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2021年11月

2021年11月30日 (火)

実験的な作風だがメランコリックな歌も大きな魅力

Title:Una Rosa
Musician:Xenia Rubinos

今回紹介するミュージシャンは、おそらく日本ではほとんど無名のミュージシャンだと思います。ゼニア・ルビノスと読む、アメリカのシンガーソングライターでありマルチ・インストルメンタル奏者である彼女。いままでBattlesやDeerhoofとの共演も果たしてきたそうですが、本作が3作目となるアルバムとなります。現在、徐々に注目が高まりつつあるシンガーソングライターのようです。

まず短いオープニング曲を挟んでタイトル曲「Una Rosa」「Ay Hombre」と続くのですが、まずエレクトロベースの分厚いサウンドをバックとして歌われるのは哀愁感たっぷりの「歌モノ」。「Ay Hombre」はラテンのテイストを感じさせるのですが、「Una Rosa」に至っては、歌謡曲的なウエットな雰囲気すら感じさせるメロディーラインを叙情感たっぷりに歌い上げており、日本人の琴線にも触れそうな楽曲となっています。

序盤で歌モノメインのミュージシャンかな?と思いきや、雰囲気が変わるのが続く「Working All The Time」。かなりビート感のつよいアバンギャルドなエレクトロビートからスタートし、一気に雰囲気が変わります。続く「Sacude」もトライバルな要素も感じさせるエレクトロビートが印象的。

さらにその後も「Cogelo Suave」では軽快なビートの楽しいポップチューンなのですが、途中、突然アバンギャルドがサウンドが登場したりして、かなりユニークな作品。さらに「Darkest Hour」ではメタリックなビートが登場するなど、かなり迫力あるサウンドが耳に残ります。

後半も「Worst Behavior」はメロウな歌モノなのですが、今度は前半のラテン風とは異なりR&Bのテイストの強いナンバー。さらに「What Is This Voice?」では清涼感ある歌声を聴かせる、伸びやかで幻想感もあるポップチューンに仕上がっているなど、最後の最後までバラエティー富んだ展開に仕上がっています。

マルチ・インストルメンタル奏者ということで、この多彩な音楽性は「宅録的」と言えるでしょうか。いずれも分厚いエレクトロサウンドが心地よく耳に残ります。ともすればバラバラになりそうな音楽性ですが、この分厚いエレクトロサウンドと、全体を通じてのメランコリックな歌が流れているため、統一感もしっかりあります。

実験的な要素も強いアルバムでしたが、一方でメランコリックなメロディーラインは日本人の琴線にも触れそうな部分も。そういう意味では聴きやすい要素も多分に含まれているアルバムで、意外と多くのリスナーが気に入る内容になっているのではないでしょうか。ちなみに彼女は父親はキューバ出身、母親はプエル・トリコ出身だそうで、さらにアメリカ在住ということで、このハイブリッドな出自もまた、この幅広い音楽性の大きな要因なのでしょう。今後、日本でも彼女の名前を聴く機会が増えるかも。要チェックな作品です。

評価:★★★★★

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2021年11月29日 (月)

コロナ禍だからこそ、あえて

Title:The Lockdown Sessions
Musician:Elton John

昨年来、既に1年半以上が経過しているコロナ禍の現状。日本においては、現在、少々落ち着いてはいるものの、ヨーロッパにおいては再拡大の傾向が続くなど、まだまだ先の見えない厳しい状況が続いています。音楽業界に関してもその影響は大きく、ライブは徐々に開催されるようになってきているものの、大型のライブイベントなどは入場者の制限など、厳しい状況が続いています。

ただ、そんな中でも、コロナ禍の中だからこそ実施できるような新たな音楽的な試みを行ったり、アルバムをリリースしてきたりと、コロナ禍すら音楽の中に取り込んでしまうあたり、ミュージシャンとしてのたくましさ・・・という以上に人間としてのたくましさを感じさせる作品も少なくありません。約5年ぶりとなるエルトン・ジョンのニューアルバムも、まさにそんなたくましさを感じさせる1枚と言えるでしょう。

まず強いインパクトを受けるのがそのジャケット写真。顔の下半分をすっぽりと覆われたマスクをつけたエルトン・ジョンの姿は、まさにコロナ禍を象徴するもの。特に欧米人は顔全体で感情を表現するそうで、そのためマスクをつけるのにも抵抗感が強いという話を聴いています。そんな中でこのエルトン・ジョンのマスク姿は、おそらく日本人が感じる以上に、欧米人にとっては強いインパクトを受けるジャケット写真なのかもしれません。

そして肝心のアルバムの内容ですが、「The Lockdown Sessions」というタイトルの通り、コロナ禍の中、人と人の交流が制限されるロックダウン下だからこそあえて、多くのミュージシャンとのコラボ作をリリースしてくる、という試みに、コロナ禍の逆境を逆手に取った、エルトン・ジョンのミュージシャンとしてのたくましさを感じさせます。

まずとにかくセッション相手が非常に豪華かつジャンルレス。Gorillazにスティーヴィー・ワンダー、ニッキー・ミナージュやLil Nas X、さらにはRina Sawayamaもセッション相手として参加。既に、それぞれのミュージシャンのアルバムに収録されている既発表曲も少なくないのですが、これだけジャンルを問わず、豪華なメンバーとコラボを実施できるあたり、さすがエルトン・ジョン、と思ってしまいます。

さらにそれぞれのミュージシャンがしっかりとそれぞれの個性を発揮されています。その結果、いかにもエルトン・ジョンらしい曲を求めたとすると、若干肩透かしをくらってしまう部分もあるかもしれません。Pearl Jamのエディ・ヴェダーも参加した「E-Ticket」やスティーヴィー・ワンダーとのコラボ作「Finish Line」あたりは、エルトン・ジョンらしいポップな側面がよく出ている作品と言えるかもしれません。ただ一方、「Always Love You」などは、エルトンのパートは彼らしいポップソングを聴けるのですが、HIP HOPも加わっており、ここらへん、昔からのエルトンのファンにとってはちょっと違和感を覚える部分もあるかもしれません。

ただ、そういう昔ながらのエルトンという路線に留まらない「違和感」が、いまなお衰えることのない彼の挑戦心につながっており、かつ、彼のミュージシャンとしての現役感にもつながってもいえるように感じました。その後もGorillazが参加した「The Pink Phantom」はいかにもGoriilazらしい作品になっていますし(こちらはエルトンがむしろゲストの立ち位置なのですが)、Rina Sawayamaが参加した「Chosen Family」も伸びやかな彼女の歌声が魅力的な、幻想的な楽曲に。Lil Nas Xとのコラボ「One Of Me」ではトラップ風のリズムも登場するなど、ジャンルを問わず、最近の音楽的な傾向も取り入れる彼の挑戦心を感じさせる作品になっていました。

結果として、少々全体としてバラバラな作風なのは否めないのですが、ただ一方ではエルトンらしいメロディアスな歌は全体にしっかり貫かれており、それがアルバムの核にもなっていました。そのため、いかにもエルトン・ジョンらしい曲は少ないのかもしれませんが、アルバムに流れるメロディーラインには、間違いなくエルトン・ジョンとしての魅力も感じさせるアルバムになっていたと思います。

まさにコロナ禍の中だからこそ生まれた本作。でも、次のアルバムがリリースされる頃には、新型コロナなんて過去にこと・・・になってればいいんですけどね。そうなることを強く願います。

評価:★★★★★

Elton John 過去の作品
The Union(Elton John&Leon Russell)
Wonderful Crazy Night

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2021年11月28日 (日)

今年2枚目!

Title:Blue Banisters
Musician:Lana Del Rey

ハイプ的な評判も多かったデビュー当初の印象から一転、最近では傑作アルバムを連発し、すっかり「実力派シンガーソングライター」として、その地位を確立してきたLana Del Rey。今年3月にはアルバム「Chemtrails over the Country Club」をリリースし、同作も文句なしの傑作アルバムだったのですが、それからわずか7ヶ月、異例とも言える短いスパンでニューアルバムがリリースされました。

予想外の2021年2枚目となるニューアルバム。まさに今の彼女の勢いも感じさせます。ただし、基本的な路線としては前作以前の彼女のスタイルと同様。50年代~60年代あたりの「古き良き時代」のアメリカ音楽の要素を取り入れたような、メランコリックでレトロ感のあふれるシンプルなポップソング。1曲目の「Text Book」などは、そんな彼女の「王道」を行くような、レトロ感と哀愁感があふれるポップソング。続くタイトルチューン「Blue Banisters」もしんみりと幻想的な雰囲気すらする歌声を聴かせてくれますし、「Arcadia」もピアノの音色をバックに、シンプルでどこか懐かしい感じのする伸びやかなポップチューンを聴かせてくれます。

その後も「Beautiful」「Violets for Roses」「Wildflower Wildfire」のような、シンプルなピアノの演奏でメランコリックなポップソングをゆっくりと歌いあげる楽曲がメイン。「Nectar Of The Gods」「Living Legend」のようなアコースティックギターを入れてくることもありつつ、基本的にはシンプルなアレンジのポップソングがメイン。その中でちょっと目立つのが「Dealer」で、こちらは力強いドラムのリズムが流れる楽曲になっています。楽曲時代はレトロな雰囲気のメランコリックなナンバーという点は共通するのですが、リズムを強調したサウンドにちょっと今時なものも感じられ、アルバムの中でのちょうどよいインパクトとなっていました。

ただ今回のアルバム、ピアノやアコギをメインとしたシンプルなサウンドがメインということで、前作同様、決してバリエーションは多くありません。1曲1曲に関しては、その美しい歌声とメランコリックなメロが魅力的なポップスということは間違いないのですが、正直なところ、似たタイプの曲が多く、後半になると、若干飽きが来てしまったようにも感じてしまいました。

しかし、その印象が変わったのは締めくくりの「Sweet Carolina」。こちらもピアノをバックとしたシンプルに聴かせるポップスなのですが、絶妙な泣きメロがインパクトのあるナンバーで、若干飽き始めてきた私の耳をグッとつかみました。これが最後に来たため、結果として非常に後味が良く終わった作品に。一気にアルバム全体の印象も良くなり、聴き終えることが出来ました。

わずか7ヶ月でのスパンでのリリース。勢いがあるともいえるのですが、一方では乱発気味に終わるリスクもあるリリース。実際、前作と比べると、若干、そんな印象も否めない部分もありました。ただ、全体的には、それ以上に美しいメロディーが映える傑作アルバムにまとまっていました。しんみりとその美しい歌声に聴き惚れつつ、懐かしい感情にひたれる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

Lana Del Rey 過去の作品
Born To Die
Ultraviolence
Norman Fucking Rockwell!
Chemtrails Over The Country Club


ほかに聴いたアルバム

I Dream Of Christmas/Norah Jones

彼女初となるクリスマスアルバム。スタンダードナンバーとオリジナル曲を半々程度収録した構成になっており、いつもの彼女と同様、スモーキーなボーカルでムーディーに聴かせる曲が魅力的なナンバー。良くも悪くもいつもの彼女といった感じで目新しさはありませんし、スタンダードナンバーにしても比較的「無難」にまとめあげている印象も。ただ、そのため安心に聴けるアルバムということは間違いありませんが。

評価:★★★★

NORAH JONES 過去の作品
THE FALL

...FEATURING NORAH JONES(ノラ・ジョーンズの自由時間)
LITTLE BROKEN HEARTS
COVERS(カヴァーズ~私のお気に入り)
foreverly(BILLIE JOE+NORAH)
DAY BREAKS
First Sessions
Begin Again
Pick Me Up Off The Floor
'Til We Meet Again

MONTERO/Lil Nas X

シングル「Old Town Road」がビルボードで19週連続の1位という史上最長となる記録を叩き出し大きな話題となったラッパー。一方で、同性愛者であることをカミングアウト。これは、「男らしさ」が誇張されるHIP HOPシーンの中で異例ともいうべき行為で、大きな話題となりました。本作はそんな話題のラッパーによるデビューアルバム。ただ、ラップ以上にメランコリックでメロディアスなポップがメインとなっており、HIP HOPリスナー問わずに楽しめそうな作品に。今時なトラップの要素を入れつつ、一方、ラテンやフォークなどの要素も感じられるなどバラエティーも豊富。確かにこれは売れそうだなぁ・・・とも感じさせる1枚でした。

評価:★★★★

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2021年11月27日 (土)

本格的な活動再開か?

METAFIVE"METALIVE 2021"

会場 KT Zepp Yokohama(オンライン) 日時 2021年11月20日(土)20:00~

今回紹介する参加したオンラインライブは、いろんな意味で「話題」のライブと言えるかもしれません。今年7月に開催された東京オリンピック。その開会式の音楽を巡り、コーネリアス小山田圭吾の、過去に行った「いじめ」発言が、大きな問題となりバッシングを受けました。その結果、小山田圭吾の音楽活動は停止を余儀なくされたほか、7月に行われる予定だったMETAFIVEのライブや、さらに8月に予定されていたMETAFIVEのアルバムも発売中止にまで追い込まれました。

今回のライブは、その中止となった7月のMETAFIVEのライブ当日に、ライブが行われる予定だったKT Zepp Yokohamaで行われた無観客ライブの模様を配信されたもの。さらに今回、発売中止となったアルバム「METAATEAM」がついてくる・・・ということもあり、参加してみることにしました。

時間になると、まずはおもむろにメンバーが登場。全員、青色のカッターシャツに紺色のパンツという姿でおそろいで登場。ちなみに高橋幸宏は病気療養中のため、GREAT3の白根賢一がドラムのサポートにはいっていました。まずは、はじめて聴く曲だったのですが、こちらは最新アルバム「METAATEAM」の1曲目「Full Metallisch」、2曲目「The Paramedics」だったようですが、これが予想以上にカッコいい。かなり力強いバンドサウンドで展開されており、彼らが意外に「ロックバンド」としての側面が強いんだな、ということも実感しました。また、アルバムの出来の良さもうかがわせます。

その後は「Musical Chairs」「Maisie's Avenue」「Gravetrippin'」と続くのですが、いずれも軽快なバンドサウンドで聴かせてくれます。特に「Gravetrippin'」では小山田圭吾のギタープレイがかなり前面に押し出されたナンバー。久しぶりに動く彼の姿を画面から見ました。7月ということでバッシング騒動の真っ最中の頃の映像なのですが、この日のプレイはそんな状況を感じさせないアグレッシブなプレイを聴かせてくれます。

続く「Luv U Tokyo」はその小山田圭吾のボーカルからスタート。彼のアップが映し出されるのですが・・・失礼ながら、ちょっと老けたかなぁ・・・とはいえ、思ったよりも元気そうで、ちょっと安心しました。さらに「Albore」「Peach Pie」「Disaster Baby」と続いていきます。特に「Disaster Baby」はかなり迫力ある演奏を聴かせるロックバンド然としたステージに惹きつけられるかと思いきや、続く「Whiteout」では一転、ちょっとジャジーな雰囲気も加味したメロウでエレクトロな楽曲となり、METAFIVEというバンドの音楽性の広さを感じさせる展開となっていました。

「TURN TURN」では再び小山田圭吾のボーカル曲に。彼の弾くギターサウンドにエレクトロのサウンドも重なる、METAFIVEらしさを感じさせるナンバー。同じくギターサウンドが軽快に鳴り響く、ニューウェーブ風な「Don't move」へとつなぎ、ラストは「環境と心理」は小山田圭吾のボーカルを聴かせてくれる曲。最後はメンバーがシルエットで映し出される中、小山田圭吾だけがこちらに深々とお辞儀をしたのが強く印象に残りつつ、ステージは幕を下ろしました。

ライブ自体は1時間強。METAFIVEのライブパフォーマンスについては今回、はじめて見たのですが、予想していた以上に「ロックバンド然」とした感じのステージで、モノトーン的なステージの雰囲気と合わさって、非常にカッコよさを感じさせました。そして、久しぶりに見た動く小山田圭吾には、感じるものもありました。

ライブ後の感想を見ると、小山田圭吾に対して否定的なものは一切なく、あれだけバッシングした人はどこに行ったんだ?という感も強くしました。しばらくはテレビなどでの活動は難しいとは思うのですが、そういう意味ではライブやCD音源などの活動は今後、問題なく行えそうな感じもするのですが・・・このライブ配信を機に、METAFIVEとしても小山田圭吾としても本格的な活動再開を願いたいところ。思った以上にカッコいいパフォーマンスに終始惹きつけられるステージでした。ちなみにCDの方は12月中に送付されるそうで、そちらも非常に楽しみです。

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2021年11月26日 (金)

