今年2枚目!
Title:Blue Banisters
Musician:Lana Del Rey
ハイプ的な評判も多かったデビュー当初の印象から一転、最近では傑作アルバムを連発し、すっかり「実力派シンガーソングライター」として、その地位を確立してきたLana Del Rey。今年3月にはアルバム「Chemtrails over the Country Club」をリリースし、同作も文句なしの傑作アルバムだったのですが、それからわずか7ヶ月、異例とも言える短いスパンでニューアルバムがリリースされました。
予想外の2021年2枚目となるニューアルバム。まさに今の彼女の勢いも感じさせます。ただし、基本的な路線としては前作以前の彼女のスタイルと同様。50年代~60年代あたりの「古き良き時代」のアメリカ音楽の要素を取り入れたような、メランコリックでレトロ感のあふれるシンプルなポップソング。1曲目の「Text Book」などは、そんな彼女の「王道」を行くような、レトロ感と哀愁感があふれるポップソング。続くタイトルチューン「Blue Banisters」もしんみりと幻想的な雰囲気すらする歌声を聴かせてくれますし、「Arcadia」もピアノの音色をバックに、シンプルでどこか懐かしい感じのする伸びやかなポップチューンを聴かせてくれます。
その後も「Beautiful」や「Violets for Roses」、「Wildflower Wildfire」のような、シンプルなピアノの演奏でメランコリックなポップソングをゆっくりと歌いあげる楽曲がメイン。「Nectar Of The Gods」や「Living Legend」のようなアコースティックギターを入れてくることもありつつ、基本的にはシンプルなアレンジのポップソングがメイン。その中でちょっと目立つのが「Dealer」で、こちらは力強いドラムのリズムが流れる楽曲になっています。楽曲時代はレトロな雰囲気のメランコリックなナンバーという点は共通するのですが、リズムを強調したサウンドにちょっと今時なものも感じられ、アルバムの中でのちょうどよいインパクトとなっていました。
ただ今回のアルバム、ピアノやアコギをメインとしたシンプルなサウンドがメインということで、前作同様、決してバリエーションは多くありません。1曲1曲に関しては、その美しい歌声とメランコリックなメロが魅力的なポップスということは間違いないのですが、正直なところ、似たタイプの曲が多く、後半になると、若干飽きが来てしまったようにも感じてしまいました。
しかし、その印象が変わったのは締めくくりの「Sweet Carolina」。こちらもピアノをバックとしたシンプルに聴かせるポップスなのですが、絶妙な泣きメロがインパクトのあるナンバーで、若干飽き始めてきた私の耳をグッとつかみました。これが最後に来たため、結果として非常に後味が良く終わった作品に。一気にアルバム全体の印象も良くなり、聴き終えることが出来ました。
わずか7ヶ月でのスパンでのリリース。勢いがあるともいえるのですが、一方では乱発気味に終わるリスクもあるリリース。実際、前作と比べると、若干、そんな印象も否めない部分もありました。ただ、全体的には、それ以上に美しいメロディーが映える傑作アルバムにまとまっていました。しんみりとその美しい歌声に聴き惚れつつ、懐かしい感情にひたれる、そんな1枚でした。
評価:★★★★★
Lana Del Rey 過去の作品
Born To Die
Ultraviolence
Norman Fucking Rockwell!
Chemtrails Over The Country Club
ほかに聴いたアルバム
I Dream Of Christmas/Norah Jones
彼女初となるクリスマスアルバム。スタンダードナンバーとオリジナル曲を半々程度収録した構成になっており、いつもの彼女と同様、スモーキーなボーカルでムーディーに聴かせる曲が魅力的なナンバー。良くも悪くもいつもの彼女といった感じで目新しさはありませんし、スタンダードナンバーにしても比較的「無難」にまとめあげている印象も。ただ、そのため安心に聴けるアルバムということは間違いありませんが。
評価:★★★★
NORAH JONES 過去の作品
THE FALL
...FEATURING NORAH JONES(ノラ・ジョーンズの自由時間)
LITTLE BROKEN HEARTS
COVERS(カヴァーズ~私のお気に入り)
foreverly(BILLIE JOE+NORAH)
DAY BREAKS
First Sessions
Begin Again
Pick Me Up Off The Floor
'Til We Meet Again
MONTERO/Lil Nas X
シングル「Old Town Road」がビルボードで19週連続の1位という史上最長となる記録を叩き出し大きな話題となったラッパー。一方で、同性愛者であることをカミングアウト。これは、「男らしさ」が誇張されるHIP HOPシーンの中で異例ともいうべき行為で、大きな話題となりました。本作はそんな話題のラッパーによるデビューアルバム。ただ、ラップ以上にメランコリックでメロディアスなポップがメインとなっており、HIP HOPリスナー問わずに楽しめそうな作品に。今時なトラップの要素を入れつつ、一方、ラテンやフォークなどの要素も感じられるなどバラエティーも豊富。確かにこれは売れそうだなぁ・・・とも感じさせる1枚でした。
評価:★★★★
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