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2021年10月26日 (火)

シンプルで、美しい

Title:A Beginner’s Mind
Musician:Sufjan Stevens&Angelo De Augustine

毎回、傑作アルバムをリリースし続け、高い評価を得ているアメリカのシンガーソングライター、Sufjan Stevens。そんな彼の新作はレーベルメイトであり、シンガーソングライターであるAngelo De Augustineとのコラボ作となっています。もともとこの作品は、2人がニューヨーク北部の友人のキャビンで1ヶ月間、ソングライティングのため休暇を取ったことからスタートしたそうです。2人はその休暇中に多くの映画を観たそうで、今回の楽曲は、主にそんな映画からインスピレーションを受けて作成された楽曲だそうです。

さらに今回のアルバムタイトルの由来となっているのが"shosin"(初心)だそうで、いろんなところでコピペされている(ライターはもうちょっと「仕事」してくれ・・・)アルバムの紹介文によると「これは、アルバムのタイトルにもなった禅仏教の概念で、映画が何を言おうとしているのかという先入観なく、ありそうもないインスピレーションを探しそれについて書く、というものだ。」ということだそうです。ただ、おそらく「初心」自体が禅仏教の概念というよりも、アルバムタイトル「A Beginner's Mind」自体が、スティーブ・ジョブスも愛読したという、海外で出版され多くの話題を呼んだという書籍「禅マインド ビギナーズ・マインド」に由来しているのでないかと思われます。

そうすると奇妙になるのがこのアルバムジャケットで(笑)、かなり奇抜なジャケットはガーナのアーティスト、Daniel Anum Jasperの手によるもの。今回、あえて情報を多く伝えず、ジャケット画を依頼したそうです。その結果、若干アルバム内容とミスマッチになっている感もあるのですが、そのミスマッチさが、逆に非常にユニークに感じされるインパクトあるジャケットに仕上がっていました。おそらく「禅」をテーマにしたとしたら、日本人なら絶対に選ばないデザインで、ここらへんのミスマッチさも非常にユニークに感じます。

さて、肝心の内容ですが、アコースティックギターでしんみり聴かせるフォーキーな作品が並ぶ内容に。ファルセット気味に聴かせる2人のデゥオも非常に美しく、印象に残ります。アコギのアルペジオに2人のハーモニーが美しい「Reach Out」に、アコギとピアノでドリーミーに聴かせる「Olympus」。ファルセットボイスとアコギアルペジオとピアノで美しく聴かせる「Cimmerian Shade」など、フォーキーで清涼感あるサウンドと美メロ、さらにファルセットボイスを多用してドリーミーに聴かせる楽曲が並びます。

正直なところ楽曲としてのバリエーションはあまり多くありません。あえていえばバンドサウンドを取り入れた「Back To Oz」あたりにバリエーションを感じさせますが、この曲にしても基本的には美しい歌を聴かせるという点では他の曲と大差はありません。ただそれでも、全14曲45分一気に聴けるのは、ほれぼれするほど美しいメロディーラインとサウンド、さらには2人の歌声があるからでしょう。

Sufjan Stevensというと、フォーキーな作風とサイケな作風の両方のパターンのアルバムを作ってくるという印象を受けます。フォーキーという意味では、過去に聴いたアルバムでは「Carrie&Lowell」が近い感じでしょうか。ただ今回の作品はさらにアコースティックにシンプルにまとめた作品に仕上がっていました。シンプルな作風ながらも、シンプルゆえに聴き入ってしまう魅力を感じさせてくれる1枚でした。

評価:★★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell
Planetarium(Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister)
The Ascension


ほかに聴いたアルバム

Buena Vista Social Club: 25th Anniversary Edition

ライ・クーダーがキューバに旅行した際、キューバ以外ほとんど知られていなかったキューバのベテランミュージシャンたちとセッションを行ったことがきっかけとなり、アルバム、さらにはドキュメンタリー映画も作られたバンド、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ。当時は日本でも大きな話題となりました。本作は、そのアルバムから25周年を記念してリリースされたリマスター盤。オリジナル音源に未発表曲集を加えた2枚組でのリリースとなります。

彼らについてはリアルタイムで話題になったことを覚えているのですが、その当時はワールドミュージックにほとんど興味がなかったため、聴くことはなく、実は音源を聴いたのは今回がはじめて。決して派手ではないものの、しっかりとしたベテランの演奏とメランコリックなメロが魅力的な作品。こういうキューバ音楽の作品が、世界中で当時受け入れられたというのは、今としてみれば驚きもあります。ワールドミュージック好きはもちろんですが、幅広い音楽ファンが楽しめそうな、そんな魅力あふれるメロと演奏を聴かせてくれる作品です。

評価:★★★★★

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