「普通」でない今だからこそ

Title:WE GO
Musician:TOMOVSKY

新型コロナが流行りだし、世の中が大きく変貌してから、既に1年半以上が経過しようとしています。その中で、コロナ禍の前の「普通」は大きく変化してしまいました。友人とみんなで集まるのも難しくなり、満員のライブ会場というのもなくなりました。そんな「普通」が「普通」でなくなった中でも人々は営みをつづけ、なんとかやりくりしつつ、今を過ごしています。

ただ、もともとそんな世の中の「常識」に対して斜めから観察し、ユニークでシニカルな視点を描いていたTOMOVSKYにとっては、むしろこの「普通」ではない現在を描くことは、お手の物といった感じではないでしょうか。前作「LIFE RECORDERS」はコロナ禍から半年あまりでのリリースということもあり、あまりコロナ禍が反映された内容ではありませんでした。そして、その前作からわずか1年というスパンでリリースされた本作は、まさにコロナ禍を存分に発揮させた内容。コロナ禍を曲に読み込んだミュージシャンは少なくありませんが、これほどユニークな視点で、なおかつ冴えわたった歌詞を書きまくっているアルバムは本作くらいではないでしょうか。

まず非常にユニークなのはタイトルチューンの「WE GO」

「前みたいな日々に
前みたいなカンジに
戻りたいなんて
思ってないんだよ」
(「WE GO」より 作詞 大木知之)

個人的にはコロナウイルスごときで、前の日常が崩されてたまるか、と思っているだけに、この歌詞には最初、疑問も感じました。ただ、聴きすすめていくと

「せっかく休んだんだからさ
全然ちがう事しなきゃだよ」

と、いわゆるコロナ禍の中で言われる「ニューノーマル」とも異なる、これはこれで新たな一歩を進もうという非常に前向きな内容。最後まで聴けば、思わず「なるほど」と思わされる、TOMOVSKYらしい歌詞になっていました。

もともとTOMOVSKY自体、「現場は部屋。作業は単独。外に出るのは誰もいない真夜中早朝。アルコールは部屋飲みか散歩飲み。何十年もソーシャルディスタンスな生活を送ってきた男。」(コメントより)だったそうで、このコロナ禍も自然に受け止めたらしく、「世界が止まっているあいだ」もまさに「世界が止まっているあいだは/世界が近くなった気がした」と、この状況の中での心境を素直に吐露していますし、「いちいちコロナのせいにしない」と歌う「コロナ関係なし」「一番怖いのは生きてる人間」と身も蓋もない歌詞を披露する「いちばん怖いのは」などなど、今までのTOMOVSKYの中でも、もっとも素直な感情をそのままストレートに歌った歌詞が目立ちました。

ただ、そんな中でちょっとほろりとさせてくれるのが最後から2曲目の「無事で」という曲。「何をしてでも/何て言われても/キミは生きててね」とコロナ禍の中で苦しい状況の世相も反映したような、メッセージソング。「生活保護とか/遠慮せず/もぎ取ってるといい」と彼にしては珍しく、社会性ある歌詞まで登場するなど、今だからこそ伝えられる非常に強い、彼らしいメッセージと言えるでしょう。

さらにユニークなのはここでガラッと雰囲気が変わり、ラストの「52」では「52歳」と「ご自由に」を書けたユニークなメッセージ。52歳まで生きれれば自由に生きれるんだよ!と実体験を踏まえたのか、その前の「無事で」からつながる、ユニークながらも前向きでメッセージ性の強い曲になっていました。

楽曲の方は、いつもながらの宅録スタイル。ピアノを中心とした比較的シンプルなアレンジの曲が並びます。「オトナになりたい」ではThe Beatlesの「Hello Goodbye」を楽曲に組み込むというユニークな試みも。とにかく最初から最後までTOMOVSKYだからこその歌える、コロナ禍を彼なりの視点で描写した1枚。最初はコロナの中でのソーシャルディスタンスな現状を肯定しているかのような歌詞に若干違和感を覚えたのですが、最後はみんなが明るく笑顔になれる、そんなTOMOVSKY流コロナ禍の過ごし方を歌った傑作でした。

評価:★★★★★

TOMOVSKY 過去の作品
幻想
秒針
いい星じゃんか!
終わらない映画
BEST3
SHAAA!!!
FUJIMI
SHINJUKU TIME 2018-1
SHINJUKU TIME 2018-2
LIFE RECORDER

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2021年11月25日 (木)

アルバムチャートもジャニ系が1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100と同じく、Hot Albumsも1位2位にジャニーズ系男性アイドルグループが並びました。

まず1位には関ジャニ∞「8BEAT」がランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得。途中ベスト盤を挟みつつ、オリジナルアルバムとしては約4年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上26万1千枚で1位初登場。直近のベスト盤「GR8EST」の30万5千枚(1位)よりダウン。またオリジナルアルバムとしての前作「ジャム」の32万7千枚(1位)よりもダウンしています。

2位にはV6のベスト盤「Very6 BEST」が先週の4位からランクアップ。2週ぶりのベスト3返り咲きとなりました。これで1位2位とジャニ系が並ぶ結果になっています。

3位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「Attacca」が先週の3位から同順位をキープし、今週もベスト3入りとなりました。

続いて4位以下の初登場盤です。4位にはAdele「30」がランクイン。CD販売数は10位、PCによるCD読取数は21位でしたが、ダウンロード数で1位を獲得し、総合順位で見事4位に食い込みました。Adeleはご存じの通り、2011年にリリースした前々作「21」が全米で1千万枚。前作「25」も900万枚を突破するなど、圧倒的な人気を誇るイギリスのシンガーソングライター。約6年ぶりとなる本作も、待ちに待たれた1枚となっています。ちなみに「30」というタイトルですが、彼女は現在33歳。どうも30歳の時に制作を開始したため、このタイトルになったようです。オリコンでは初動売上8千枚で5位初登場。前作「25」の1万2千枚(13位)よりダウン。ただ、前作リリース時とはストリーミングなどの状況が格段に変化した中では立派な初動売上でしょう。

8位には女性アイドルグループBiSHのアユニ・DによるソロプロジェクトPEDRO「後日改めて伺います」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数22位。オリコンでは初動売上7千枚で6位初登場。前作「浪漫」(9位)から横バイ。

9位10位には、T.M.Revolution西川貴教と、アニソンを中心に手掛ける作曲家、志倉千代丸によるアニメキャラの男性アイドルプロジェクトB-PROJECTより「B with U(ブレイブver.)」「B with U(ダイコクver.)」がそれぞれランクイン。前者がCD販売数5位、後者が7位で、そのほかのチャートはランク圏外となっています。オリコンでは、両者をあわせた「SPECIAL BOX」が初動売上4千枚で10位初登場。前作で2枚同時リリースとなった「S級パラダイスBLACK」「S級パラダイスWHITE」の、それぞれ初動1万6千枚(5位)、1万4千枚(7位)からはダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年11月24日 (水)

ジャニ系が1位2位を獲得する中、鬼滅人気も・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はまず1位2位とジャニーズ系が並びました。

まずはなにわ男子「初心LOVE」が先週に引き続き1位を獲得。PCによるCD読取数は2位となりましたが、PCによるCD読取数及びYou Tube再生回数で1位を獲得し、2週連続の1位となりました。一方、2位もジャニーズ系男性アイドルグループ。NEWS「未来へ」が初登場。日テレ系ドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」テーマ曲。CD販売数は同作が1位を獲得したものの、PCによるCD読取数2位、ラジオオンエア数60位、Twitterつぶやき数10位で、You Tube再生回数はランク圏外。総合順位は2位となりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万2千枚で同作が1位を獲得。前作「BURN」の14万8千枚(1位)よりダウンしています。

3位にはLiSA「明け星」が先週の11位より、CDリリースに合わせてランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。オリコンでは初動売上4万4千枚で4位初登場。前作「HADASHi NO STEP」の9千枚(5位)より大きくアップしています。本作はテレビアニメ「鬼滅の刃 無限列車編」のオープニングテーマ。CD売上の大幅増は鬼滅人気がまだまだ続いている証でしょう。CDでは本作と両A面扱いとなっているエンディングテーマ「白銀」も今週、4位初登場。ダウンロード数で1位を獲得したほか、ストリーミング数で75位、ラジオオンエア数29位、Twitterつぶやき数18位、You Tube再生回数18位を獲得。2曲同時ランクインとなり、鬼滅人気を見せつける結果となりました。ただ、これからどれだけロングヒットを獲得できるのかが、勝負とも言えるのでしょうが。

続いて4位以下の初登場曲ですが、初登場はあと1曲。6位にハロプロ系女性アイドルグループつばきファクトリー「涙のヒロイン降板劇」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数20位、ラジオオンエア数22位、PCによるCD読取数19位、Twitterつぶやき数89位。オリコンでは初動売上5万8千枚で3位初登場。前作「断捨ISM」の3万6千枚(4位)からアップしています。

さて今週は、初登場3曲+ベスト10返り咲き1曲がランクインということもあり、ロングヒット系は軒並みランクダウンという結果となりました。まず長らくロングヒットを続けてきた優里「ドライフラワー」は5位から8位にダウンしています。これでベスト10ヒットは53週連続。ただ、ストリーミング数は先週から変わらず4位、カラオケ歌唱回数も40週連続の1位となっており、まだ巻き返しの可能性はありそう。ちなみに「ベテルギウス」は4位からワンランクダウンの5位。こちらもストリーミング数で1位をキープしています。

さらにback number「水平線」は6位から10位にダウン。これで14週連続のベスト10ヒットとなりましたが、後がなくなりました。ただこちらも、ストリーミング数が先週の3位から2位にアップするなど、来週以降の巻き返しの可能性も高そうです。

そして今週、BTS「Butter」が11位にランクダウン。ベスト10ヒットは連続26週でストップしました。さらに今週「Permission to Dance」「Dynamite」の巻き返しもなく、ついにBTSが昨年の9月2日付チャートで「Dynamite」がベスト10入りして以来、約1年3ヶ月ぶりにベスト10から姿を消す結果となりました。

Official髭男dism「Cry Baby」も10位から12位にダウン。こちらもベスト10ヒットは通算21週でとりあえずストップ。ただBTS「Butter」もストリーミング数6位、ヒゲダン「Cry Baby」もストリーミング数5位と上位にランクインしており、来週以降のベスト10返り咲きの可能性もありそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年11月23日 (火)

日本人にはなじみのないミュージシャンがメインだが・・・

Title:Home In The World: Woody Guthrie's Dustbowl Ballads

今回紹介するアルバムは、様々なミュージシャンが1枚のアルバムをカバーした、というトリビュート的なカバーアルバム。元となったアルバムは、ボブ・ディランに大きな影響を与えたといわれ、アメリカのフォーク・ミュージックの父ともいわれるウディ・ガスリーが1940年にリリースしたアルバム「ダストボウル・バラッズ」。SP3枚組となった本作は、彼にとって唯一のアルバムであり代表作だそうですが、今でも名作として知られています。本作は、そんなアルバムを2021年にグラミー賞を受賞したプロデューサーのランドール・ポスターがカバーを企画。様々なミュージシャンたちが参加したカバーアルバムとなっています。

さて、本作が紹介されているサイトで紹介している、本作に参加している豪華なミュージシャンたちの名前は・・・リー・アン・ウォマック、ジョン・ポール・ホワイト、マーク・ラネガン、リリー・メイ、シャベルス&ロープ、クリス・シール、コルター・ウォール、ワトキンス・ファミリー・アワー・・・・・・すいません、全然知りません(^^;;基本的にフォーク、カントリー、ブルーグラス系のミュージシャンがメイン。アメリカでは一定以上の知名度を上げている豪華ミュージシャン勢ですが、残念ながら日本での知名度はほとんどありません。

ただ、日本人にはとっつきにくいカントリー系のアルバムかな、と思って聴き始めたのですが、これがなかなか聴いていて楽しめる、興味深いアルバムに仕上がっていました。

基本的にはやはりフォーク、カントリー系の楽曲がメインとなるのですが、ただそんなイメージの中、ミュージシャンそれぞれ自らの個性を出しつつ、バラエティー富んだ作風の曲を聴かせてくれています。冒頭のシャベルス&ロープ(すごい名前だな・・・)が歌う「Dust Bowl Blues」はアコギ1本でブルースの作品に仕上げていますし、かと思えば続く「 I Ain't Got No Home In This World Anymore」は日本人にも耳なじみありそうな、70年代フォークを彷彿とさせる作品になっています。

続く「Blowin' Down This Road」は初期ボブ・ディランに通じるようなフォークソングですし、さらに「Pretty Boy Floyd」も郷愁感あふれるフォークソングに仕上がっています。一方、以前、当サイトでもアルバムを取り上げたことがある女性シンガーソングライターWaxahatcheeによる「Talking Dust Bowl Blues」はタイトルの通り、ポエトリーリーディングの作品になっており、アルバムの中では一風変わった展開となっています。

さらにブルーグラスのミュージシャン、クリス・シールによる「Tom Joad,Pt.1」はバンジョーをかき鳴らしつつ軽快に歌い上げるナンバーで、おそらく日本人にとって典型的なカントリーとなっています。一方、同じ曲をリリー・メイがカバーした「Tom Joad,Pt.2」はキュートな彼女のボーカルもあって、爽やかなポップ色も強い作品に。この2曲の聴き比べも楽しいところです。

後半も、Swamp Doggによる「Dust Bowl Refugee」は哀愁感たっぷりに歌い上げる70年代風のハードロック風な作品になっていますし、マーク・ラナガンの「Dust Pneumonia Blues」はギターを爪弾きながら力強いバンドサウンドを聴かせるブルースロック風の楽曲に。ロックな作品もしっかりと聴かせてくれます。

そんな訳でフォーク、カントリー系のミュージシャンがメインとはいえ、しっかりとバリエーションを感じられる幅の広さ、懐の深さも感じられました。参加ミュージシャンもフォーク、カントリー系のミュージシャンばかりで日本人にとっては馴染みの薄いミュージシャンがメインですが、ただ、楽曲的には日本人にとってもしっかりと楽しめる作品になっていたと思います。ちょっと渋い1枚ですが、アメリカポップミュージックの源流のひとつということで興味を持たれた方は要チェックの1枚です。

評価:★★★★★

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2021年11月22日 (月)

今なお挑戦心盛ん

Title:BLESSING AND MIRACLES
Musician:SANTANA

結成から50年以上が経過し、すっかり「レジェンド」と呼ばれるバンドのひとつとなっているロックバンドSANTANA。通常、このレベルに達している多くのベテランバンドは、たま~にアルバムをリリースする程度となり積極的な活動を見せませんし、そのたまにリリースされるアルバムも、昔のファンにアピールできるような「大いなるマンネリ」的な作品がほとんど。グループとしてほとんど隠居状態となっているのがほとんどです。

しかしここに至ってSANTANAは、バンドとして「隠居」するような雰囲気は一切見せていません。前作「Africa Speaks」もアフリカ音楽の要素を積極的に取り入れた非常に挑戦的な作品になっていました。さらに今回のアルバムも、その「Africa Speaks」からわずか2年というインターバルでリリースされており、彼らのような「レジェンド」クラスのミュージシャンとしては異例というほど短いスパンでの新作リリースとなっています。

今回のアルバムも現役感バリバリのかなり挑戦的な作品に仕上がっています。オープニング的な曲を挟んで事実上の1曲目「Santana Celebration」は軽快でラテンなパーカッションをバックにSANTANAが哀愁感たっぷりのギターを聴かせるという、王道的な楽曲からスタートするのですが、続く「Rumbalero」は息子であるサルバドール・サンタナが参加した作品なのですが、エレクトロなサウンドを取り入れた作風に。さらになんと、プロコル・ハルムの「Whinter Shade Of Pale」をカバー。スティーヴ・ウィンウッドがボーカルで参加している、かなり豪華なコラボなのですが、ラテン色を強く取り入れた彼ららしいカバーに仕上げてきています。

さらに「She's Fire」ではダイアン・ウォーレンのメランコリックな歌声にラッパーのG-Eazyもフューチャー。トラックもHIP HOPテイストを取り入れた作風にチャレンジとかなり挑戦的な作風を聴かせてくれます。

後半は一転、ロックバンドLiving Colorのボーカリスト、コリー・グローヴァーを迎えた「Peace Power」はヘヴィーなギターリフを聴かせるハードロックなナンバー。さらに「America For Sale」ではメタル風な作品に仕上げてくるなど、ヘヴィーな路線へと一気にシフトします。しかし、このバラエティー富んだ展開はまだまだ止まりません。ブルースロック風の「Mother Yes」や哀愁感たっぷりのフュージョン風のギターインストナンバー「Song For Cindy」を挟んで「Angle Chori/All Together」では、先日亡くなったジャズ・ピアニストのチック・コリアとのコラボ。エレクトリックピアノとギターサウンドの絡みにラテンのリズムが加わるあたり、SANTANAらしいコラボに仕上げています。

