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2021年10月

2021年10月31日 (日)

折坂悠太独自の音楽性を確立した傑作

Title:心理
Musician:折坂悠太

前作「平成」が各所で大絶賛を受け、一躍注目のミュージシャンの仲間入りを果たしたシンガーソングライター、折坂悠太。「ミュージックマガジン誌」の日本ロック部門で年間1位を獲得したり、「CDショップ大賞」で大賞を受賞したりと大きな話題となり、さらにその後に発表された「朝顔」がドラマ主題歌に採用されたりと、活躍を続けています。個人的にも「平成」は2018年の私的年間ベストアルバムで3位にランクインさせるなど、かなりはまった1枚でもありました。

ただ一方、おなじく「ミュージックマガジン誌」の2010年代邦楽ベストアルバム100で1位を獲得したりしているのに関しては、さすがにそれは過大評価が過ぎるのでは?という印象も受けていました。前作「平成」は、一方では全体的に地味な作品という印象もぬぐえず、2010年代に傑作をリリースし続けてきた水曜日のカンパネラやCHAIの作品群に比べると、物足りなさも感じられていたからです。

そんな中、リリースされた前作「平成」以来、フルアルバムとしてはちょうど3年ぶりとなる。もちろん、期待を持って聴いてみた1枚ではあるのですが、その期待を大きく上回る文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。前作「平成」で彼の特徴として感じたのは、民謡やジャズといった音楽をジャンルレスに取り入れて、それらを等距離に扱っているスタイルでしたが、今回のアルバムでも同じくジャズをベースとした洋楽的な要素に、民謡、歌謡曲といった邦楽の音楽性を加えた方向性は変わりません。今回のアルバムはさらに楽曲に折坂悠太独自のグルーヴ感が加わり、彼の独特のサウンドが確立された、そんなアルバムになっていました。

ジャズの要素を取り入れつつ独特のグルーヴ感という点でまずは印象的だったのが「荼毘」でしょう。そのタイトルとは異なり、前向きに生きるというメッセージ性を感じる歌詞も特徴的ですが、ジャジーなピアノの音色を爽やかに聴かせつつ、こぶしを効かせたボーカルも印象的で、洋楽的な要素と邦楽的な要素を混在させた楽曲が非常に印象に残ります。

独自のグルーヴ感という意味では「悪魔」も強い印象に残ります。トライバルな要素も感じさせるミディアムテンポで力強いリズムが印象に残る作品。ノイジーなギターサウンドも印象的なこの曲もまた、洋楽的な要素と邦楽的な要素のほどよいバランスを感じます。民謡的な要素という意味では「春」ののびやかでこぶしを利かせたボーカルも印象的。ピアノも取り入れて郷愁感あるメロディーラインやサウンドも耳を惹きますし、ゆっくりとしたドラムやベースラインが奏でるグルーヴ感も大きな魅力になっています。

さらに今回のアルバムでは「炎」ではサックス奏者のSam Gendalが、「ユンスル」では先日もこのサイトで紹介した韓国のシンガーソングライター、イ・ランがゲストで参加。「ユンスル」では暖かいフォーキーなサウンドが特徴的なのですが、途中からイ・ランによる韓国語の語りが入ってきています。ほかにも「鯱」ではラテン的なホーンセッションも入ってきたりと、さらに邦楽、洋楽にとらわれない無国籍的な要素も感じることが出来たりと、彼の幅広い包容力ある音楽性を感じることが出来ました。

フルアルバム3枚目にして、折坂悠太としての音楽性を確立させた傑作アルバム。前作「平成」ではそこまで感じられなかった彼のすごみを否応なしに感じさせてくれました。確かに前作同様、派手でポップなメロディーラインはないものの、ただ「トーチ」のような印象に残るメロディーラインも聴かせてくれますし(作曲は彼ではないのですが)、なによりも独特なサウンドとグルーヴ感により、楽曲にインパクトがしっかりと加わり、前作のような「地味」という印象はこのアルバムにはもはやありません。文句なしに今年を代表する傑作アルバムだと思います。前作からさらなる進化を遂げた本作。まだまだ彼の実力は計り知れません。これから日本を代表するSSWになりそうな、そんな予感すらした1枚でした。

評価:★★★★★

折坂悠太 過去の作品
平成
朝顔


ほかに聴いたアルバム

Imaginary/MIYAVI

ギタリストMIYAVIのニューアルバム。ここ最近、エレクトロ主体のアルバムのリリースが続いているのですが本作も同様。ポップ寄りだった前作とは異なり、ダイナミックな作風で強いビートも取り入れており、それなりにロックな作品にまとめてはいるのですが、ギターサウンドは本作も薄め。最近の彼の音楽的な興味がこの方向性なんだろうなぁ、とは思いつつ、やはりもうちょっとギターを聴きたい感が否めないのですが・・・。

評価:★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"
SAMURAI SESSION vol.2
SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -
NO SLEEP TILL TOKYO
Holy Nights

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2021年10月30日 (土)

美しいボーカルが魅力的

Title:Colourgrade
Musician:Tirzah

前作「Devotion」が大きな話題となったロンドンのアンダーグラウンドシーンで活躍する女性シンガーソングライターによる2作目。いわゆる「エクスペリメンタル・ポップ・アーティスト」という肩書からもわかるように、アンダーグラウンドシーンというイメージからもピッタリくるような実験的な作風が特徴的なミュージシャンとなっています。

その話題となった前作「Devotion」も、ダウナーでミニマルなサウンドが大きな特徴に感じました。今回のアルバムに関しても、ダウナーなサウンドは特徴的。さらに今回のアルバムに関して印象的だったのは、それに加えてメタリックな要素やサイケな要素がより加わったような印象を受けます。イントロ的な1曲目、タイトルチューンでもある「Colourgrade」から、まずはダウナーでメタリックなミディアムチューンからのスタートとなりますし、その後も「Recipe」もダークでメタリックな不穏なノイズが楽曲の背後に流れていますし、「Beating」も淡々としたメタリックなビートが特徴的な楽曲となっています。

サイケな要素というと「Sleeping」でしょうか。彼女の美しく聴かせる歌声の背景に、ノイジーなギターが静かながらも不気味な音色を奏でています。続く「Crepuscular Rays」もボーカルにエフェクトを重ねながら、不気味でサイケな作風が印象的な楽曲に。ラストを飾る「Hips」もスペーシーながら、どこか不気味な雰囲気を奏でるエレクトロチューンで締めくくられます。

一方、前作で大きな魅力に感じられた彼女の美しく聴かせるボーカルはもちろん健在。全体的にメタリックで不気味な雰囲気の増した本作だからこそ、より彼女の美しい歌声が光る構成になっていました。前述の「Sleeping」ではしんみりと美しい歌声を聴かせてくれますし、「Send Me」のささやくようなボーカルも魅力的。ラストの「Hips」でもエレクトロサウンドの中で、はっきりとした彼女の歌声を楽しむことが出来ます。

ただ、リアルな歌声を耳元で聴く感じの強かった前作に比べると、今回のアルバムでは「Sleeping」で若干そんな生々しさを感じたのですが、全体的にはそんな雰囲気は薄れてしまったような感じがします。どちらかというとボーカルもサウンドのひとつとして埋没してしまった感も否めず、「歌」よりも「サウンド」をより前に押し出したような構成になっていました。

そのため、前作のような「実験的なようで、実はポップで聴きやすい」という要素が今回のアルバムでは薄れてしまった感も否めません。前作はアンダーグラウンドシーンで活躍という枕詞に反して、アングラ臭はほとんど感じられなかったのですが、今回のアルバムでは逆に、そのアングラっぽい雰囲気も感じるアルバムになっていました。

そういう意味では個人的には前作を超えるアルバムではなかったかな、とは思うのですが・・・ただ、その点を差し引いても、全10曲、それぞれスタイルの異なる実験性を感じられる曲の数々はやはり非常に魅力的。本作も前作に引き続き傑作アルバムであることは間違いないかと思います。本作も彼女の実力をしっかりと感じられる作品でした。

評価:★★★★★

Tirzah 過去の作品
Devotion


Love For Sale/Tony Bennett&Lady Gaga

かのLady Gagaが、アメリカの大御所中の大御所シンガー、トニー・ベネットと組んでリリースするジャズアルバムの約7年ぶりとなる第2弾。基本的に、スウィングやビッグバンドなどの要素を入れつつ、王道のジャズボーカル路線の曲を聴かせてくれます。前作同様、Lady Gagaの正統派なボーカリストとしての実力を存分に発揮した作品であると同時に、御年95歳(!)でありながら、全く衰えていないトニー・ベネットのボーカルのすごみも感じます。というか、とても90歳を超えた人の声とは思えない、艶のある声なんですが・・・。まさか第3弾もあったりして?

評価:★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP
Cheek to Cheek(Tony Bennett & Lady Gaga)
Joanna
A Star Is Born Soundtrack(アリー/ スター誕生 サウンドトラック)(Lady Gaga & Bradley Cooper)
Chromatica
BORN THIS WAY THE TENTH ANNIVERSARY
Dawn Of Chromatica

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2021年10月29日 (金)

OKAMOTO'Sをそのまま体現

Title:KNO WHERE
Musician:OKAMOTO'S

昨年、メジャーデビュー10周年のベストアルバム「10'S BEST」をリリースし、その活動に一つの区切りをつけたOKAMOTO'S。本作はそんな彼らの、ベスト盤リリース後、初となるオリジナルアルバム。途中、EPのリリースはあったものの、オリジナルのフルアルバムとしては2019年の「BOY」以来、約2年8カ月ぶりと、少々久しぶりとなる作品となります。

さて、先日、当サイトでTHE BAWDIESの新作を紹介しました。THE BAWDIESとOKAMOTO'S、どちらもメジャーデビューの時期が近く、さらにどちらのバンドも洋楽からの影響が顕著であることから、デビュー当初はよく両者並んで紹介されていたように記憶しています。ただ、ロックンロールやソウルからの影響が顕著であるTHE BAWDIESに対して、OKAMOTO'Sは雑食的。特定のジャンルからの影響がストレートに反映されているというよりは、様々な要素がごっちゃになっている印象があります。その結果、若干、バンドとしての方向性が不明瞭になってしまっているきらいがあり、(最近はちょっと落ち着いたものの)一気にブレイクしたTHE BAWDIESに対して、OKAMOTO'Sは今に至るまでいまひとつブレイクし切れていない、という印象を受けます。

ただ、今回リリースされたニューアルバムは、そんな雑多なOKAMOTO'Sの方向性をそのまま受け止めて1枚のアルバムにまとめた作品という印象を受けました。さまざまなOKAMOTO'Sを詰め込んだ結果、全17曲、63分というフルボリュームな内容になってしまった、そんなアルバムになっていました。

1曲目「Pink Moon」はノイジーなギターロックながらもダウナーでメランコリックなメロディーラインは今時のJ-POPに通じるものも感じますし、続く「Young Japanese」ではラップを取り入れたり、「Picasso」ではファンキーでエキゾチックなサウンドが特徴的だったりと、雑多な曲調の作品が序盤からいきなり続いていきます。

