内容のつまったミニアルバム
Title:We Are The Times
Musician:Buffalo Daughter
約7年ぶり。久々となるBuffalo Daughterのニューアルバム。ちょっと久しぶりとなる新作なのですが、そのリリーススパンにも関わらず、アルバムのリリース形態は全9曲39分強というミニアルバム。間隔が空いたにも関わらずミニアルバム程度しか曲が集まらなかったというのは、バンドとして若干のスランプ気味なのか??なんてことも心配してしまうのですが、ただ、聴き始めると心配ご無用!わずか9曲とはいえ、その9曲、いずれも濃度の濃い楽曲がつまった傑作アルバムに仕上がっていました。
まず序盤は、彼ららしいエレクトロサウンドの後ろにファンキーなリズムが流れる楽曲が続きます。1曲目タイトルそのまま「Music」は、イントロ的な1分程度の楽曲。続く「Times」も、同じく音数を絞って空間を聴かせるようなエレクトロチューン。どちらもタイトな雰囲気の楽曲で、いかにも彼女たちらしさを感じる楽曲に、まずは耳を惹きつけられます。
その後は徐々に楽曲にダイナミズムさが加わります。エレクトロチューンにパンキッシュなリズムが印象的な「Global Warming Kills Us All」から続く「Don't Punk Out」は力強いバンドサウンドでトライバルでファンキーなリズムが耳に残るロックチューン。アバンギャルドな雰囲気も非常にかっこよさを感じるのですが、そのサウンドの雰囲気のまま突入するのが「Loop」。ダイナミックなバンドサウンドで奏でるフリーキーなサウンドがカッコよくも、どこか不穏な雰囲気も感じさせる楽曲。続く、ゆっくりながらもダイナミックなサウンドで大きなスケールを感じさせる「ET(Densha)」と並び、ちょっと暗い雰囲気を感じさせる中盤の空気を決定づけるような曲が並びます。
ただそんな不穏な雰囲気も続く「Jazz」から徐々に弛緩していきます。ドリーミーなサウンドに優しく響く歌声も耳に残る楽曲で、中盤の不穏な空気感がふっとやわらぐ楽曲となっています。インターリュード的な「Serendipity(Tsubu)」へと続き、ラストはエレクトロサウンドがちょっとコミカルでポップな「Everything Valley」で締めくくり。最後は明るさも感じられる楽曲で締めくくられており、ほどよい聴後感を覚えるエンディングとなります。
今回のアルバム、楽曲的には決してBuffalo Daughterとしての新しい挑戦といった感じではありません。むしろ、特に序盤や終盤など、いかにも彼女たちらしいと感じさせる曲も並んでいました。しかし、必要最低限の音だけで構成される、エッジの効いたサウンドが耳に飛び込んでくる、陳腐な言い方をすれば非常にカッコよさを感じさせるアルバム。ひとつひとつの音が楽曲の中で最適な箇所に配置され続けて、ひとつの楽曲を構成している、そう感じさせる作品でした。特にこの空間を聴かせる作風は、一種の緊張感も覚えるような作品でもあり、聴いていて非常にスリリング。最初から最後まで耳の離せない構成になっていました。序盤のエレクトロな作風から中盤の不穏な展開、さらに終盤にかけての徐々に明るくなる構成も見事。個人的には今年のベスト盤候補の1枚だと思います。彼女たちの実力を存分に感じさせる傑作でした。
評価:★★★★★
Buffalo Daughter 過去の作品
The Weapons Of Math Destruction
ReDiscoVer.Best,Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter
Konjac-tion
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