さらにラスト「Ghost Of Future Pull II」ではジャジーなリズムを聴かせてくれるなど、最後の最後までバラエティー富んだ展開。ハードロックからメタル、ブルースロックにジャズ、さらにはHIP HOPにまで挑戦する意欲的なスタイルに、結成から50年以上も経て、まだまだ一線で活躍を続けるロックバンドなんだ、ということを強くアピールされたようなアルバムに仕上がっていました。

そしてこれだけバラエティー富んだ展開だと、逆にアルバム全体がバラバラになってしまう危険性もありますが、SANTANAの場合、ご存じ、カルロス・サンタナの哀愁感たっぷりのギターサウンドがアルバム全体に流れており、しっかりと統一感を出しています。このギターサウンドは、ある意味、昔ながらの「ベタ」とも言えるプレイで、ここらへんは昔からのファンにとっても安心して聴ける内容になっていますし、逆に「ベタ」なギターサウンドが流れておりファンとしては安心して聴けるからこそ、それ以外の部分で挑戦が出来る、と言えるのかもしれません。

「レジェンド」の域に達しても、まだ全く隠居する気もゼロ。現役のバンドとしてあくなき挑戦を続けるSANTANAは、あらためてすごいバンドだなぁ、と感じました。よく考えたら、彼らの大ヒット作でグラミー賞も独占した「Supernatural」も結成から30年以上が経過した1999年の作品ですしね。あらためて、SANTANAのすごさを感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

Santana 過去の作品
Guitar Heaven:The Greatest Guitar Classics Of All Time
POWER OF PEACE(THE ISLEY BROTHERS & SANTANA)
Africa Speaks


ほかに聴いたアルバム

Demodelica/Primal Scream

1991年に発売され、ロック史に残る名盤としても名高い、Primal Screamの「Screamadelica」。本作は、その発売30周年を記念してリリースされた、未発表デモ音源とミックス音源を収録されたアルバムです。「Screamadelica」の原型らしい、比較的シンプルなアレンジでの楽曲が収録されており、まさに「生まれたて」といった感のあるデモ音源。完成形との聴き比べも楽しいですが、シンプルなデモの段階で既に独特なグルーヴ感は感じられ、楽曲としての強度の強さを感じされます。「Screamadelica」を愛聴する方なら間違いなくチェックしておきたい作品です。

評価:★★★★

primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
Chaosmosis
Give Out But Don't Give Up:The Original Memphis Recordings
MAXIMUM ROCK ‘N’ ROLL: THE SINGLES

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2021年11月21日 (日)

隔靴掻痒な1冊

本日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

昨年、覚せい剤保持でつかまり活動休止となったものの、今年10月にアルバム「宜候」で活動を再開した槇原敬之。本作は、そのアルバムリリースと同時に発売された、彼の活動を追ったノンフィクション作品。音楽評論家の小貫信昭による著作となります。

デビュー前夜からアルバム「宜候」リリースに至るまでの彼の活動を、彼が書いた楽曲に沿って追いかけた構成になっており、各章、その時々の彼の活動の「キー」となるような曲のタイトルが付されており、その曲を含めて、その時期を象徴するような曲の歌詞も収録されています。曲自体はもちろんのこと、歌詞も重要なキーワードとなるのは槇原敬之らしいといった感じも受けます。

この中でやはり非常に興味深かったのはデビューから、彼の初期の活動の推移。ちょうど私が中学生の頃から高校、大学に至るまでの槇原敬之の活動でしょう。断片的には聴いたことある話だったのですが、彼のデビュー前からデビューに至る話は非常に興味深く楽しめました。リアルタイムで彼のブレイク直後を知っている身としては、あの頃の槇原敬之といえば、まさに「そこらへんにいる浪人生」を地で行くような風貌で、その普通すぎるいで立ちが印象に残っていました。

ただこのノンフィクションを読むと、希代のメロディーメイカーとしての彼の才能はもちろんのこと、音楽に関する情熱やその行動力についても、デビューに至るまでのその活動は、やはり常人とは異なる部分を感じさせます。やはりミュージシャンとして成功をおさめる人というのは、風貌がどんな「普通」であろうと、常人とは異質な部分があるんだな、ということをあらためて感じました。

また、デビュー後の彼の活動については、私が中学生から大学生までリアルタイムで追っていったのですが、その当時は私自身、ポピュラーミュージックに対する知識が乏しく、なぜ彼がこのような曲を作るのか、その意味するところがわからなかったことが多々ありました。しかしこの本で、当時感じていた疑問の「答え合わせ」が出来たように思います。特に印象深かったのが、異質で、リリース当初はファンとして少々戸惑いも感じてしまった1996年の、彼の全英語詞のアルバム「Ver.1.0E LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY」に関するエピソード。洋楽を聴いていて「ラップやヒップホップが全盛になりつつあった。メロディーというものが、すぽっと消えてしまった気がした。」という危機感から作成されたアルバムだったそうです。ただ、当時、日本ではまだまだHIP HOPがほとんど浸透していないような状況でしたし、そんな中でこういうアルバムがファンの間で若干戸惑いを持って受け入れられたのは仕方なかったのかな、という感じもします。ある意味、少々「時代を先取りしすぎた」感のあるアルバムだったのでしょう。

そんな特に前半に関しては非常に興味深く読むことが出来た本書でしたが、正直言うと、最後まで読むとタイトルのとおり、隔靴掻痒、つまり槇原敬之に関して特に知りたいことがほとんど触れられておらず、かなりもどかしい思いをした著作になっていました。

槇原敬之に関して知りたいこと・・・というとある程度想像はつくかと思います。そう、彼が「同性愛者」だという事実と、なぜ2度にわたり覚せい剤の使用という犯罪を犯してしまったか、という事実。どちらも彼の活動に大きな影響を与えている点だと思います。どちらも軽くは触れられているのですが、残念ながらほとんどスルーしてしまっており、深く触れられていません。

もちろん「同性愛者」であるという点は、あくまでも彼のプライベイトな部分であり、第三者である著者が、本人が語りたいかどうかという意思を無視して安易に語ることは出来ない素材でしょう。そういう意味では仕方なかったのかもしれません。一方、覚せい剤の件については、やはり活動を再開するにあたって、しっかりと語られるべき話だと思いますし、著作の中でほとんどなかったかのように(特に2回目については)さらっと書いているだけの構成についてはかなり疑問です。特に1回目の逮捕以降、「ライフソング」という、本書いわく「仏教の思想に影響を受けた」のような即物的な価値観にとらわれない、本質的に大切なものを語るような曲を数多く書きながら、なぜ本人は「覚せい剤」というもっとも即物的な快楽におぼれたのか・・・この彼の「行動」と「楽曲」の大きな矛盾について全く触れていないというのは、「評論」としては完全に片手落ちと言えるでしょう。

もっとも、「ぴあ」という音楽業界ど真ん中の会社から発行された「音楽評論家」という音楽業界のど真ん中で飯を食っている人の著作としては、覚せい剤犯罪という話にもなかなか突っ込めなかったのでしょう。ただ、本当は活動再開の第1弾の「禊」として、語ってもらわなくてはいけないこの段階ですら、この犯罪についてほとんど突っ込めなかったとしたら、もうそれは「評論」家とは言えないのでは?

そして残念ながら槇原敬之の言葉の中でも非常に気になる部分がありました。それは2度目の逮捕を受けた時の心境として「その当時はもうすでに薬もぜんぜんやっていなかったし、そのなかでの逮捕となったので、自分の心が自分のことをいちばんわかっていた」という一文。でも、覚せい剤でつかまった人って、大抵「自分のことはよくわかっている。もうやめられる」って言うんですよね。彼の場合、1回目から2回目までスパンがあるだけに「中毒」ではないと思うのですが、ただ、1回目の逮捕ならともかく、2回目の逮捕でこういう心持ってかなり危険で、若干「本当に反省しているの?」とすら思ったりしています。ファンとしては非常に残念なのですが、この発言からすると、3回目があっても不思議ではないかも・・・と感じてすらしまいました。

前半については非常に興味深く楽しめた部分はありつつも、ある程度予想はしていたとはいえ、かゆいところに手が届いていない、非常にもどかしさを感じる1冊でした。ただ、槇原敬之の気になる部分について深く突っ込むためには、音楽業界とは直接関係のないノンフィクションライターが、例えば文春あたりの音楽業界とはちょっと離れた出版社で書くしかないんだろうなぁ。正直、槇原敬之のその音楽活動を駆り立てるような本質の部分ももっと知りたかった・・・そう感じてしまった著作でした。

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2021年11月20日 (土)

かなりバラエティーに富んだ作風

Title:The Atlas Underground Fire
Musician:Tom Morello

ご存じRAGE AGAINST THE MACHINEのトム・モレロによるソロアルバム。2018年にリリースされたソロアルバム「The Atlas Underground」の続編とも言えるアルバムで、このコロナ禍の中で作成された作品。特にロックダウンの間はエンジニアとのやり取りが出来ず、すべてのギターパートを携帯のヴォイス・メモをつかって録音したのだとか。ただ、それが逆にギター・パートを考えすぎることなく、本能を信じて作品をつくることにつながったそうです。

今回のアルバムはかなり豪華なゲストが多数参加している点が大きな特徴。全12曲中、1曲目「Harlem Hellfighter」以外はすべてゲストが参加したアルバムになっています。特に大きな注目を集めているのが「Highway to Hell」。あのAC/DCのカバーなのですが、ゲストにブルース・スプリングスティーンとパール・ジャムのエディ・ヴェダーという豪華なメンバーが参加した作品。エディーのシャウトにボスの熱唱も非常に力強く、ヘヴィーなギターリフも非常にかっこよく、これぞロック!というようなナンバーに、ロックリスナーならおもわずにんまりするような作品だったのではないでしょうか。

続く「Let's Get The Party Started」もRATMを彷彿とさせるようなヘヴィーなギターリフにボーカルのシャウトがのったミクスチャーロックの楽曲。本作はBring Me To The Horizonがフューチャーされているのですが、若々しさを感じさせるナンバーです。もっとも、Bring Me To The Horizon自体は、そろそろ中堅の域に入ってくるようなバンドですが・・・。

その後も「Save Our Souls」のようなヘヴィーなギターリフを聴かせるナンバーも多いのですが、一方、多彩なゲスト勢に合わせ、非常にバリエーション富んだ内容になっているのが本作の特徴。カントリーミュージシャンのクリス・ステイプルトンをゲストに迎えた「The War Inside」はカントリー風のメロディーラインのバックに、泣きのギターサウンドを聴かせてくれますし、Mike Posnerがゲストで参加した「Naraka」では伸びやかな彼の歌に、トラップ風のリズムも。ダミアン・マーリーが参加した「The Achilles List」もRATM風のミクスチャーのナンバーなのですが、こちらはレゲエの要素も強く、さらに「Charmed I'm Sure」ではデジタルロックの要素も強く感じます。

一方で、ヘヴィーなギターリフが目立ちつつも、アルバム全体としては「ポップ」というイメージも強く残る作品で、「Driving to Texas」は女性ボーカルのポップチューンでギターはほとんど目立ちませんし、「Night Witch」も女性ボーカルでポップ色が強く、聴いていて、「あれ?違うアルバムを再生しちゃったかな?」と思うほどでした。

このバラバラさはある意味ソロらしいとも言えますし、いろんな音楽に挑戦する姿勢も強く感じます。正直、このアルバムの前編とも言える「The Atlas Underground」はEDMの要素を無理に入れようとした結果、非常に中途半端な作品になっていました。今回のアルバムに関しては、トムのギターをいかした、RATMを彷彿とさせるようなカッコいい作品も少なくなく、グッと良くなったのは間違いありません。

ただ、全体的には良くも悪くもバラバラという感は否めず、ちょっと方向性がちぐはぐで、いまひとつ印象が薄くなってしまった作品でもあったように感じました。まあ、バラバラなのは意図的という感もしますし、彼がやりたいように演ったソロアルバムということで仕方ないのかもしれませんが・・・。ちょっと残念にも感じました。

ちなみにこのアルバム、ちょっと気になることがあるのですが、冒頭の「Harlem Hellfighter」。女性ボーカルらしき声が入るのですが、この歌が日本語っぽいんですが、でも日本語の意味は聴き取れません。そもそもボーカルは誰??メロディーラインも完全にJ-POPといった感じで、気になります。調べても不明だったのですが・・・。

評価:★★★★

Tom Morello 過去の作品
The Atlas Underground

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2021年11月19日 (金)

秦基博の魅力を感じる

Title:BEST OF GREEN MIND 2021
Musician:秦基博

3月に弾き語りベストアルバム「evergreen2」をリリースした秦基博。本作はそれに続く弾き語りTOUR「GREEN MIND 2021」の中からベストアクトをセレクトしたライブベストアルバム。2010年には「BEST OF GREEN MIND '09」がリリースされていますので、それに続く・・・と言いたいのですが、「'09」は純粋な録音音源に対して本作はライブ音源という違いがあります。

これは、以前にリリースされたベスト盤でのレビューでも書いたのですが、秦基博というミュージシャンは良くも悪くも非常にシンプルなポップミュージシャンというのが大きな特徴です。サウンド的に決して目新しいことや斬新なことをするようなミュージシャンではありませんし、じゃあメロディーラインに関して、特段大きな特徴があるのか、と問われると、圧倒的な美メロといった感じでも、ユニークな凝ったメロを書くミュージシャンという訳でもありません。

この、ただただシンプルなポップスを愚直に書き続けるというのが秦基博の大きな特徴なのですが、それゆえにアルバム単位ではインパクトが薄くなってしまうという転も気になる点でした。しかし、ベスト盤で彼の代表曲をまとめて聴くと、確かに優れたポップミュージシャンだな、と感じます。

なによりも彼の魅力が最も現れているように弾き語りアルバム。シンプルなポップソングを書く彼だからこそ、変に分厚いバンドサウンドよりも、シンプルな弾き語りの方がマッチしています。ただ、このライブアルバムの前提となる弾き語りベスト「evergreen2」はメロディーラインのインパクトも薄く、最後は若干ダレてしまうアルバムになっていました。

それだけに今回のライブアルバムについてもちょっと心配はしていたのですが、聴き始めるとそんな不安は完全に払しょくされました。オープニングを挟み冒頭の「僕らをつなぐもの」「Sally」がまずは非常に素晴らしい楽曲が並びます。シンプルなアコギで聴かせる曲なのですが、胸がキュンと来るような切ないメロディーラインが大きな特徴となっており、あらためて彼の魅力を感じることが出来ます。

その後も「やわらかな午後に遅い朝食を」「恋の奴隷」など、アコギ1本でしんみりと聴かせます。ドラムや打ち込みのリズムが入ったり、エレキギターで聴かせる曲もあるのですが、やはり全体的にはアコースティックギターでしんみりと聴かせる作品が魅力的。アコギのみだからこそ感じられる会場のスケールや、あるいはライブ会場の緊迫も、楽曲のちょうどよいアクセントになっていたように感じました。

こうやって曲を並べると、確かに比較的昔の曲の方が魅力的・・・という部分もあるのですが、「告白」「さよならくちびる」など比較的最近の曲でも魅力的な曲はありますのでご安心を。秦基博のメロディーメイカーとしての実力が、決して衰えたわけではないということを感じさせてくれる部分でもありました。

「evergreen2」はさほどはまれなかったのに、このライブ盤がこれだけ魅力的だった、というのはちょっと不思議でもあるのですが、昔の曲も収録されていた点と、やはりライブならではの緊迫感がいい影響を与えた点も大きかったように感じます。あらためてポップミュージシャン秦基博の実力を感じさせてくれるアルバムでした。

評価:★★★★★

秦基博 過去の作品
コントラスト
ALRIGHT
BEST OF GREEN MIND '09
Documentary
Signed POP
ひとみみぼれ
evergreen
青の光景
All Time Best ハタモトヒロ
コペルニクス
evergreen2

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2021年11月18日 (木)

こちらも男性アイドル勢が目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100と同様、Hot Albumsも男性アイドル勢が目立つチャートとなりました。