その後もピアノを取り入れてメランコリックに聴かせる「Star Game」でじっくりと歌を聴かせたかと思えば、続く「Complication」ではダイナミックなバンドサウンドを展開。かと思えば続く「Coffee Break」ではアコギでしんみり聴かせる・・・と、まさに雑食性の彼ららしい、様々な作風の曲が続いていきます。

さらにはエレクトロサウンドを取り入れた「M」にアップテンポなダンスチューン「MC5」などなどと、最後の最後までバラエティー富んだ作品たちを聴かせてくれます。ただ一方、メロディーラインはメランコリックな曲調の曲も多く、ある意味、日本人の琴線に触れやすいポップス性を兼ね備えています。この曲調が若干J-POP的なベタさを感じる部分はあるのですが、アルバム全体の「聴きやすさ」を感じる大きな要素になっているのも間違いないでしょう。

いつも以上にバラバラな作風で、ありのままのOKAMOTO'Sを表現したようなアルバム。その結果、アルバム全体として方向性が定まっていない感も否めず、インパクトの面でも薄いような印象も受けました。そういう意味では彼らのアルバムの中でも「傑作」と言えるかどうかは微妙なのですが・・・ただ、デビュー10年を過ぎ、バンドとしても成熟期を迎えた彼らが、ありのままの彼らを表現したという点では、非常に意味のある1枚だったようにも感じます。あらためてOKAMOTO'Sというバンドを見つめなおした作品と言えるのかもしれません。このアルバムからある意味、次の10年に踏み出した彼ら。今後の彼らの活動にも要注目です。

評価:★★★★

OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP
NO MORE MUSIC
BOY
10'S BEST
Welcome My Friend


ほかに聴いたアルバム

THE PUFFY/PUFFY

デビューから25年を迎えた彼女たちがリリースする、実に約10年半ぶり(!)となるオリジナルフルアルバム。もっともその間もベスト盤リリースがあったり、シングルのリリースがあったりと、それなりにコンスタントに活動を続けていたので、オリジナルアルバムがそれだけ久しぶりだったというのはかなり意外だったのですが・・・。さらにそんな久々なアルバムですが、ゲスト勢が豪華。ELLEGARDENの生形真一、前山田健一、織田哲郎、志磨遼平、堂島孝平、tofubeats、ABEDON・・・ちなみに奥田民生もギターで参加しています。また、上に登場するOKAMOTO'Sも、オカモトコウキが作曲で、ハマ・オカモトもベースで参加しています。

そんな久々のアルバムはPUFFYらしい明るいポップスがつまった作品になっていて、心から楽しめるアルバムになっているのですが、「ベテラン」となってしまったからなのか、久しぶりのフルアルバムのため本調子ではないのか、全体的にはちょっと抑え気味では?という印象が否めず。底なしの明るさ・・・というにはどこかブレーキがかかってしまっているようなアルバムに感じてしまいました。楽しいポップスアルバムであるのは間違いないのですが。

評価:★★★★

PUFFY 過去の作品
honeycreeper
PUFFY AMIYUMI×PUFFY
Bring it!
15
20th Anniversary BEST ALBUM 非脱力派宣言

STUDIO SESSION/LITTLE CREATURES

本作は、もともと2021年1月にリリースされたアルバム「30」のボーナスディスクだったスタジオライブアルバムが、別途LP&配信リリースされた作品。アコースティックアレンジで彼らの作品をセルフカバーした作品なのですが、全体的には暖かみを感じるジャジーな作風にアレンジされており、いい意味で、より「大人」な雰囲気を感じさせつつ、ライブバンドとしての彼らの足腰の強さも感じさせる作品になっています。彼らの実力を改めて感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

LITTLE CREATURES 過去の作品
LOVE TRIO
OMEGA HITS!!!

未知のアルバム
30

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2021年10月28日 (木)

今週もアイドル系が目立つ・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もHot Albumsはアイドル系が目立つチャートとなりました。

まず1位初登場は韓国のアイドルグループSEVENTEEN「Attacca」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数11位。今回も韓国盤ですが、CD販売数もランクインしてきています。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上16万4千枚で1位初登場。韓国盤の前作「Your Choice」の14万2千枚(2位)からアップしています。

2位は、スマホ向けゲーム「アイドリッシュセブン」の中に登場するアイドルグループIDOLiSH7からの派生ユニット、MEZZO"の1stアルバム「Intermezzo」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数及びPCによるCD読取数6位。オリコンでは初動売上2万8千枚で3位初登場。

3位は先週1位を獲得した韓国の男性アイドルグループ「DIMENSION : DILEMMA」が2ランクダウンながらも今週もベスト3入りを記録しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に「『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』オリジナルサウンドトラック」がランクイン。タイトル通り、この秋に公開予定のアニメ映画「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」のサントラ盤。CD販売数5位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数8位。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。ちなみに同じく「マクロスΔ」関連で、ワルキューレ「Walkure Reborn!」も先週の2位からランクダウンしたものの、今週6位にランクインしています。

5位には松田聖子「続・40周年記念アルバム『SEIKO MATSUDA 2021』」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数14位。昨年、新曲と彼女の代表曲のセルフカバーを5曲ずつ収録した40周年記念アルバム「SEIKO MATSUDA 2020」をリリースしましたが、本作はその続編となるアルバム。今週はアイドル系が目立つチャートになっていますが、その中で格が違います・・・。オリコンでは初動売上1万9千枚で4位初登場。その前作「SEIKO MATSUDA 2020」の2万5千枚(3位)からはダウンしています。

8位にはスマホ向けイケメン役者育成ゲーム「A3!」より、「A3! SUNNY SUMMER EP」がランクイン。CD販売数6位、PCによるCD読取数52位。オリコンでは初動売上6千枚で6位初登場。同シリーズの前作「A3! SUNNY SPRING EP」の8千枚(12位)よりダウンしています。

9位初登場は日本でも高い人気を誇るプログレッシブ・メタル・バンドDream Theater「A View from the Top of the World」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数20位。オリコンでは初動売上5千枚で8位初登場。前作「Distance Over Time」の8千枚(10位)からダウンしています。

最後、10位も女性アイドルグループDevil ANTHEM.「らいなう」がランクイン。CD販売数7位、その他のチャートは圏外となっています。オリコンでは初動売上4千枚で13位初登場。前作「SS」の1千枚(41位)からアップ。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年10月27日 (水)

珍しく新曲ラッシュ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、Hot100では珍しい新曲ラッシュ。ベスト10のうち5曲までが初登場曲となっています。

まず1位から初登場。LiSA「明け星」がランクイン。テレビアニメ「鬼滅の刃 無限列車編」のオープニングテーマ曲。11月17日リリース予定のCDシングルからの先行配信で、ダウンロード数1位、ストリーミング数19位、ラジオオンエア数6位、Twitterつぶやき数19位で総合順位も1位。LiSAは「炎」の後にリリースした「鬼滅の刃」とは無関係のシングル2作品がさほどヒットせずに終わったのですが、やはり「鬼滅の刃」人気はまだ健在のようですね。それと同時に、あれだけLiSA自身が話題になったのに、やはりあくまでも世間的には「『鬼滅の刃』の人」というイメージから抜け出せないのですね・・・。この曲もロングヒットを狙えそうです。

2位はSTU48「ヘタレたちよ」が初登場でランクイン。CD販売数は1位でしたが、PCによるCD読取数16位、Twitterつぶやき数23位、そのほかのチャートは圏外となり、総合順位は2位に留まりました。「ヘタレ」という言葉の選択が、いかにも秋元康らしい感じがします・・・。オリコン週間シングルランキングではこの曲が初動売上18万5千枚で1位初登場。前作「独り言で語るくらいなら」の17万5千枚(2位)からアップしています。

3位はback number「水平線」が先週から同順位をキープ。これで10週連続のベスト10ヒットとなりました。ストリーミング数は8週連続で1位を獲得。ただダウンロード数は5位から8位、You Tube再生回数は8位から12位にダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に星野源「Cube」がランクイン。ダウンロード数2位、ラジオオンエア回数では1位を獲得。一方、ストリーミング数は77位、Twitterつぶやき数は14位、You Tube再生回数は42位に留まり、総合順位はこの位置になっています。映画「CUBE 一度入ったら、最後」主題歌。今風なエレクトロサウンドに、複雑なドラムのビートが印象的な作品になっています。

5位初登場は三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「JSB IN BLACK」がランクイン。CD販売数は2位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数29位で、それ以外はランク圏外となり、総合順位もこの位置に。オリコンでは初動売上6万8千枚で2位初登場。前作「1000 SEASONS」の6万6千枚(3位)から若干のアップとなっています。

そして初登場曲最後は、先週の13位から9位にランクアップしてきたKing Gnu「BOY」。ダウンロード数7位、ストリーミング数16位、ラジオオンエア数2位、Twitterつぶやき数86位、You Tube再生回数7位。フジテレビ系アニメ「王様ランキング」オープニングテーマ。今後、さらなるヒットとなるのでしょうか。

一方、ロングヒット曲は、まず優里「ドライフラワー」。この新譜ラッシュの中、5位から6位へとわずかワンランクダウンにとどめています。カラオケ歌唱回数は38週連続の1位。You Tube再生回数は5位から6位にダウンしましたが、ストリーミング数は5位から4位にアップ。これで49週連続のベスト10ヒットとなります。

Official髭男dism「Cry Baby」は4位から7位にダウン。ダウンロード数は4位から9位、ストリーミング数も2位から3位とダウン。ただYou Tube再生回数は9位から8位にアップ。これで通算18週目のベスト10ヒットとなり、根強い人気を見せています。

そしてBTS「Butter」が6位から8位、「Permission to Dance」が8位から10位とそれぞれダウン。それぞれ23週及び16週連続のベスト10ヒットとなっています。一方、「Dynamite」は9位から11位に再びランクダウンし、ベスト10返り咲きは1週に留まりました。

そんな訳でHot100としては珍しく新曲が目立った今週のチャート。昔のオリコンのように、ベスト10が毎週のように総入れ替わりという状況もつまらないのですが、最近のHot100のように、ほぼ1年以上にわたり、同じ曲が何曲もランクインし続けるという状況もさすがにうんざりする中、こういう新譜ラッシュはうれしいところ。正直、このくらいはベスト10が常時入れ替わった方がおもしろいと思うのですが。明日はHot Albums!

