みんな結局、こういうロックが好き・・・
Title:Teatro d'ira - Vol.1
Musician:Maneskin
最近、世界的に注目を集めているロックバンド、Maneskin。もともとはイタリアで結成された男女4人組のバンド。イタリアで最も権威のある音楽祭「サンレモ音楽祭2021」で優勝を飾り、さらにはヨーロッパ最大の音楽の祭典「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2021」で1位を獲得。一気に世界的な注目を集めると、世界10か国のSpotifyチャートで1位を獲得するなど一気に人気を集め、まさに2021年最大級に話題を集めるロックバンドとなりました。
どこかの荒野のような場所で撮影された、いかにも70年代的な服装で着飾ったバンドがうつったジャケット写真がまずはいかにもオールドスタイルという印象を受けるバンドなのですが、実際、楽曲自体も昔ながらのハードロックをそのまま体現化したような作風。冒頭を飾る「ZITTI E BUONI」もヘヴィーなギターリフを中心として展開される、いかにもなハードロックな楽曲からスタート。サビのシャウトもいかにも昔ながらもロック然とした雰囲気です。「FOR YOUR LOVE」もメランコリックなメロディーラインをボーカルと一緒になぞるようなハードなギターサウンドが印象的で、途中、しっかりとヘヴィーなギターソロを聴かせる点も含めて、典型的なハードロック路線の楽曲となっています。
ただ、単純な昔ながらのハードロック路線に終始しているのか、と言われるとそうでもなく、もうひとつの方向性となるのが「LIVIDI SUI GOMITI」のようなラップを取り入れたミクスチャーロック路線。この曲も冒頭にヘヴィーなギターリフのイントロからスタートし、サビもダイナミックなバンドサウンドを聴かせてくれる迫力満点の楽曲。「IN NOME DEL PADRE」も同様に、ヘヴィーなギターリフと力強いラップを中心に展開されるミクスチャーロック路線。さすがにいまさらラップを取り入れただけで「今風」・・・とは言えないのでしょうが、ここらへん、単純なオールドスタイルのハードロック路線とは、また少々異なる、2010年代のハードロック路線だからこその方向性も感じられます。
英語曲もある一方、イタリア語曲も少なくなく、それがまた英語に聴きなれている身からすると新鮮な感覚も。また、全体的にメランコリックなメロディーラインの歌を聴かせる楽曲になっており、ただ昔ながらのハードロック路線で勢いで聴かせる、といった感じとは一線を画する、しっかりとしたメロディーラインも書いてくるバンドという点も大きな魅力でしょう。
そしてその上でこのアルバムを聴いて強く感じたのは、結局みんな、こういうロックが好きなんだね、ということでした。昔、ロックンロールリバイバルといって、昔ながらのガレージロックバンドが一種のブームみたいになった時も感じたのですが、なんだかんだいっても、みんなこういうハードなギターを中心に構成されたダイナミックなバンドサウンドの、爆音で聴いていて気持ちいい、いかにもロック然とした曲が好きなんだなぁ、ということをあらためて感じました。もちろん、私も含めて、ですが(笑)。
今後、さらなる注目を集めそうなロックバンド。なによりもダイナミックなロックサウンドが聴いていて非常に気持ちいいだけに、コロナ禍が落ち着いたら、1日も早い来日公演も望まれます。ちなみに、ある種老成されたようなサウンドとは裏腹に、メンバー全員、20歳から22歳という非常に若いメンバーばかりなのも頼もしい感じ。それがまた昔ながらのハードロック路線ながらも、どこか新鮮味を感じさせる大きな要因なのかもしれません。ロックが好きなら間違いなく、今、もっとも注目すべきロックバンドです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Half God/Wiki
ニューヨークを拠点において活動を続け、現在、注目のラッパーの一人となっているWikiのニューアルバム。うーん、このミュージシャン名、史上最高レベルで検索しにくい・・・。ただ、ミニマルなサウンドでメランコリックな雰囲気のトラックが魅力的。非常にシンプルながらも、耳に残るサウンドはこれから注目を集めそう。"Wiki"と検索をかければ、彼の名前が出てくる日も近い?
評価:★★★★
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