まず1位は韓国の男性アイドルグループTOMORROW X TOGETHER「Chaotic Wonderland」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数11位。全4曲入りのミニアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上17万枚で1位初登場。直近は輸入盤「The Chaos Chapter:FREEZE」で同作の初動8千枚(4位)からは大きくアップ。ちなみに翌週は国内盤の売上も加味されて7万6千枚(1位)を売り上げましたが、こちらよりもアップしています。

韓国の男性アイドルグループ勢は、他にも3位に、先週1位のSEVENTEEN「Attacca」がランクインしているほか、6位にNCT127「Favorite:NCT127 Vol.3」もランクインしています。

一方、日本勢では2位に三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「BEST BROTHERS/THIS IS JSB」がランクイン。デビュー10周年を記念したベストアルバム「BEST BROTHERS」とオリジナルアルバム「THIS IS JSB」がセットになった2枚組アルバム。CD販売数2位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数4位。オリコンでは初動売上9万5千枚で2位初登場。前作「RAISE THE FLAG」の13万6千枚(2位)からダウンしています。

日本の男性アイドル勢は4位にV6「Very6 BEST」がランクインしているほか、10位にスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「Dance Dance Dance」が初登場でランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数51位、PCによるCD読取数89位。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。ただ前作「GOLDEN EPOCH」の3万枚(2位)からは大きくダウンしています。

さて、そんな男性アイドル勢に挟まれるように女性アイドル勢もランクイン。7位にEMPiRE「BRiGHT FUTURE」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数25位。オリコンは初動売上9千枚で6位初登場。直近作はミニアルバム「SUPER COOL EP」で同作の6千枚(8位)よりアップ。ただしフルアルバムとしての前作「the GREAT JOURNEY ALBUM」の1万4千枚(6位)からはダウンしています。

そんな訳でアイドル勢が目立った今週のチャート。どうもここ最近、目立った人気ミュージシャンの大ヒット作に乏しく、Hot100共に、アイドル勢が目立ってしまうチャートが続いているように思います。一時期の米津玄師やヒゲダンのような「国民的ヒット」の登場を願いたいのですが・・・。

今週の他の初登場盤は5位にBruno Mars,Anderson Paak&Silk Sonic「AN EVENING WITH SILK SONIC」がランクイン。アメリカのシンガーソングライターBruno Marsが、同じくアメリカのR&BシンガーAnderson Paakと組んだユニット「Silk Sonic」名義でリリースされたアルバム。CD販売数11位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数20位。Anderson Paakはグラミー賞の受賞経験もあるなど、その実力は評価されているものの、日本ではあまり知られていないシンガー。それにも関わらず、ベスト10に入ってくるあたり、Bruno Marsの人気のほどを伺わせます。もっとも、それは本国アメリカでも同様のようで、同プロジェクトによるシングル「Leave the Door Open」はAnderson Paak初の全米ナンバーワンシングルとなったそうです。オリコンでは初動売上5千枚で10位初登場。前作「24K Magic」の初動2万枚(6位)からダウンしています。

8位には「バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.6」がランクイン。CD販売数7位、PCによるCD読取数6位。アニメキャラによるガールズバンドプロジェクトBanG Dream!から派生したゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」の中で使用されたカバー曲を集めたアルバムの第6弾。オリコンでは初動売上1万枚で4位初登場。同シリーズの前作「バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.5」の1万5千枚(6位)からダウンしています。

最後、9位にYOASOBIの配信限定のミニアルバム「E-SIDE」がランクイン。ダウンロード数2位のみで総合順位はこの位置にランクイン。大ヒットした「夜に駆ける」の英語版「Into The Night」や「怪物」の英語版「Monster」など、彼女たちのヒット曲の英語版が収録された8曲入りのミニアルバムとなります。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年11月17日 (水)

男性アイドルグループ三つ巴

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はベスト3に男性アイドルグループが並びました。

まず1位初登場はなにわ男子「初心LOVE」。本作がデビュー作となるジャニーズ系の新人男性アイドルグループ。CD販売数、PCによるCD読取数1位、You Tube再生回数2位、ラジオオンエア数8位、Twitterつぶやき数20位。オリコン週間シングルランキングでも初動売上70万5千枚で1位を獲得しています。

2位3位は先週1位2位を獲得したオーディション番組発の男性アイドルグループが今週も並んでランクイン。今週もBE:FIRST「Gifted.」が2位、INI「Rocketter」が3位と先週と同じ並び順となっています。CD販売数はINIが3位、BE:FIRSTが5位という結果となっており、オリコンでもINIが今週3位、BE:FIRSTが5位という結果となっていますが、ストリーミング数がBE:FIRST2位、INI7位、You Tube再生回数がBE:FIRST3位、INI42位という結果となっており、ビルボードでは2週連続BE:FIRSTの勝ちという結果となっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、こちらは女性アイドルグループの初登場が並んでいます。まず7位にはNiziU「Chopstick」がランクイン。11月24日リリース予定のアルバムからの先行配信。You Tube再生回数は同作が1位。ほか、ダウンロード数5位、ストリーミング数21位、Twitterつぶやき数9位を獲得し、総合順位は7位となっています。

8位は指原莉乃プロデュースによる声優アイドルグループ≠ME「まほろばアスタリスク」がランクイン。CD販売数は2位でしたが、ラジオオンエア数49位、PCによるCD読取数22位、Twitterつぶやき数36位、そのほかのチャートは圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上5万8千枚で2位初登場。前作「君はこの夏、恋をする」の初動4万7千枚(2位)よりアップしています。

一方ロングヒット曲ですが、まず優里「ドライフラワー」は3位から5位にダウン。ただし、カラオケ歌唱回数は39週連続の1位。ストリーミング数も7位から4位とアップしています。これで52週連続のベスト10ヒット。さらに先週ベスト10入りした「ベテルギウス」も今週4位にアップ。ストリーミング数で1位、ダウンロード数で2位を獲得しており、こちらもロングヒットの兆しを見せています。

しかし優里はミュージシャンとしての人気はあまりないみたいですし、「ドライフラワー」はこれだけヒットしてもなぜか今年を代表するヒットとしてあげられないケースが多く、影が薄いのですが、なぜか「ドライフラワー」に続いて「ベテルギウス」もヒットを飛ばしており、瑛人みたいな一発屋には終わらなさそう。なんとも不思議な感があります・・・。

back number「水平線」は今週4位から6位にダウン。ただストリーミング数は先週から変わらず3位をキープしています。これでベスト10は連続13週に。

BTS「Butter」は7位から9位にダウン。You Tube再生回数は3位から4位にダウンしている一方、ストリーミング数は6位から5位に若干アップ。これで26週連続のベスト10ヒットとなりました。

そしてOfficial髭男dism「Cry Baby」は6位から10位にダウン。ストリーミング数は5位から6位に、ダウンロード数も17位から18位にダウン。これでベスト10ヒットは通算21週目となりましたが、ついに後がなくなりました。

また今週、YOASOBI「群青」は16位にランクダウン。ベスト10ヒットは通算9週でストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年11月16日 (火)

最新曲から懐かしいナンバーまで披露

Spitz_streaming_ticket  今回は最近見た音楽関連の映画の感想です。といっても、映画館で見たわけではなくオンラインでの上演。今回紹介するのは、スピッツのライブツアーの模様を映画として「SPITZ JAMBOREE TOUR 2021"NEW MIKKE"THE MOVIE」。今年6月19日に横浜アリーナで行われたライブ映像をそのまま映画とした作品で、劇場公開の後、「オンライン」での公開となり、今回はそのオンライン上映を見てみました。

 

この「オンライン上映」なかなかユニークで、普通、オンラインというと、決められた時間であればいつでも視聴可能というのが常なのですが、この「映画」は事前に上映時間が決められ、その時間毎にオンラインでチケットが販売されるスタイル。私は先日11月8日の21時の会で参加したのですが、本当の映画がはじまるように、ワクワクしながらパソコンの前でスタンバイしました。

最初はメンバーのステージ入りのシーンが短く写されると、そのままライブはスタート。まず「見っけ」「はぐれ狼」と最新アルバム「見っけ」からのナンバーが続きます。さらにちょっと懐かしい「エスカルゴ」へ。ロッキンなバンドサウンドを聴かせつつ、田村明浩のベースソロを挟んで「けもの道」とロックなスピッツが続いていきます。

「稲穂」を哀愁たっぷりに聴かせた後、短いMCを挟み、懐かしい「遙か」へ。その後も「快速」と再び「見っけ」からの曲を挟んだ後、「放浪カモメはどこまでも」「ワタリ」、さらにアルバム「見っけ」から「ラジオデイズ」と、しっかりとロックバンド、スピッツとしてバンドサウンドを聴かせるナンバーが続いていきます。

ここで再びMC。Mステに出演した時のエピソード。周りがみんな踊るミュージシャンばかりなのでスピッツも踊った方がいいのか、と思ったと草野正宗のコメントに「スピッツにそれは求められていない」という三輪テツヤからの冷静な突っ込みが入っていました。

そこから「優しいあの子」「ヒビスクス」「水色の街」「まがった僕のしっぽ」と比較的メロディアスに聴かせるナンバーが続きます。ここでちょっと長めのMCが入り、ここからは懐かしい楽曲が。まず「青い車」!ブレイク前の楽曲で、個人的にも大好きな1曲で、これはうれしい選曲です。さらに「YM71D」を挟み「ロビンソン」へ!そして「ありがとさん」に続き、「楓」へ!懐かしいナンバーと最新アルバムからの曲を交互に披露してくれる構成で、特に昔の曲に関しては感涙モノ。また最近アルバムの曲も、昔の曲に決してひけ劣っておらず、変らぬ彼らの実力を感じさせます。

懐かしナンバーはまだまだ続きます。MCを挟み「渚」「8823」「俺のすべて」と長年のファン感涙ものの曲が続きます。コロナ禍の中で会場のファンは声を出せない状況ですが、現地はもりあがったんだろうなぁ。そして本編ラストはこの時点での最新シングルとなる「紫の夜を超えて」で締めくくりとなりました。

そしてアンコールへ。アンコールはちょっと懐かしい「群青」からスタート。メンバー紹介の長めのMCを挟み、これまた懐かしい「うめぼし」へ。ラストは最新アルバム「見っけ」から「ヤマブキ」を披露し終了。約2時間半のステージでした。

といった感じで、完全にライブレポのようになってしまった今回の映画の感想。まあ、「映画」といっても事実上、ライブの模様をそのまま映像として流しただけで、そういう意味では「オンラインライブ」みたいなものと言えるかもしれません。映画館で見れたのならば、音響と大迫力の映像で楽しめたのかもしれませんが、家でパソコンで見るには、単なるライブ映像になってしまったかな、といった感があります。まあ、もちろん、それでも十分楽しめたのですが。

ちなみに映像作品ならではのカメラワークは変なカット割りなどはなく、比較的おとなしく、しっかりメンバーの動向を映したものになっており、そういう意味では安心して楽しめたライブ映像になっていました。また、懐かしい曲から最新のナンバーまでバランスよい選曲も非常によく、時代を超えて変わらないスピッツの魅力も感じられました。やはりスピッツのライブは楽しいですね。また、是非ともナマで彼らのライブは見てみたいです!

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2021年11月15日 (月)

Coldplayと宇宙の旅

Title:Music of the Spheres
Musician:Coldplay

Coldplayの最近の話題といえば、日本でもヒットを記録した韓国のアイドルグループBTSとのコラボでしょう。そのコラボ作「My Universe」はアメリカのビルボードチャートで1位を獲得したほか、日本でもビルボードで最高位3位に食い込むなど、ヒットを記録しました。そのBTSとのコラボ作も目立つ、彼ら2年ぶりとなるアルバムですが、今回のアルバムではその他にもコラボが目立ちます。「Let Somebody Go」では女優としても活躍しているセレーナ・ゴメスとコラボ。「Human Heart」では女性コーラスグループのWe Are Kingとイギリスのミュージシャン、ジェイコブ・コリアーとのコラボも行っています。

さてそんな数多くのミュージシャンとコラボした今回のアルバム、まず非常に特徴的だったのがスペーシーなサウンドの作品が多かったという点。アルバム自体「Spheres」=天体というタイトルですし、BTSとのコラボ作も「My Universe」。今回、楽曲表記について何曲かはイラストになっていたのですが、1曲目のタイトルチューン「Music of the Spheres」は土星のイラスト、「Alien Choir」は輝く星のイラスト、さらに「Music of the Spheres II」は地球のイラストが用いられています。

もうひとつ大きな特徴として、スペーシーなサウンドとも通じる部分があるのですが、バンドサウンドの楽曲が極端に少なくなり、全体的にポップな楽曲が大半を占めるアルバムになっていたという点でした。そもそもドリーミーなオープニングからスタートし、実質的な1曲目である「Higher Power」からアップテンポなエレクトロポップ。セレーナ・ゴメスを迎えた「Let Somebody Go」もAORチューンとなっていますし、そもそも「My Universe」もスケール感あるエレクトロポップな作品。唯一「People of The Pride」のみバンドサウンドを取り入れたダイナミックな作風となっていますが、それ以外はどの曲も、Coldplayのバンド色が皆無なポップ路線が続いています。

まあ、もともとColdplay自体、ロックなサウンドを聴かせるバンドというよりは、ポップなメロディーラインを聴かせて人気を確保してきたバンドなだけにこの方向性自体は決して意外といった感じではないのかもしれません。ただ、今回のアルバムで一番問題なのは、その肝心のポップな作品について、メロディーラインが全然良くない、という点でした。

はっきりいって大ヒットした「My Universe」にしてもヒットした要因はBTSのアイドル人気ということ以上でも以下でもない、Coldplayとしても平凡なポップス。その他の曲についても、Coldplayらしい胸に響くような美メロ的な要素は皆無であり、全く面白みを感じません。あえていえばラストの「Coloratura」で彼ららしい切ない美メロが聴けるのですが・・・この曲も10分という長尺になった結果、妙に間延びした感が否めませんでした。

全体的にスペーシーなサウンドがコンセプチュアルで、いわばColdplayと音楽で宇宙旅行をしているような、そんな楽しみのある作品という部分はこの作品の美点ではありました。メロも彼らにしてはいまひとつといってもそれなりに完成度は高いだけに、決して聴いていてつらい、というレベルの作品ではないのですが・・・ただ、やはりColdplayとしては物足りなさが否めない凡作。かなり残念な1枚でした。

評価:★★★

COLDPLAY過去の作品
Viva La Vida or Death And All His Friends(美しき生命)
Prospekt's March
LeftRightLeftRightLeft
MYLO XYLOTO
Ghost Stories
A HEAD FULL OF DREAMS
Kaleidoscope EP
Live In Buenos Aires
Love In Tokyo
Everyday Life

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2021年11月14日 (日)

みんな結局、こういうロックが好き・・・

Title:Teatro d'ira - Vol.1
Musician:Maneskin

最近、世界的に注目を集めているロックバンド、Maneskin。もともとはイタリアで結成された男女4人組のバンド。イタリアで最も権威のある音楽祭「サンレモ音楽祭2021」で優勝を飾り、さらにはヨーロッパ最大の音楽の祭典「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2021」で1位を獲得。一気に世界的な注目を集めると、世界10か国のSpotifyチャートで1位を獲得するなど一気に人気を集め、まさに2021年最大級に話題を集めるロックバンドとなりました。

どこかの荒野のような場所で撮影された、いかにも70年代的な服装で着飾ったバンドがうつったジャケット写真がまずはいかにもオールドスタイルという印象を受けるバンドなのですが、実際、楽曲自体も昔ながらのハードロックをそのまま体現化したような作風。冒頭を飾る「ZITTI E BUONI」もヘヴィーなギターリフを中心として展開される、いかにもなハードロックな楽曲からスタート。サビのシャウトもいかにも昔ながらもロック然とした雰囲気です。「FOR YOUR LOVE」もメランコリックなメロディーラインをボーカルと一緒になぞるようなハードなギターサウンドが印象的で、途中、しっかりとヘヴィーなギターソロを聴かせる点も含めて、典型的なハードロック路線の楽曲となっています。

ただ、単純な昔ながらのハードロック路線に終始しているのか、と言われるとそうでもなく、もうひとつの方向性となるのが「LIVIDI SUI GOMITI」のようなラップを取り入れたミクスチャーロック路線。この曲も冒頭にヘヴィーなギターリフのイントロからスタートし、サビもダイナミックなバンドサウンドを聴かせてくれる迫力満点の楽曲。「IN NOME DEL PADRE」も同様に、ヘヴィーなギターリフと力強いラップを中心に展開されるミクスチャーロック路線。さすがにいまさらラップを取り入れただけで「今風」・・・とは言えないのでしょうが、ここらへん、単純なオールドスタイルのハードロック路線とは、また少々異なる、2010年代のハードロック路線だからこその方向性も感じられます。

英語曲もある一方、イタリア語曲も少なくなく、それがまた英語に聴きなれている身からすると新鮮な感覚も。また、全体的にメランコリックなメロディーラインの歌を聴かせる楽曲になっており、ただ昔ながらのハードロック路線で勢いで聴かせる、といった感じとは一線を画する、しっかりとしたメロディーラインも書いてくるバンドという点も大きな魅力でしょう。

そしてその上でこのアルバムを聴いて強く感じたのは、結局みんな、こういうロックが好きなんだね、ということでした。昔、ロックンロールリバイバルといって、昔ながらのガレージロックバンドが一種のブームみたいになった時も感じたのですが、なんだかんだいっても、みんなこういうハードなギターを中心に構成されたダイナミックなバンドサウンドの、爆音で聴いていて気持ちいい、いかにもロック然とした曲が好きなんだなぁ、ということをあらためて感じました。もちろん、私も含めて、ですが(笑)。

今後、さらなる注目を集めそうなロックバンド。なによりもダイナミックなロックサウンドが聴いていて非常に気持ちいいだけに、コロナ禍が落ち着いたら、1日も早い来日公演も望まれます。ちなみに、ある種老成されたようなサウンドとは裏腹に、メンバー全員、20歳から22歳という非常に若いメンバーばかりなのも頼もしい感じ。それがまた昔ながらのハードロック路線ながらも、どこか新鮮味を感じさせる大きな要因なのかもしれません。ロックが好きなら間違いなく、今、もっとも注目すべきロックバンドです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Half God/Wiki

ニューヨークを拠点において活動を続け、現在、注目のラッパーの一人となっているWikiのニューアルバム。うーん、このミュージシャン名、史上最高レベルで検索しにくい・・・。ただ、ミニマルなサウンドでメランコリックな雰囲気のトラックが魅力的。非常にシンプルながらも、耳に残るサウンドはこれから注目を集めそう。"Wiki"と検索をかければ、彼の名前が出てくる日も近い?