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2021年10月26日 (火)

シンプルで、美しい

Title:A Beginner’s Mind
Musician:Sufjan Stevens&Angelo De Augustine

毎回、傑作アルバムをリリースし続け、高い評価を得ているアメリカのシンガーソングライター、Sufjan Stevens。そんな彼の新作はレーベルメイトであり、シンガーソングライターであるAngelo De Augustineとのコラボ作となっています。もともとこの作品は、2人がニューヨーク北部の友人のキャビンで1ヶ月間、ソングライティングのため休暇を取ったことからスタートしたそうです。2人はその休暇中に多くの映画を観たそうで、今回の楽曲は、主にそんな映画からインスピレーションを受けて作成された楽曲だそうです。

さらに今回のアルバムタイトルの由来となっているのが"shosin"(初心)だそうで、いろんなところでコピペされている(ライターはもうちょっと「仕事」してくれ・・・)アルバムの紹介文によると「これは、アルバムのタイトルにもなった禅仏教の概念で、映画が何を言おうとしているのかという先入観なく、ありそうもないインスピレーションを探しそれについて書く、というものだ。」ということだそうです。ただ、おそらく「初心」自体が禅仏教の概念というよりも、アルバムタイトル「A Beginner's Mind」自体が、スティーブ・ジョブスも愛読したという、海外で出版され多くの話題を呼んだという書籍「禅マインド ビギナーズ・マインド」に由来しているのでないかと思われます。

そうすると奇妙になるのがこのアルバムジャケットで(笑)、かなり奇抜なジャケットはガーナのアーティスト、Daniel Anum Jasperの手によるもの。今回、あえて情報を多く伝えず、ジャケット画を依頼したそうです。その結果、若干アルバム内容とミスマッチになっている感もあるのですが、そのミスマッチさが、逆に非常にユニークに感じされるインパクトあるジャケットに仕上がっていました。おそらく「禅」をテーマにしたとしたら、日本人なら絶対に選ばないデザインで、ここらへんのミスマッチさも非常にユニークに感じます。

さて、肝心の内容ですが、アコースティックギターでしんみり聴かせるフォーキーな作品が並ぶ内容に。ファルセット気味に聴かせる2人のデゥオも非常に美しく、印象に残ります。アコギのアルペジオに2人のハーモニーが美しい「Reach Out」に、アコギとピアノでドリーミーに聴かせる「Olympus」。ファルセットボイスとアコギアルペジオとピアノで美しく聴かせる「Cimmerian Shade」など、フォーキーで清涼感あるサウンドと美メロ、さらにファルセットボイスを多用してドリーミーに聴かせる楽曲が並びます。

正直なところ楽曲としてのバリエーションはあまり多くありません。あえていえばバンドサウンドを取り入れた「Back To Oz」あたりにバリエーションを感じさせますが、この曲にしても基本的には美しい歌を聴かせるという点では他の曲と大差はありません。ただそれでも、全14曲45分一気に聴けるのは、ほれぼれするほど美しいメロディーラインとサウンド、さらには2人の歌声があるからでしょう。

Sufjan Stevensというと、フォーキーな作風とサイケな作風の両方のパターンのアルバムを作ってくるという印象を受けます。フォーキーという意味では、過去に聴いたアルバムでは「Carrie&Lowell」が近い感じでしょうか。ただ今回の作品はさらにアコースティックにシンプルにまとめた作品に仕上がっていました。シンプルな作風ながらも、シンプルゆえに聴き入ってしまう魅力を感じさせてくれる1枚でした。

評価:★★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell
Planetarium(Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister)
The Ascension


ほかに聴いたアルバム

Buena Vista Social Club: 25th Anniversary Edition

ライ・クーダーがキューバに旅行した際、キューバ以外ほとんど知られていなかったキューバのベテランミュージシャンたちとセッションを行ったことがきっかけとなり、アルバム、さらにはドキュメンタリー映画も作られたバンド、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ。当時は日本でも大きな話題となりました。本作は、そのアルバムから25周年を記念してリリースされたリマスター盤。オリジナル音源に未発表曲集を加えた2枚組でのリリースとなります。

彼らについてはリアルタイムで話題になったことを覚えているのですが、その当時はワールドミュージックにほとんど興味がなかったため、聴くことはなく、実は音源を聴いたのは今回がはじめて。決して派手ではないものの、しっかりとしたベテランの演奏とメランコリックなメロが魅力的な作品。こういうキューバ音楽の作品が、世界中で当時受け入れられたというのは、今としてみれば驚きもあります。ワールドミュージック好きはもちろんですが、幅広い音楽ファンが楽しめそうな、そんな魅力あふれるメロと演奏を聴かせてくれる作品です。

評価:★★★★★

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2021年10月25日 (月)

コロナ禍でのTHE BAWDIES

Title:BLAST OFF!
Musician:THE BAWDIES

前作「Section#11」から約2年ぶりとなるTHE BAWDIESのニューアルバム。いわばコロナ禍が起こったのち、はじめてリリースされることになった彼らのニューアルバム。THE BAWDIESといえば、ライブにも活動の重点を置くロックンロールバンドである中、ライブ活動も制限される中、どんなアルバムがリリースされるのか、注目されました。

その結果、リリースされた本作は、一言で言うと、非常に疾走感ある陽気なロックンロールナンバーがつまったアルバムに仕上がっていました。とにかくアップテンポで陽気なナンバーが目立つ本作。ホーンセッションも入って軽快な「YA! YA!」からスタートし、続く(似たようなタイトル)の「OH NO!」も同じような陽気なロックンロールナンバー。さらに「T.Y.I.A」も軽快で疾走感あるバンドサウンドの中、ROYのシャウトが響く、ガレージテイストの強い楽曲へと続いていきます。まるでコロナ禍の中、自由にライブが出来なくなったうっ憤を晴らすかのような、陽気な楽曲が続いていきます。

ただ、その後の楽曲で言えば、彼らのアルバムの中では比較的バラエティーに富んだ作風なのが特徴的でした。「I DON'T WANNA」はかなり分厚いのギターロックになっており、むしろオルタナ系ギターロックからの系譜を感じますし、「DO IT」はもっとファンキーなリズムが特徴的。「RUN AROUND」などもヘヴィーなバンドサウンドが鳴り響く中、ハイトーンで刻むリズムは、むしろ打ち込みのダンスナンバーに通じるサウンドを感じさせます。最後を締めくくる「END OF THE SUMMER」もアコギも入りつつ、みんなで歌い上げるミディアムテンポのシング・ア・ロング系の楽曲。コロナ禍の中で、ライブは再開してもライブ会場でみんなで声を出すことが出来ない状況の中、あえてこういう曲を作ってくるあたりに彼らの意思を感じることが出来ます。

もっとも後半に至っても、「ROLLER COASTER」のような軽快で疾走感あるロックンロールナンバーがあったりと、序盤のイメージは後半まで続いていきます。また、この曲もそうですし、例えば「SUN AFTER THE RAIN」などもそうですが、軽快でメロディアスなポップチューンが目立つのも本作の特徴。特に「SUN AFTER THE RAIN」などはポップな曲調がJ-POP的ですらあり、良くも悪くも彼らの作品の中では「軽い」という印象を受けました。

非常に明るく軽快でライブ映えしそうなロックンロールナンバーが並んだ本作。こういう作品をコロナ禍の中で作ってくるのはあえて、ということなのでしょうか。一方ではバラエティーに富んだ作風になった点は、ライブ主導ではなく、ステイ・ホームの環境の中、曲に向き合って作品を作り上げたから、ということも言えるのかもしれません。正直言って、全体的に非常にポップで軽い作品になっており、個人的にはもうちょっと「黒さ」を感じさせる作品が好みだったかも・・・とは思うのですが、勢いのある陽気なロックンロールナンバーが素直に楽しめるアルバムだったことは間違いありません。コロナ禍の中とはいえ、徐々にライブも戻ってきている現状、少々暗い世の中で、彼らのロックンロールが陽気に鳴り響きそうです。

評価:★★★★★

THE BAWDIES 過去の作品
THIS IS MY STORY
THERE'S NO TURNING BACK
LIVE THE LIFE I LOVE
1-2-3
GOING BACK HOME
Boys!
「Boys!」TOUR 2014-2015 –FINAL- at 日本武道館
NEW
THIS IS THE BEST
Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019 FINAL at 日本武道館
Section#11


ほかに聴いたアルバム

Case/Creepy Nuts

人気急上昇中のHIP HOPユニットCreepy Nutsのフルアルバム。前作でも感じたのですが、ハードコア風な作品からポップな作品まで幅広いHIP HOPを聴かせてくれ、全体的に器用なユニットという印象を受ける作品。今回もトラップ的な要素を入れた作品からロック的なトラックの作品、ソウル風の作品やポップな作品まで幅広いHIP HOPを聴かせてくれます。毎作恒例なのですが、通常盤は「ラジオ盤」といって、曲の間に2人のトークが入るスタイル。これはこれでおもしろいのですが、ただ、バラバラな作風の曲が並んでいると、素直に曲だけ通して聴いてみたらどんな印象になるのかな?とも思ってしまいました。まあ、トーク部分を飛ばして聴けばいいだけの話かもしれませんが。

評価:★★★★

Creepy Nuts 過去の作品
クリープショー
かつて天才だった俺たちへ

STEREO 3/山崎まさよし

山崎まさよしの約2年ぶりとなるニューアルバム。全体的にシンプルなギターサウンドを主軸として、しっかりと歌を聴かせるポップソングが並ぶ作品に。正直、ここ最近の彼の作品は、一時期に比べて勢いがなく、地味な印象を受ける作品が続いています。今回の作品もアルバム全体としてはこれといった核となるような曲もなく、地味という印象を受けるのですがアコギを爪弾きつつメランコリックに聴かせる「Prelude」をはじめ、メロディーラインの良さにグッとくるような曲も少なくなく、山崎まさよしの実力を再認識させられる部分もありました。ここ最近のアルバムの中では一番の出来かも。

評価:★★★★

山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!

IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]

FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~
ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
FM802 LIVE CLASSICS

LIFE
山崎×映画
Quarter
ONE DAY
山崎×CM

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2021年10月24日 (日)

インパクト満点

Title:僕のスピな☆ムン太郎
Musician:マハラージャン

ジャケット写真とアルバムタイトル、さらにミュージシャン名を見るだけで強烈なインパクトがある彼は、現在、大きな注目を集めている男性シンガーソングライター、マハラージャン。かなり奇抜なミュージシャン名ですが、彼が所属している事務所の名前が「油田LLC」で、「油田なんでマハラジャでどうですか?」と言われたことがミュージシャン名の由来だそうです。ここで一番問題なのは、「マハラジャ=インドの国王」なのですが、油田があるのは中近東であって、インドではない、ことなのですが。

性別以外、年齢も本名も不詳という彼。ただ、大学院まで出てCM制作会社に勤務したことあるということなので、おそらく30歳前後でしょう。本作がメジャーデビュー作ということで、比較的遅咲きのミュージシャンということになります。そんな彼のデビュー作はミュージシャン名やアルバムタイトルからして、ノベルティーソング寄り、というイメージがあるのですが、楽曲自体はノベルティー色はさほど濃くはなく、むしろ非常にまじめ。むしろかなりカッコいいポップソングを聴くことが出来ます。

特にファンキーな要素を非常に強く取り入れている点が特徴的で、アルバム1曲目「次いくよ」は楽曲がはじまると同時にハマ・オカモト演奏によるファンキーなベースラインが非常にカッコよい楽曲。疾走感あるリズムも心地よいのですが、メロディーラインもファンキーながらもいい意味でベタなポップスさも兼ね合わせており、インパクトのあるファンキーポップに仕上がっています。さらに先行EPとしてリリースした「セーラ☆ムン太郎」も、まさに歌謡ファンクといった感じの日本人に耳なじみあるメロディーラインにファンキーなリズムがカッコいい曲。歌詞もコミカルな部分がありつつ、シニカルな歌詞が非常に印象的なポップソングに仕上がっている名曲になっています。

ただ、このファンキーな方向性をベースにしつつ、様々な音楽性を取り入れているのもユニークで、同じく先行EPである「僕のスピな人」はこちらもカッコいいベースラインにファンキーな要素を残しつつ、基本的には疾走感あるギターロック。「いうぞ」は強いビートのエレクトロチューンですし、「地獄Part2」はエレクトロサウンドを入れつつ、メロウなメロディーラインがシティポップ風。ラストはご存じ「Romanticが止まらない」のエレクトロアレンジカバーで締めくくられています。

