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2021年12月24日 (金)

アイスランドの自然を反映させたソロ作

Title:The Nearer the Fountain, More Pure the Stream Flows
Musician:Damon Albarn

ご存じ、blurのボーカリストであり、Gorillazの活動でもおなじみのデーモン・アルバーン。Gorillazとして積極的に活動し、数々のプロジェクトも立ち上げたりしているのでちょっと意外といえば意外なのですがソロ名義としては2枚目となるフルアルバム。今回のアルバムはアイスランドの自然の風景にインスパイアされたコンセプトアルバムだそうです。アイスランド??と思うのですが、なんでも彼、1997年にアイスランドを訪れてから毎年3、4回、同地を訪れているそうで、ついには家も買ってしまったとか。すっかり、アイスランドに惹かれてしまっているようです。

デーモン・アルバーンといえば、以前もアフリカ音楽に惹かれて、現地のミュージシャンとコラボしたアルバムをリリースしていたりしますが、こういう「異国」的なものにあこがれがあるのでしょうか。良くも悪くもロンドン出身の都会っ子らしい感じがします。あ、あとなんとなく、演ってる音楽はちょっと異なるのですが、この嗜好性は、元THE BOOMの宮沢和史に似ているように感じます・・・。

もともとはコロナ禍の始まる前の2020年1月に、アイスランドの自宅にミュージシャンを招いてプロジェクトをスタート。ただ窓から見える自然の風景を音楽として表現することを目的としたとか。その後、イングランドの自宅に戻り、オーケストラを招いてレコーディング、という計画だったそうですが、折からのコロナ禍のために計画は頓挫。しばらく活動が休止していたものの、今年に入りレコーディングを再開。オーケストラの参加はコロナ禍もあって叶わなかったものの、無事、本作の完成に至りました。

さて、そんなコンセプチュアルなニューアルバムですが、アルバム全体を通じて、非常にメランコリックな雰囲気にあふれている哀しい雰囲気のアルバムになっています。タイトルチューンである1曲目「The Nearer the Fountain, More Pure the Stream Flows」からメランコリックな雰囲気あふれる曲調に。ただ、ピアノやストリングスも入った包容力あるサウンドは、アイスランドの自然をイメージしているのでしょうか。最後にはおそらくアイスランドの海の波と思われる音も入っています。

その後も、ドリーミーに聴かせる優しくもメランコリックなメロがインパクトの「Daft Wader」や、ホーンのリズムが入って、ちょっとレトロな雰囲気も気持ちの良い「The Tower Of Montevideo」など、静かなボーカルがゆっくりと歌うメランコリックなメロディーラインが特徴的。所々におそらく現地の音をサンプリングしたのではないかと思われる、水の音や鳥の声など、アイスランドの自然を彷彿とさせるような音も入っており、非常にメランコリックで哀しい雰囲気ながらも、一方では自然の優しさも感じられるサウンドになっています。

また今回のアルバム、制作過程においてコロナ禍に翻弄されたような作品となっているのですが、楽曲的にもアイスランドの自然のみならず、このコロナ禍の中でのデーモン・アルバーンの心境も反映された作品になっているそうで、特にロックダウン下での孤立を、アイスランドという島国の孤立と重ね合わせている部分も多いのだとか。非常に物悲しい雰囲気となっているのは、そんなデーモンの心境をあらわしているのでしょうが、一方、優しい雰囲気も重ね合わせている点は、デーモンの心境としても孤立に悲観するわけではなく、落ち着いた環境で音楽を作っているんだな、ということも感じさせました。

ただ一方では「Esja」みたいなアバンギャルドなアブストラクトチューンがあるあたり、アイスランドの自然の厳しさも表現しているのでしょうか。「Combustion」のようなホーンやピアノを入れて賑やかながらもアバンギャルドな雰囲気のインストもまた、アイスランドに吹き荒れる風を彷彿とさせます。そんな日本からすると、イギリス以上に遙か遠い異郷の地であるアイスランドを想像しながら聴くのも楽しいかもしれません。

ソロアルバムらしい彼の趣味性が強く反映されたアルバム。比較的、地味な作風の曲が多く、そういう意味では前作に似たような作風と言えるかもしれません。ただ、前作もそうだったのですが、決して派手さはないメロディーラインにも関わらず、しっかりとしたインパクトを持っていて、聴き終わった後、しっかり心に残っているあたり、デーモンのメロディーセンスの才能を感じさせます。デーモン・アルバーンの魅力もきちんと感じられるソロアルバムでした。

評価:★★★★★

DAMON ALBARN 過去の作品
DR.DEE
EVERYDAY ROBOTS


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLE COLLECTION-GREATEST HITS-/REO Speedwagon

日本でリリースされた洋楽ミュージシャンのシングル曲を集めたベスト盤のシリーズ。様々なミュージシャンでのリリースがあるようですが、本作は80年代に一世を風靡したアメリカのロックバンド、REO Speedwagonのベスト盤。ポップなメロディーラインが強いインパクトを持つのですが、キャッチーなメロディーラインといい、シンセも用いたサウンドといい、「THE 80年代」といった感じの曲調。広いリスナー層が楽しめそうなポップな作品が並んでいました。

評価:★★★★

RED(Taylor's Version)/Taylor Swift

テイラー・スウィフトの過去作の再録企画第2弾。4月にリリースされた「Fareless(Taylor's Version)」に続き、本作は2012年にリリースされた「RED」の再録。オリジナル16曲にデラックスエディションにボーナストラックとして収録されていた4曲、当時にiTunes限定でリリースされた「Ronan」に未発表曲9曲を加えた、全30曲入りのアルバムとなります。当時は、カントリーを基調としつつ、基本的には正統派のポップスという印象を受けたのですが、そのイメージは今回も変わらず。基本的に、ポップなメロが心地よい作品が並びます。全30曲というフルボリュームの内容ながら、比較的あっさり聴けてしまうのは、そのポピュラリティーの高さゆえでしょうか。最近の作品のような尖った感じがないものの、魅力的なポップスが楽しめました。

評価:★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore
Fearless (Taylor's Version)

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