評価:★★★★

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2021年11月13日 (土)

「ジャンルレス」なアルバム

Title:ハレンチ
Musician:ちゃんみな

途中、EPのリリースもあったものの、オリジナルのフルアルバムとしては約2年ぶりとなるフィメールラッパー、ちゃんみなのニューアルバム。ラッパーとして活躍する反面、以前から活動のテーマとして「ジャンルレス」を標ぼうしている彼女。もちろん、その「ジャンルレス」は音楽のことに留まらず、性別や国籍という面でも言及しているのですが、ただ今回のアルバムに関しては、特に音楽性に関して彼女らしい「ジャンルレス」な展開になっていました。

1曲目「太陽」から、トラップ風のリズムながら切ないメロを聴かせる歌モノになっていますし、続く「Angel」もトライバルなリズムを聴かせる歌モノポップス。3曲目「君からの贈り物」もファンキーなリズムが印象的なポップチューンと、アルバム前半に関してはHIP HOP色が薄いポップな歌モノが並びます。

中盤以降はトラップ風のリズムにキュートな歌声を聴かせる「ホワイトキック」からスタートし、ハードコア風の「ピリオド」「Picky」など一転、HIP HOPなナンバーが並びます。一方内省的で、かつドリーミーな歌詞が印象的な「想像力」ではHIP HOPよりもむしろポエトリーリーディング的な楽曲。自らをみつめる歌詞も非常に心に残ります。

このようにHIP HOPに留まらない音楽性が特徴的だった本作。この音楽的なジャンルレスな点はちゃんみならしさと言えるでしょうし、大きな魅力にもなっていました。ただ一方で、それ以外の、特に歌詞の部分でジャンルレスを強調していたかというと、そこまで特徴的な印象は抱きませんでした。歌詞については特に前半は、切ないラブソングがメイン。正直言うと、結構「王道的」といった印象も受けました。

ただこの点も中盤以降に、より彼女らしさを発揮してきたのではないでしょうか。前述の通り内省的な歌詞が印象的な「想像力」に、さらに終盤の核となるのが「美人」でしょう。タイトル通り、女性にとっての「美」に焦点をあてて、彼女の主張をヘヴィーにつづるハードなHIP HOPチューン。かなり強烈なメッセージを帯びた作品になっており、アルバムの中でも大きな核となっています。

もっとも彼女、ジャンルレスといっても、この「美人」の歌詞もそうですが、しっかりと女性性という点を主軸に置いている印象も受けます。前半の切なさを感じるラブソングもそうなのですが、いわゆるジェンダーフリー的な部分を目指すのではなく、女性であるという点をしっかりと主軸に据えた上で、しっかりとした主張を繰り広げている感があります。決して女性であるということを捨てることなく、フィメールラッパーとしての主張をしっかりと伝える、それが彼女の大きな魅力なのでしょう。

もっとも反面、音楽性のジャンルレスはアルバム全体として焦点がぼやけてしまった印象もぬぐえません。実際、いままでの彼女の作品もそうなのですが、楽曲としてフックの弱さも感じてしまいます。そこらへん、難しい部分ではあるとは思うのですが・・・今後の彼女のさらなる成長も期待したいところなのです。

評価:★★★★

ちゃんみな 過去の作品
CHOCOLATE
Never Grow Up
note-book -Me.-
note-book -u.-


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2021年11月12日 (金)

折坂悠太の様々な音楽性を内包したステージ

折坂悠太 心理ツアー 愛知公演

会場 名古屋市芸術創造センター 日時 2021年11月2日(火)19:00~

Orisakashinri

7月のthe pillows以来、久しぶりとなるライブに足を運んできました。コロナ禍も比較的落ち着き、いろいろと制限はあるもののようやく徐々に再開してきたライブ。ただ、まだその開催は限定的で、仕事の都合も合わせて、なかなか行きたいライブに行ける機会がありませんでした。そんな中、ようやく機会をみつけて足を運んできたのは、最近話題のシンガーソングライター折坂悠太のライブ。直近のアルバム「心理」が年間ベストクラスの傑作アルバムだっただけに、はじめて彼のライブに足を運んできました。

まだ「若手のシンガー」である彼ですが、その音楽性からか、客層は比較的年齢層も高く、落ち着いた層が多かったのが印象的。ただ楽器の並んだだけのステージに、何かのモニュメントがアルミホイルで包まれたような、ちょっと不思議なセットが印象的でした。やがて19時をまわるとまもなくライブがスタート。いきなり冒頭でインストチューン「take 13」からスタートし、その後、最新アルバム「心理」の冒頭、「爆発」、そして独特なセリフの部分も印象的な「心」へと続いていきます。

その後、「名古屋ではいろんな食事などを満喫してちょっとした観光気分」という簡単なMCを挟んで、今度は前作「平成」から「揺れる」、そして「朝顔」へと続きます。ドラマ主題歌にもなった曲なだけに、これだけ早いタイミングで演るのはちょっと意外でした。

その後は「針の穴」や「トーチ」などをバンドサウンドバックにゆっくりと聴かせます。バンドはなんとツインドラムという迫力のあるリズム隊。エレピやサックス奏者、さらにベースはウッドベースと、かなり豪華で分厚い、迫力あるサウンドを聴かせてくれます。かと思えば、「馬市」ではバンドメンバーは去り、彼ひとりだけがアコギをかかえてしんみり聴かせるステージとなりました。

アコギ1本でのステージは「夜学」の冒頭も続きだったのですが、この曲では途中からバンドメンバーが加わり、むしろサイケデリックな雰囲気のある演奏を聴かせてくれます。フォーキーな曲調から一転、大きく雰囲気の異なる展開に魅入ってしまうステージで、間違いなくこの日のハイライトのひとつだったと思います。

そんな演奏を聴かせたかと思えば、続く「鯱」では一転、彼自身がマラカスをもつと、陽気なラテン風の賑やかなステージで会場を楽しませます。さらに「荼毘」ではジャジーな演奏を聴かせたかと思えば、「炎」では今度はギターを置いて、スタンドマイクをバックに力強く、その歌を聴かせます。さらには「星屑」ではハンドマイクで、まさに歌謡ステージのような歌を聴かせるパフォーマンスをみせてくれたりと、アルバムでも感じられた、彼の幅広い音楽性がそのまま反映されたステージパフォーマンスで一瞬たりとも目を離せない、そんなステージをみせてくれました。

その後は再び短いMCへ。続くは韓国のシンガーソングライター、イ・ランとのコラボとなる「윤슬(ユンスル)」だったのですが、このMCで、イ・ランが体調を崩しているという話になりました。「早く元気になってね」という意味を込めて歌い始めたのですが、ちょっと心配です。もちろん、イ・ランのパートは録音でした。そして本編ラストは「春」。ここでは彼がスレイベルを2本もち、この鈴とツインドラムを生かした力強いドラミングで迫力あるパフォーマンスを聴かせてくれました。

ステージは暗転したままアンコールへ。比較的早くメンバーが戻ってきて、今度は前作「平成」の1曲目「坂道」。さらにライブの中でピッタリ「頃合いを見てまた会おう」という歌詞が印象に残る「さびしさ」へ。そしてラストは、やはりアルバム「心理」の最後の曲「鯨」で締めくくり。ラストは会場全体が暗転し、サイケなサウンドを鳴り響かせながら終了。そしてパッとステージが明るくなると、折坂亮太をはじめとしてバンドメンバーが全員消えており、さらにモニュメントにかぶさったアルミホイルも消えて、会場はただ誰もいなくなった楽器が残るのみ・・・という、ちょっと虚無的な空気のある締めくくりとなりました。

ライブはジャスト2時間。コロナ禍になってから2度目のライブだったのですが、やはりライブは楽しい!!そしてこの日のステージは、上でも書いた通り、折坂悠太の様々な音楽性がそのままステージに反映された素晴らしいステージで、ある意味、歌謡曲のように「歌」を聴かせるパフォーマンスもあれば、バンドサウンドにより力強い演奏を聴かせるステージ、ジャジーな演奏や実験的なサウンドを奏でるサイケな演奏まで、実に様々な色を見せたパフォーマンスが魅力的でした。

正直、ライブパフォーマンスの側面ではさほど大きな期待はしていなかったのですが、予想をはるかに超える素晴らしいステージで、終始、ステージから目を離せない、緊張感もあるパフォーマンスが実に見事。あっという間の2時間でした。ライブミュージシャンとしても彼の素晴らしさ、実力を実感できたこの日のステージ。また、彼のライブには是非とも足を運びたいです!

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2021年11月11日 (木)

「再発」や「リパッケージ」の目立つチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のアルバムチャートは、なぜか「再発盤」やら「リパッケージ」やらが目立つチャートとなりました。

まず1位は韓国のアイドルグループSEVENTEEN「Attacca」が先週の2位からランクアップし、2週ぶり2度目の1位獲得。CD販売数1位、ダウンロード数29位、PCによるCD読取数20位。オリコン週間アルバムランキングでも9万7千枚を売り上げて1位返り咲き。これは11月5日にスペシャルパッケージであるCARAT VER.がリリースされた影響のようです。コロナ禍とビルボードチャートの定着により、シングルでの握手券商法はすっかり鳴りを潜めましたが、こちらの「リパッケージ」というアコギなスタイルは健在ですね。もうちょっとなんとかならないんでしょうか。

2位は先週1位のV6「Very6 BEST」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

3位も韓国の男性アイドルグループNCT 127「Favorite:NCT 127 Vol.3(Repackage)」が先週の30位からランクアップ。CDリリースに合わせてベスト10入りです。CD販売数3位、ダウンロード数42位、PCによるCD読取数35位。こちらも今年9月にリリースされたアルバム「Sticker」のリパッケージアルバム。ビルボードチャートでは「Sticker」と別アルバム扱いですが、オリコンでは「Sticker:NCT 127 Vol.3」と同じ扱いで、3位に再登場という形になっています。

そんな訳でベスト3のうち2作がリパッケージ盤という今週のチャート。4位以下の初登場でもリパッケージならぬ再発盤がランクインしており、それが7位初登場の竹内まりや「Variety」。CD販売数5位、ダウンロード数30位。本作は1984年にリリースされた彼女の6枚目のアルバムですが、このたび「2021 Vinyl Edition」としてリリースされた再発盤で、見事ベスト10入りしてきました(それなので「CD販売数」と書きましたが、実質的にはレコードの販売数ですが)。オリコンでも初動売上4千枚で6位初登場。ちなみに2014年にも「30th Anniversary Edition」としてLP盤がリリースされていますが、それにも関わらずレコード盤のみのリリースでベスト10入りしてくるあたり、その人気の高さをうかがわせます。ちなみに1987年にリリースさられた「REQUEST」も同じくレコード盤でリリースされ、こちらは13位にランクインしています。

そんな訳でリパッケージや再発盤が目立つチャート。オリコンチャートでは前述の「REQUEST」が9位に入っているほか、さらにRADIOHEADの「KID A」と「Amnesiac」をまとめて再発した「Kid A Mnesia」も7位にランクイン(ビルボードでは14位)しており、なぜか再発盤が目立つチャートとなっています。

もちろん、新譜もランクインしており、まず大きな話題なのは、なんといっても4位初登場のABBA「Voyage」でしょう。70年代に一世を風靡したスウェーデン出身の男性2人+女性2人によるポップスグループ。1982年に解散したものの、その後、1992年にベスト盤が大ヒットを記録したり、ミュージカル「マンマ・ミーア!」に彼女たちの曲が起用されたりと、根強い人気が続いていましたが、このたびまさかの再結成。そして実に40年ぶりとなるニューアルバムが本作となります。CD販売数4位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数17位。オリコンでも初動売上1万1千枚で4位にランクインするなど、その根強い人気を感じさせる結果となりました。ただ、今後の継続的な作品のリリースについては否定しているようで、とりあえずはこれが最後のアルバムとなりそう。

新譜はもう1枚。9位にZIPANG OPERA「ZERO」がランクイン。ZIPANG OPERAは佐藤流司、福澤侑、spiと、ボーカリストの心之介の4人組グループで本作はそのデビューアルバムとなります。CD販売数6位、ダウンロード数20位。オリコンでは初動売上4千枚で8位初登場です。

一方、今週はベスト10返り咲きも。まずOfficial髭男dism「Editorial」が先週の13位から6位にランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲き。通算9週目のベスト10ヒットとなりました。さらにBTS「BTS,THE BEST」が先週の24位からランクアップし、10位にランクイン。4週ぶりのベスト10返り咲き。通算15週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年11月10日 (水)

オークション番組発の男性アイドルグループが首位争奪戦

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は似たような出自の男性アイドルグループが1位2位に並んでいます。

1位初登場はBE:FIRST「Gifted」、2位にはINI「Rocketeer」が並んで初登場でランクインです。それぞれオーディション番組発の男性アイドルグループで、BE:FIRSTはSKY-HIが自腹で資材を投入し開始したオーディション番組「THE FIRST」から登場したグループ、一方INIは韓国発のオーディション番組の日本版「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」でそれぞれがデビュー作。出自も似ているグループということもあり、一部ファンの間では1位争奪戦が話題になったようです。結果、CD販売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数はINIが1位を獲得しましたが、ダウンロード数、ストリーミング数、ラジオオンエア数、You Tube再生回数とネット系指標で1位を獲得したBE:FIRSTが1位を獲得しました。

一方、オリコン週間シングルランキングではINIが初動売上50万8千枚、BE:FIRSTが初動売上19万3千枚と、こちらは結構な差がついてのINIの勝ち。CDの売上でこれだけ差がついて、ビルボードでは逆転してしまうのか、と相変わらずネット系の比重が高い集計方法にちょっと疑問に思わなくもないのですが、ビルボードとオリコンで1位が異なる結果となり、ある意味、痛み分けと言えるかもしれません。

3位は優里「ドライフラワー」が先週から同順位をキープ。これで51週連続ベスト10ヒット&通算14週目のベスト3ヒットとなりました。カラオケ歌唱回数はこれで38週連続の1位獲得。ただストリーミング数及びYou Tube再生回数7位のほか、ダウンロード数も11位と奮わず、これでベスト3入りなの?とは思ってしまうのですが。

さらに今週、優里の「ベテルギウス」が8位にランクインしてきています。フジテレビ系ドラマ「SUPER RICH」主題歌。ダウンロード数4位、ストリーミング数22位、You Tube再生回数21位。「ドライフラワー」と全く同じ方向性の固有名詞タイトルによるラブバラード。ただ「遙か遠く終わらないベテルギウス」と歌っているのですが、ベテルギウスといえば、既に星として終齢期を迎えており、いつ超新星爆発で消滅してもおかしくないと言われている恒星。かなり違和感を覚えてしまいます(ただ最新の研究では、まだ10万年は超新星爆発を起こさないという研究もあり、それも踏まえているのならばすごいのですが)。