多彩な音楽性を感じさせ、ファンクの要素を入れつつも、ただ一方では全体的に歌謡曲、J-POP色も強く、いい意味でポップでインパクトのある聴きやすいメロディーラインが大きな魅力。ここらへんのメロディーラインのベタさゆえに、最初は正直若干「どうかなぁ」という印象で聴き進めていったのですが、最後の方にはポップでインパクトのあるメロにすっかりはまってしまいました。また、ノベルティー色はさほど濃くはない、とは書いたのですが、確かにコミックソングではないものの、歌詞にはユーモアセンスがちりばめられており、この点も非常にユニーク。コミカルでありつつ同時にシニカルさも感じさせる歌詞が大きなインパクトとなっており、大きな魅力になっていました。

個人的に、「ミュージシャン名はコミカルだけど、楽曲は真面目」という点で、「スネオヘアー」を思い起こしてしまったのですが・・・ある意味、いろいろな側面でよりインパクトが強いような気がします(笑)。特にミュージシャン名やビジュアル面がブレイクのための変なノイズにならなければ良いかも、とは思うのですが、インパクト満点の彼。今後、話題のミュージシャンとなり一気にブレイクということもありえそう。文句なしに注目のミュージシャンの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Pilgrimage of the Soul/MONO

ポストロックバンドMONOのニューアルバムは今回もスティーヴ・アルヴィニによる録音・ミックスによる作品。メランコリックな曲調に、時にはダイナミックに、時には静かに美しく鳴り響くバンドサウンドが魅力的な1枚。基本的にはそのため、いつものMONOの路線から大きな変更はないものの、やはりメロディーラインの美しさと精緻なバンドサウンドのバランスさは本作も秀逸。そのメロとサウンド構成に終始聴き入ってしまう傑作でした。

評価:★★★★★

MONO 過去の作品
Hymn To The Immortal Wind
For My Parents
The Last Dawn
Rays of Darkness

Requiem For Hell
Before The Past・Live From Electrical Audio

Emerald City Guide/JINTANA&EMERALDS

一十三十一、(((さらうんど)))等でも活躍するCRYSTALなどといった豪華なメンバーを擁するネオ・ドゥーワップバンドの2枚目となるアルバム。前作「Destiny」はMUSIC MAGAZINE誌の2014年「歌謡曲/J-POP」部門の年間1位となるなど注目を集めました。本作はそれに続くアルバム。相変わらず60年代や70年代、いやむしろもっと昔の世代を彷彿とさせるようなレトロな、そしてとても甘いサウンドとメロディーラインを聴かせてくれます。ただ、前作でも感じたのですが、スウィートなサウンドは魅力的ながらも全体的にはいまひとつパンチ不足な感も否めず。良くも悪くもレトロなサウンドそのまま・・・といった印象を受けてしまいます。まあ、「そのまま」なのはそれはそれで魅力的なのですが・・・。

評価:★★★★

Jintata&Emeralds 過去の作品
Destiny

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2021年10月23日 (土)

フォーキーな作風で奥深さも

Title:オオカミが現れた
Musician:イ・ラン

今回紹介するのは、韓国のミュージシャン。韓国と言えば、BTSをはじめK-POP勢が高い人気を獲得していますが、個人的には正直、K-POPと言われるジャンルには、ほとんど食指が動かされることはありません。ただ、もちろんJ-POPがジャニーズ系や秋元系だけではないように、韓国の音楽といってもK-POP勢だけありません。というわけで、彼女は韓国のシンガーソングライター。2017年に韓国大衆音楽賞で最優秀フォーク・ソング賞を受賞して話題になったほか、日本のシンガーソングライター柴田聡子とジョイントツアーで日本をまわったり、また折坂悠太の最新アルバムでも参加しているなど、日本ともつながりの強いミュージシャン。日本でも徐々に話題となっているようです。

柴田聡子や折坂悠太とつながりのあるミュージシャンということで、おそらく一般的に彼らと同じ方向性の、アコースティックなサウンドで聴かせるフォーキーな作風を予想されるかと思います。実際、このアルバムでも基本的にはシンプルなアコースティックなサウンドを主軸とするフォーキーな楽曲がメインとなっています。例えば「よく聞いていますよ」の冒頭など、完全に柴田聡子の作風と通じるものがありますし、「ある名前を持った人の一日を想像してみる」も同様に、アコースティックなサウンドをバックにフォーキーに聴かせる作品に仕上がっています。

そんな感じで、アコースティックなサウンドでシンプルなメロディーラインを聴かせる歌モノがメインとなっている本作。ただ、そんなシンプルなサウンドの中、単なるフォーキーなポップシンガーという単純な見方の出来ない、楽曲のバリエーションの多さが非常に特徴的に感じました。例えば「何気ない道」などはストリングスを入れてどこか懐かしさを感じさせるポップチューンとなっており、その暖かい雰囲気のメロディーラインが印象に残ります。さらに「意識的に眠らないと」はつぶやくようなボーカルを入れてドリーミーな作風に。どちらも基本的にはアコースティックでフォーキーな作風なのですが、そんな中でもバリエーションを感じる曲調になっています。

さらに「対話」ではアカペラを中心として楽曲を構成していますし、さらにタイトル曲「オオカミが現れた」では、コーラスラインにトライバルな要素を感じ、強く印象に残ります。ここらへんは単純なフォークソングとは異なる、彼女の音楽性の幅広さ、奥深さを感じられます。個人的には、これに韓国語という要素が加わり、よりトライバルな雰囲気が増しているようにすら感じられました。

そしてラストは「患難の世代(Choir Ver.)」と、タイトル通り、合唱が加わるメロディアスなポップスで締めくくり。最後はみんなの合唱で円満に・・・と思いきや、ラストは悲鳴のような叫び声と共に、不気味な雰囲気で唐突にエンディングを迎えます。なんとも言えない後味の悪さが加わる作風になっており、聴き終わった後、微妙な後味を感じつつ、ただ最後に強烈なインパクトを覚える締めくくりとなりました。

全体的にはフォーキーでメロディアスなポップが非常に印象的ながらも、楽曲のバリエーション、さらに奇妙なラストの締めくくりも加わり、強烈な個性とインパクトを持つアルバムに仕上がっていました。今回、はじめて彼女の作品を聴いたのですが、非常に個性的なシンガーソングライターの傑作だったと思います。今後も、さらに日本のミュージシャンともコラボを行い、その名前を聞く機会も増えてきそう。前述の柴田聡子や折坂悠太が好きなら文句なしでお勧めの1枚。韓国の音楽=K-POP・・・だけではないということをあらためて実感できる1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Space 1.8/Nala Sinephro

新進気鋭のジャズミュージシャン、ナラ・シフロネのデビュー作。本作は、なんとあのWARPレコードからのデビューということでも大きな話題となっております。WARPからデビューということは、さぞかし実験的な・・・と思いきや、エレクトロサウンドを取り入れつつ、基本的にはスタンダードなジャズの音色も聴かせてくれ、いい意味で意外と聴きやすいという印象が。もちろん、サウンド的には一筋縄ではいかず、一方ではエレクトロサウンドにアバンギャルドなドラムの音色、エキゾチックなサウンドなども入って、独特な世界観を作り上げています。ムーディーなジャズのサウンドの中、緻密に作り上げた独自の音世界に耳を惹かれる作品でした。

評価:★★★★★

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2021年10月22日 (金)

復活ライブ第1弾!

TM NETWORK How Do You Crash It?one

会場 オンライン 日時 2021年10月9日(土)21:00~

これはいきなりビックリさせられました!TM NETWORK再始動。ご存じの通り、不倫騒動のため一度は引退を宣言した小室哲哉。その後、大方の予想通り、徐々に音楽活動を再開したのですが、ここに来て、TM NETWORK再始動。正直、このタイミングでの小室哲哉復活については賛否わかれているようですが(というか、TMファン以外だと「否」が多いように思うのですが)、ただ、TM NETWORKのファンとしてはやはり素直にうれしい!という感情が先に立ってしまいます。そんなTM復活第1弾は「How Do You Crash It?」というオンラインライブ。「one」というタイトル通り、今後第3弾まであるそうです。1時間の予定で、1回あたり5,000円弱という価格設定はちょっと高すぎるんじゃない?と思いつつ、TMファンとしては・・・やはり見てしまいますよねぇ・・・。

で、時間通りスタートするのもTM NETWORKらしいのですが、まずステージ上にあの3人が並んでいるだけで、まずは感極まるものがあります。そしてゆっくりと復活の1曲目となったのは「ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)」。しんみり聴かせるスタートはちょっと意外ながらも今の彼らにピッタリ来ますし、小室/木根の共作曲というのもうれしいところ。「時を超えてHello Again」という歌詞も復活1曲目としてピッタリ来ます。

さらに続くのは、再結成した後の彼らの代表曲とも言える「I am」へ。さらにこの曲に続くのが、聴きなれない曲と思ったら、今回初披露の新曲「How Crash」だとか。「I am」もそうですが、いい意味で変なひねりのない、しっかりと歌を聴かせるポップスとなっており、次のTMの向かう道を感じさせる曲になっていました。

その後は木根尚登が一人ステージに残り、世界の映像を映したインターリュード的な映像が短く流れると、そのまま「Action」へ。本作は2007年のアルバム「SPEEDWAY」からの曲。これまた再結成後の作品でちょっと意外な選曲。「SPEEDWAY」は彼らにとって原点回帰的な作品でしたが、その1曲目であり、やはり新たな一歩を感じさせる歌詞のこの曲が、今回のライブの選曲としてふさわしいということでしょうか。

続いてウツがギターを片手にゆっくり歌い上げたのは「1/2の助走 (Just For You And Me Now)」。なんとデビューアルバム「RAINBOW RAINBOW」に収録されてきるキネバラという、かなり意外な選曲。さらにここから「Green Days」と、こちらも知る人ぞ知る的な1曲へと続いていきます。

ここまでは比較的レア曲が続いたステージでしたが、ここで相変わらずの超絶長いイントロから、彼らの代表曲「Get Wild」へ!相変わらずイントロだけだと何の曲かわからない・・・。アレンジも原曲からかなりリメイクされているものの、ただ、やはり「Get Wild」がスタートすると興奮してしまいます!さらにこれまた懐かしい「We Love The Earth」へ。テンションがさらに上がります。

そしてここから一転、「Seven Days War」に。こちらも非常に懐かしいナンバーですが、メランコリックなメロディーラインは、今でも聴いていて胸に響いてきます。そして、この曲を最後にライブは終了。予定どおり1時間のステージ。最後は「To Be Continued」の文字が画面に映り、ライブの締めくくりとなりました。

今回の再結成ライブ、賛否があるのは重々承知ですが、それでもやはりTM NETWORKは良い!!そう実感するステージでした。なによりあの3人が同じステージに立ち、ライブを行っているだけで感慨無量。正直言って、宇都宮隆と木根尚登は老けたなぁ・・・(逆に小室哲哉は変わらないなぁ・・・)なんて思ってしまうのですが、一方で宇都宮隆のボーカルは往年とほとんど変わらない声色で、ビックリしてしまいます。今回のステージは、比較的レアな曲がメインながらも最後は「Get Wild」や「Seven Days War」などの代表曲で盛り上がるステージ。1時間で5千円という値段設定はちょっと高いという印象は最後まで変わらなかったのですが、それでも画面に見入ってしまい、最後まで文句なしに楽しめるオンラインライブでした。今後、第2弾、第3弾も予定されているとか。高い高いと思いながらも、一方で楽しみなのも間違いありません。オンラインライブが終わったら、次は是非、生のライブを!まだまだTM NETWORKの活動を楽しめそうです!

