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2021年11月12日 (金)

折坂悠太の様々な音楽性を内包したステージ

折坂悠太 心理ツアー 愛知公演

会場 名古屋市芸術創造センター 日時 2021年11月2日(火)19:00~

Orisakashinri

7月のthe pillows以来、久しぶりとなるライブに足を運んできました。コロナ禍も比較的落ち着き、いろいろと制限はあるもののようやく徐々に再開してきたライブ。ただ、まだその開催は限定的で、仕事の都合も合わせて、なかなか行きたいライブに行ける機会がありませんでした。そんな中、ようやく機会をみつけて足を運んできたのは、最近話題のシンガーソングライター折坂悠太のライブ。直近のアルバム「心理」が年間ベストクラスの傑作アルバムだっただけに、はじめて彼のライブに足を運んできました。

まだ「若手のシンガー」である彼ですが、その音楽性からか、客層は比較的年齢層も高く、落ち着いた層が多かったのが印象的。ただ楽器の並んだだけのステージに、何かのモニュメントがアルミホイルで包まれたような、ちょっと不思議なセットが印象的でした。やがて19時をまわるとまもなくライブがスタート。いきなり冒頭でインストチューン「take 13」からスタートし、その後、最新アルバム「心理」の冒頭、「爆発」、そして独特なセリフの部分も印象的な「心」へと続いていきます。

その後、「名古屋ではいろんな食事などを満喫してちょっとした観光気分」という簡単なMCを挟んで、今度は前作「平成」から「揺れる」、そして「朝顔」へと続きます。ドラマ主題歌にもなった曲なだけに、これだけ早いタイミングで演るのはちょっと意外でした。

その後は「針の穴」や「トーチ」などをバンドサウンドバックにゆっくりと聴かせます。バンドはなんとツインドラムという迫力のあるリズム隊。エレピやサックス奏者、さらにベースはウッドベースと、かなり豪華で分厚い、迫力あるサウンドを聴かせてくれます。かと思えば、「馬市」ではバンドメンバーは去り、彼ひとりだけがアコギをかかえてしんみり聴かせるステージとなりました。

アコギ1本でのステージは「夜学」の冒頭も続きだったのですが、この曲では途中からバンドメンバーが加わり、むしろサイケデリックな雰囲気のある演奏を聴かせてくれます。フォーキーな曲調から一転、大きく雰囲気の異なる展開に魅入ってしまうステージで、間違いなくこの日のハイライトのひとつだったと思います。

そんな演奏を聴かせたかと思えば、続く「鯱」では一転、彼自身がマラカスをもつと、陽気なラテン風の賑やかなステージで会場を楽しませます。さらに「荼毘」ではジャジーな演奏を聴かせたかと思えば、「炎」では今度はギターを置いて、スタンドマイクをバックに力強く、その歌を聴かせます。さらには「星屑」ではハンドマイクで、まさに歌謡ステージのような歌を聴かせるパフォーマンスをみせてくれたりと、アルバムでも感じられた、彼の幅広い音楽性がそのまま反映されたステージパフォーマンスで一瞬たりとも目を離せない、そんなステージをみせてくれました。

その後は再び短いMCへ。続くは韓国のシンガーソングライター、イ・ランとのコラボとなる「윤슬(ユンスル)」だったのですが、このMCで、イ・ランが体調を崩しているという話になりました。「早く元気になってね」という意味を込めて歌い始めたのですが、ちょっと心配です。もちろん、イ・ランのパートは録音でした。そして本編ラストは「春」。ここでは彼がスレイベルを2本もち、この鈴とツインドラムを生かした力強いドラミングで迫力あるパフォーマンスを聴かせてくれました。

ステージは暗転したままアンコールへ。比較的早くメンバーが戻ってきて、今度は前作「平成」の1曲目「坂道」。さらにライブの中でピッタリ「頃合いを見てまた会おう」という歌詞が印象に残る「さびしさ」へ。そしてラストは、やはりアルバム「心理」の最後の曲「鯨」で締めくくり。ラストは会場全体が暗転し、サイケなサウンドを鳴り響かせながら終了。そしてパッとステージが明るくなると、折坂亮太をはじめとしてバンドメンバーが全員消えており、さらにモニュメントにかぶさったアルミホイルも消えて、会場はただ誰もいなくなった楽器が残るのみ・・・という、ちょっと虚無的な空気のある締めくくりとなりました。

ライブはジャスト2時間。コロナ禍になってから2度目のライブだったのですが、やはりライブは楽しい!!そしてこの日のステージは、上でも書いた通り、折坂悠太の様々な音楽性がそのままステージに反映された素晴らしいステージで、ある意味、歌謡曲のように「歌」を聴かせるパフォーマンスもあれば、バンドサウンドにより力強い演奏を聴かせるステージ、ジャジーな演奏や実験的なサウンドを奏でるサイケな演奏まで、実に様々な色を見せたパフォーマンスが魅力的でした。

正直、ライブパフォーマンスの側面ではさほど大きな期待はしていなかったのですが、予想をはるかに超える素晴らしいステージで、終始、ステージから目を離せない、緊張感もあるパフォーマンスが実に見事。あっという間の2時間でした。ライブミュージシャンとしても彼の素晴らしさ、実力を実感できたこの日のステージ。また、彼のライブには是非とも足を運びたいです!

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