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2021年12月21日 (火)

あか抜けた感のある新作

Title:Valentine
Musician:Snail Mail

大きな評価を受けた前作「Lush」から約3年。ギタリスト兼シンガーソングライターのリンジー・ジョーダンによるソロプロジェクト、Snail Mailの2枚目となる新作がリリースされました。2016年にリリースされたEP「Habit」も高い評価を受け、さらに前作「Lush」も随所で絶賛を受けましたが、本作「Valentine」も、既に徐々に公表されている2021年のベストアルバムにおいて、随所で上位にランクインされるなど絶賛を持って受け入れられています。

彼女のアルバムを聴くのは、前作「Lush」に続いて2作目。前作「Lush」はローファイ気味なギターロックということで、個人的にも非常に気に入った1枚となりました。一方で、地味であか抜けないという印象を受ける作品でもあり、それがまた魅力でもあったのですが、いかにもインディーロックらしい作品ともいえる内容になっていました。

今回のアルバムに関しては、そんなあか抜けないインディーロックというイメージを脱却した作品に仕上がっていました。象徴的なのが1曲目のタイトルチューン「Valentine」。ダイナミックなバンドサウンドにシンセも入ったスケール感を覚える作品になっており、非常にあか抜けた作風に仕上がっていました。前半のバラードナンバー「Light Blue」もアコギのみで聴かせるのではなく、ストリングスを入れることによりサウンドに奥深さも加わり、こちらも単なるインディーロックから一皮むけた感のある作風に仕上がっています。

ただ一方で「c.et.al.」などはアコギ1本で聴かせるミディアムチューンで、ラフな感じのする録音もあり、従来のインディーロックらしさは健在。「Glory」なども、ローファイ気味なギターロックに仕上がっており、こちらもインディーロックらしい作品となっています。あか抜けた、といっても完全に「売れ線のロックミュージシャン」になったわけではなく、しっかりとインディースピリットを兼ね備えた作品に。その上で、内向きなインディーの「悪い」側面をしっかりと払拭した、ともいえるアルバムに仕上がっていました。

もちろん、あくまでも歌とメロディーが主体である、という基本路線は前作から変わらず。先に紹介した曲はもちろん、その他にも「Headlock」のような彼女ののびやかな歌声をしっかり聴かせるメロディアスな楽曲や、先行シングル曲でもある「Madonna」のような軽快なポップチューンもあったりと、アルバムを通じてポップなメロと歌を主軸とした曲がならんでおり、全体としては比較的シンプルなギターロックという印象を受ける作品に仕上がっていました。

シンプルな歌モノメインという前作の良さは変らず、インディーロックらしい要素を残しつつ、一方、広くリスナーの支持を得られそうなあか抜けた感のする作品に仕上がっていた本作。今回もかなり高い評価を得ているようですが、その理由にも納得の傑作アルバムでした。チャート的には、まだベスト10には遠い状況ですが、これだけの作品を作ってこれば、次回作以降、一気にブレイクの可能性も高そう。日本でも今後、知名度が上がってきそうなミュージシャン。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Snail Mail 過去の作品
Lush

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