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2021年10月21日 (木)

こちらもアイドル系が1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位はK-POPのアイドル勢が獲得。

今週の1位は、韓国の男性アイドルENHYPEN「DIMENSION : DILEMMA」が獲得しました。CD販売数1位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数15位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上12万枚で1位初登場。前作「BORDER: CARNIVAL」の8万3千枚(1位)よりアップしています。ちなみに本作は韓国盤のリリースなのですが、輸入盤ではランクインしないはずのなぜかビルボードでCD販売数もランクイン。ここらへん、輸入盤がランクインしてきたりしてこなかったり、基準がかなり曖昧な部分があって不信感を覚えてしまいます・・・。

2位にはアニメ「マクロスΔ」に登場するワルキューレのニューアルバム「Walküre Reborn!」が獲得。CD販売数3位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動売上2万8千枚で3位初登場。前作「ワルキューレがとまらない」の初動2万4千枚(6位)よりアップしています。

3位には宮本浩次「縦横無尽」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数6位。ご存じエレファントカシマシのボーカリストにより、ソロオリジナルアルバムとしては2枚目となる作品。オリコンでは初動売上2万9千枚で2位初登場。直近作であるカバーアルバム「ROMANCE」の初動4万7千枚(1位)及びソロ前作「宮本、独歩」の3万5千枚(3位)よりもダウンしています。ただ、ソロでの売上がエレカシより上回っており、かなり好調な感じ。エレカシ復活はいつになるのでしょうか?ちょっと複雑な心境です・・・。

続いて4位以下の初登場盤です。4位にはOWV「CHASER」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数11位。オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」の元練習生4人によって結成された男性アイドルグループ。本作がデビュー作となります。オリコンでは初動売上1万9千枚で5位初登場。

5位初登場は秋組「MANKAI STAGE『A3!』Autumn Troupe コスモス≒カオス」。CD販売数5位、ダウンロード数23位、PCによるCD読取数28位。スマートフォン向けイケメン役者育成ゲーム「A3!」から派生した舞台に使われた曲をまとめたアルバム。オリコンでは初動売上1万8千枚で6位初登場。同シリーズの前作、夏組「MANKAI STAGE『A3!』Summer Troupe ひまわりと太陽」の1万3千枚(7位)からはアップしています。

6位には虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会「L!L!L! (Love the Life We Live)」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数7位。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!」シリーズの第3作「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」から誕生した架空のアイドルグループ。オリコンでは初動売上1万8千枚で7位初登場。前作「Just Believe!!!」の1万6千枚(5位)からアップ。

7位には、なんとThe Beatles「Let It Be」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数19位、PCによるCD読取数10位。いまさら説明するまでもありませんが、60年代から70年代にかけて活躍し、ポピュラーミュージックの歴史を塗り替えた伝説的なバンドThe Beatlesが1970年にリリースしたラストアルバム。今回、最新リミックスや未発表音源などを加えた「スペシャルエディション」がリリースされ、その影響でベスト10入りを果たしました。オリコンでは初動売上2万1千枚で4位初登場。その活動から半世紀を経た現在でも圧倒的な人気を感じさせる結果に、あらためてThe Beatlesのすごさを感じさせます。

8位初登場は女性アイドルグループPeel the Apple「勇敢JUMP!」。CD販売数8位、ダウンロード数60位。本作はメンバー別に8形態でのリリースとなったのですが、おそらくビルボードでは合算でのランクイン。一方、オリコンでは浅原凛ver.のみが初動売上8千枚で11位初登場となっています。

最後10位にはイギリスの人気ロックバンドCOLDPLAY「Music of the Spheres」がランクイン。CD販売数13位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数43位。BTSとのコラボ作「My Universe」がHot100にランクインしてきましたが、同曲も収録されたニューアルバム。オリコンでは初動売上5千枚で13位初登場。前作「Everyday Life」(10位)からは初動売上は横バイという結果になっています。

今週のHot Albumsは以上。ちなみに先週ベスト10に返り咲いたBTS「BTS,THE BEST」は今週、20位にダウンしてしまいました。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年10月20日 (水)

ロングヒット再び・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はまたアイドル系が上位に並んでいます。

まず今週1位は秋元系。櫻坂46「流れ弾」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数で2位を獲得。一方、ストリーミング数は29位、ラジオオンエア数19位、Twitterつぶやき数11位に留まりましたが、総合順位は1位獲得となりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上37万5千枚で1位初登場。前作「BAN」の35万3千枚(1位)から微増。

2位は韓国のアイドルグループStray Kids「Scars」が先週の39位からCDリリースに合わせてランクアップし、2週目にしてベスト10入り。CD販売数2位、ダウンロード数46位、ストリーミング数20位、PCによるCD読取数13位、Twitterつぶやき数16位。オリコンでは初動売上11万9千枚で初登場2位。前作「TOP」の3万7千枚(1位)よりアップしています。

3位はback number「水平線」が先週の2位からワンランクダウンながらもベスト3入り。これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。ストリーミング数は今週7週連続で1位獲得。ダウンロード数は3位から5位にダウンしましたが、You Tube再生回数は11位から8位にアップしています。

続いて4位以下ですが、今週は初登場曲がゼロ。その結果、ロングヒット曲が目立つチャートとなりました。まずBTSですが、今週「Dynamite」が11位から9位にランクアップ。3週ぶりにベスト10に返り咲き、ベスト10ヒットは通算57週となりました。一方、「Butter」は4位から6位、「Permission to Dance」は先週と変わらず8位をキープ。これで前者は22週連続、後者は15週連続のベスト10ヒットとなりました。

さらにYOASOBI「怪物」も、今週13位から10位にランクアップ。今週7週目のベスト10返り咲きとなりました。これで通算30週目のベスト10入りとなっています。

Official髭男dism「CryBaby」も6位から4位にアップ。ストリーミング数は5位から2位、ダウンロード数も7位から4位にアップ。さらにYou Tube再生回数も13位から9位にアップと、ここに来て上り基調に。これで通算17週目のベスト10ヒットとなりました。

優里「ドライフラワー」も先週から変わらず5位をキープ。カラオケ歌唱回数は37週連続の1位。ストリーミング数、You Tube再生回数それぞれ先週の6位、7位から5位にアップしています。これで48週連続のベスト10ヒット。何で?というほどの強さを見せつけています。

そんな訳で、今週もまたロングヒットが目立つチャートに。しかし、相変わらずロングヒットが変わり映えしないチャートになってしまっています。今年ももう、10月が終わりかけとなっており、年末の紅白の話がチラホラ出てくる中、今年はヒット曲不在なんていう声もあったりして。確かに、ロングヒット勢を見ても、BTS「Dynamite」もYOASOBI「怪物」も「ドライフラワー」も、1月からずっとベスト10に入り続けており、正直、BTSもアイドル的な人気で、曲自体がそれほど話題になっているのか、かなり微妙。「ドライフラワー」もあれだけヒットしているのに、なぜか今年のヒット曲として半ば無視されているような状況に・・・。

印象論ではあるのですが、ここ最近のチャートはあまりにストリーミングの割合が大きすぎて、簡単にヒットチャートに割って入れなくなった結果、大物ミュージシャンはシングル単位で曲を出すことが少なくなり、レコード会社も楽曲単位でのプロモーションを忌避するようになってしまい、「ヒット曲」が出にくくなってしまったような気がします。前々から、あまりにもストリーミング数の比率の高い、代わり映えのしないチャートが気になっていたのですが、もうちょっと何とかならないのでしょうか?いくらなんでも1年間通じて、同じ曲が、1曲程度ではなく2曲も3曲もベスト10に入り続けている状況というのは「異常」以外の何者でものないと思うのですが。

そんなくらい気分になりつつ、明日はHot Albums!

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2021年10月19日 (火)

エバーグリーンなスピッツの魅力

Title:花鳥風月+
Musician:スピッツ

今回紹介するアルバムは、もともと1999年にスピッツがリリースしたスペシャルアルバムのリマスター盤。彼らのシングルのカップリング曲や他のミュージシャンに提供した曲のセルフカバーが収録された作品になっています。その当時、いわゆるベスト盤ブームで、様々なミュージシャンがベスト盤をリリースする中、彼らはそんなブームに対するアンチテーゼとして、あえてこういう形態のアルバムをリリースした、そうです。

このアルバムが既に20年以上前のアルバムということに驚いてしまいます・・・ついこの間、とはさすがに言わないまでも、そんな前になってしまうんだ・・・と我ながら年を取ったなぁ、という感慨深い気持ちになってしまいます。今回のアルバムは「+」ということで従来の「花鳥風月」にインディーズ時代の作品「ヒバリのこころ」の作品が追加された収録されており、今では入手困難な彼らのインディーズ作「ヒバリのこころ」がこれで全曲聴けるようになりました。

「花鳥風月」の感想は、今は消滅してしまったのですが、「ゆういちの音楽研究所」旧サイト時代にアップしていたので、それを再掲したいと思います。



スピッツの、他のアーティストに提供した曲や、シングルのカップリングで、アルバムに収録されなかったような楽曲のみを集めたいわゆる「B面ベスト」的な作品です。

シングルのカップリングでアルバムにおさめられなかったような楽曲っていわゆる「捨て曲」が多い中、彼らの楽曲は、非常にクオリティーも高く、かつ、非常に「スピッツらしい」楽曲になっています。スピッツらしさはタイトルをみただけでわかりますね。「猫になりたい」「野生のチューリップ」「おっぱい」「トゲトゲの木」・・・他のアーティストでは絶対に使いません。このような、強烈な彼ららしさが、スピッツの最大の魅力なのでしょう。

そしてやはりこのアルバムで聴いてほしいのは、PUFFYに提供した「愛のしるし」のセルフカバーでしょう。草野正宗本人が歌うことにより、非常に味のある楽曲になっています。この楽曲のあらたな魅力がひきだされていますね。 それ以外の曲ももちろん名曲揃いです。是非とも聴いてほしい1枚です。

・・・正直、あまり何も語っていないような感想ですが・・・。ただ、あらためてこのアルバムを聴くと、確かに多くの感想はいらないように思います。ただただグッドメロディーの名曲が並んだアルバム。シングルのカップリングとは思えないクオリティーの高さに、セルフカバーにしても、完全にスピッツの楽曲として歌われています。ある意味、彼らのこのスタイルは20年以上たった今でもほとんど変わりません。しかし、にも関わらずいまだに人気を維持し続けているというのは、このアルバムでも感じられる、圧倒的なメロディーラインの良さがあるから、なんでしょうね。

