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2021年12月 3日 (金)

「休息」と「海岸」をテーマとした企画盤

Title:Shade
Musician:Grouper

アメリカはポートランドを拠点に活動する、ドローン/フォークの女性シンガーソングライター、Liz HarrisことGrouperのニューアルバム。彼女は、既にキャリア15年を誇るシンガーソングライターだそうです。彼女のアルバムを聴くのは今回がはじめて・・・・・・と思っていたら、以前Nivhek名義でのアルバムを紹介したことがあったよう。本作は同作に続く、Grouper名義では約3年ぶりとなる作品となります。ただ、今回は普通のフルアルバムではなく、彼女の15年にわたる活動からのコレクションだそうで、「休息」と「海岸」をテーマに曲を集めたそうです。いわゆる企画盤的なセレクションアルバムといった感じでしょうか。

前情報なくこのアルバムを聴いてみたのですが、まず聴きはじめた1曲目「Followed the ocean」からして、かなり度肝を抜かれました。スタートし、最初に聴こえてきたのは、これでもかというほどのギターノイズの嵐。シューゲイザー系を彷彿とさせるフィードバックノイズの洪水に、まずはビックリするのですが、その向こうからかすかに聴こえる歌声にも耳を惹きつけられます。ダークでこれでもかというほどのノイズと、フォーキーで美しいその歌声のアンバランスさがユニークで、耳を惹かれました。

さらに2曲目以降、楽曲の雰囲気はガラリと変わります。続く「Unclean mind」「Ode to the blue」「Pale Interior」はアコギのアルペジオをバックに、ウィスパー気味のファルセットボイスでしんみり聴かせるフォークナンバー。日本でいえば青葉市子に近い印象を受けましたが、その歌声とメランコリックで美しいメロディーラインに聴き惚れます。

もちろん、1曲目からして、このような作風の曲が続くとは思いませんでしたが、案の定、続く「Disorderd Minds」はボーカルにエフェクトをかけて、ダークでダウナーに聴かせるナンバー。バックに流れる歪んだサウンドが不気味な雰囲気を醸し出し、アルバムの雰囲気は一転しますが、ここでも美しい歌声は健在。

この曲を超えると再びファルセットボイスで美しく聴かせるフォーキーな曲が並ぶのですが、「Promise」では再びフィードバックノイズが流れる構成になっており、「Basemant Mix」では幻想的なサウンドを聴かせる楽曲と、一筋縄ではいかない展開が続きます。しかしラストの「Kelso(Blue Sky)」は再びアコギのみで聴かせる爽やかなナンバー。最初は狂暴なノイズでスタートした作品でしたが、ラストはとても心地よい気分でアルバムを聴き終えることが出来ました。

「休息」というのはなんとなくわかる一方、「海岸」というテーマについてはいまひとつ不明(フィードバックノイズが波の音に重なるのでしょうか?)なのですが、そういう点はともかく、不気味なノイズと爽やかなフォークのバランスが絶妙で、最初から最後まで耳を離せない傑作になっていました。特にフォーキーなメロディーラインと歌声が実に美しく魅力的。シューゲイザー系とは少々異なる文脈のミュージシャンなのですが、狂暴なノイズとポップなメロというバランスは、ある意味、シューゲイザー系にも通じる部分も感じます。聴いていて、ノイズ含めて心地よい傑作でした。

評価:★★★★★

Grouper 過去の作品
After its own death/Walking in a spiral towards the house(Nivhek)

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