2022年もブルースカレンダー
Title:2022-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
毎年恒例、アメリカのブルース・イメージズ社のブルースカレンダー。輸入盤のみのため、Amazonでも必ずしも取扱いがあるわけではなく、ちゃんと入手できるかどうか、機会を逃すとあっという間に入手困難になるのですが、今年も無事獲得しました。いかにもコロナ禍を反映させたような前年度のカレンダーから一転、今年はシンプルに、ギターをかかえたブルースシンガーの写真というスタイルになっています。
今回、この表紙を飾っているのは、レッド・ベリーという戦前に活躍したブルース・シンガー。1曲目に「Packin'Trunk」というカントリー・ブルースの曲からスタートするのですが、後半、15曲目から23曲目に、彼の1944年と1949年のラジオ放送用のライブ音源が9曲収録されています。終戦直前と、戦後期の、それもラジオ放送を前提とした音源ということもあって、戦前ブルースのコンピとしては異例とも思えるほどのクリアな音質で彼の演奏を楽しむことが出来ます。
特にラジオ放送でのライブ音源ということで、観客の拍手も入っているほか、司会者も登場し、曲紹介を行っているほか、貴重とも言える彼の肉声のトークも収録されています。ちなみに1949年というと、彼がこの世を去った年。まさに最晩年の録音となっています。
さらにレッド・ベリーというとブルース・シンガーとして語られるほかに、アメリカのフォーク・ミュージックの祖として語られることも多いシンガーだそうで、1曲目の「Packin'Trunk」こそブルースの色合いの濃い曲となっていますが、15曲目以降に関してはフォークソングの色合いが強い楽曲が並びます。特に日本の70年代フォークの源流のような曲も少なくなく、耳なじみやすい曲も目立ちます。一方で、レッド・ベリーのラスト2曲「Stewball」「Grey Goose」はアカペラで、むしろゴスペルのテイストの強い曲。彼の音楽性の幅広さも感じます。
そして今回のもうひとつの目玉が、Washboard Walterの2曲で、2枚しか現存が確認されていない1930年録音の音源だそうです。楽曲としてはシンプルで軽快なブルースナンバー。今回もブルースマニアの壺をついたような、期待にたがわないコンピレーションとなっています。
他にもBlind Lemon JeffersonやBlind Blake、Memphis MinnieにBessie Smithという豪華メンバーの曲が並ぶコンピレーションアルバム。個人的にそんな中でも特に印象に残るのがBlind Willie Johnsonの「John The Revelator」で、Blind Willie Johnsonのこれでもかというほどのだみ声が大きなインパクトとなっている一方、そこに合いの手として挟まれる女性ボーカルとの掛け合いのバランスが非常にユニークな1曲に。また、女性ボーカルといえばブルースの女王、Bessie Smithの「Homeless Blues」も印象的。感情たっぷりのボーカルが胸に響く曲となっています。
そんな訳で今回も非常に魅力的なセレクションでブルースリスナーの期待にしっかりと応えたコンピレーションともなった本作。来年も1年間、このカレンダーが私の部屋の壁を飾りそうです。
評価:★★★★★
2013-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2014-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2015-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2016-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2017-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2018-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2019-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2020-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2021-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
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