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2021年11月 2日 (火)

THE J-POP

Title:FREEDOM ONLY
Musician:GLAY

オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるGLAYのニューアルバム。まず妙にサイケデリックなインパクトのあるジャケットが印象的ですが、こちらはあのKing Gnuの常田大希が主宰するクリエイティブチーム「PERIMETRON」が担当したもの。また「FREEDOM ONLY」というアルバムタイトルはカーペンターズの「青春の輝き」の一節から取ったもので、「自由になると言うことは何かと別れなくてはならない」という意味だそうで、コロナ禍の中でいろいろと行動が制限される中での示唆的なフレーズのように感じます。

正直、King GnuとGLAYは音楽性的に少々異なる感がありますし、サイケなジャケットもGLAYの音楽性からすると若干違和感を覚えます。「FREEDOM ONLY」というメッセージ性の強いタイトルも微妙な違和感があり、最近、時々、GLAYがやらかす、悪い意味で粋がった感のあるアルバムになっているのか・・・という不安も感じたのですが、しかし実際に内容を聴いてみるとジャケットやアルバムタイトルから受けるイメージとは全く異なる内容になっていました。

今回のアルバムの内容を一言で言うと、タイトル通り「THE J-POP」。前作「NO DEMOCRACY」も社会派ぶったタイトルや前半の曲のイメージと異なり、後半、王道のJ-POP路線となっていましたが、今回のアルバムもさらにその路線を押し進めた感のあるアルバム。そもそも1曲目「BETTY BLUE」のイントロのギターフレーズからベタベタな90年代ですし、そこからミディアムテンポで聴かせる歌に入るあたりもいかにもGLAYらしい感じ。続く「Hypersonic」もイントロから往年の「グロリアス」を彷彿とさせる感じですし、歌詞の中に「Yes,summer days」なんていう、かつてのGLAYのヒット曲がタイトルが織り込まれちゃったりしています。

続く「Winter Moon Winter Stars」も、「Winter,again」の続編かよ?と思うようなタイトルですし、内容も完全にGLAYの王道。「FRIED GREEN TOMATOES」も、ギターのイントロからそのまま「SOUL LOVE」がはじまるんじゃない?といった感じで、完全に90年代J-POP路線を色濃く継承した内容になっています。

その後もいかにも90年代J-POPの王道を行くような、メランコリックなメロディーラインを主軸とした楽曲が続きます。後半も「青春は残酷だ」もイントロのギターのカッティングが、ノスタルジックな琴線に触れまくるベタな90年代路線。ピアノやストリングスでスケール感を出した「祝祭」もベタベタなJ-POPのサウンド構成といった感じですし、ラストを締めくくる「桜めぐり」もアコギアルペジオでメロディアスに切なく聴かせるナンバーなのですが、「桜」というタイトルもかなりベタな感じがします(「桜」ソングがヒットしたのは、90年代ではなくもっと後ですが・・・)。

ここ最近のGLAYは、変に社会派を気取ったり、オルタナロックに寄せてきたりと、妙に粋がったり、「ロックリスナー」寄りに媚びた感のある曲調の作品が目立ったのですが、今回のアルバムはその路線を投げ捨てて、彼らの王道である90年代J-POPに、思いっきり寄ったアルバムに仕上がっていました。それもそのはずで、今回、コロナ禍で活動が制限される中、TAKUROが過去のデモ音源を聴きなおし、当時は思うようにできなかったことを今のGLAYなら出来るはずということで収録曲を厳選した作品だそうで、古い曲で97年の作品も含まれているそうです。正直、思うようにできなかったというよりも、既存の曲と似たような曲だから没になったのでは??と思わないこともないのですが、それを差し引いても、90年代のJ-POPを懐かしく思い出すような作品の連続に、おそらくアラフォー、アラフィフの世代にとっては、懐かしくて涙腺に直撃するようなアルバムになっていたと思います。良くも悪くも今でも90年代J-POPを引き継いだような楽曲がヒットシーンには目立ちますが、本当の90年代J-POPはこれだ!とGLAY自ら提示してきたような、そんな作品だったと思います。

上にも書いた通り、正直なところ、既存曲の焼き直しのような曲も目立ったりしており、目新しさは全くありませんし、彷彿とさせる既存曲を上回るような出来の曲があったかというと非常に微妙で、そういう意味では「やはり没曲は没曲だったのでは??」と感じさせる部分も少なくはありません。そういう意味で悪く言ってしまうと、過去のGLAYの栄光をむりやり引っ張り出し、継ぎ接ぎだらけにしてなんとか完成させたアルバムとも言えてしまう部分も否定できません。ただ、そういう点を差し引いても、90年代的な懐かしいポップソングの連続に、アラフォー世代としては素直に楽しめたGLAYらしいアルバムに仕上がっていたと思います。まさに「これぞJ-POP」な1枚。かつてGLAYを聴いていて、ここ最近、ちょっと離れてしまった人にもおすすめできる作品です。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
REVIEWII~BEST OF GLAY~
REVIEW 2.5 〜BEST OF GLAY〜

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