充実の3時間半
PETER BARAKAN'S LIVE MAGIC! 2020 Online
会場 晴れたら空に豆まいて(オンライン) 日時 2021年10月23日(土)19:00~
音楽評論家のピーター・バラカンが主宰するライブイベント、LIVE MAGIC!。毎年、ピーター・バラカンのセレクトによる、ジャンルを問わない知る人ぞ知る的な、非常に良質なミュージシャンたちを集めているイベント。このコロナ禍もあって、昨年に引き続きオンラインでの開催となりました。
冒頭にピーター・バラカンの簡単なあいさつがあった後、さっそくスタートしたのはU-zhaan×mabanua。ここでもよく取り上げているタブラ奏者のU-zhaanと、Ovallのドラマーであり、トラックメイカーであるmabanuaとのコラボ演奏。まず別途撮影した演奏になりますが、エレクトロのサウンドにタブラの音色とダイナミックなドラムが重なるスタイル。エレクトロサウンドでテンポよく疾走感のある演奏で、特にU-zhaanのタブラがいつにまして疾走感ある演奏になっているのが印象的でした。
続いてはLarkin Poeという女性2人姉妹によるロックユニット。いつもはバンド編成でのライブだそうですが、今回は自宅で撮った映像を配信ということで、2人のギターだけの演奏ということになりました。かなり力強いブルースロックで、特に1曲目の曲はブルース色も強いナンバー。アコギとスライドギターのペアなのですが、ギターの演奏も力強く、ボーカルもパワフル。特にスライドギターの力強い演奏に惹かれます。全3曲聴かせてくれたのですが、2人だけの、自宅からの演奏とは思えないパワフルな演奏に非常に惹かれる演奏を聴かせてくれました。
3番手はArlen Rothというニューヨークのギターリスト。テレキャスターの名手として知られるギタリストだそうで、まずはテレキャスター一本でブルージーなロックを1曲披露。さらにアコギに持ち替えて、テンポよい演奏を聴かせてくれます。最初の2曲はギターインスト、残り2曲は歌モノで、ラストはローリング・ストーンズも歌った「Done Home Girl」で締めくくり。LIVE MAGIC!らしい、実力派ギタリストの、かなり渋い演奏でした。
次はライブハウスでの生演奏。KOYUKIというソロギタリスト。21歳の大学生だそうですが、フィンガーピッキングの演奏で、かなりテクニカルかつ味のある演奏を聴かせてくれ、若干21歳のかわいらしいルックスからするとかなり意外にも感じられる大人な演奏が耳に残ります。カバーやオリジナルを含めてインスト曲のみで全6曲。哀愁感のある演奏も心地よく、渋い演奏ながらもどこか繊細さも感じさせるのが女性的とも言えるかもしれません。今後が楽しみな新人ギタリストです。
続いては「民謡交換プロジェクト」と題して、民謡クルセイダーズのフレディー塚本率いる別バンド、こでらんに~と、エチオピアのグループMoseb Cultural Music Groupが、それぞれエチオピアと日本の民謡をコラボで歌うという企画。お互い、日本とエチオピアの伝統楽器を用いてリモートでのコラボとなったのですが、これが不思議なことにお互いの楽器がお互いの民謡にもピッタリマッチ。もともとエチオピアの音楽というと、どこか日本の民謡に通じる要素を感じられたのですが、お互いがお互いの民謡を続けて演奏しても全く違和感のない演奏となっていました。日本からは「大漁唄い込み」という民謡が披露されたのですが、こちらもエチオピアの楽器で演奏しても全く違和感ありません。コロナ禍の中ではリモートでの演奏でしたが、コロナ禍が明けたら一緒にライブ演奏を行う予定だそうで、生でのコラボライブも是非見てみたいなぁ。世界がつながっていることを感じられる、非常にユニークな試みでした。
6番手はMajestic Circusというジャムバンド。この日の前日に「LIVE MAGIC!EXTRA」と題して、若干名の観客を入れたスタイルでの前哨戦的なライブイベントが行われたのですが、そこでの演奏の映像が流れました。グレイトフルデッドの曲が得意なバンドで、この日もグレイトフルデッドの曲のカバー。2曲披露してくれたのですが、軽快な演奏が楽しめたステージでした。
