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2021年11月 5日 (金)

ミスチル桜井のポップス好きがわかる

Title:沿志奏逢4
Musician:Bank Band

アルバムとしては2010年にリリースされた「沿志奏逢3」から、なんと11年ぶりのリリースとなるBank Bandのアルバム。Bank Bandは2004年にMr.Childrenの桜井和寿とプロデューサー小林武史を中心に結成されたスーパーバンド。彼らに坂本龍一を加えた3人が資金を拠出した非営利段階「ap bank」を支援する目的で結成されたバンド。この「ap bank」は環境保護や自然エネルギー促進事業、省エネルギーなど様々な環境保全のためのプロジェクトを提案・検討している個人や団体へ低金利で融資する団体。さらに2005年から毎年、Bank Bandを中心として様々なミュージシャンが参加するイベント「ap bank fes.」は音楽ファンのみならず多くの方にとっておなじみのイベントではないでしょうか。

Bank Bandのアルバムは2010年以来途絶えていたのですが、主に「ap bank fes.」への出演をはじめ、配信シングルをリリースしたりと、それなりにコンスタントな活動を続けてきていました。ただ、「ap bank fes.」自体、2018年に開催された後、2019年2020年と開催されず、ここ数年、ちょっと忘れられている感もありました。しかし今年、オンラインで「ap bank fes.」が開催され、さらに非常に久しぶりとなるアルバムがリリース。Bank Bandのための新録ではなく、過去のベスト盤になるのですが、Bank Bandとしてのオリジナル曲は全曲収録。数多くのカバー曲に、さらに新曲となる「東京協奏曲」も収録され、まさに待望の作品となりました。

今回のBank Bandのベスト盤は2枚組となり、1枚目は通常のスタジオ録音音源。一方、2枚目は、いままでのap bank fes.で披露された楽曲を収録したライブベストとなっています。Bank Bandとしてのオリジナル音源も収録されているのですが、基本線となるのは数々の邦楽のカバー。そのセレクトが実に多彩にわたっており、特に桜井の幅広いポップスに対する愛情を感じさせます。それこそ桑田佳祐や小田和正、中島みゆきといった大御所といっていいミュージシャンから岡村靖幸やジュンスカのような、ミスチルのもう一世代上となるミュージシャン、さらにはキリンジ、フジファブリックなどといった中堅の実力派ミュージシャンからSyrup16gのような、サブカル系のロックバンド。さらに彼自身がファンと公言しているKANちゃんのカバーまで、邦楽というカテゴリーの中から、超有名どころから比較的、マイナーどころの実力派まで幅広いセレクトが魅力となっています。

ただ一方、その肝心なカバー、特にサウンドに関しては、良くも悪くもどの曲もJ-POPのフィールドに引きずりこんだような、バンドサウンドにストリングスも入れた、良く言えばスケール感がある、悪く言えば少々大味といった印象も受けるアレンジになっていました。ここは悪い意味で小林武史らしいアレンジといった印象も受けるのですが、全体として楽曲の特徴に関係ない、一本調子な感も否めないサウンド構成になっており、卒はないものの面白みもないといった感のあるアレンジでした。

もっとも、そんなカバーですが、桜井がボーカリストとして歌うと、完全に桜井和寿の曲になってしまうあたりは見事。さらにMISIAや宮本浩次、ライブベストの方には、ASKAや小田和正といったカバー元の本人も登場というかなり豪華なゲストも大きな魅力。ここらへんはさすが小林武史や桜井の人脈といった感じでしょうか。他に類を見ない、豪華なゲストによるアルバムに仕上がりました。

また、今回のアルバム、基本的にJ-POPのフィールドに引きずり込んだポップなカバーに仕上げたことにより、原曲の持つ歌そのものの魅力を再認識できるカバーも少なくありませんでした。一番印象的だったのがSyrup16gの「Reborn」。もともとメロディーラインの良さは大きな魅力であった曲なのですが、今回、Bank Bandにより、原曲のバンドサウンドが取り除かれ、よりポップなアレンジを施したことにより、この曲のメロはこんなによかったんだ!!ということにあらためて認識されるカバーに仕上がっていました。

