日本人にはなじみのないミュージシャンがメインだが・・・
Title:Home In The World: Woody Guthrie's Dustbowl Ballads
今回紹介するアルバムは、様々なミュージシャンが1枚のアルバムをカバーした、というトリビュート的なカバーアルバム。元となったアルバムは、ボブ・ディランに大きな影響を与えたといわれ、アメリカのフォーク・ミュージックの父ともいわれるウディ・ガスリーが1940年にリリースしたアルバム「ダストボウル・バラッズ」。SP3枚組となった本作は、彼にとって唯一のアルバムであり代表作だそうですが、今でも名作として知られています。本作は、そんなアルバムを2021年にグラミー賞を受賞したプロデューサーのランドール・ポスターがカバーを企画。様々なミュージシャンたちが参加したカバーアルバムとなっています。
さて、本作が紹介されているサイトで紹介している、本作に参加している豪華なミュージシャンたちの名前は・・・リー・アン・ウォマック、ジョン・ポール・ホワイト、マーク・ラネガン、リリー・メイ、シャベルス&ロープ、クリス・シール、コルター・ウォール、ワトキンス・ファミリー・アワー・・・・・・すいません、全然知りません(^^;;基本的にフォーク、カントリー、ブルーグラス系のミュージシャンがメイン。アメリカでは一定以上の知名度を上げている豪華ミュージシャン勢ですが、残念ながら日本での知名度はほとんどありません。
ただ、日本人にはとっつきにくいカントリー系のアルバムかな、と思って聴き始めたのですが、これがなかなか聴いていて楽しめる、興味深いアルバムに仕上がっていました。
基本的にはやはりフォーク、カントリー系の楽曲がメインとなるのですが、ただそんなイメージの中、ミュージシャンそれぞれ自らの個性を出しつつ、バラエティー富んだ作風の曲を聴かせてくれています。冒頭のシャベルス&ロープ(すごい名前だな・・・)が歌う「Dust Bowl Blues」はアコギ1本でブルースの作品に仕上げていますし、かと思えば続く「 I Ain't Got No Home In This World Anymore」は日本人にも耳なじみありそうな、70年代フォークを彷彿とさせる作品になっています。
続く「Blowin' Down This Road」は初期ボブ・ディランに通じるようなフォークソングですし、さらに「Pretty Boy Floyd」も郷愁感あふれるフォークソングに仕上がっています。一方、以前、当サイトでもアルバムを取り上げたことがある女性シンガーソングライターWaxahatcheeによる「Talking Dust Bowl Blues」はタイトルの通り、ポエトリーリーディングの作品になっており、アルバムの中では一風変わった展開となっています。
さらにブルーグラスのミュージシャン、クリス・シールによる「Tom Joad,Pt.1」はバンジョーをかき鳴らしつつ軽快に歌い上げるナンバーで、おそらく日本人にとって典型的なカントリーとなっています。一方、同じ曲をリリー・メイがカバーした「Tom Joad,Pt.2」はキュートな彼女のボーカルもあって、爽やかなポップ色も強い作品に。この2曲の聴き比べも楽しいところです。
後半も、Swamp Doggによる「Dust Bowl Refugee」は哀愁感たっぷりに歌い上げる70年代風のハードロック風な作品になっていますし、マーク・ラナガンの「Dust Pneumonia Blues」はギターを爪弾きながら力強いバンドサウンドを聴かせるブルースロック風の楽曲に。ロックな作品もしっかりと聴かせてくれます。
そんな訳でフォーク、カントリー系のミュージシャンがメインとはいえ、しっかりとバリエーションを感じられる幅の広さ、懐の深さも感じられました。参加ミュージシャンもフォーク、カントリー系のミュージシャンばかりで日本人にとっては馴染みの薄いミュージシャンがメインですが、ただ、楽曲的には日本人にとってもしっかりと楽しめる作品になっていたと思います。ちょっと渋い1枚ですが、アメリカポップミュージックの源流のひとつということで興味を持たれた方は要チェックの1枚です。
評価:★★★★★
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