ベテランらしい安定の新作
Title:Ultra Vivid Lament
Musician:MANIC STREET PREACHERS
いまや間違いなくイギリスのロックシーンを代表するバンドとなったMANIC STREET PREACHERSの、約3年ぶりとなるニューアルバム。本作でも、イギリスの公式チャートで見事1位を獲得。当然の結果・・・と言いたいところなのですが、ちょっと意外なことにオリジナルアルバムで1位を獲得するのは1998年にリリースされ、彼らの代表する1枚とも言える「This Is My Truth Tell Me Yours」以来、実に23年ぶりという快挙。その間にリリースされたアルバムのうち、実に4枚が最高位2位、2枚が3位を記録しているにも関わらず、意外なことに本作が彼らにとって2作目となるチャート1位獲得作となりました。
また今回のアルバム、日本人にとってうれしいのがいきなり1曲目のタイトルが「Still Snowing in Sapporo」であるということ。もちろんここで言う「Sapporo」とは、北海道の札幌のこと。和訳すれば「札幌にはまだ雪が降る」とともすれば歌謡曲的なタイトルですが、メロディーラインもそのイメージにマッチするメランコリックなもの。さらにスケール感あるバンドサウンドに、彼ららしい大物然を感じさせます。
それに続く「Orwellian」は、まさにマニックスらしい楽曲と言えるでしょう。イントロで連打される爽やかなピアノの音色は、実にマニックスらしさを感じますし、爽やかながらも切なさを感じさせるメロディーラインの妙も、彼ららしい実力を感じさせます。「Don't Let the Night Divide Us」も同じく、メロディアスでポップな、外連味のないギターロックなのですが、どこか切なさを感じさせるメロディーラインも彼ららしいと言えるでしょう。
また今回もゲストが参加。「The Secret He Had Missed」ではアメリカのシンガーソングライターJulia Cummingが参加しており、基本的にマニックスらしいメランコリックな作品なのですが、女性ボーカルが加わることにより楽曲の大きなインパクトが加わっています。「Blank Diary Entry」では、元Queens of the Stone AgeのMark Laneganが参加。こちらは渋いボーカリストが加わることにより、楽曲が泥臭い雰囲気に。こちらも他のマニックスとはちょっと異なる作風が大きなインパクトとなっています。
基本的には、いつものマニックスらしい、ピアノやシンセの音を入れつつ、スケール感を覚えるサウンドにメランコリックなメロディーラインの作品に。前々作、前作とメロディーラインの良さが際立つ傑作に仕上がっていましたが、本作は残念ながら前2作は超えられなかったように思います。ただ、ラストを締めくくる「Afterending」は、まさに彼らのメロディーラインの良さが光る泣きメロのインパクトが強い楽曲になっていましたし、前2作、いやいつものマニックス同様、メロディーラインの良さは存分に発揮された、十分「傑作」と言えるアルバムだったと思います。正直、目新しさはないものの、ベテランバンドらしい安定感といい意味での卒のなさを感じさせてくれる作品。あらためて彼らの実力を感じさせてくれる作品でした。
評価:★★★★★
MANIC STREET PREACHERS 過去の作品
Journal For Plague Lovers
POSTCARDS FROM A YOUNG MAN
NATIONAL TREASURES-THE COMPLETE SINGLES
Rewind The Film
FUTUROLOGY
Resistance Is Futile
This Is My Truth Tell Me Yours - 20 Year Collectors' Edition
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