続くは同じく「LIVE MAGIC! EXTRA」の演奏から、Mamadou Doumbiaというアフリカはマリのギタリスト。かのサリフ・ケイタのツアーに帯同する形で日本に来日した後、日本に拠点を移して活動を続けているミュージシャンで、どこかで聴いたことが・・・と思ったのですが、2013年のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドで、彼の講演に参加したことがありました。まずはマリの伝統楽器であるコラの演奏。政情不安定なマリの状況を憂いながらも、将来の希望を歌った「希望」という曲を、非常に清涼感あって美しい弦楽器の音色を静かに聴かせてくれます。その後はギターに持ち替えて、ギターインストの曲を披露。マリといえば「砂漠のブルース」のイメージが強いのですが、ブルージーで郷愁感あふれる音色をたっぷりと聴かせてくれます。日本在住なだけに合間のMCは日本語だったのですが、アフリカやエチオピアと日本の弦楽器の共通するようなフレーズについて語ったり、非常に印象的なパフォーマンスを聴かせてくれました。
ここでBarakan's Kitchenと題して、以前のライブでは現場で屋台が出店されていたのですが、その代わりということで、ピーターバラカン自ら「トライフル」というイギリスのデザートを紹介する、ちょっとした料理番組が挟まりました。
続いてはSam Amidonというアメリカ出身ロンドン在住というシンガーソングライター。ロンドンの自宅で演奏した映像が流れました。フォークソングの影響も強いミュージシャンで、まずは家の中にあるバンジョーやギターを紹介した後、そのうちのバンジョーをひとつ取り出し、まずはタジ・マハールから習ったという曲を1曲披露。さらに続く曲は、バンジョー1本の演奏ながらもシャウトを入れつつ、ブルース的な要素も感じられるロッキンな曲。バンジョーのイメージとはちょっと異なる激しい演奏がユニークでした。その後はアコギやバンジョーでフォーキーな曲をしんみり披露。ラストはなんとバイオリンまで登場し、バイオリンの演奏を聴かせてくれました。全6曲、いずれも弦楽器1本のみの演奏だったのですが、バラエティーに富んだパフォーマンスを聴かせてくれた、なかなかユニークなライブでした。
さらに今度はライブハウスから、ギタリスト濱口祐自の生配信でのパフォーマンス。昨年のLive Magic!でもリアルタイムで演奏を聴かせてくれた、このイベントではおなじみのミュージシャンです。関西弁丸出しの、近所のおっちゃんのような軽いMCを繰り広げるのですが、その雰囲気とは全くことなる非常に力強いブルースギターの演奏に、パフォーマンスがはじまるとググっと惹きつけられます。MCも相当長い時間繰り広げるのですが、その軽い雰囲気と、ギターの演奏がはじまるとグッとその場の空気が引き締まる雰囲気のギャップが非常に印象的でした。
そしてラストは民謡クルセイダーズ。こちらも「LIVE MAGIC EXTRA!」からの映像となります。まずは「会津磐梯山」。ホーンセッションも入って軽快なラテン風にスタート。陽気なスタートとなります。そこから一転、続く「木曾節」ではMegの女性ボーカルでしんみりと聴かせ、場をクールダウンさせます。3曲目は「貝殻節」。再びフレディ塚本の伸びやかなボーカルに、ホーンセッションやエレピも入った、ラテン風のリズムに民謡を融合させた軽快な楽曲を聴かせてくれます。さらにラストは「串本節」。本作もホーンセッションに、さらにシンセのサウンドやノイジーなギターのサウンドも入った民謡クルセイダーズらしい独特な解釈がユニークな1曲。軽快なサウンドながら民謡らしい節回しもしっかりと楽しませてくれました。
そんな訳でギッシリ3時間半に及ぶライブイベント。今年もまた、知る人ぞ知る的なミュージシャンが多かったのですが、どれも実力派揃いのセレクションはさすがといった感じ。ボリューム満点の内容でしたが、最後まで一気に楽しめた配信ライブでした。昨年のLive Magic!は、過去のライブ映像の使いまわし的な部分が大きかったのですが、今年はしっかりと事前準備もして貴重なライブ映像ばかり。そういう意味でも充実感あって、とても楽しめたイベントになっていました。ただ、やはり来年こそはオンラインではなく、普通のライブの形で開催してほしいなぁ。そうすると見に行けないでしょうが、でも、いい加減、コロナも終わってほしい・・・・・・来年は何の憂いもなく、普通に観客を入れての開催になるように、心から祈っています。
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