ポップでインパクトもある5枚目
Title:Back In Love City
Musician:The Vaccines
イギリスのギターロックバンド、The Vaccinesの5枚目となるアルバム。デビュー時には日本で大きな話題となったものの、最近では新譜がリリースされても、あまり大きく取り上げられなくなっていまいました。一方で、本国イギリスでは一定の人気を確保しており、本作もチャート5位を記録するなど、その人気のほどがうかがえます。
ここでも毎回、彼らの作品を紹介していますが、その際のポイントとしては「シンプルなギターロック」というのを特徴とあげています。基本的に毎回、いい意味で外連味のないストレートでポップなギターロックが特徴的な彼ら。基本的に今回もその路線は貫かれています。このシンプルでポップなギターロック路線こそ、彼らが本国イギリスで人気を確保している理由でしょうし、また、日本でさほど大きく取り上げられない理由なのかもしれません。
さてそんな彼らの楽曲、前作ではポップでキャッチーという表現のピッタリ来るようなメロディーラインのインパクトがより増していたのですが、今回のアルバムでもその方向性により磨きがかかっていました。冒頭を飾るのは、いきなりタイトルチューン「Back In Love City」なのですが、ちょっと80年代的な懐かしさも感じさせるメランコリックなダンスチューン。リズミカルなテンポにのって歌われる哀愁たっぷりのメロが一度聴いたら思わず口ずさんでしまうようなインパクトがあります。さらにインパクトがあるのが「Jump Off The Top」。打ち込みのリズムとギターサウンドというバランスもインパクトですし、ギターに載って歌われる明るく疾走感あるメロもインパクト満点。一度聴いたら忘れられないようなポップソングに仕上がっています。
また、「Jump Off The Top」では打ち込みも用いているのですが、アルバム全体としては打ち込みを含めて楽曲のバリエーションのバランスも絶妙。基本的にシンプルなギターロックを軸としつつも、一方ではダイナミックなガレージロックの「Wanderlust」、エキゾチックなサウンドも入って荘厳さも感じる「El Paso」、疾走感あるハードロック風の「XCT」と続き、最後はミディアムチューンでサイケポップ風の分厚いサウンドがドリーミーで心地よい「Pink Water Pistols」へと続きます。
ただどの曲も、主軸はインパクトあるメロディーラインを持つポップな歌となっており、サウンドもバリエーションがあるとはいえ、必要以上の複雑さはありません。そういう意味では、いままでのThe Vaccines同様に多くのリスナーに訴求するような安定感あるポップソングが並んだアルバムと言えるでしょう。しかしその中でも、前作よりさらに楽曲にいい意味でのインパクトが増してきましたし、また楽曲のバラエティーといい、しっかりリスナーの壺を抑えるような楽曲づくりが出来ていているように思います。これで5枚目で、そろそろ「中堅」の域に入る彼らですが、いい意味で中堅バンドらしい安定感とポピュラリティーを持ってきているといえるでしょう。日本ではさほど人気の高まりを見せていないのですが、これだけポップなメロを書けるのであれば、日本でも徐々に人気は高まってきそう。さらなる大物への予感もする新作でした。
評価:★★★★★
THE VACCINES 過去の作品
WHAT DID YOU EXPECT FROM THE VACCINES?
Come of Age
Please Please Do Not Disturb EP
English Graffiti
COMBAT SPORTS
ほかに聴いたアルバム
Saturday Night, Sunday Morning/Jake Bugg
デビュー直後は日本の音楽メディアで騒がれつつ、作品を経るごとにほとんど取り上げられなくなった、といえばJake Buggも同様かもしれません。ただ、前作「Hearts That Strain」でデビュー当初の荒々しさは消え、カントリー風ともいえる爽やかなポップ路線にシフトしたことから、日本のメディア的には取り上げられずらくなったのかもしれません。今回のアルバムに関しても、前作と同様、メランコリックなメロが特徴的で全体的に軽いポップスに。メロディーラインの良さは相変わらずですが、ただ、シンプルなメロの中にインパクトがあった前作と比べるとちょっと弱いかな。悪いアルバムではないのですが、全体的に印象が薄すぎる感のある作品でした。
評価:★★★★
JAKE BUGG 過去の作品
JAKE BUGG
SHANGRI LA
On My One
Hearts That Strain
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