1年にもなりました。特にBTSの活動が目立ったのですが、彼らにしても本人たちの人気はともかくとして正直「曲」自体がチャートでの動向と反して、それほど世間に知られていたのか、と言われるとかなり疑問。特にビルボードチャートではストリーミングがチャートを占める割合が大きくなっており、その結果、ストリーミングでの再生回数増加を狙うようなアイドル系が目立ってしまったような感もあります。

ただ、じゃあ本当に2021年にヒット曲がなかったか、と言われると、Adoの「うっせぇわ」や優里の「ドライフラワー」は間違いなく大ヒットを記録しており、ここらへんがなぜ年末の賞レースや紅白に完全に無視されたのかはかなり不思議な感はあります。優里の場合は、3股報道の影響でしょう。Adoは曲の過激さが、特に紅白には嫌われたのでしょうか?ここらへんはかなり芸能界の力関係も感じられて、かなり微妙な印象を受けてしまいます。

さて、今年の年末は、家でのんびりと紅白を・・・といっても興味のあるミュージシャンのところだけザッピングで見ていました。人選やら演出やらでいろいろと文句のつけられることの多い紅白ですが、価値観が多様化し、国民的なヒットがなかなか生まれずらい現在において、がんばっているという印象は毎年持っていて、個人的には好意的には見ています。

ただ、人選を見ていて今年ふと思ったのですが、演歌勢が少なくなっていて、年寄りの見るミュージシャンがいなくなっている・・・という話はよく聞くのですが、よくよく考えると、演歌勢以上に、私たちくらいの世代、40代後半から50代あたりの世代にとってピンポイントなミュージシャンがいないなぁ、ということを感じてしまいます。今年で言えば布袋寅泰あたりくらいで、その次の世代となると、ゆずやMISIAあたりまで飛んでしまいます。40代後半から50代あたりというと、団塊ジュニアからもうちょっと下の世代で、人口的にもボリュームゾーンなので、ここらへんの世代にドンピシャなミュージシャンを出してくれるといいのにな・・・なんてことも感じてしまいました。

でも、ここらへんでドンピシャというと、ドリカムはともかく、B'zやらミスチルやら、あまり紅白に出演したがらないようなミュージシャンが多いんですよね・・・。

そんなことを徒然に思いつつ、今年こそ、コロナ禍もひと段落して、よい1年になりますように。そして、素晴らしい曲に多く出会えますように。心から祈っています。

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