続いて4位以下の初登場曲ですが、あと1曲。9位にBUMP OF CHICKEN「Small world」がランクイン。「映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ」主題歌。ご存じ、大人気キャラクターすみっコぐらしの映画化第2弾。映画のすみっコぐらしといえば、キャラクターに依存した映画というイメージをいい意味で裏切る内容が話題となり大きな評判を呼びましたが、本作はその第2弾。まさかのBUMP OF CHICKENが主題歌ということで、前作のヒットで予算が潤沢になったのかなぁ、と思ってしまいました(まあ第1弾の主題歌も原田知世と有名人だったのですが)。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数5位、Twitterつぶやき数60位、You Tube再生回数53位。

さらにロングヒット曲ですが、まずback number「水平線」は2位から4位にダウン。8週連続1位を獲得していたストリーミング数は3位にダウン。ダウンロード数も8位から18位に、You Tube再生回数も10位から11位にダウンしています。これで12週連続のベスト10ヒットとなります。

Official髭男dism「Cry Baby」も4位から6位にダウン。ストリーミング数は3位から5位、ダウンロード数は10位から17位、You Tube再生回数も12位から15位と全体的にダウン傾向。ただこれでベスト10ヒットは通算20週になりました。

そして今週、BTS「Butter」が6位から7位にダウンしたものの、ベスト10ヒットを連続25週に伸ばした一方で、「Permission to Dance」は11位に、「Dynamite」も12位にダウン。長く複数曲同時ランクインを続けていましたが、今週は1曲のみのベスト10ヒットとなりました。

一方YOASOBI「群青」は先週と同順位の10位をキープ。これで通算9週目のベスト10ヒットを記録しています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年11月 9日 (火)

ソロとして複雑な気持ちに・・・

Title:縦横無尽
Musician:宮本浩次

昨年、初となるソロアルバム「宮本、独歩。」をリリース。さらにカバーアルバム「ROMANCE」もリリースするなど、ソロとして好調な活躍を見せるエレファントカシマシのボーカリスト、宮本浩次。この勢いにのり、オリジナルアルバムとしては約1年7ヶ月ぶりの2ndアルバムがリリースされました。アルバムのスパンが1年7ヶ月というのはオリジナルアルバムとしては短すぎるという印象はないものの、その間にカバーアルバムのリリースを挟んでいることを考えると、かなりハイペースなリリースぶりがうかがえます。

そんな彼の2作目のソロアルバムなのですが、アルバムの出来としては決して悪い訳ではありません。柏原芳恵の「春なのに」のカバーをはじめととして「ROMANCE」同様、歌謡曲にグッと寄った哀愁感あふれる作品や、エレカシから考えると、かなりポップという印象を受ける作品が目立ちつつ、宮本浩次の無骨ながらも力強いボーカルをしっかりと生かしたアルバムになっており、彼らしさがしっかり生かされたソロアルバムになっていたと思います。

ただ、聴いていて非常に複雑な気分にさせられるソロアルバムになっていました。まず1点目としてポップ路線ということなのですが、ちょっとあまりにもポップすぎるんじゃないの?という点。モータウンビートで軽快な「十六夜の月」だったり、歌謡曲路線で哀愁たっぷりに聴かせる「shining」などは、まあこれはこれでいいかも、とは思うのですが、「この道の先で」などはサビへの入り方など、かなり90年代な要素を感じるJ-POP的なポップスになっていますし、「passion」などもベタな前向き歌詞も含めて、ポップなメロでJ-POP的。ラストの「P.S.I love you」に至っては、サビ先というベタな売れ線J-POP路線。90年代にドラマ主題歌としても流れても不思議ではないくらいの曲になっていました。しかしこれらの曲、ポップな路線も悪くはないとはいえ、ちょっとあまりにもJ-POPすぎない??ということを感じてしまいました。

そしてもうひとつの点、むしろこちらの方が強く気になったのですが、今回のアルバムの中の曲には少なからずエレカシとして演れたのではないか、という曲が含まれていました。「stranger」はノイジーなギターサウンドでロッキンな作風ですし、「浮世小路のblues」など、哀愁感あふれるメロディーがダイナミックなバンドサウンドにのるスタイルなど、完全にエレカシでは?と思ってしまいます。さらに「Just do it」も疾走感あふれるガレージロック路線。これもむしろエレカシとして演った方がよかったのでは?とも思ってしまいました。

前作「宮本、独歩。」はソロアルバムらしく、エレファントカシマシでは演れなさそうな曲が目立ったアルバムになっていました。しかし、2作目の本作は、かなりの部分、エレカシの曲としても問題なかったのでは?と感じてしまう曲が並んでいます。皮肉にもそういう曲がまた宮本浩次のボーカルにもピッタリマッチしていたのですが、それならエレカシとしての活動を再開してもいいんじゃない?とも思ってしまい、それでもソロを続けているという点に、複雑な心境を抱いてしまいました。

さらに複雑な印象を受けてしまうのが、このソロアルバムがエレカシのアルバムよりも売れているという事実。結局、こういうJ-POP的なポップス路線の曲が聴きたかったってこと??なんか、このままポップ路線、もしくは歌謡曲路線にシフトしていきそうで、かなり危惧しているのですが・・・次はやはりエレカシとしてのアルバムを聴きたい・・・と前作の時も書いたんだよなぁ。

評価:★★★

宮本浩次 過去の作品
宮本、独歩
ROMANCE


ほかに聴いたアルバム

Amulet/SHE'S

4人組ピアノロックバンドのニューアルバム。「追い風」「Spell On Me」がドラマ主題歌にも採用され、そのタイトル通り「追い風」が吹いているような彼ら。爽やかなメロディーラインは良くも悪くも「売れ線」という印象も受けるのですが、ただ、ピアノロックバンドというスタイルながらも、あまりピアノを効果的に生かしたような作品もなく、消化不良な感じ。前作同様、悪くはないのですが、これといった特徴もない感じで・・・。彼らのアルバムを聴くのはこれが2作目なのですが、正直、次聴くかどうかといわれると微妙かなぁ・・・。

評価:★★★

SHE'S 過去の作品
Tragicomedy

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2021年11月 8日 (月)

彼ららしい曲の並ぶサブスク用アルバム

Title:Fresh Cheese Delivery
Musician:WANIMA

今回紹介するWANIMAのニューアルバムは、サブスク限定でリリースされた全18曲入りのニューアルバム。といっても、純粋なニューアルバムではなく、昨年9月にリリースされたミニアルバム「Cheddar Flavor」に、今年4月にリリースされたシングル「Chilly Chili Sauce」、8月にリリースされたシングル「Chopped Grill Chicken」をそのまま加えて、新曲「Brand New Day」を追加した18曲。サブスク的には過去のアルバムを続けて聴けばいいだけで何のため?という感もあるのですが、こうやって「アルバム」としてリリースするアナウンスをすれば、特にシングルなどは特に聴いてこなかったリスナー層を取り込めるというメリットもあるのでしょうか。というか、まさに私のことですが(笑)。

そんな訳で、2曲目から10曲目に関しては、以前「Cheddar Flavor」のレビューで紹介済、ということになるのですが、今回あらためて聴いてみました。ご存じの通り、Hi-STANDARDの横山健が代表をつとめるPIZZA OF DEATH所属の彼ら。基本的にはHi-STANDARDの流れを組む、「正統派」ともいえるメロディアスパンク路線ということは十分認識されていることとは思います。まさに今の夏フェス向けとも言えるミュージシャン。コロナ禍の中で、なかなかその本領が発揮できずにいるバンドと言えるかもしれません。

ただ、そんな中であらためて彼らの作品を聴いてみると、非常に歌謡曲的、あるいはJ-POP的な要素が強いバンドということがあらためて実感させられます。例えば「SHADES」などのある種の郷愁感ある風景描写は、歌謡曲的な要素を感じさせますし、同時に前向き応援歌的な歌詞にJ-POP的な要素も感じさせられます。「春を待って」などもタイトルそのままですが、郷愁感強い歌詞とメロディーラインがまさに歌謡曲的。ハイテンポでパンクロックなバンドサウンドとのギャップがまたWANIMAの人気の秘訣とも言えるかもしれません。

また、そのほかにも「離れていても」などはメランコリックなメロディーラインでポップにまとめあげており、ここらへんはJ-POP的な楽曲と言えるでしょうし、一方では「枯れない薔薇」でスカのリズムを、「Faker」でレゲエのリズムを取り入れたりと、ある種の「隠し味」のような要素を入れてきているのもまた、音楽性の幅を広げ、人気を確保するひとつの要因と言えるのかもしれません。

もっとも、この歌謡曲的、J-POP的な要素が「ベタ」という印象に結びついてしまうのも否めず、良くも悪くも「フェス向け」という感想を抱いてしまう点は否めないのですが。そういう点を含めてWANIMAらしさがよく出ていたアルバムだと思います。前作「Cheddar Flavor」の感想でも書いたのですが、また彼らのこういう曲を、早くライブで大声を出してみんなで歌える日が1日も早く来てほしいものです。

評価:★★★★

WANIMA 過去の作品
Are You Coming?
Everybody!!
COMINATCHA!!
Cheddar Flavor


WINDORGAN/Yogee New Waves

約2年半ぶりとなるYogee New Wavesのニューアルバム。今回のアルバムも、爽快なギターサウンドを中心として軽快なシティポップを聴かせてくれる安定の内容。基本的にポップなメロにはクオリティーの高さも感じられます。ただその反面、デビュー以来の課題だったYogee New Wavesらしさというか、彼らの独自性が若干後退してしまった印象も。個性を出すことよりも楽曲自体のクオリティーを重視した感じでしょうか。ただ個人的にはもうちょっと彼らにしか書けない独特のサウンドを聴きたい感も強いのですが。

評価:★★★★

Yogee New Waves 過去の作品
WAVE
SPRING CAVE e.p.
BLUEHARLEM
to the MOON e.p.

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2021年11月 7日 (日)

3作目にしてようやく?

Title:Strides
Musician:小袋成彬

男性シンガーソングライター、小袋成彬の3枚目のニューアルバム。2019年に「Piercing」をリリースした後、配信シングルを含めて楽曲の発表のなかった彼でしたが、約2年弱というインターリュードを経て、久しぶりとなる新作の発表となりました。

小袋成彬については、デビュー作「分離派の夏」が、かの宇多田ヒカルプロデュースということもあり大きな話題となりました。ただ、正直なところ、そのデビュー作については彼の実力が垣間見れる部分があったものの、出来栄えとしては、周囲の絶賛が懐疑的に感じられるような作品だったことは否めません。特にサウンドプロデュースとして無駄と感じさせる音も多く、詰め込みすぎという印象を強く受けてしまいました。そしてこの詰め込みすぎというイメージは前作「Piercing」でも感じられ、全体的に作品の交通整理が出来ていない、という感を強く受けてしまいました。

そんな結果を反映するかのように、人気の側面でも残念ながらいままで伸び悩んできた感は否めません。前作「Piercing」に至ってはチャートインも出来ず、若干、忘れられたミュージシャンになりつつありました。その後の本作までのリリースに2年近い月日が経ってしまったのも、そこらへんの事情もあったのかもしれません。ただ、そうしてリリースされた久しぶりのニューアルバムは、ようやく彼の実力をしっかりと感じられる快心の出来に仕上がっていたように感じました。

今回のアルバムも、作品としての基本的な軸はいままでのアルバムと同様、HIP HOPの要素を取り入れて、メロウなサウンドで聴かせるいわば「ネオソウル」と称されるような今風のR&B路線。ただ今回は7曲入りのミニアルバムということもあり、アルバム全体としての方向性もはっきりしており、いままでのような詰め込みすぎという印象はありません。ただ、小袋成彬のやりたいことがしっかりと示された作品になっていたように感じます。

「生きるためには働かなきゃな」とかなりシニカルな歌詞も印象的な1曲目「Work」から、まず強いベースラインとメロウなピアノが印象的なR&Bチューン。「Rally」も軽快なリズムで疾走感あるナンバーですが、メロウなエレクトロサウンドと重低音を効かせたビートが強いインパクトを残す楽曲に仕上がっています。

アルバムの中核をなすのが中盤の「Butter」。こちらもリズムトラックを前面に押し出しつつ、ムーディーでメロウなメロディーラインをハイトーンボイスで聴かせる楽曲が耳に残ります。「Route」もHIP HOP的なボーカルとトラックの中、哀愁感を覚えるメロディーラインが印象的な楽曲となっていました。

今回のアルバムでも、彼のサウンドはよくあるネオソウル系シンガーのスタイルを踏襲した感もあり、まだ彼独特のサウンドといったところまでは至っていないように感じます。ただ、詰め込みすぎだったいままでの作品と比べると、サウンドプロデュースも非常にすっきりとまとまり、グッとカッコよさが増した感じがありました。メロウなメロディーラインにもインパクトもあり、「Work」のようなシニカルさもある歌詞も印象に残ります。しっかり小袋成彬というミュージシャンの実力を感じさせる傑作アルバムに仕上がっていたように感じました。3枚目にして、ようやく魅力的な作品を作り出すことが出来た彼。ある意味、これからが勝負のような感がします。あとは、もうちょっと彼だけの独自のスタイルを身に着けて行けばさらにおもしろいと思うのですが。

評価:★★★★★

小袋成彬 過去の作品
分離派の夏
Piercing

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美しいメロディーと歌が魅力的

Title:Friends That Break Your Heart
Musician:James Blake

セルフタイトルのデビューアルバムが大きな話題となり、一躍、時の人となってから早くも10年。ただここ最近、そのメロディーラインの美しさにさらに磨きのかかってきた感のあるイギリスのシンガーソングライターJames Blake。本作はそんな彼の、約2年半ぶりとなる5枚目のニューアルバム。話題性という意味では一時期に比べて落ち着いてきた感もあるのですが、イギリス本国のナショナルチャートでは最高位4位とここに来て自己最高位を記録するなど、確固たる人気を確保しています。

今回のアルバムに関しても、まずアルバムを聴き始めると、そのインパクトを持ちつつ、非常に美しいメロディーラインが耳を惹きます。エレクトロサウンドをバックに、清涼感ある歌声を聴かせる1曲目「Famous Like Words」も魅力的ですが、前半で耳を惹くのが2曲目「Life Is Not The Same」で、哀愁感たっぷりの泣きメロが大きなインパクト。ブルージーな雰囲気も漂う、かなりベタなメランコリック路線ながらも一方リズムトラックにはトラップの影響も感じられる今風なものとなっている点がまたユニークさを感じます。

その後も女性シンガーのSZAも参加した「Coming Back」などメロディーの美しい曲が並ぶのですが、正直言ってここらへんの前半は、メロディーラインの美しさは魅力的ではあるものの、正直なところ目新しさはなく、曲が進むにつれて、徐々にダレてきはじめてしまう・・・という印象を受けてしまい、その後の展開に不安を感じてしまいました。

そんなイメージがガラッと変わったのが中盤、ラッパーのJIDとSwaVayの参加した「Frozen」でしょう。James Blakeのファルセットボーカルでメランコリックな歌を聴かせるという本筋は変わらないものの、ダークなトラックをバックとしたラップが入ってくるという点で楽曲のバリエーションを感じさせる本作。続く「I'm So Blessed You're Mine」もトラック風のエレクトロサウンドを前面に出すという挑戦的なナンバーで、この中盤の展開にアルバムがグッと引き締まります。

後半は再びメランコリックな歌を聴かせる展開に戻るのですが、前半よりも、よりメロディーラインのインパクトが増してくる印象が。「Foot Forward」「Say What You Will」もよりポップでインパクトあるメロディーラインが魅力的ですし、女性ボーカリストのMonica Martinがゲストで参加した「Show Me」も、Monica Martinの伸びやかで美しいボーカルを効果的に用いた聴かせる泣きメロの楽曲に仕上げています。

終盤のタイトルチューン「Friends That Break Your Heart」も、アコギの音色を入れつつ、郷愁感のあるフォーキーな作風が魅力的で、彼のメロディーの良さをより強調したような楽曲に。ラストの「If I'm Insecure」は逆に分厚いサウンドで荘厳さを感じさせる展開となっています。後半もエレクトロサウンドのトラックを聴かせてくるのですが、正直なところサウンド面の印象は薄く、ただただ彼の美しいファルセットボーカルとメランコリックなメロディーラインが耳を惹く楽曲が目立ちました。

全体的にはやはり彼の歌が主軸となっているアルバム。途中、若干ダレるかも、といった感じもありませんでしたが、中盤の実験的な曲がアルバム全体を引き締め、後半は再び歌が主軸となってくるものの、バリエーションの多さもあって、最後まで一気に楽しめる、そんな傑作アルバムに仕上がっていました。個人的にはメロディーラインの美しさだけで楽しめた前作、前々作に比べると劣る印象もあるのですが、それを差し引いても彼の魅力を存分に感じることがアルバムだったと思います。その歌を十二分に楽しめた作品でした。

評価:★★★★★

JAMES BLAKE 過去の作品
JAMES BLAKE
ENOUGH THUNDER
OVERGROWN
The Colour In Anything
Assume From
Covers

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2021年11月 6日 (土)

良質なカバーが並ぶ

Title:What a Wonderful World with Original Love?