そんな訳で、正直なところ「お!」と思うような目新しい解釈はありませんし、基本的に無難なポップに仕上げたカバーという印象は受けてしまいます。ただ、選ばれたカバーはどれも名曲ばかり。桜井のボーカリストとしての力量は十分感じられますし、豪華ゲストも魅力的。さすが日本のポップシーンのトップを行くボーカリストとプロデューサーによるバンドのアルバムだな・・・と思うアルバムでした。しばらく停滞気味だったap bank及びBank Bandの活動ですが、これを機に、再度積極的な活動が再開されるのでしょうか。コロナが明けたらap bank fes.も一度行ってみたいなぁ。

評価:★★★★

Bank Band 過去の作品
沿志奏逢2
沿志奏逢3


ほかに聴いたアルバム

ARTISAN 30th Anniversary Edition/山下達郎

山下達郎が1991年にリリースしたアルバムの30周年リマスター盤。個人的に本作は、はじめてリアルタイムで聴いた山下達郎のオリジナルアルバムということで印象深い作品。もうあれから30年も経つのか・・・と自分も年を取ったなぁ、という感慨深くもあります。ただ、中学生だった当時は正直このアルバムの「良さ」にピンと来ず。久々に聴いてみると、あらためて非常に魅力的な傑作だったことを再認識させられます。特にジュブナイル的なノスタルジーあふれる作品は、今聴くと、胸がキュンキュンしてくる魅力が・・・ただ、確かに中学生にはこのノスタルジックな良さはわからないよなぁ、なんてことも思ったりして。しかし、これが30年前の作品なのですが、この後、彼はわずか3枚しかオリジナルアルバムをリリースしていないんですよね。既に直近のオリジナルアルバムから10年も経過していて、次のオリジナルアルバムはいつ??

評価:★★★★★

山下達郎 過去の作品
Ray of Hope
OPUS~ALL TIME BEST 1975-2012~
MELODIES(30th Anniversary Edition)
SEASON'S GREETINGS(20th Anniversary Edition)

Big Wave (30th Anniversary Edition)
COME ALONG 3
POCKET MUSIC (2020 Remaster)
僕の中の少年 (2020 Remaster)

LOVEBEAT 2021 Optimized Re-Master/砂原良徳

こちらは2001年にリリースしたソロ4枚目となるオリジナルアルバムのリマスタリング。音が劇的に良くなったか・・・と言われると、手元の安い再生機器だとちょっとわかりにくいのですが、それでも「声」の部分は明確になった印象も。ただそれ以前に、時代によって移り変わりの激しいエレクトロのジャンルでありつつ、20年以上前の音が、今なお、色あせることなく聴くことが出来る点である種の驚きも感じてしまいます。何気に彼も、このアルバム以降、オリジナルアルバムを1枚しかリリースしておらず、新作が待たれる・・・というよりも、お蔵入りしているMETAFIVEのアルバムのリリースを!!!

評価:★★★★★

砂原良徳 過去の作品
No Boys,No Cry Original Sound Track
liminal

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アルバムレビュー(邦楽)2021年」カテゴリの記事

コメント

ゆういちさん、こんばんは。

METAFIVEのアルバムですが、11月20日に7月に行われた無観客ライブの有料配信が行われるのですが、その配信チケットの特典としてそのアルバムがついてくるとのことです。なのでおそらくしばらくはアルバムの一般発売等はないのではないかと僕は思います。でももしかしたらライブ配信後にひっそりとリリース・・・なんてこともあるかもしれませんが。

投稿: 通りすがりの読者 | 2021年11月 6日 (土) 01時47分

>通りすがりの読者さん
情報ありがとうございます!っというか、既にライブレポに書いた通り、ライブは視聴したので、あとはCDが届くのを待つだけです。ライブもよかったので、楽しみです。配信も・・・あるとよいのですが。

投稿: ゆういち | 2021年12月15日 (水) 08時44分

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