また、今回特徴的だったのがインディーズ時代の作品「ヒバリのこころ」。この収録曲が、スピッツの原点を感じるようでなかなかユニーク。スピッツというと、インディーズ時代はパンクロックバンドであり、THE BLUE HEARTSからの影響が顕著だった、という話を聴きます。メジャーデビュー後のスピッツからは想像も出来ないようなスタイルなのですが、ただこの「ヒバリのこころ」時代の曲を聴くと、間違いなく、確かにパンクロックの影響を強く感じます。曲によってはTHE BLUE HEARTSからの影響も顕著な作品もあり、今のスピッツからすると、かなり意外性ある作風に。もっとも、グッドメロディーの暖かさを感じるポップスという路線はその当時からも変わらず。そういう意味で、完全にスピッツの原点を聴くことが出来る貴重な音源ということが出来るでしょう。

「花鳥風月」の楽曲自体ももちろんですし、この「ヒバリのこころ」からの曲を聴くだけでも聴く価値ありの1枚。このアルバムから20年以上が、さらにインディーズ盤「ヒバリのこころ」から30年以上が経過しても変わらないスピッツの魅力を感じられるアルバムでした。

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな
小さな生き物
醒めない
CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
見っけ

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2021年10月18日 (月)

内容のつまったミニアルバム

Title:We Are The Times
Musician:Buffalo Daughter

約7年ぶり。久々となるBuffalo Daughterのニューアルバム。ちょっと久しぶりとなる新作なのですが、そのリリーススパンにも関わらず、アルバムのリリース形態は全9曲39分強というミニアルバム。間隔が空いたにも関わらずミニアルバム程度しか曲が集まらなかったというのは、バンドとして若干のスランプ気味なのか??なんてことも心配してしまうのですが、ただ、聴き始めると心配ご無用!わずか9曲とはいえ、その9曲、いずれも濃度の濃い楽曲がつまった傑作アルバムに仕上がっていました。

まず序盤は、彼ららしいエレクトロサウンドの後ろにファンキーなリズムが流れる楽曲が続きます。1曲目タイトルそのまま「Music」は、イントロ的な1分程度の楽曲。続く「Times」も、同じく音数を絞って空間を聴かせるようなエレクトロチューン。どちらもタイトな雰囲気の楽曲で、いかにも彼女たちらしさを感じる楽曲に、まずは耳を惹きつけられます。

その後は徐々に楽曲にダイナミズムさが加わります。エレクトロチューンにパンキッシュなリズムが印象的な「Global Warming Kills Us All」から続く「Don't Punk Out」は力強いバンドサウンドでトライバルでファンキーなリズムが耳に残るロックチューン。アバンギャルドな雰囲気も非常にかっこよさを感じるのですが、そのサウンドの雰囲気のまま突入するのが「Loop」。ダイナミックなバンドサウンドで奏でるフリーキーなサウンドがカッコよくも、どこか不穏な雰囲気も感じさせる楽曲。続く、ゆっくりながらもダイナミックなサウンドで大きなスケールを感じさせる「ET(Densha)」と並び、ちょっと暗い雰囲気を感じさせる中盤の空気を決定づけるような曲が並びます。

ただそんな不穏な雰囲気も続く「Jazz」から徐々に弛緩していきます。ドリーミーなサウンドに優しく響く歌声も耳に残る楽曲で、中盤の不穏な空気感がふっとやわらぐ楽曲となっています。インターリュード的な「Serendipity(Tsubu)」へと続き、ラストはエレクトロサウンドがちょっとコミカルでポップな「Everything Valley」で締めくくり。最後は明るさも感じられる楽曲で締めくくられており、ほどよい聴後感を覚えるエンディングとなります。

今回のアルバム、楽曲的には決してBuffalo Daughterとしての新しい挑戦といった感じではありません。むしろ、特に序盤や終盤など、いかにも彼女たちらしいと感じさせる曲も並んでいました。しかし、必要最低限の音だけで構成される、エッジの効いたサウンドが耳に飛び込んでくる、陳腐な言い方をすれば非常にカッコよさを感じさせるアルバム。ひとつひとつの音が楽曲の中で最適な箇所に配置され続けて、ひとつの楽曲を構成している、そう感じさせる作品でした。特にこの空間を聴かせる作風は、一種の緊張感も覚えるような作品でもあり、聴いていて非常にスリリング。最初から最後まで耳の離せない構成になっていました。序盤のエレクトロな作風から中盤の不穏な展開、さらに終盤にかけての徐々に明るくなる構成も見事。個人的には今年のベスト盤候補の1枚だと思います。彼女たちの実力を存分に感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

Buffalo Daughter 過去の作品
The Weapons Of Math Destruction
ReDiscoVer.Best,Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter
Konjac-tion

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2021年10月17日 (日)

話題作から早くも10年・・・

Title:BORN THIS WAY THE TENTH ANNIVERSARY
Musician:Lady Gaga

このジャケット写真のインパクトは一度見たら忘れられません・・・Lady Gagaが2011年にリリースし、大ヒットを記録。日本でもお茶の間レベルで「Lady Gaga」の名前が知れ渡るきっかけとなったアルバム「BORN THIS WAY」。このアルバムリリースから早くも10年が経過し、このたび10周年を記念したスペシャルアルバムがリリースされました。

アルバムはDisc1、Disc2の2枚組から構成されています。そのうちDisc1については、10年前のアルバム「BORN THIS WAY」がそのまま収録。ちなみに「BORN THIS WAY」についてはリリース当初、当サイトでも取り上げています。久しぶりに同作を聴いてみたのですが、感想としてはその時の感想と大きな違いはありません。奇抜なジャケット写真やアーティストイメージとは異なり、楽曲自体は至ってオーソドックスなポップス。インパクトはあるものの決して目新しさはある訳ではありません。ただ、その当時は「飽きられるのも早いかも」ということも書いたのですが、最新アルバム「Chromatica」も全米チャート1位を獲得するなど、すっかり大物ミュージシャンの仲間入りを果たしており、この予測は幸いなことに完全に外れてしまいました。

それだけ長いこと人気を持続しているというのは、なにより楽曲のポップミュージックとしての普遍性が強いということなのでしょうか。それを感じたのは本作のDisc2です。今回、10周年記念盤で追加されたこの2枚目のCDは、彼女の曲を様々なミュージシャンがカバーしたカバーアルバム。ただ、ここに登場するミュージシャンたちはLGBTQIA+コミュニティーを代表・支持するミュージシャンたちばかりだそうです。そのため、正直言うと、日本人にとってなじみありそうなのはカイリー・ミノーグくらいでしょうか。何よりもこのセレクション自体にLady Gagaの力強いメッセージを感じさせます。

そしてそのカバーなのですが、Big Freediaによる「Judas」はラテン風のカバーだったり、Orville Peckの「Born This Way - The Country Road Version」は渋い男性ボーカルでのカントリーによるカバーだったりと、原曲に彼らなりの味付けが加えられていますが、楽曲の印象としては全く変わりません。それだけ原曲のポップミュージックとしての普遍性が高いという証拠でしょう。そして、それがLady Gagaの人気が、いかにも飽きられそうなデビュー当初の奇抜な外見とは裏腹に、長く続いている大きな要因のように感じました。

評価:★★★★

そして、そんな「BORN THIS WAY」の10周年企画盤と同時リリースだったのがこちら。

Title:Dawn Of Chromatica
Musician:Lady Gaga

こちらは、彼女が昨年リリースした、現時点での最新アルバム「Chromatica」を様々なミュージシャンがリミックスしたリミックスアルバム。ArcaやMura Masaという顔ぶれがリミックスに参加しているほか、「Free Woman」ではRina Sawayamaも参加しています。

ここでも以前取り上げた通り、「Chromatica」は彼女の初期作品を彷彿とさせるようなポップなエレクトロダンスナンバーが中心の作品に仕上がっていました。また、いつもの彼女の作品と同様、インパクトのあるポップな作品が並ぶという点も同様。ただ、「BORN THIS WAY」もそうなのですが、非常に普遍性のあるメロディーラインを持った曲が並ぶだけに、リミックスに関しても、どんなミュージシャンによるリミックスでも原曲の魅力を失わないリミックスに仕上がっていたように感じます。

基本的にどの曲も、軽快なエレクトロアレンジに仕上がっており、あのArcaがリミックスを手掛けた「Rain On Me」でも、ポップなメロを生かした聴きやすい作品にまとまっています。斬新なリミックス・・・といった感じの曲がありませんでしたが、いい意味で聴きやすいエレクトロアルバムに仕上がっていたようにも思います。参加ミュージシャンが気になる方やLady Gagaのファンなら聴いて損はない作品ではないでしょうか。Lady Gagaの楽曲のポピュラリティーがほどよく反映されたリミックス盤でした。

評価:★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP
Cheek to Cheek(Tony Bennett & Lady Gaga)
Joanna
A Star Is Born Soundtrack(アリー/ スター誕生 サウンドトラック)(Lady Gaga & Bradley Cooper)
Chromatica

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2021年10月16日 (土)

日本人が安心して聴ける音楽?

Title:ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し
Musician:桑田佳祐

アルバムとしては2017年の「がらくた」より約4年ぶりとなる桑田佳祐のニューアルバム。彼にとって初となるEP盤となります。公式サイトには「EP」と書かれて、フリガナで「ミニアルバム」と記載されており、全6曲入りで確かにミニアルバムといった感じなのですが、どちらかというと現在、「EP」というと、むしろミニアルバムよりも、もっとシングル盤に近い意味合いで使われているような気も・・・。もっとも、ミニアルバムとEPの区分が厳密ではありませんし、おそらく桑田佳祐の主なファン層である中高年世代になじみのある「ミニアルバム」という言葉を使ったんでしょう・・・・・・ということを考えてしまうほど、サザンのファンも年を取ったんだろうなぁ、ということをしみじみと思って今いました。

さて今回のアルバム、タイトルもかなり印象的。「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat.梅干し」と、まさに昔ながらの典型的な日本人の和朝食。ジャケットにも、そんないかにも日本人にとって昔からなじみのあるような朝食のメニューが並んでいます。こんな言葉をわざわざアルバムタイトルにするあたりに桑田佳祐らしいユーモアセンスを感じますし、それと同時に前述の通り、桑田佳祐(サザン)のファンの年齢層が、パンではなく、こういう和食を好んで朝食に食べるような年代になってしまったんだろうなぁ、ということも感じます。

この日本人(特にある一定以上の年齢層)にとって非常になじみのある和食メニューというアルバムタイトルが、そのまま今回のアルバムで収録されている6曲につながるような作品になっていました。今回のアルバムですが、簡単に言えば、6曲全部、日本人にとって、というよりもむしろアラフォー、アラフィフ以上の世代にとって、全く違和感なく聴ける作品が並んでおり、アルバムタイトル同様の「日本人にとってなじみのある」楽曲が並んでいました。

1曲目「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」からホーンセッションにタイトル通り、ソウル的な要素を加えたようなナンバーなのですが、基本的にメロディーラインは歌謡曲路線。続く「さすらいのRIDER」もムーディーな曲調は、まさに王道の歌謡曲を行くような楽曲に仕上がっています。

