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2021年12月13日 (月)

メランコリックなメロが良くも悪くも

Title:INNOCENCE
Musician:ACIDMAN

ACIDMANの約4年ぶりとなるニューアルバム。少々久しぶりのアルバムとなった本作ですが、まずACIDMANらしさが前面に出ている作品に仕上がっていたと思います。

まずなんといっても印象的なのはオープニングでしょう。心臓の鼓動のようなリズムからスタートし、ピアノの美しい音色が重なり、最後はノイズギターも入りダイナミックに盛り上がる展開。若干ベタといえばベタなのですが、聴いていて気分はかなり盛り上がること間違いありません。そこから事実上の1曲目「Visitor」はそのままダイナミックに盛り上がる・・・かと思いきや、ACIDMANらしい、アシッドジャズ的な要素も取り入れた、ちょっとクールダウンするような楽曲に。ただ、サビの部分は狂おしいほどメランコリックなメロディーラインを聴かせてくれています。まず、実にACIDMANらしい曲を聴かせる序盤戦といった感じでしょうか。

続く「歪んだ光」も、これでもかというほど叙情的に展開される非常に悲しげな歌詞とメロディーが印象的なナンバー。こちらは一転、ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドを聴かせる楽曲になっています。さらにアルバムのハイライトともいうべきなのがアルバムの中盤に位置する「灰色の街」。彼ら初となるシングルでのベスト10ヒットを記録したこの曲は、ストリングスも入りつつ叙情的に歌い上げる曲調が印象的な楽曲。ダイナミックなサウンドを聴かせるというよりもポップな歌を聴かせる点がいかにもシングル向けっぽいのですが、メランコリックな彼らのメロディーラインを魅力的に聴くことが出来る楽曲になっています。

胸をかきむしられるようなメランコリックなメロディーラインにダイナミックなバンドサウンドというACIDMANらしさが前面に押し出された作品。さらに本作ではそんな中でも「灰色の街」のような、シングル曲らしいインパクトある作品も加わっており、よりバラエティーがあり、多くのリスナーが楽しめる構成になっていたと思います。前半に関しては文句なしの傑作アルバムに仕上がっていたと思います。

ただインスト曲を挟んで後半になると、正直、少々過度にメランコリックなメロディーラインがアルバム全体から受ける印象を平坦なものにしてしまっているような感がありました。後半も、ファンキーなサウンドの「ALE」やシンプルで爽やかなギターを聴かせる「素晴らしき世界」、さらにホーンセッションを取り入れた「...ファンファーレ」と前半以上にバリエーションは豊富。ただ、ちょっとベタで過剰気味といえるメロディーラインもあって、最後まで聴くと、似たような作品が多い、という印象を受けてしまい、若干ダレてきてしまう点が否めませんでした。

彼らの大きな特徴であり魅力でもあるメランコリックなメロディーラインや少々過剰ともいえるサウンドが、前半では大きな魅力に感じられた反面、後半では弱点になっていたように感じた1枚。ただそれだけ、ACIDMANらしいメロやサウンドを前面に押し出した作品だった、ともいえるのかもしれません。まさにACIDMANらしいと言える1枚でした。

評価:★★★★

ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA
Second line&Acoustic collection
ACIDMAN THE BEST 2002-2012
新世界
有と無
Second line&Acoustic collection II
ACIDMAN 20th Anniversary Fans'Best Selection Album "Your Song"
Λ


ほかに聴いたアルバム

DIARY KEY/Base Ball Bear

前作「C3」以来、約1年9ヶ月ぶりとなるフルアルバム。前作同様、サウンド的にも歌詞的にも聴いて一発でBase Ball Bearとわかるようなサウンドが特徴的の、王道ともいえるギターロック。そのため、目新しさはほとんどありませんが、ジュブナイル的な歌詞と、ある意味、変なひねりなどがほとんどなく気持ちよく聴けるギターロックは大きな魅力になっている作品でした。

評価:★★★★

Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS

新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」
光源
ポラリス
Grape
C3

八面六臂/SKY-HI

ラッパーとしても活躍しているダンスグループAAAのメンバーでもあるSKY-HIこと日高光啓のソロアルバム。基本的にHIP HOP的な要素は多く取り入れているものの、本作はメランコリックなメロディーラインが特徴的な歌モノがメイン。悪い意味でのアイドルポップ的に陥ることなく、HIP HOPの要素を上手く取り入れつつ、「今どき」のポップソングに上手くまとめあげている印象。よく出来た今どきのポップアルバムといった印象を受けた1枚でした。

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON
Say Hello to My Minions 2(SKY-HI×SALU)
SKY-HI's THE BEST

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