バンドとして進化
Title:CRAWLER
Musician:IDLES
イギリスのポストパンクバンド、IDLESのニューアルバム。本国では高い人気を誇っており、前作ではなんと公式チャートで1位を記録。最近、ロックというジャンルが勢いを取り戻しありつつように感じるのですが、彼らはそんな勢いを取り戻しつつあるロックシーンの中での象徴的と言えるバンド。日本でも徐々に注目度を高めてきており、メディアにもその名前が取り上げるケースが少なくなくなってきました。
そんな彼らのニューアルバムは、前作からわずか1年2ヶ月というインターバルでのリリース。チャート1位獲得で勢いづく彼らですが、まさにそんな勢いを象徴するかのようなリリースペースと言えるでしょう。そしてそんな期待に反することなく、傑作だった前々作、前作に負けずとも劣らない傑作アルバムのリリースとなりました。
とにかく魅力的なのは、そのダイナミックなバンドサウンド。先行シングルともなっている「Car Crash」はゆっくりと響き渡るドラムスのリズムに警告音のように空間を切り裂くヘヴィーなギターサウンドが耳を惹きますし。ヘヴィーなバンドサウンドにボーカルのシャウトでダイナミックに聴かせる「Stockholm Syndrome」も魅力的。ラストを締めくくる、タイトル通りの「The End」も分厚いバンドサウンドをこれでもかというほど叩きつけて、スケール感あるサウンドを聴かせてくれます。
一方、前々作、前作は、ダイナミックなバンドサウンドが魅力的である一方、若干一本調子だった部分もありました。もちろん、勢いのあるサウンドで一気に最後まで聴かせる構成になっており、その部分はアルバム全体として大きなマイナス点とはなっていなかったのですが、今回のアルバムは後半、静かなサウンドが流れるインターリュードに続き「Progress」はドリーミーな雰囲気のサウンドで静かに、ある種の荘厳さも加えて聴かせる楽曲に。いままでのアルバムになかった展開が魅力的となっています。もっとも、この手の新たな試みをすると、中途半端にバリエーションを増やし、アルバムの統一感やバンドの魅力をなくしてしまうといった感じになってしまうケースが多々あるのですが、本作では、基本路線はいままでと同様。ただ、その中でのちょっとしたアクセントに留まっており、いままでのバンドの魅力を全く損ねることなく、サウンドの奥行を増した結果となっています。
また、以前のアルバムからの大きな魅力だったポップな側面ももちろん本作でも健在。特に先行シングルともなった「The Beachland Ballroom」では切なさを感じさせるようなメロディーラインが大きな魅力となっています。歌モノ的な要素の強い本作もまた、アルバムの中でのバリエーションとして強いインパクトとなっています。
メロディーという側面でのポピュラリティーだけではなく、例えば「The Wheel」では軽快でダンサナブルなリズムがインパクトとなっており、思わず踊りだしたくなるようなユーモラスを感じさせますし、「Meds」のようなサウンドと、同じピッチのシャウトで展開しているボーカルで疾走感あふれる楽曲もまた、アルバムのポピュラリティーに大きく寄与するような作品となっています。
いままでの彼らの魅力はそのままに、楽曲のバリエーションも増えて、さらなる進化、深化を感じさせる傑作アルバム。今回もまた、年間ベスト候補と言えるだけのアルバムになっていたと思います。イギリスのチャートで1位を獲得した前作と比べると、本作は6位と若干ダウンしてしまいましたが、これだけの作品をリリースしてくるのであれば、全く気にしなくても問題ないでしょう。これからさらにその名声は高まりそうです。
評価:★★★★★
IDLES 過去の作品
Joy as an Act of Resistance
Ultra Mono
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