民放テレビ局のオリンピック企画のテーマ曲となった「SMILE~晴れ渡る空のように~」も、コロナ禍に翻弄された1曲なのですが、伸びやかでスケール感のあるナンバーは、まさに桑田佳祐の王道を行くような楽曲。「金目鯛の煮つけ」「炎の聖歌隊[Choir]」も、まさにサザンで似たような曲があったような・・・と思ってしまうような耳なじみある楽曲ですし、ラストの「鬼灯」もまた、彼らしい郷愁感あふれるメロが日本人の琴線に触れるような楽曲に仕上がっています。

そんな訳で全6曲、いずれの曲もいかにも桑田佳祐らしいナンバーで、間違いなく聴いていて耳なじみのある、安心して聴ける楽曲になっています。もっとも桑田佳祐らしいといっても、彼の曲のパターンはいくつもあるのですが、今回の6曲についても、その中でも特に日本人にとって聴きやすいような、歌謡曲テイストが強い楽曲が並んでいました。まさにアルバムのタイトルと整合的といえる選曲でしょう。

ただその分、正直言うと聴いていて刺激的な部分はほとんどありませんし、挑戦的な部分もありません。ポップスのクオリティーとして非常に高いのは間違いないのですが、一方で保守的すぎるというのか、目新しさや面白み、意外性などが本作にはほとんどありません。楽曲もサザンや桑田ソロで聴いたことあるような・・・という感じの曲が並んでいました。冒頭からなんでも、桑田佳祐(サザン)のファン層も年を取ったなぁ、ということを感じてはいたのですが、楽曲自体も、良くも悪くも、そんな年を取ったファン層に向けたような作品に仕上がっていたように思います。

間違いなく良質なポップスアルバムだとは思うのですが、個人的にはちょっと保守的すぎるのかなぁ、と感じてしまった1枚。もっともアルバムタイトルからもわかるように、桑田佳祐自身、意図的にそういう路線を狙ったようにも感じます。ただ、やはり次の作品は、サザンになるか桑田佳祐ソロになるかはわかりませんが、もっと彼の年齢を感じさせない、場合によっては年を取って保守的になったファンを置いてけぼりにするような作品も期待したいところ。そんなことを感じてしまうミニアルバムでした。

評価:★★★★

桑田佳祐 過去の作品
MUSICMAN
I LOVE YOU-now&forever-
がらくた


ほかに聴いたアルバム

KOE/佐藤千亜妃

現在活動休止中のロックバンド、きのこ帝国のボーカリストによるソロ2枚目のフルアルバム。ソロになって以降、ポップ路線にシフトしつつ、その音楽性を模索し続けている感のあった彼女。前作まで、それが迷走気味と感じられました。正直、本作についてもギターロック路線からJ-POP寄りの作品、さらには柴田淳あたりを彷彿とさせるような聴かせる作風まで並んでおり、ポップ路線の中で模索中、悪く言ってしまうと迷走気味という印象は否めません。ただそんな中で本作では、タイトル通り、彼女の「声」そして「歌」により主眼を置いた作品に仕上がっていました。その結果、迷走気味な部分は否めないものの、前作までの作品に比べると、彼女の「声」という明確な核を持った結果、アルバム全体としてのまとまりは感じられる作品になったように思います。今後の彼女の路線はまだ不透明ですが、この彼女の「声」を武器とした作品を作っていくのでしょうか。いろいろな意味で注目していきたいです。

評価:★★★★

佐藤千亜妃 過去の作品
SickSickSickSick
PLANET

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2021年10月15日 (金)

2つの異なるくるり

京都音楽博覧会2021

くるり

会場 立命館大学 以学館/学生会館(オンライン) 日時 2021年10月2日 19:30~

昨年、コロナ禍の中でオンラインでの開催となった、くるり主催のライブイベント、京都音楽博覧会。ただ今回も残念ながらコロナ禍の中、昨年に引き続きオンラインでの開催となりました。昨年は、くるりと岸田繁楽団の2バンド参加という形になったのですが、今年はくるりの単独出演。ただし今回は、会場が彼らの母校であり、くるりが最初に結成された立命館大学。それも2部構成という、ある意味、オンラインでのライブらしい新たな試みとなりました。

まず第1部は立命館大学の中の以学館という建物でのライブ。まず通常のバンド編成に加えて、トランペットやホーン、ピアノ、パーカッション、サックスやビブラフォンなどなどを加えた大所帯でのステージ。まずは最新アルバム「天才の愛」からの曲を披露したのですが、1曲目「I Love You」でいきなり佐藤征史がウッドベースの演奏で登場。ちょっと意表をつかれたスタートとなります。

その後、佐藤征史も通常のエレキベースに持ち替え「潮風のアリア」、さらに分厚いバンドサウンドならではの賑やかな「野球」へと続きます。その後も第1部は「天才の愛」からの曲をアルバムの曲順通りに披露。様々なサウンドを入れた、大所帯のバンドサウンドなのですが、様々な音が絡み合い、見事「天才の愛」の世界を作り出しています。

さらに「less than love」では佐藤征史が再びウッドベースの演奏を披露。ピアノやホーンセッション、フルートも入って、これまたロックというよりはジャズのようなライブ風景が繰り広げられ、くるりの音楽性の幅広さをあらためて感じるステージになっていました。さらに「コトコトことでん」ではゲストの畳野彩加も登場。清涼感ある歌声を聴かせてくれました。ラストはバンドメンバーのハンドクラップからスタートし、賑やかで楽しい「ぷしゅ」で締めくくり。基本的に最初から最後まで「天才の愛」の曲を曲順通りに披露する展開でしたが、最後まで楽しく、しっかりと賑やかなステージで「天才の愛」の世界を再現されたステージになっていました。アルバム1枚をそのままライブで披露するというのも、「京都音楽博覧会」だからこその試みといった感じでしょうか。特別感もあるステージになっていました。

その後、1部と2部の間では、くるりの岸田、佐藤の2人が立命館大学の中を巡りながら、くるり結成当時の話や大学時代の話を懐かしく語り合う映像が流れます。そして、その後、メンバーが学生会館に入っていく映像が流れた後、第2部スタートとなりました。

そうしてスタートした第2部は、第1部とは一転、くるりの2人+ドラム+キーボードというシンプルな編成での「ロック」な側面を押し出したステージ。まずライブでは比較的定番ともいえる「尼崎の魚」からスタート。さらに「窓」「ハローグッバイ」とちょっと懐かしいナンバーが続きます。

「GO BACK TO CHINA」で軽快なリズムを聴かせてくれた後、「花の水鉄砲」へ。アルバム「アンテナ」からの曲なのですが、ちょっとライブでは珍しい選曲のような。ただ、ダイナミックなバンドの演奏に、ロックバンドとしてのくるりを感じさせる曲だっただけに、この日の選曲となったのでしょうか。

その後もインディーズ時代の曲「続きは夢の中」や懐かしい「ランチ」など、バンドくるりの形式にマッチした比較的レアな曲も含む構成が続きます。レアな曲も含む自由な選曲なのは、京都音楽博覧会ならでは、といった感じでしょうか。それとも、その場でのファンの対応に頼らなくてもよいオンラインイベントならではの自由な選曲とも言えるのでしょうか。

ステージは至ってシンプルな演奏の曲が続きます。後半では「ハイウェイ」や「東京」のような、彼らの代表曲とも言える曲も登場。そしてラストは「宿はなし」へ。彼ららしいメランコリックなメロディーラインをシンプルなバンドサウンドで力強く聴かせます。

ライブ本編はこれで終了。最後は参加したバンドメンバーの簡単なインタビューがあり、終了。全2時間程度のオンラインライブが終了しました。

2年連続のオンラインでの開催となった京都音楽博覧会。2部構成となった今回の京都音楽博覧会では、大勢のメンバーでのライブとシンプルなロック色が強いステージと、2つの異なるくるりの側面が楽しめるステージに。オンラインならではの試みといったステージになっていました。これで2年連続楽しめることとなった京都音楽博覧会。ただ、来年はやはりオンラインではなく、通常のライブスタイルでの開催を望みたいところ。そうなったら足を運べるかどうかは不明なのですが・・・。

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2021年10月14日 (木)

アルバムチャートもジャニーズ系・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位は先週と変わらず。

今週1位は先週から引き続きSnow Man「Snow Mania S1」が2週連続で1位を獲得。今週もCD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得しています。

2位は初登場。GLAYのニューアルバム「FREEDOM ONLY」が獲得しています。CD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数4位。ちなみにジャケット写真はKing Gnuの常田大希が主宰するクリエイティブチーム「PERIMETRON」が担当したそうです。GLAYとKing Gnuの音楽性はあまり類似がないような気もしますが(・・・といってもKing Gnuも結構J-POPっぽいから、そうとは言えないかな?)。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上3万枚で1位初登場と、ビルボードとSnow Manの順位が入れ替わっています。もっとも、両者の差はわずか1千枚だったのですが。直近作は「ONE LOVE」の復刻版「ONE LOVE Anthology」で同作の6千枚(9位)よりはアップ。オリジナルアルバムの前作「NO DEMOCRACY」の3万9千枚(2位)よりはダウンしています。

3位にはAqours「ラブライブ! サンシャイン!! Aqours CHRONICLE(2018~2020)」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数12位。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場する架空のアイドルグループAqoursによるベスト盤。オリコンでは初動売上2万枚で3位初登場。前作は同じくベスト盤「ラブライブ! サンシャイン!! Aqours CHRONICLE (2015~2017) 」で、同作(3位)から初動売上は横バイ。

続いて4位以下の初登場盤です。まず7位に女性声優雨宮天による「OVERS -Sora Amamiya favorite songs-」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数39位。彼女初となるカバーアルバムですが、「かもめが翔んだ日」や「異邦人」、「恋におちて」など、歌謡曲のカバーがメインというなかなか渋いセレクションとなっています。オリコンでは初動売上3千枚で8位初登場。前作「Paint it,BLUE」の7千枚(7位)よりダウンしています。

10位には▽▲TRiNITY▲▽「PRiSM」がランクイン。CD販売数10位、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数42位。バーチャルVtuberグループにじさんじから派生したグループで本作がデビューアルバム。オリコンでは初動売上4千枚で7位初登場。

また今週はベスト10返り咲きも1枚。BTSのベスト盤「BTS,THE BEST」が先週の14位からランクアップし9位にランクイン。4週ぶりのベスト10返り咲きで、通算14週目のベスト10ヒットとなりました。

さらにロングヒット組ではOfficial髭男dism「Editorial」が6位にランクイン。これで8週連続のベスト10ヒットを記録しています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年10月13日 (水)

今週はジャニーズ系が1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はジャニーズ系が1位獲得です。

今週1位初登場はジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「恋降る月夜に君想ふ」。映画「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 ファイナル」主題歌。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位、You Tube再生回数3位、ラジオオンエア数21位で総合順位で1位獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上44万1千枚で1位初登場。前作「Magic Touch」の46万6千枚(1位)からはダウンしています。

2位はback number「水平線」が先週の4位からアップ。3週ぶりのベスト3返り咲きとなりました。これでベスト10ヒットは8週連続に。ストリーミング数も6週連続1位、ダウンロード数は6位から3位に、You Tube再生回数も15位から11位にアップするなど、さらなるロングヒットが期待できそうです。ただ一方、先週2位だった「黄色」は今週10位までダウン。こちらはロングヒットは難しそうです。

3位には韓国の女性アイドルグループTWICE「The Feels」が先週の29位からランクアップしベスト10初登場。You Tube再生回数で1位を獲得したほか、ストリーミング数で4位にランクインし、総合順位でベスト10入りを果たしました。

続いて4位以下の初登場曲です。まず7位にはBE:FIRST「Kick Start」が初登場でランクイン。SKY-HIが、「世界で活躍するボーイズグループを作りたい」という意気込みから自腹で1億円出資してスタートしたオーディション番組「THE FIRST」から誕生したアイドルグループ。ただ前作「Shining On」はダウンロード数1位、ストリーミング数2位、You Tube再生回数1位を獲得し、総合順位も2位にランクインしたのですが、本作はダウンロード数こそ2位にランクインしたものの、ストリーミング数は15位、You Tube再生回数は8位に留まっており、少々厳しい結果となっています。

9位にはB'z「UNITE」がランクイン。B'zがミスチルやGLAYと対バンライブを実施し、大きな話題となりましたが、同ライブイベントと同タイトルのシングルが配信限定でリリースされました。ダウンロード数では見事1位を獲得。ただ、その他はラジオオンエア数13位、Twitterつぶやき数48位に留まり、総合順位はこの位置になりました。ちなみにストリーミング配信も10月1日から実施しているようですが、なぜかストリーミング数は圏外。集計が間に合わなかったのでしょうか?

