OKAMOTO'Sをそのまま体現
Title:KNO WHERE
Musician:OKAMOTO'S
昨年、メジャーデビュー10周年のベストアルバム「10'S BEST」をリリースし、その活動に一つの区切りをつけたOKAMOTO'S。本作はそんな彼らの、ベスト盤リリース後、初となるオリジナルアルバム。途中、EPのリリースはあったものの、オリジナルのフルアルバムとしては2019年の「BOY」以来、約2年8カ月ぶりと、少々久しぶりとなる作品となります。
さて、先日、当サイトでTHE BAWDIESの新作を紹介しました。THE BAWDIESとOKAMOTO'S、どちらもメジャーデビューの時期が近く、さらにどちらのバンドも洋楽からの影響が顕著であることから、デビュー当初はよく両者並んで紹介されていたように記憶しています。ただ、ロックンロールやソウルからの影響が顕著であるTHE BAWDIESに対して、OKAMOTO'Sは雑食的。特定のジャンルからの影響がストレートに反映されているというよりは、様々な要素がごっちゃになっている印象があります。その結果、若干、バンドとしての方向性が不明瞭になってしまっているきらいがあり、(最近はちょっと落ち着いたものの)一気にブレイクしたTHE BAWDIESに対して、OKAMOTO'Sは今に至るまでいまひとつブレイクし切れていない、という印象を受けます。
ただ、今回リリースされたニューアルバムは、そんな雑多なOKAMOTO'Sの方向性をそのまま受け止めて1枚のアルバムにまとめた作品という印象を受けました。さまざまなOKAMOTO'Sを詰め込んだ結果、全17曲、63分というフルボリュームな内容になってしまった、そんなアルバムになっていました。
1曲目「Pink Moon」はノイジーなギターロックながらもダウナーでメランコリックなメロディーラインは今時のJ-POPに通じるものも感じますし、続く「Young Japanese」ではラップを取り入れたり、「Picasso」ではファンキーでエキゾチックなサウンドが特徴的だったりと、雑多な曲調の作品が序盤からいきなり続いていきます。
その後もピアノを取り入れてメランコリックに聴かせる「Star Game」でじっくりと歌を聴かせたかと思えば、続く「Complication」ではダイナミックなバンドサウンドを展開。かと思えば続く「Coffee Break」ではアコギでしんみり聴かせる・・・と、まさに雑食性の彼ららしい、様々な作風の曲が続いていきます。
さらにはエレクトロサウンドを取り入れた「M」にアップテンポなダンスチューン「MC5」などなどと、最後の最後までバラエティー富んだ作品たちを聴かせてくれます。ただ一方、メロディーラインはメランコリックな曲調の曲も多く、ある意味、日本人の琴線に触れやすいポップス性を兼ね備えています。この曲調が若干J-POP的なベタさを感じる部分はあるのですが、アルバム全体の「聴きやすさ」を感じる大きな要素になっているのも間違いないでしょう。
いつも以上にバラバラな作風で、ありのままのOKAMOTO'Sを表現したようなアルバム。その結果、アルバム全体として方向性が定まっていない感も否めず、インパクトの面でも薄いような印象も受けました。そういう意味では彼らのアルバムの中でも「傑作」と言えるかどうかは微妙なのですが・・・ただ、デビュー10年を過ぎ、バンドとしても成熟期を迎えた彼らが、ありのままの彼らを表現したという点では、非常に意味のある1枚だったようにも感じます。あらためてOKAMOTO'Sというバンドを見つめなおした作品と言えるのかもしれません。このアルバムからある意味、次の10年に踏み出した彼ら。今後の彼らの活動にも要注目です。
評価:★★★★
OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP
NO MORE MUSIC
BOY
10'S BEST
Welcome My Friend
ほかに聴いたアルバム
THE PUFFY/PUFFY
デビューから25年を迎えた彼女たちがリリースする、実に約10年半ぶり(!)となるオリジナルフルアルバム。もっともその間もベスト盤リリースがあったり、シングルのリリースがあったりと、それなりにコンスタントに活動を続けていたので、オリジナルアルバムがそれだけ久しぶりだったというのはかなり意外だったのですが・・・。さらにそんな久々なアルバムですが、ゲスト勢が豪華。ELLEGARDENの生形真一、前山田健一、織田哲郎、志磨遼平、堂島孝平、tofubeats、ABEDON・・・ちなみに奥田民生もギターで参加しています。また、上に登場するOKAMOTO'Sも、オカモトコウキが作曲で、ハマ・オカモトもベースで参加しています。
そんな久々のアルバムはPUFFYらしい明るいポップスがつまった作品になっていて、心から楽しめるアルバムになっているのですが、「ベテラン」となってしまったからなのか、久しぶりのフルアルバムのため本調子ではないのか、全体的にはちょっと抑え気味では?という印象が否めず。底なしの明るさ・・・というにはどこかブレーキがかかってしまっているようなアルバムに感じてしまいました。楽しいポップスアルバムであるのは間違いないのですが。
評価:★★★★
PUFFY 過去の作品
honeycreeper
PUFFY AMIYUMI×PUFFY
Bring it!
15
20th Anniversary BEST ALBUM 非脱力派宣言
STUDIO SESSION/LITTLE CREATURES
本作は、もともと2021年1月にリリースされたアルバム「30」のボーナスディスクだったスタジオライブアルバムが、別途LP&配信リリースされた作品。アコースティックアレンジで彼らの作品をセルフカバーした作品なのですが、全体的には暖かみを感じるジャジーな作風にアレンジされており、いい意味で、より「大人」な雰囲気を感じさせつつ、ライブバンドとしての彼らの足腰の強さも感じさせる作品になっています。彼らの実力を改めて感じさせてくれる作品でした。
評価:★★★★★
LITTLE CREATURES 過去の作品
LOVE TRIO
OMEGA HITS!!!
未知のアルバム
30
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