今年、なんとデビューから30周年を迎えたOriginal Love。デビュー当初から高い評価を受け、数多くのミュージシャンに影響を与えてきたOriginal Loveこと田島貴男ですが、今回、デビュー30周年を記念して、初のオフィシャル・カバーアルバムがリリースされました。

集まったミュージシャンたちは、まさにOriginal Loveの近辺に位置するミュージシャンばかり。かつて、ピチカートファイヴとして共に活動していた小西康陽をはじめ、斉藤和義や原田知世、さらに今のミュージックシーンの中でOriginal Loveの雰囲気を感じられそうな若手ミュージシャンであるYogee New WavesやSuchmosのYONCEが参加。ちょっと意外なところでは、ラッパーのPUNPEE、5lack、GAPPERからなるユニットPSGも参加。さらになぜか東京事変近辺のメンバーが多く、椎名林檎がソロで参加しているほか、東京事変名義でも参加。さらに東京事変の浮雲こと長岡亮介も独自に参加しており、東京事変がらみで3曲もカバーが収録されています。

さて今回のカバーアルバム、そこに収録されている曲に関しては、非常に良質なカバーが並んでいる、この一言に尽きるように思います。SOIL&"PIMP"SESSIONSとWONKのKENTO NAGATSUKAによる「MILLION SECRETS OF JAZZ」や、斉藤和義がReiと組んだ「JUMPIN' JACK JIVE」など、基本的にはジャジーなアレンジをほどこした曲が目立ちますが、一方で原田知世の「朝日のあたる道」は彼女らしい爽やかなポップソング、長岡亮介「ディア・ベイビー」はカントリー調のアレンジに、さらに小西康陽「夜をぶっとばせ」はピチカートの延長線上のようなラウンジのアレンジにしあがっています。もっとも「夜をぶっとばせ」はもともとピチカートの田島貴男時代の曲を、Original Loveがカバーした曲らしいので、いわば逆輸入といった感じですね。

そんな中で一番耳に残ったのが椎名林檎の「LET'S GO!」と東京事変の「プライマル」。言うまでもなく、特に椎名林檎によるボーカルが秀逸で、力強さと芯の強さを感じさせると同時に、女性らしいかわいらしさを兼ね備えたボーカルが楽曲にもマッチしており、彼女のボーカリストとしての魅力が存分に発揮されたカバーに仕上がっていました。

そんな訳で、全体的には良質なカバーが並んでおり、Original Loveのファンはもちろん、アルバムに参加しているミュージシャンのファンも安心して聴けるアルバムなのは間違いありません。ただ、その上で気になってしまったのですが・・・全体的にはおとなしい、良くも悪くも無難なカバーだったかな、という印象も受けました。最後のPSG (PUNPEE, 5lack, GAPPER) & Original Love名義による「I WISH/愛してます」こそHIP HOPの要素を取り入れての挑戦的なカバーだったのですが、それ以外の曲に関しては、良質なカバーであることは間違いない反面、期待通りでしたが、期待を超えた感はなかったかな、といった印象も受けるカバーで、そういう意味では良くも悪くも期待通りといった印象を受けました。

もっとも、全体的にOriginal Loveの魅力をしっかりと伝えるカバーだったことは間違いありません。ちなみにこの30周年企画、次はオールタイムベストもリリースされるということ。こちらも楽しみ。そしてその次はそろそろOriginal Loveのオリジナルアルバムを!

評価:★★★★

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2021年11月 5日 (金)

ミスチル桜井のポップス好きがわかる

Title:沿志奏逢4
Musician:Bank Band

アルバムとしては2010年にリリースされた「沿志奏逢3」から、なんと11年ぶりのリリースとなるBank Bandのアルバム。Bank Bandは2004年にMr.Childrenの桜井和寿とプロデューサー小林武史を中心に結成されたスーパーバンド。彼らに坂本龍一を加えた3人が資金を拠出した非営利段階「ap bank」を支援する目的で結成されたバンド。この「ap bank」は環境保護や自然エネルギー促進事業、省エネルギーなど様々な環境保全のためのプロジェクトを提案・検討している個人や団体へ低金利で融資する団体。さらに2005年から毎年、Bank Bandを中心として様々なミュージシャンが参加するイベント「ap bank fes.」は音楽ファンのみならず多くの方にとっておなじみのイベントではないでしょうか。

Bank Bandのアルバムは2010年以来途絶えていたのですが、主に「ap bank fes.」への出演をはじめ、配信シングルをリリースしたりと、それなりにコンスタントな活動を続けてきていました。ただ、「ap bank fes.」自体、2018年に開催された後、2019年2020年と開催されず、ここ数年、ちょっと忘れられている感もありました。しかし今年、オンラインで「ap bank fes.」が開催され、さらに非常に久しぶりとなるアルバムがリリース。Bank Bandのための新録ではなく、過去のベスト盤になるのですが、Bank Bandとしてのオリジナル曲は全曲収録。数多くのカバー曲に、さらに新曲となる「東京協奏曲」も収録され、まさに待望の作品となりました。

今回のBank Bandのベスト盤は2枚組となり、1枚目は通常のスタジオ録音音源。一方、2枚目は、いままでのap bank fes.で披露された楽曲を収録したライブベストとなっています。Bank Bandとしてのオリジナル音源も収録されているのですが、基本線となるのは数々の邦楽のカバー。そのセレクトが実に多彩にわたっており、特に桜井の幅広いポップスに対する愛情を感じさせます。それこそ桑田佳祐や小田和正、中島みゆきといった大御所といっていいミュージシャンから岡村靖幸やジュンスカのような、ミスチルのもう一世代上となるミュージシャン、さらにはキリンジ、フジファブリックなどといった中堅の実力派ミュージシャンからSyrup16gのような、サブカル系のロックバンド。さらに彼自身がファンと公言しているKANちゃんのカバーまで、邦楽というカテゴリーの中から、超有名どころから比較的、マイナーどころの実力派まで幅広いセレクトが魅力となっています。

ただ一方、その肝心なカバー、特にサウンドに関しては、良くも悪くもどの曲もJ-POPのフィールドに引きずりこんだような、バンドサウンドにストリングスも入れた、良く言えばスケール感がある、悪く言えば少々大味といった印象も受けるアレンジになっていました。ここは悪い意味で小林武史らしいアレンジといった印象も受けるのですが、全体として楽曲の特徴に関係ない、一本調子な感も否めないサウンド構成になっており、卒はないものの面白みもないといった感のあるアレンジでした。

もっとも、そんなカバーですが、桜井がボーカリストとして歌うと、完全に桜井和寿の曲になってしまうあたりは見事。さらにMISIAや宮本浩次、ライブベストの方には、ASKAや小田和正といったカバー元の本人も登場というかなり豪華なゲストも大きな魅力。ここらへんはさすが小林武史や桜井の人脈といった感じでしょうか。他に類を見ない、豪華なゲストによるアルバムに仕上がりました。

また、今回のアルバム、基本的にJ-POPのフィールドに引きずり込んだポップなカバーに仕上げたことにより、原曲の持つ歌そのものの魅力を再認識できるカバーも少なくありませんでした。一番印象的だったのがSyrup16gの「Reborn」。もともとメロディーラインの良さは大きな魅力であった曲なのですが、今回、Bank Bandにより、原曲のバンドサウンドが取り除かれ、よりポップなアレンジを施したことにより、この曲のメロはこんなによかったんだ!!ということにあらためて認識されるカバーに仕上がっていました。

そんな訳で、正直なところ「お!」と思うような目新しい解釈はありませんし、基本的に無難なポップに仕上げたカバーという印象は受けてしまいます。ただ、選ばれたカバーはどれも名曲ばかり。桜井のボーカリストとしての力量は十分感じられますし、豪華ゲストも魅力的。さすが日本のポップシーンのトップを行くボーカリストとプロデューサーによるバンドのアルバムだな・・・と思うアルバムでした。しばらく停滞気味だったap bank及びBank Bandの活動ですが、これを機に、再度積極的な活動が再開されるのでしょうか。コロナが明けたらap bank fes.も一度行ってみたいなぁ。

評価:★★★★

Bank Band 過去の作品
沿志奏逢2
沿志奏逢3


ほかに聴いたアルバム

ARTISAN 30th Anniversary Edition/山下達郎

山下達郎が1991年にリリースしたアルバムの30周年リマスター盤。個人的に本作は、はじめてリアルタイムで聴いた山下達郎のオリジナルアルバムということで印象深い作品。もうあれから30年も経つのか・・・と自分も年を取ったなぁ、という感慨深くもあります。ただ、中学生だった当時は正直このアルバムの「良さ」にピンと来ず。久々に聴いてみると、あらためて非常に魅力的な傑作だったことを再認識させられます。特にジュブナイル的なノスタルジーあふれる作品は、今聴くと、胸がキュンキュンしてくる魅力が・・・ただ、確かに中学生にはこのノスタルジックな良さはわからないよなぁ、なんてことも思ったりして。しかし、これが30年前の作品なのですが、この後、彼はわずか3枚しかオリジナルアルバムをリリースしていないんですよね。既に直近のオリジナルアルバムから10年も経過していて、次のオリジナルアルバムはいつ??

評価:★★★★★

山下達郎 過去の作品
Ray of Hope
OPUS~ALL TIME BEST 1975-2012~
MELODIES(30th Anniversary Edition)
SEASON'S GREETINGS(20th Anniversary Edition)

Big Wave (30th Anniversary Edition)
COME ALONG 3
POCKET MUSIC (2020 Remaster)
僕の中の少年 (2020 Remaster)

LOVEBEAT 2021 Optimized Re-Master/砂原良徳

こちらは2001年にリリースしたソロ4枚目となるオリジナルアルバムのリマスタリング。音が劇的に良くなったか・・・と言われると、手元の安い再生機器だとちょっとわかりにくいのですが、それでも「声」の部分は明確になった印象も。ただそれ以前に、時代によって移り変わりの激しいエレクトロのジャンルでありつつ、20年以上前の音が、今なお、色あせることなく聴くことが出来る点である種の驚きも感じてしまいます。何気に彼も、このアルバム以降、オリジナルアルバムを1枚しかリリースしておらず、新作が待たれる・・・というよりも、お蔵入りしているMETAFIVEのアルバムのリリースを!!!

評価:★★★★★

砂原良徳 過去の作品
No Boys,No Cry Original Sound Track
liminal

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2021年11月 4日 (木)

最後のベスト盤で見事1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

最後のベストアルバムで1位を飾りました。

今週1位はV6のベストアルバム「Very6 BEST」が獲得。11月1日にメンバーの森田剛がジャニーズ事務所を退所し、それをきっかけに活動に21年に及ぶ活動に幕を下ろしたV6。本作はその最後にリリースされたベストアルバムとなります。CD販売数及びPCによるCD読取数がそれぞれ1位を獲得し、総合順位でも1位を獲得しました。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上18万3千枚で1位初登場。直近のオリジナルアルバム「STEP」の13万1千枚(1位)よりアップ。ベスト盤としての前作「SUPER Very Best」の15万2千枚よりアップしています。

昨今は、ジャニーズ系アイドルグループは、NEWSやらKAT-TUNやらメンバーの脱退などによりボロボロになってしまうグループが多い中、最終的にはメンバーのジャニーズ事務所退所がきっかけとはいえ、20年以上、オリジナルメンバーで活動を続けていたというのは立派なもの。メンバーそれぞれのこれからのさらなる活躍を期待したいところです。

2位は先週1位にランクインしたSEVENTEEN「Attacca」がワンランクダウンでベスト3をキープしています。

3位初登場はavexのダンスグループAAAのメンバーであり、ラッパーとしても活躍しているSKY-HIの「八面六臂」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数13位。オリコンでは初動売上1万4千枚で5位初登場。直近作はベストアルバム「SKY-HI's THE BEST」で同作の9千枚(13位)からアップ。オリジナルアルバムとしての前作「JAPRISON」の1万枚(7位)からもアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まずは4位にイギリスのシンガーソングライター、Ed Sheeran「=」がランクインです。ダウンロード数では本作が1位。ただCD販売数は9位、PCによるCD読取数は15位に留まり、総合順位はこの位置となりました。デビュー以来、アルバムタイトルが「+」「×」「÷」と来て、当然次は「ー」かと思いきや、意表をつかれました。次はきっと「ー」でしょう。ちなみに読み方は「イコールズ」だそうです。オリコンでは初動売上8千枚で9位初登場。直近作はコラボ作をあつめた企画盤「No.6 Collaborations Project」で、同作の9千枚(6位)からは若干のダウン。オリジナルアルバムとしての前作「÷」の1万2千枚(4位)からもダウンしています。

5位は槇原敬之「宜候」がランクイン。ご存じの通り、昨年2月に覚せい剤保持で逮捕された彼の、復帰後初となるオリジナルアルバム。逮捕から1年7ヶ月というスパンでの復帰には賛否があるようで、特に執行猶予も明けていない状況での復帰には否定的な意見もあるようですが、ただ、執行猶予には、その間、しっかりと真面目に働いて社会復帰してください、という意味もあり、そもそも執行猶予が明けないと活動再開できないんなら、刑務所入った方が短いじゃん(これ、石野卓球がTwitterで言っていたのですが)という無意味な事態になることから考えると、執行猶予期間中の活動再開も何も問題はないのではないでしょうか。前にも書いたかもしれませんが、よく芸能人が復帰すると「普通の会社員なら会社をクビになるのに」という意見も見かけるのですが、そもそも雇用契約で守られている会社員と、売れ無くなれば容赦なく捨てられる芸能人を混同している時点でおかしな比較でしょう。CD販売数、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数8位。オリコンでは初動売上1万3千枚で6位初登場。直近作はカバーベスト盤「The Best of Listen To The Music」の1万5千枚(4位)よりダウン。ただ、オリジナルアルバムである前作「Design&Reason」の1万枚(10位)よりアップしており、ファンはこの一件でほとんど離れていかなかったんだな、ということが伺わされます。まあ、自分も買ったんですけどね。あの逮捕の影響で発売中止となった「Bespoke」もリリースしてくれないかなぁ・・・。

6位は倉木麻衣「unconditional LOVE」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数11位。オリコンでは初動売上1万4千枚で4位初登場。直近作はベスト盤「Mai Kuraki Single Collection~Chance for you~」で、同作の初動1万8千枚(6位)からダウン。オリジナルアルバムとしての前作「Let's GOAL!~薔薇色の人生~」の1万9千枚(3位)からもダウンしています。

8位初登場はさだまさし「アオハル 49.69」。CD販売数7位、ダウンロード数33位、PCによるCD読取数35位。彼にとって初となるフォークソングのカバーアルバムで、「49.69」とはキャリア49年目を迎える69歳のさだまさし、という意味だそうです。オリコンでは初動売上9千枚で7位初登場。直近作はライブアルバム「存在理由~Raison d'etre~ さだまさしコンサートツアー2020」で、同作の1千枚(25位)からアップ。直近のオリジナルアルバム「存在理由~Raison d'etre~」の1万枚(6位)からは若干の減少となっています。

9位には韓国の男性アイドルグループBTOB「Outsider」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数39位。日本盤となる4曲入りのミニアルバム。オリコンでは初動売上6千枚で13位初登場。直近作は韓国盤の「4U:OUTSIDE」で同作の2千枚(21位)よりアップ。

最後、10位には女性声優内田真礼「HIKARI」が初登場。CD販売数12位、ダウンロード数24位、PCによるCD読取数31位。オリコンでは初動売上6千枚で12位にランクイン。前作「you are here」の1万枚(9位)からダウン。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年11月 3日 (水)

