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2021年10月12日 (火)

5組それぞれの個性を感じる

Title:GIFT ROCKS
Musician:a flood of circle

今年、結成15周年を迎えるa flood of circle。今回リリースされた本作は、その結成15周年記念の企画盤なのですが、これがなかなかユニークな企画。彼らが15年の活動を迎える中で出会ったミュージシャンたち5組に楽曲を提供してもらい、それをa flood of circleがレコーディングするという企画。まさに「GIFT ROCKS」というタイトルの通り、他のミュージシャンたちから贈られたロックを歌ったアルバムになっています。

その5組のミュージシャンというのが、UNISON SQUARE GARDEN(田淵智也)、SIX LOUNGE、Rei、THE BACK HORN、the pillows(山中さわお)の5組。それぞれがa flood of circleに提供した5曲を歌っており、さらにその5組のミュージシャンたちの曲をa flood of circleがカバーしています。

このa flood of circleに提供された5曲を並べて聴いてみるのが、まずはなかなかユニーク。聴いてみると、すぐに誰の曲かわかるような曲もあれば、そうでない曲もあったりして・・・特にすぐにわかったのが自分が長年のファンということもあるのですが、the pillows山中さわおから提供された「夕暮れのフランツ 凋まない風船」。完全に山中さわお節といった感じの1曲になっており、山中さわおの個性の強さが目立ちます。またUNISON SQUARE GARDEN田淵智也の提供した「まだ世界は君のもの」も圧倒的なポップス感がいかにもUNISONといった感じの1曲。この2曲に関して、特に原曲を提供したミュージシャンの個性が目立ちました。

その後に続いている5曲のカバーに関しても、原曲ミュージシャンの個性がそれぞれ発揮された曲。ここでもやはりthe pillowsのカバー「About A Rock'N'Roll Band」は原曲のイメージが大きく残っていましたし、さらにカバーで原曲のイメージが強く残っていたのがTHE BACK HORNの「コバルトブルー」。いかにもTHE BACK HORNらしい力強いサウンドと哀愁感たっぷりに歌われるスタイルはカバーでも色濃く残っており、良くも悪くもどこまで行ってもTHE BAKC HORNの曲、といった感じになっていました。

もっとも、楽曲を提供したミュージシャンの個性を感じるかどうか、という点と、それをa flood of circleが歌ってピッタリとマッチするのか、というのは別問題。ここでも何度か書いていますが、a flood of circleは、佐々木亮介のボーカルが非常に端正なゆえに、メロがポップになると一歩間違うと平凡なJ-POP風になってしまう、という弱点がありました。実際、今回の曲に関しても、ポップな曲に関しては正直、変にベタなポップになりすぎて、a flood of rockのロックバンドとしてのカッコよさがあまり表に出てこなかったように感じます。

ただ一方逆に、Reiのカバー「BLACK BANANA」など、正直Reiとしての個性はあまり感じられないのですが、疾走感ある力強いバンドサウンドのガレージロックがa flood of circleにピッタリマッチ。バンドとしての力量を感じさせるカバーに仕上がっていました。ここらへん、元のミュージシャンの個性がa flood of circleにマッチするか否か、その相性が異なる点、ユニークに感じます。

そんなこともあって、全体的には提供元のミュージシャンとの相性の良しあしもあり、すべてが名曲名カバーという感じではありませんでしたが、試みとしては非常に興味深い1枚でした。提供元のミュージシャンが好きな方も、彼らの曲をどのようにa flood of circleが調理したのか、チェックしてみてもおもしろい作品だと思います。聴きどころの多い、ユニークな1枚でした。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART
2020


ほかに聴いたアルバム

トコトワ~奄美セレクションアルバム~/元ちとせ

元ちとせのインディーズデビュー20周年を記念してリリースされた本作は、彼女の曲の中で彼女の故郷、奄美大島を感じることが出来る曲を集めたセレクションアルバム。ただ、前作も奄美大島のシマ唄を集めた「元唄」をリリースされていますし、それと比べると、奄美大島を感じられるかと言われるとちょっと薄味。本作の中でも特に圧巻だったのが「行きゅんにゃ加那節」と、民謡クルセイダーズと組んだ「豊年節」だったのですが、どちらも前作「元唄」に収録されていて、だったら「元唄」を聴けばいいじゃん!と思ってしまいます。もっとも、このアルバムに収録されているのも、他に彼女の代表曲「ワダツミの木」なども収録されており、ベスト盤的に悪いアルバムではないとは思うのですが・・・正直、奄美を感じたかったら、「元唄」を聴けば十分のような。

評価:★★★★

元ちとせ 過去の作品
カッシーニ
平和元年
元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~

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