かなりバラエティーに富んだ作風
Title:The Atlas Underground Fire
Musician:Tom Morello
ご存じRAGE AGAINST THE MACHINEのトム・モレロによるソロアルバム。2018年にリリースされたソロアルバム「The Atlas Underground」の続編とも言えるアルバムで、このコロナ禍の中で作成された作品。特にロックダウンの間はエンジニアとのやり取りが出来ず、すべてのギターパートを携帯のヴォイス・メモをつかって録音したのだとか。ただ、それが逆にギター・パートを考えすぎることなく、本能を信じて作品をつくることにつながったそうです。
今回のアルバムはかなり豪華なゲストが多数参加している点が大きな特徴。全12曲中、1曲目「Harlem Hellfighter」以外はすべてゲストが参加したアルバムになっています。特に大きな注目を集めているのが「Highway to Hell」。あのAC/DCのカバーなのですが、ゲストにブルース・スプリングスティーンとパール・ジャムのエディ・ヴェダーという豪華なメンバーが参加した作品。エディーのシャウトにボスの熱唱も非常に力強く、ヘヴィーなギターリフも非常にかっこよく、これぞロック!というようなナンバーに、ロックリスナーならおもわずにんまりするような作品だったのではないでしょうか。
続く「Let's Get The Party Started」もRATMを彷彿とさせるようなヘヴィーなギターリフにボーカルのシャウトがのったミクスチャーロックの楽曲。本作はBring Me The Horizonがフューチャーされているのですが、若々しさを感じさせるナンバーです。もっとも、Bring Me To The Horizon自体は、そろそろ中堅の域に入ってくるようなバンドですが・・・。
その後も「Save Our Souls」のようなヘヴィーなギターリフを聴かせるナンバーも多いのですが、一方、多彩なゲスト勢に合わせ、非常にバリエーション富んだ内容になっているのが本作の特徴。カントリーミュージシャンのクリス・ステイプルトンをゲストに迎えた「The War Inside」はカントリー風のメロディーラインのバックに、泣きのギターサウンドを聴かせてくれますし、Mike Posnerがゲストで参加した「Naraka」では伸びやかな彼の歌に、トラップ風のリズムも。ダミアン・マーリーが参加した「The Achilles List」もRATM風のミクスチャーのナンバーなのですが、こちらはレゲエの要素も強く、さらに「Charmed I'm Sure」ではデジタルロックの要素も強く感じます。
一方で、ヘヴィーなギターリフが目立ちつつも、アルバム全体としては「ポップ」というイメージも強く残る作品で、「Driving to Texas」は女性ボーカルのポップチューンでギターはほとんど目立ちませんし、「Night Witch」も女性ボーカルでポップ色が強く、聴いていて、「あれ?違うアルバムを再生しちゃったかな?」と思うほどでした。
このバラバラさはある意味ソロらしいとも言えますし、いろんな音楽に挑戦する姿勢も強く感じます。正直、このアルバムの前編とも言える「The Atlas Underground」はEDMの要素を無理に入れようとした結果、非常に中途半端な作品になっていました。今回のアルバムに関しては、トムのギターをいかした、RATMを彷彿とさせるようなカッコいい作品も少なくなく、グッと良くなったのは間違いありません。
ただ、全体的には良くも悪くもバラバラという感は否めず、ちょっと方向性がちぐはぐで、いまひとつ印象が薄くなってしまった作品でもあったように感じました。まあ、バラバラなのは意図的という感もしますし、彼がやりたいように演ったソロアルバムということで仕方ないのかもしれませんが・・・。ちょっと残念にも感じました。
ちなみにこのアルバム、ちょっと気になることがあるのですが、冒頭の「Harlem Hellfighter」。女性ボーカルらしき声が入るのですが、この歌が日本語っぽいんですが、でも日本語の意味は聴き取れません。そもそもボーカルは誰??メロディーラインも完全にJ-POPといった感じで、気になります。調べても不明だったのですが・・・。
評価:★★★★
Tom Morello 過去の作品
The Atlas Underground
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