ロングヒット再び・・・・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

新曲が目立った先週から一転、予想はしていたのですが再びロングヒットが目立つチャートとなりました。

ただし1位は新曲。秋元康系日向坂46「ってか」が獲得。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ダウンロード数4位、ストリーミング数61位、ラジオオンエア数25位、Twitterつぶやき数9位。この手の曲名がいかにも秋元康っぽくて、60を超えた中年おやじ(というかじじい)がこういう言葉を臆面もなく使うあたり、気持ち悪くて仕方ないのですが、まあそれが良くも悪くも現役感の要因なのでしょうね。オリコン週間シングルランキングでは初動売上41万5千枚で1位初登場。前作「君しか勝たん」の初動48万6千枚(1位)からダウンしています。

2位は新たなロングヒットになりつつあるback number「水平線」が先週の3位からランクアップ。ストリーミング数は8週連続の1位。ダウンロード数は先週からかわらず8位をキープ。You Tube再生回数は12位から10位と再びベスト10入り。これで11週連続のベスト10ヒット&4週連続通算8週目のベスト3ヒットとなりました。

そして今週、優里「ドライフラワー」が6位からランクアップし、ベスト3入り。ベスト3入りは今年5月12日付チャート以来24週ぶり、通算13週目のベスト3ヒットとなります。ただストリーミング数が4位をキープしているほかはダウンロード数が11位から12位、You Tube再生回数も6位から7位とダウンしており、目立った動向はありません。昨年11月25日にランクインしてからそろそろ1年になるのですが、正直、そろそろもういいよ・・・と思ってしまうのですが・・・。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場はあと1曲のみ。7位にAdo「阿修羅ちゃん」が初登場でランクイン。テレビ朝日系ドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」主題歌。ボカロ系出身者の曲でいきなりドラマ主題歌というのはちょっと意外な感もありますが、結構ストレートに反抗的な歌詞といい、ホーンを入れた軽快なアレンジといい、王道のJ-POPといった感がドラマ主題歌との相性もよかったのでしょう。ダウンロード数2位、You Tube再生回数4位の一方、ストリーミング数は45位と伸び悩んでおり、今後のヒットの鍵になりそう。

またベスト10返り咲きも。YOASOBI「群青」が先週の19位から10位にランクアップ。4月28日付チャート以来、26週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これは10月29日に英語Ver.の「Blue」がアップロードされた影響のようです。この「言語違い」でも同じ曲となる取扱い、どう考えてもおかしいと思うのですが、どうにかならないのでしょうか?これで通算8週目のベスト10入りとなりました。

さらにBTS「Dynamite」が先週の11位から9位にランクアップし、こちらは2週ぶりのベスト10返り咲き。通算58週目のベスト10ヒットとなります。こちらももうそろそろうんざりな感なのですが・・・。また「Butter」は8位から6位、「Permission to Dance」も10位から8位にアップ。それぞれ24週及び17週連続のベスト10ヒットとなります。

ロングヒット曲ではOfficial髭男dism「Cry Baby」が7位から4位に再びアップ。ダウンロード数は9位から10位に、You Tube再生回数も8位から12位にダウン。ストリーミング数は3位を維持しているものの、全体的にはこちらもランクアップのための目だった動きはありません。これで通算19週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。来週はまた新曲がランクインしてくれるといいのですが。明日はHot Albums!

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2021年11月 2日 (火)

THE J-POP

Title:FREEDOM ONLY
Musician:GLAY

オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるGLAYのニューアルバム。まず妙にサイケデリックなインパクトのあるジャケットが印象的ですが、こちらはあのKing Gnuの常田大希が主宰するクリエイティブチーム「PERIMETRON」が担当したもの。また「FREEDOM ONLY」というアルバムタイトルはカーペンターズの「青春の輝き」の一節から取ったもので、「自由になると言うことは何かと別れなくてはならない」という意味だそうで、コロナ禍の中でいろいろと行動が制限される中での示唆的なフレーズのように感じます。

正直、King GnuとGLAYは音楽性的に少々異なる感がありますし、サイケなジャケットもGLAYの音楽性からすると若干違和感を覚えます。「FREEDOM ONLY」というメッセージ性の強いタイトルも微妙な違和感があり、最近、時々、GLAYがやらかす、悪い意味で粋がった感のあるアルバムになっているのか・・・という不安も感じたのですが、しかし実際に内容を聴いてみるとジャケットやアルバムタイトルから受けるイメージとは全く異なる内容になっていました。

今回のアルバムの内容を一言で言うと、タイトル通り「THE J-POP」。前作「NO DEMOCRACY」も社会派ぶったタイトルや前半の曲のイメージと異なり、後半、王道のJ-POP路線となっていましたが、今回のアルバムもさらにその路線を押し進めた感のあるアルバム。そもそも1曲目「BETTY BLUE」のイントロのギターフレーズからベタベタな90年代ですし、そこからミディアムテンポで聴かせる歌に入るあたりもいかにもGLAYらしい感じ。続く「Hypersonic」もイントロから往年の「グロリアス」を彷彿とさせる感じですし、歌詞の中に「Yes,summer days」なんていう、かつてのGLAYのヒット曲がタイトルが織り込まれちゃったりしています。

続く「Winter Moon Winter Stars」も、「Winter,again」の続編かよ?と思うようなタイトルですし、内容も完全にGLAYの王道。「FRIED GREEN TOMATOES」も、ギターのイントロからそのまま「SOUL LOVE」がはじまるんじゃない?といった感じで、完全に90年代J-POP路線を色濃く継承した内容になっています。

その後もいかにも90年代J-POPの王道を行くような、メランコリックなメロディーラインを主軸とした楽曲が続きます。後半も「青春は残酷だ」もイントロのギターのカッティングが、ノスタルジックな琴線に触れまくるベタな90年代路線。ピアノやストリングスでスケール感を出した「祝祭」もベタベタなJ-POPのサウンド構成といった感じですし、ラストを締めくくる「桜めぐり」もアコギアルペジオでメロディアスに切なく聴かせるナンバーなのですが、「桜」というタイトルもかなりベタな感じがします(「桜」ソングがヒットしたのは、90年代ではなくもっと後ですが・・・)。

ここ最近のGLAYは、変に社会派を気取ったり、オルタナロックに寄せてきたりと、妙に粋がったり、「ロックリスナー」寄りに媚びた感のある曲調の作品が目立ったのですが、今回のアルバムはその路線を投げ捨てて、彼らの王道である90年代J-POPに、思いっきり寄ったアルバムに仕上がっていました。それもそのはずで、今回、コロナ禍で活動が制限される中、TAKUROが過去のデモ音源を聴きなおし、当時は思うようにできなかったことを今のGLAYなら出来るはずということで収録曲を厳選した作品だそうで、古い曲で97年の作品も含まれているそうです。正直、思うようにできなかったというよりも、既存の曲と似たような曲だから没になったのでは??と思わないこともないのですが、それを差し引いても、90年代のJ-POPを懐かしく思い出すような作品の連続に、おそらくアラフォー、アラフィフの世代にとっては、懐かしくて涙腺に直撃するようなアルバムになっていたと思います。良くも悪くも今でも90年代J-POPを引き継いだような楽曲がヒットシーンには目立ちますが、本当の90年代J-POPはこれだ!とGLAY自ら提示してきたような、そんな作品だったと思います。

上にも書いた通り、正直なところ、既存曲の焼き直しのような曲も目立ったりしており、目新しさは全くありませんし、彷彿とさせる既存曲を上回るような出来の曲があったかというと非常に微妙で、そういう意味では「やはり没曲は没曲だったのでは??」と感じさせる部分も少なくはありません。そういう意味で悪く言ってしまうと、過去のGLAYの栄光をむりやり引っ張り出し、継ぎ接ぎだらけにしてなんとか完成させたアルバムとも言えてしまう部分も否定できません。ただ、そういう点を差し引いても、90年代的な懐かしいポップソングの連続に、アラフォー世代としては素直に楽しめたGLAYらしいアルバムに仕上がっていたと思います。まさに「これぞJ-POP」な1枚。かつてGLAYを聴いていて、ここ最近、ちょっと離れてしまった人にもおすすめできる作品です。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
REVIEWII~BEST OF GLAY~
REVIEW 2.5 〜BEST OF GLAY〜

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2021年11月 1日 (月)

充実の3時間半

PETER BARAKAN'S LIVE MAGIC! 2020 Online

会場 晴れたら空に豆まいて(オンライン) 日時 2021年10月23日(土)19:00~

音楽評論家のピーター・バラカンが主宰するライブイベント、LIVE MAGIC!。毎年、ピーター・バラカンのセレクトによる、ジャンルを問わない知る人ぞ知る的な、非常に良質なミュージシャンたちを集めているイベント。このコロナ禍もあって、昨年に引き続きオンラインでの開催となりました。

冒頭にピーター・バラカンの簡単なあいさつがあった後、さっそくスタートしたのはU-zhaan×mabanua。ここでもよく取り上げているタブラ奏者のU-zhaanと、Ovallのドラマーであり、トラックメイカーであるmabanuaとのコラボ演奏。まず別途撮影した演奏になりますが、エレクトロのサウンドにタブラの音色とダイナミックなドラムが重なるスタイル。エレクトロサウンドでテンポよく疾走感のある演奏で、特にU-zhaanのタブラがいつにまして疾走感ある演奏になっているのが印象的でした。

続いてはLarkin Poeという女性2人姉妹によるロックユニット。いつもはバンド編成でのライブだそうですが、今回は自宅で撮った映像を配信ということで、2人のギターだけの演奏ということになりました。かなり力強いブルースロックで、特に1曲目の曲はブルース色も強いナンバー。アコギとスライドギターのペアなのですが、ギターの演奏も力強く、ボーカルもパワフル。特にスライドギターの力強い演奏に惹かれます。全3曲聴かせてくれたのですが、2人だけの、自宅からの演奏とは思えないパワフルな演奏に非常に惹かれる演奏を聴かせてくれました。

3番手はArlen Rothというニューヨークのギターリスト。テレキャスターの名手として知られるギタリストだそうで、まずはテレキャスター一本でブルージーなロックを1曲披露。さらにアコギに持ち替えて、テンポよい演奏を聴かせてくれます。最初の2曲はギターインスト、残り2曲は歌モノで、ラストはローリング・ストーンズも歌った「Done Home Girl」で締めくくり。LIVE MAGIC!らしい、実力派ギタリストの、かなり渋い演奏でした。

次はライブハウスでの生演奏。KOYUKIというソロギタリスト。21歳の大学生だそうですが、フィンガーピッキングの演奏で、かなりテクニカルかつ味のある演奏を聴かせてくれ、若干21歳のかわいらしいルックスからするとかなり意外にも感じられる大人な演奏が耳に残ります。カバーやオリジナルを含めてインスト曲のみで全6曲。哀愁感のある演奏も心地よく、渋い演奏ながらもどこか繊細さも感じさせるのが女性的とも言えるかもしれません。今後が楽しみな新人ギタリストです。

続いては「民謡交換プロジェクト」と題して、民謡クルセイダーズのフレディー塚本率いる別バンド、こでらんに~と、エチオピアのグループMoseb Cultural Music Groupが、それぞれエチオピアと日本の民謡をコラボで歌うという企画。お互い、日本とエチオピアの伝統楽器を用いてリモートでのコラボとなったのですが、これが不思議なことにお互いの楽器がお互いの民謡にもピッタリマッチ。もともとエチオピアの音楽というと、どこか日本の民謡に通じる要素を感じられたのですが、お互いがお互いの民謡を続けて演奏しても全く違和感のない演奏となっていました。日本からは「大漁唄い込み」という民謡が披露されたのですが、こちらもエチオピアの楽器で演奏しても全く違和感ありません。コロナ禍の中ではリモートでの演奏でしたが、コロナ禍が明けたら一緒にライブ演奏を行う予定だそうで、生でのコラボライブも是非見てみたいなぁ。世界がつながっていることを感じられる、非常にユニークな試みでした。

6番手はMajestic Circusというジャムバンド。この日の前日に「LIVE MAGIC!EXTRA」と題して、若干名の観客を入れたスタイルでの前哨戦的なライブイベントが行われたのですが、そこでの演奏の映像が流れました。グレイトフルデッドの曲が得意なバンドで、この日もグレイトフルデッドの曲のカバー。2曲披露してくれたのですが、軽快な演奏が楽しめたステージでした。

続くは同じく「LIVE MAGIC! EXTRA」の演奏から、Mamadou Doumbiaというアフリカはマリのギタリスト。かのサリフ・ケイタのツアーに帯同する形で日本に来日した後、日本に拠点を移して活動を続けているミュージシャンで、どこかで聴いたことが・・・と思ったのですが、2013年のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドで、彼の講演に参加したことがありました。まずはマリの伝統楽器であるコラの演奏。政情不安定なマリの状況を憂いながらも、将来の希望を歌った「希望」という曲を、非常に清涼感あって美しい弦楽器の音色を静かに聴かせてくれます。その後はギターに持ち替えて、ギターインストの曲を披露。マリといえば「砂漠のブルース」のイメージが強いのですが、ブルージーで郷愁感あふれる音色をたっぷりと聴かせてくれます。日本在住なだけに合間のMCは日本語だったのですが、アフリカやエチオピアと日本の弦楽器の共通するようなフレーズについて語ったり、非常に印象的なパフォーマンスを聴かせてくれました。

ここでBarakan's Kitchenと題して、以前のライブでは現場で屋台が出店されていたのですが、その代わりということで、ピーターバラカン自ら「トライフル」というイギリスのデザートを紹介する、ちょっとした料理番組が挟まりました。

続いてはSam Amidonというアメリカ出身ロンドン在住というシンガーソングライター。ロンドンの自宅で演奏した映像が流れました。フォークソングの影響も強いミュージシャンで、まずは家の中にあるバンジョーやギターを紹介した後、そのうちのバンジョーをひとつ取り出し、まずはタジ・マハールから習ったという曲を1曲披露。さらに続く曲は、バンジョー1本の演奏ながらもシャウトを入れつつ、ブルース的な要素も感じられるロッキンな曲。バンジョーのイメージとはちょっと異なる激しい演奏がユニークでした。その後はアコギやバンジョーでフォーキーな曲をしんみり披露。ラストはなんとバイオリンまで登場し、バイオリンの演奏を聴かせてくれました。全6曲、いずれも弦楽器1本のみの演奏だったのですが、バラエティーに富んだパフォーマンスを聴かせてくれた、なかなかユニークなライブでした。

さらに今度はライブハウスから、ギタリスト濱口祐自の生配信でのパフォーマンス。昨年のLive Magic!でもリアルタイムで演奏を聴かせてくれた、このイベントではおなじみのミュージシャンです。関西弁丸出しの、近所のおっちゃんのような軽いMCを繰り広げるのですが、その雰囲気とは全くことなる非常に力強いブルースギターの演奏に、パフォーマンスがはじまるとググっと惹きつけられます。MCも相当長い時間繰り広げるのですが、その軽い雰囲気と、ギターの演奏がはじまるとグッとその場の空気が引き締まる雰囲気のギャップが非常に印象的でした。

そしてラストは民謡クルセイダーズ。こちらも「LIVE MAGIC EXTRA!」からの映像となります。まずは「会津磐梯山」。ホーンセッションも入って軽快なラテン風にスタート。陽気なスタートとなります。そこから一転、続く「木曾節」ではMegの女性ボーカルでしんみりと聴かせ、場をクールダウンさせます。3曲目は「貝殻節」。再びフレディ塚本の伸びやかなボーカルに、ホーンセッションやエレピも入った、ラテン風のリズムに民謡を融合させた軽快な楽曲を聴かせてくれます。さらにラストは「串本節」。本作もホーンセッションに、さらにシンセのサウンドやノイジーなギターのサウンドも入った民謡クルセイダーズらしい独特な解釈がユニークな1曲。軽快なサウンドながら民謡らしい節回しもしっかりと楽しませてくれました。

そんな訳でギッシリ3時間半に及ぶライブイベント。今年もまた、知る人ぞ知る的なミュージシャンが多かったのですが、どれも実力派揃いのセレクションはさすがといった感じ。ボリューム満点の内容でしたが、最後まで一気に楽しめた配信ライブでした。昨年のLive Magic!は、過去のライブ映像の使いまわし的な部分が大きかったのですが、今年はしっかりと事前準備もして貴重なライブ映像ばかり。そういう意味でも充実感あって、とても楽しめたイベントになっていました。ただ、やはり来年こそはオンラインではなく、普通のライブの形で開催してほしいなぁ。そうすると見に行けないでしょうが、でも、いい加減、コロナも終わってほしい・・・・・・来年は何の憂いもなく、普通に観客を入れての開催になるように、心から祈っています。

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