インパクト満点
Title:僕のスピな☆ムン太郎
Musician:マハラージャン
ジャケット写真とアルバムタイトル、さらにミュージシャン名を見るだけで強烈なインパクトがある彼は、現在、大きな注目を集めている男性シンガーソングライター、マハラージャン。かなり奇抜なミュージシャン名ですが、彼が所属している事務所の名前が「油田LLC」で、「油田なんでマハラジャでどうですか?」と言われたことがミュージシャン名の由来だそうです。ここで一番問題なのは、「マハラジャ=インドの国王」なのですが、油田があるのは中近東であって、インドではない、ことなのですが。
性別以外、年齢も本名も不詳という彼。ただ、大学院まで出てCM制作会社に勤務したことあるということなので、おそらく30歳前後でしょう。本作がメジャーデビュー作ということで、比較的遅咲きのミュージシャンということになります。そんな彼のデビュー作はミュージシャン名やアルバムタイトルからして、ノベルティーソング寄り、というイメージがあるのですが、楽曲自体はノベルティー色はさほど濃くはなく、むしろ非常にまじめ。むしろかなりカッコいいポップソングを聴くことが出来ます。
特にファンキーな要素を非常に強く取り入れている点が特徴的で、アルバム1曲目「次いくよ」は楽曲がはじまると同時にハマ・オカモト演奏によるファンキーなベースラインが非常にカッコよい楽曲。疾走感あるリズムも心地よいのですが、メロディーラインもファンキーながらもいい意味でベタなポップスさも兼ね合わせており、インパクトのあるファンキーポップに仕上がっています。さらに先行EPとしてリリースした「セーラ☆ムン太郎」も、まさに歌謡ファンクといった感じの日本人に耳なじみあるメロディーラインにファンキーなリズムがカッコいい曲。歌詞もコミカルな部分がありつつ、シニカルな歌詞が非常に印象的なポップソングに仕上がっている名曲になっています。
ただ、このファンキーな方向性をベースにしつつ、様々な音楽性を取り入れているのもユニークで、同じく先行EPである「僕のスピな人」はこちらもカッコいいベースラインにファンキーな要素を残しつつ、基本的には疾走感あるギターロック。「いうぞ」は強いビートのエレクトロチューンですし、「地獄Part2」はエレクトロサウンドを入れつつ、メロウなメロディーラインがシティポップ風。ラストはご存じ「Romanticが止まらない」のエレクトロアレンジカバーで締めくくられています。
多彩な音楽性を感じさせ、ファンクの要素を入れつつも、ただ一方では全体的に歌謡曲、J-POP色も強く、いい意味でポップでインパクトのある聴きやすいメロディーラインが大きな魅力。ここらへんのメロディーラインのベタさゆえに、最初は正直若干「どうかなぁ」という印象で聴き進めていったのですが、最後の方にはポップでインパクトのあるメロにすっかりはまってしまいました。また、ノベルティー色はさほど濃くはない、とは書いたのですが、確かにコミックソングではないものの、歌詞にはユーモアセンスがちりばめられており、この点も非常にユニーク。コミカルでありつつ同時にシニカルさも感じさせる歌詞が大きなインパクトとなっており、大きな魅力になっていました。
個人的に、「ミュージシャン名はコミカルだけど、楽曲は真面目」という点で、「スネオヘアー」を思い起こしてしまったのですが・・・ある意味、いろいろな側面でよりインパクトが強いような気がします(笑)。特にミュージシャン名やビジュアル面がブレイクのための変なノイズにならなければ良いかも、とは思うのですが、インパクト満点の彼。今後、話題のミュージシャンとなり一気にブレイクということもありえそう。文句なしに注目のミュージシャンの傑作です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Pilgrimage of the Soul/MONO
ポストロックバンドMONOのニューアルバムは今回もスティーヴ・アルヴィニによる録音・ミックスによる作品。メランコリックな曲調に、時にはダイナミックに、時には静かに美しく鳴り響くバンドサウンドが魅力的な1枚。基本的にはそのため、いつものMONOの路線から大きな変更はないものの、やはりメロディーラインの美しさと精緻なバンドサウンドのバランスさは本作も秀逸。そのメロとサウンド構成に終始聴き入ってしまう傑作でした。
評価:★★★★★
MONO 過去の作品
Hymn To The Immortal Wind
For My Parents
The Last Dawn
Rays of Darkness
Requiem For Hell
Before The Past・Live From Electrical Audio
Emerald City Guide/JINTANA&EMERALDS
一十三十一、(((さらうんど)))等でも活躍するCRYSTALなどといった豪華なメンバーを擁するネオ・ドゥーワップバンドの2枚目となるアルバム。前作「Destiny」はMUSIC MAGAZINE誌の2014年「歌謡曲/J-POP」部門の年間1位となるなど注目を集めました。本作はそれに続くアルバム。相変わらず60年代や70年代、いやむしろもっと昔の世代を彷彿とさせるようなレトロな、そしてとても甘いサウンドとメロディーラインを聴かせてくれます。ただ、前作でも感じたのですが、スウィートなサウンドは魅力的ながらも全体的にはいまひとつパンチ不足な感も否めず。良くも悪くもレトロなサウンドそのまま・・・といった印象を受けてしまいます。まあ、「そのまま」なのはそれはそれで魅力的なのですが・・・。
評価:★★★★
Jintata&Emeralds 過去の作品
Destiny
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