実験的な作風だがメランコリックな歌も大きな魅力
Title:Una Rosa
Musician:Xenia Rubinos
今回紹介するミュージシャンは、おそらく日本ではほとんど無名のミュージシャンだと思います。ゼニア・ルビノスと読む、アメリカのシンガーソングライターでありマルチ・インストルメンタル奏者である彼女。いままでBattlesやDeerhoofとの共演も果たしてきたそうですが、本作が3作目となるアルバムとなります。現在、徐々に注目が高まりつつあるシンガーソングライターのようです。
まず短いオープニング曲を挟んでタイトル曲「Una Rosa」「Ay Hombre」と続くのですが、まずエレクトロベースの分厚いサウンドをバックとして歌われるのは哀愁感たっぷりの「歌モノ」。「Ay Hombre」はラテンのテイストを感じさせるのですが、「Una Rosa」に至っては、歌謡曲的なウエットな雰囲気すら感じさせるメロディーラインを叙情感たっぷりに歌い上げており、日本人の琴線にも触れそうな楽曲となっています。
序盤で歌モノメインのミュージシャンかな?と思いきや、雰囲気が変わるのが続く「Working All The Time」。かなりビート感のつよいアバンギャルドなエレクトロビートからスタートし、一気に雰囲気が変わります。続く「Sacude」もトライバルな要素も感じさせるエレクトロビートが印象的。
さらにその後も「Cogelo Suave」では軽快なビートの楽しいポップチューンなのですが、途中、突然アバンギャルドがサウンドが登場したりして、かなりユニークな作品。さらに「Darkest Hour」ではメタリックなビートが登場するなど、かなり迫力あるサウンドが耳に残ります。
後半も「Worst Behavior」はメロウな歌モノなのですが、今度は前半のラテン風とは異なりR&Bのテイストの強いナンバー。さらに「What Is This Voice?」では清涼感ある歌声を聴かせる、伸びやかで幻想感もあるポップチューンに仕上がっているなど、最後の最後までバラエティー富んだ展開に仕上がっています。
マルチ・インストルメンタル奏者ということで、この多彩な音楽性は「宅録的」と言えるでしょうか。いずれも分厚いエレクトロサウンドが心地よく耳に残ります。ともすればバラバラになりそうな音楽性ですが、この分厚いエレクトロサウンドと、全体を通じてのメランコリックな歌が流れているため、統一感もしっかりあります。
実験的な要素も強いアルバムでしたが、一方でメランコリックなメロディーラインは日本人の琴線にも触れそうな部分も。そういう意味では聴きやすい要素も多分に含まれているアルバムで、意外と多くのリスナーが気に入る内容になっているのではないでしょうか。ちなみに彼女は父親はキューバ出身、母親はプエル・トリコ出身だそうで、さらにアメリカ在住ということで、このハイブリッドな出自もまた、この幅広い音楽性の大きな要因なのでしょう。今後、日本でも彼女の名前を聴く機会が増えるかも。要チェックな作品です。
評価:★★★★★
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