よりポップなメロを主体とした作風に
Title:Things Take Time, Take Time
Musician:Courtney Barnett
オーストラリア出身の女性シンガーソングライターによる3枚目のニューアルバム。基本的にローファイなギターロックに、メロディアスにポップという、90年代のグランジ、オルタナ系直系のサウンドを聴かせるようなミュージシャン。徐々に注目を集めてきており、日本でもその名前を聞く機会も増えてきた感もあります。
いままでリリースしてきた2枚のアルバムも大きな話題となってきましたが、今回の3作目は、オルタナ系直系のギターロックといういままでの路線を踏襲しつつ、若干メロディーラインのメランコリックさが増したような感があります。冒頭を飾る「Rae Street」など、まさに伸びやかなボーカルスタイルにピアノも入り、郷愁感を覚えるような楽曲になっています。同じく先行シングルにもなった「Before You Gotta Go」も同じく、テンポよくメロディアスなギターロックながらも、哀愁感も覚えるメロが印象に残る1曲に仕上がっていました。
また、もう1つ、いままでのアルバムと若干異なる点としては、ギターロックという路線はそのままながらも、バンドサウンドよりもメロディーや歌を前に押し出した曲が増えたような印象を受けました。後半の「Write A List Of Things To Look Forward To」もポップなメロに彼女のメロディーセンスの良さが光る作品ながらも、グランジというよりはギターポップ路線を目指すような曲調になっていますたし、ラストを飾る「On The Night」もピアノを取り入れて聴かせるミディアムチューンになっています。
バンドサウンドを前に出して、前作までのような路線をより踏襲していたのが「Take It Day By Day」あたりでしょうか。ギターリフを主導したバンドサウンドにインパクトを持たせつつ、ポップなメロも前面に押し出した彼女らしい作品に仕上がっていたような楽曲になっていました。
もっとも、路線が変わったとはいえ、その方向性はあまり大きなものではなく、いままでのリスナーにとっても抵抗なく受け入れられるものですし、前作までの彼女の魅力はしっかりと残されています。前々作に比べると前作は、よりポップ路線にシフトし、メロディーラインの輪郭がはっきりした作品になりましたが、今回のアルバムはその路線をさらに推し進めた感のあるアルバムと言えるかもしれません。
今回のアルバムに関しても文句なしの傑作アルバムだったと思います。ただ、前作に比べると、と言われると、バンドサウンドのダイナミズムさがちょっと薄れた感もあり、ロック好きにとっては前作の方が良かったかも、という方が多いかもしれません。一方でポップなメロは今回の方が魅力的であり、そういう意味では甲乙つけがたい内容だったように感じます。個人的にもどちらのアルバムもよいアルバムだったと思いますが、若干前作の方が好きだったかな?でも本作も非常に良いアルバムだったと思いますが。
評価:★★★★★
Courtney Barnett 過去の作品
Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit
Lotta Sea Lice(Courtney Barnett&Kurt Vile)
Tell Me How You Really Feel
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