40年ぶり、奇跡の新作!
Title:Voyage
Musician:ABBA
2021年、大きな音楽ニュースのひとつにABBAが40年ぶりにニューアルバムをリリースした、というものがありました。ご承知置きのこととは思いますが、ABBAといえば、スウェーデン出身の男女4人組のポップグループ。1970年代後半から80年代にかけて、「ダンシング・クイーン」「恋のウォーター・ルー」などが大ヒットを飛ばし、一躍世界的な人気グループとなりました。その後、メンバーそれぞれの結婚に、離婚というある意味お決まり的なパターンを経て1982年には解散してしまいました。
その後、根強い人気を保ち、1999年には彼女たちの曲を起用したミュージカル「マンマ・ミーア!」が大ヒットを記録。ABBAの名前は再び世界にとどろきました。ポップグループということもあって、リアルタイムでの評価はともかく、そのたぐいまれなるポップセンスの評価は解散後により高まったように感じます。そんな中、2018年に新曲を録音したことを公式サイトで公表。ABBA復活の機運が高まる中、このたび、40年ぶりというニューアルバムで奇跡ともいえる復活を果たしました。
そんな待望となるニューアルバムは本国スウェーデンや、いままでも数多くのアルバムを1位に送り込んできたイギリスチャートでの1位獲得はもちろん、いままでベスト10ヒットに至らなかったビルボードチャートでもなんと2位という高順位を獲得。解散後、いかに彼女たちが人気を維持し、さらにはさらに高い評価を受けてきたのかがわかる結果となりました。
そのニューアルバム、最初はストリングスの静かな響きでスタート。さらに伸びやかな歌声とピアノが流れてきます。非常に幸福感を覚えるこの1曲目「I Still Have Faith In You」は、まさに待ちに待ったファンの喜びをそのまま反映された楽曲になっています。さらにABBAのポップセンスが光るのが3曲目「Little Things」。非常にシンプルなミディアムチューンなのですが、切なさを感じるメロディー展開が秀逸。シンプルながらもしっかりと心に残る1曲に仕上がっていました。
その後も軽快で明るい、ちょっと70年代的な懐かしさも感じる「Just A Notion」やピアノやストリングスでしっかり聴かせるバラード「I Can Be That Woman」、ダイナミックなサウンドと哀愁感たっぷりのメロが強いインパクトを持った「Keep An Eye On Dan」など彼女たちらしいポップチューンが続きます。さらにリズミカルで明るい「No Doubt About It」などは「ダンシング・クイーン」のイメージで彼女たちを知っている人にとっては、まさに王道ともいえるナンバーでしょうか。ラスト「Ode To Freedom」は再びストリングスで伸びやかに聴かせる楽曲。1曲目と対になっているようなこの曲で、ちょっと寂しげな雰囲気を感じつつ、全10曲37分のアルバムは幕を閉じます。
そんな訳で、ABBAらしい珠玉のポップチューンが並んでいるアルバム。ファンの期待に応えた作品ともいえるかもしれません。ただ一方で、率直に言ってしまうと、昔ながらのABBAそのもので新鮮味はなく、かつ、やはりメンバー全員大人になったためでしょうか、全体的にはおとなしめ。以前の楽曲のようなキラキラ感は正直見受けられず、インパクトも若干弱め。良くも悪くも、過去の彼女たちの作品をなぞっただけ、といった感も否めないアルバムになっていました。
もちろん、ここに収録されている曲もポップなセンスがキラリと光る曲も少なくなく、かつてのファン、あるいは後追いのファンにとってはそれなりに満足できる作品だったと思います。また、今後永続的に活動を続ける・・・わけではなく、どうもABBAの活動はこの1枚限りの模様。そのため、新たな挑戦というよりも同窓会的な意味合いも強く、そのため、良くも悪くも無難にまとめた、ともいえるのかもしれません。そういう意味で、かつてのABBAの曲が好きだったら聴いて損のない1枚。これ1枚で最後というのは少々残念ですが、メンバーそれぞれの今後の活躍に期待しましょう。
評価:★★★★
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