秦基博の魅力を感じる
Title:BEST OF GREEN MIND 2021
Musician:秦基博
3月に弾き語りベストアルバム「evergreen2」をリリースした秦基博。本作はそれに続く弾き語りTOUR「GREEN MIND 2021」の中からベストアクトをセレクトしたライブベストアルバム。2010年には「BEST OF GREEN MIND '09」がリリースされていますので、それに続く・・・と言いたいのですが、「'09」は純粋な録音音源に対して本作はライブ音源という違いがあります。
これは、以前にリリースされたベスト盤でのレビューでも書いたのですが、秦基博というミュージシャンは良くも悪くも非常にシンプルなポップミュージシャンというのが大きな特徴です。サウンド的に決して目新しいことや斬新なことをするようなミュージシャンではありませんし、じゃあメロディーラインに関して、特段大きな特徴があるのか、と問われると、圧倒的な美メロといった感じでも、ユニークな凝ったメロを書くミュージシャンという訳でもありません。
この、ただただシンプルなポップスを愚直に書き続けるというのが秦基博の大きな特徴なのですが、それゆえにアルバム単位ではインパクトが薄くなってしまうという転も気になる点でした。しかし、ベスト盤で彼の代表曲をまとめて聴くと、確かに優れたポップミュージシャンだな、と感じます。
なによりも彼の魅力が最も現れているように弾き語りアルバム。シンプルなポップソングを書く彼だからこそ、変に分厚いバンドサウンドよりも、シンプルな弾き語りの方がマッチしています。ただ、このライブアルバムの前提となる弾き語りベスト「evergreen2」はメロディーラインのインパクトも薄く、最後は若干ダレてしまうアルバムになっていました。
それだけに今回のライブアルバムについてもちょっと心配はしていたのですが、聴き始めるとそんな不安は完全に払しょくされました。オープニングを挟み冒頭の「僕らをつなぐもの」「Sally」がまずは非常に素晴らしい楽曲が並びます。シンプルなアコギで聴かせる曲なのですが、胸がキュンと来るような切ないメロディーラインが大きな特徴となっており、あらためて彼の魅力を感じることが出来ます。
その後も「やわらかな午後に遅い朝食を」や「恋の奴隷」など、アコギ1本でしんみりと聴かせます。ドラムや打ち込みのリズムが入ったり、エレキギターで聴かせる曲もあるのですが、やはり全体的にはアコースティックギターでしんみりと聴かせる作品が魅力的。アコギのみだからこそ感じられる会場のスケールや、あるいはライブ会場の緊迫も、楽曲のちょうどよいアクセントになっていたように感じました。
こうやって曲を並べると、確かに比較的昔の曲の方が魅力的・・・という部分もあるのですが、「告白」や「さよならくちびる」など比較的最近の曲でも魅力的な曲はありますのでご安心を。秦基博のメロディーメイカーとしての実力が、決して衰えたわけではないということを感じさせてくれる部分でもありました。
「evergreen2」はさほどはまれなかったのに、このライブ盤がこれだけ魅力的だった、というのはちょっと不思議でもあるのですが、昔の曲も収録されていた点と、やはりライブならではの緊迫感がいい影響を与えた点も大きかったように感じます。あらためてポップミュージシャン秦基博の実力を感じさせてくれるアルバムでした。
評価:★★★★★
秦基博 過去の作品
コントラスト
ALRIGHT
BEST OF GREEN MIND '09
Documentary
Signed POP
ひとみみぼれ
evergreen
青の光景
All Time Best ハタモトヒロ
コペルニクス
evergreen2
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コメント
「BEST OF GREEN MIND '09」は2曲ほど完全なスタジオ新録音もありましたが、基本は弾き語りツアーでのライブ録音だったのでライブアルバムという体裁でいいはずです。また「evergreen」もスタジオ新録音と既存の弾き語りライブ音源を編集したものでした。
対して今年の「evergreen2」は全部スタジオ録音、今作は全部ライブ録音ときっちり分けて制作されているようです。
投稿: Matsu | 2021年11月20日 (土) 00時23分
>Matsuさん
補足ありがとうございます。秦基博は本当にいいミュージシャンですね!
投稿: ゆういち | 2021年12月15日 (水) 08時49分