今なお挑戦心盛ん
Title:BLESSING AND MIRACLES
Musician:SANTANA
結成から50年以上が経過し、すっかり「レジェンド」と呼ばれるバンドのひとつとなっているロックバンドSANTANA。通常、このレベルに達している多くのベテランバンドは、たま~にアルバムをリリースする程度となり積極的な活動を見せませんし、そのたまにリリースされるアルバムも、昔のファンにアピールできるような「大いなるマンネリ」的な作品がほとんど。グループとしてほとんど隠居状態となっているのがほとんどです。
しかしここに至ってSANTANAは、バンドとして「隠居」するような雰囲気は一切見せていません。前作「Africa Speaks」もアフリカ音楽の要素を積極的に取り入れた非常に挑戦的な作品になっていました。さらに今回のアルバムも、その「Africa Speaks」からわずか2年というインターバルでリリースされており、彼らのような「レジェンド」クラスのミュージシャンとしては異例というほど短いスパンでの新作リリースとなっています。
今回のアルバムも現役感バリバリのかなり挑戦的な作品に仕上がっています。オープニング的な曲を挟んで事実上の1曲目「Santana Celebration」は軽快でラテンなパーカッションをバックにSANTANAが哀愁感たっぷりのギターを聴かせるという、王道的な楽曲からスタートするのですが、続く「Rumbalero」は息子であるサルバドール・サンタナが参加した作品なのですが、エレクトロなサウンドを取り入れた作風に。さらになんと、プロコル・ハルムの「Whinter Shade Of Pale」をカバー。スティーヴ・ウィンウッドがボーカルで参加している、かなり豪華なコラボなのですが、ラテン色を強く取り入れた彼ららしいカバーに仕上げてきています。
さらに「She's Fire」ではダイアン・ウォーレンのメランコリックな歌声にラッパーのG-Eazyもフューチャー。トラックもHIP HOPテイストを取り入れた作風にチャレンジとかなり挑戦的な作風を聴かせてくれます。
後半は一転、ロックバンドLiving Colorのボーカリスト、コリー・グローヴァーを迎えた「Peace Power」はヘヴィーなギターリフを聴かせるハードロックなナンバー。さらに「America For Sale」ではメタル風な作品に仕上げてくるなど、ヘヴィーな路線へと一気にシフトします。しかし、このバラエティー富んだ展開はまだまだ止まりません。ブルースロック風の「Mother Yes」や哀愁感たっぷりのフュージョン風のギターインストナンバー「Song For Cindy」を挟んで「Angle Chori/All Together」では、先日亡くなったジャズ・ピアニストのチック・コリアとのコラボ。エレクトリックピアノとギターサウンドの絡みにラテンのリズムが加わるあたり、SANTANAらしいコラボに仕上げています。
さらにラスト「Ghost Of Future Pull II」ではジャジーなリズムを聴かせてくれるなど、最後の最後までバラエティー富んだ展開。ハードロックからメタル、ブルースロックにジャズ、さらにはHIP HOPにまで挑戦する意欲的なスタイルに、結成から50年以上も経て、まだまだ一線で活躍を続けるロックバンドなんだ、ということを強くアピールされたようなアルバムに仕上がっていました。
そしてこれだけバラエティー富んだ展開だと、逆にアルバム全体がバラバラになってしまう危険性もありますが、SANTANAの場合、ご存じ、カルロス・サンタナの哀愁感たっぷりのギターサウンドがアルバム全体に流れており、しっかりと統一感を出しています。このギターサウンドは、ある意味、昔ながらの「ベタ」とも言えるプレイで、ここらへんは昔からのファンにとっても安心して聴ける内容になっていますし、逆に「ベタ」なギターサウンドが流れておりファンとしては安心して聴けるからこそ、それ以外の部分で挑戦が出来る、と言えるのかもしれません。
「レジェンド」の域に達しても、まだ全く隠居する気もゼロ。現役のバンドとしてあくなき挑戦を続けるSANTANAは、あらためてすごいバンドだなぁ、と感じました。よく考えたら、彼らの大ヒット作でグラミー賞も独占した「Supernatural」も結成から30年以上が経過した1999年の作品ですしね。あらためて、SANTANAのすごさを感じさせてくれる作品でした。
評価:★★★★★
Santana 過去の作品
Guitar Heaven:The Greatest Guitar Classics Of All Time
POWER OF PEACE(THE ISLEY BROTHERS & SANTANA)
Africa Speaks
ほかに聴いたアルバム
Demodelica/Primal Scream
1991年に発売され、ロック史に残る名盤としても名高い、Primal Screamの「Screamadelica」。本作は、その発売30周年を記念してリリースされた、未発表デモ音源とミックス音源を収録されたアルバムです。「Screamadelica」の原型らしい、比較的シンプルなアレンジでの楽曲が収録されており、まさに「生まれたて」といった感のあるデモ音源。完成形との聴き比べも楽しいですが、シンプルなデモの段階で既に独特なグルーヴ感は感じられ、楽曲としての強度の強さを感じされます。「Screamadelica」を愛聴する方なら間違いなくチェックしておきたい作品です。
評価:★★★★
primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
Chaosmosis
Give Out But Don't Give Up:The Original Memphis Recordings
MAXIMUM ROCK ‘N’ ROLL: THE SINGLES
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