バンドサウンドと「歌」のアンバランスさがユニーク
Title:HEY WHAT
Musician:LOW
アメリカはミネソタ州を拠点として活動するインディーロックバンド、LOWのニューアルバム。いわゆるスロウコアを代表するバンドだそうで、現在のバンドメンバーであるAlan SparhawkとMimi Parkerの男女デュオによるコーラスハーモニーが大きな魅力のひとつとなっています。なにげに1993年結成という、既に結成から28年が経過しているベテランバンド。ある意味、知る人ぞ知る的なバンドでしたが、ここに来て本作はイギリスの公式チャートで23位にランクインするなど、人気も徐々に高くなってきている模様。本作は約3年ぶりとなるニューアルバムとなります。
さて、そんな彼らの新譜ですが、アルバムは1曲目「White Horses」は、まず空間を切り裂くようなメタリックで歪んだギターの音からスタートします。そんな不穏なスタートに、ある種の期待は否応なく高まるのですが、イントロが終わると、意外な展開が待っています。それが、Alan SparhawkとMimi Parkerのデゥオにより高らかに歌われるメロディーライン。その後ろには相変わらず不穏でメタリックなギターの音が鳴り響きつ受けるのですが、分厚いギターノイズの中、メランコリックな歌が流れるという、ユニークなバランスによる楽曲になっています。
基本的に、この歪んだ、ノイジーでサイケデリックな分厚いギターサウンドと荘厳さも感じられる男女デゥオによる歌モノというユニークなバランスが本作の肝。特に中盤「Disappearing」では荘厳な聖歌のような雰囲気まで醸し出す歌声と、それに被さる分厚いバンドサウンドが耳を惹きますし、続く「Hey」も静かなギターノイズの中で清涼感ある歌声が響き、厳かな雰囲気のドリーミーな作風が魅力的。独特な世界観を作り上げています。
特に、サイケデリックで、時として凶暴さも感じられるギターノイズと反して、メロディーラインが意外とポップである点もまた、彼らの大きな魅力で、特に中盤以降はこのメロディーラインのポピュラリティーが際立つ作品が続いていたように感じます。アルバムの折り返し地点である「Days Like These」などはその典型例で、ちょっとフォーキーなメロディアスな歌が印象に残る作品。終盤の「More」もノイジーでダイナミックなギターサウンドをバックに歌われる歌が意外とポップでインパクトがあります。
ラストを締めくくる「The Price You Pay(It Must Be Wearing Off)」は、やはりAlan SparhawkとMimi Parkerのデゥオが印象に残る曲で、不穏な雰囲気のギターサウンドも印象的。ただ、アルバムのラストを締めくくる曲であるためか、どこか明るさも感じさせる楽曲になっており、7曲に及ぶ長尺ながらも、最後は爽やかな気持ちでアルバムは幕を下ろします。
このようにバンドサウンドと歌とがアンバランスなようで、実は絶妙に噛み合っている非常に個性的でユニークな作品。知る人ぞ知る的なバンドながらも高い評価を受けるのも納得であり、結構メロがポップでインパクトがあるだけに、意外とブレイクという可能性も?間違いなく、今後にも注目していきたいバンドによる傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
LOW 過去の作品
Double Negative
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