今週の初登場曲は以上。続いてロングヒット曲ですが、まずはBTS「Butter」が今週9位から4位に大きくランクアップ。特にストリーミング数が4位から2位にランクアップしています。これで21週のベスト10入り。一方、「Permission to Dance」は6位から8位にダウン。ただし、ベスト10ヒットは14週連続となります。一方、先週3位にランクインしたCOLDPLAY×BTS「My Universe」は今週12位にダウン。こちらはロングヒットとはなりませんでした。

優里「ドライフラワー」は今週8位から5位に再びアップ。カラオケ歌唱回数は36週連続の1位、ストリーミング数及びYou Tube再生回数はそれぞれ6位、7位と先週から同順位をキープ、ダウンロード数は9位から8位と若干のアップし、総合順位ではランクアップとなりました。これで47週連続のベスト10ヒットとなります。

Official髭男dism「CryBaby」も7位から6位に若干のアップ。ストリーミング数は先週と同順位の5位をキープしたものの、ダウンロード数は5位から7位と下落傾向になっていますが、総合順位ではランクアップ。これで通算16週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年10月12日 (火)

5組それぞれの個性を感じる

Title:GIFT ROCKS
Musician:a flood of circle

今年、結成15周年を迎えるa flood of circle。今回リリースされた本作は、その結成15周年記念の企画盤なのですが、これがなかなかユニークな企画。彼らが15年の活動を迎える中で出会ったミュージシャンたち5組に楽曲を提供してもらい、それをa flood of circleがレコーディングするという企画。まさに「GIFT ROCKS」というタイトルの通り、他のミュージシャンたちから贈られたロックを歌ったアルバムになっています。

その5組のミュージシャンというのが、UNISON SQUARE GARDEN(田淵智也)、SIX LOUNGE、Rei、THE BACK HORN、the pillows(山中さわお)の5組。それぞれがa flood of circleに提供した5曲を歌っており、さらにその5組のミュージシャンたちの曲をa flood of circleがカバーしています。

このa flood of circleに提供された5曲を並べて聴いてみるのが、まずはなかなかユニーク。聴いてみると、すぐに誰の曲かわかるような曲もあれば、そうでない曲もあったりして・・・特にすぐにわかったのが自分が長年のファンということもあるのですが、the pillows山中さわおから提供された「夕暮れのフランツ 凋まない風船」。完全に山中さわお節といった感じの1曲になっており、山中さわおの個性の強さが目立ちます。またUNISON SQUARE GARDEN田淵智也の提供した「まだ世界は君のもの」も圧倒的なポップス感がいかにもUNISONといった感じの1曲。この2曲に関して、特に原曲を提供したミュージシャンの個性が目立ちました。

その後に続いている5曲のカバーに関しても、原曲ミュージシャンの個性がそれぞれ発揮された曲。ここでもやはりthe pillowsのカバー「About A Rock'N'Roll Band」は原曲のイメージが大きく残っていましたし、さらにカバーで原曲のイメージが強く残っていたのがTHE BACK HORNの「コバルトブルー」。いかにもTHE BACK HORNらしい力強いサウンドと哀愁感たっぷりに歌われるスタイルはカバーでも色濃く残っており、良くも悪くもどこまで行ってもTHE BAKC HORNの曲、といった感じになっていました。

もっとも、楽曲を提供したミュージシャンの個性を感じるかどうか、という点と、それをa flood of circleが歌ってピッタリとマッチするのか、というのは別問題。ここでも何度か書いていますが、a flood of circleは、佐々木亮介のボーカルが非常に端正なゆえに、メロがポップになると一歩間違うと平凡なJ-POP風になってしまう、という弱点がありました。実際、今回の曲に関しても、ポップな曲に関しては正直、変にベタなポップになりすぎて、a flood of rockのロックバンドとしてのカッコよさがあまり表に出てこなかったように感じます。

ただ一方逆に、Reiのカバー「BLACK BANANA」など、正直Reiとしての個性はあまり感じられないのですが、疾走感ある力強いバンドサウンドのガレージロックがa flood of circleにピッタリマッチ。バンドとしての力量を感じさせるカバーに仕上がっていました。ここらへん、元のミュージシャンの個性がa flood of circleにマッチするか否か、その相性が異なる点、ユニークに感じます。

そんなこともあって、全体的には提供元のミュージシャンとの相性の良しあしもあり、すべてが名曲名カバーという感じではありませんでしたが、試みとしては非常に興味深い1枚でした。提供元のミュージシャンが好きな方も、彼らの曲をどのようにa flood of circleが調理したのか、チェックしてみてもおもしろい作品だと思います。聴きどころの多い、ユニークな1枚でした。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART
2020


ほかに聴いたアルバム

トコトワ~奄美セレクションアルバム~/元ちとせ

元ちとせのインディーズデビュー20周年を記念してリリースされた本作は、彼女の曲の中で彼女の故郷、奄美大島を感じることが出来る曲を集めたセレクションアルバム。ただ、前作も奄美大島のシマ唄を集めた「元唄」をリリースされていますし、それと比べると、奄美大島を感じられるかと言われるとちょっと薄味。本作の中でも特に圧巻だったのが「行きゅんにゃ加那節」と、民謡クルセイダーズと組んだ「豊年節」だったのですが、どちらも前作「元唄」に収録されていて、だったら「元唄」を聴けばいいじゃん!と思ってしまいます。もっとも、このアルバムに収録されているのも、他に彼女の代表曲「ワダツミの木」なども収録されており、ベスト盤的に悪いアルバムではないとは思うのですが・・・正直、奄美を感じたかったら、「元唄」を聴けば十分のような。

評価:★★★★

元ちとせ 過去の作品
カッシーニ
平和元年
元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~

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2021年10月11日 (月)

ニューヨークへの手紙

Title:Letter to N.Y.
Musician:大江千里

80年代後半から90年代初頭に一世を風靡したシンガーソングライター、大江千里。一時期は、ミュージシャンのみならず、トレンディードラマに出演し、アイドル的な人気も確保していました。イメージとしては、今で言うと、星野源に近い感じかな?ただ、なんと2000年代にはジャズピアニストに本格的に転向を図り、ニューヨークに移住。現在はニューヨークに居住した上でジャズピアニストとして活動を続けています。

昨今ではコロナ禍の中でのニューヨークの模様をレポートした記事がネット上にアップされるなど、少々意外な活動も見せており、アラフォー、アラフィフあたりの世代の方にとっては懐かしさを感じられた方も多いのではないでしょうか。正直、ニューヨーク在住ということもあり、音楽的な活動のニュースは日本ではあまり入ってこないものの、ジャズピアニストとしての活動はコンスタントに続け、今回、約2年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムはコロナ禍の中で作成されたアルバムということもあり、全曲、ニューヨークの自宅にてセルフレコーディングに挑戦した作品。エレクトロピアノを中心として、打ち込みによる構成になっている楽曲になっており、いろいろなサウンドも取り入れているあたりが、いかにも宅録といった感じの作品になっています。

そんな宅録で編成された作品なのですが、彼なりに挑戦心も感じさせる作風になっています。「Good Morning」ではトライバルなパーカッションを取り入れていたり、さらに「Out of Chaos」ではタイトル通り、アバンギャルド風な作品でフリーキーな要素も感じたりと、ジャズピアニストとしての挑戦心も垣間見れる作品になっています。

ただ一方、今回のアルバム、ジャズというよりもポップスミュージシャンとしての大江千里の魅力がにじみ出てきちゃったアルバムかな、という印象も受けました。要所要所にメロディーメイカーとしてのポピュラリティーがキラリと光るアルバムになっており、「The Kindness of Strangers」は、まさにミディアムテンポのメロが心地よい作品。さらにメロディーラインが光るのが「Staying at Ed's Place」で、爽やかなメロディーラインに、そのまま心地よい歌声が聴こえてきそうな作品に仕上がっています。

彼のジャズピアニストへの挑戦は、決してポップスシンガーとして、一時期ほどの人気が確保できなくなったことによる逃げなどではなく、かつてからの憧れであり、10年以上、ニューヨークに在住し、その活動を続けているあたりにその本気度は伺わせます。ただ、やはりこのようなアルバムを聴くと、ポップスシンガーとしての才能を感じてしまいますし、正直、ジャズアルバムの間に、たまにはでいいので、ポップスのアルバムも聴いてみたいなぁ・・・なんてことも感じてしまいました。

もちろん、ジャズピアニストとしての軽快なエレピの演奏も魅力的。ただ一方で、メロディーメイカーとしての大江千里の才能を感じる作品でした。

評価:★★★★

大江千里 過去の作品
GOLDEN☆BEST
Boys&Girls


ほかに聴いたアルバム

潮騒/遊佐未森

遊佐未森の、実に5年ぶりとなるニューアルバムは、ピアノと弦楽カルテットの演奏を軸としたアルバム。前作「せせらぎ」もアコースティックなサウンドを基調としていましたが、今回のアルバムも同じくアコースティックなサウンドでありつつ、弦楽カルテットとピアノのコラボという新たな試みとなる作品となっています・・・が、基本的にはファンタジックな様相のサウンドはいつもの遊佐未森サウンド。さらに今回、なんと17年ぶりに外間隆史が共同プロデューサーとして参加し、ある意味、実に「彼女らしい」作品に仕上がっています。ここらへん、完全に彼女の色に染まってしまうあたり、遊佐未森の圧倒的な個性を感じさせる反面、良くも悪くもマンネリ的な部分も感じてしまいます。まあ、彼女への期待にはしっかり応えているアルバムであることは間違いないのですが。

評価:★★★★

遊佐未森 過去の作品
銀河手帖
Do-Re-Mimo~the singles collection~
淡雪
VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS
せせらぎ
PEACHTREE

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2021年10月10日 (日)

ベテランらしい安定の新作

Title:Ultra Vivid Lament
Musician:MANIC STREET PREACHERS

いまや間違いなくイギリスのロックシーンを代表するバンドとなったMANIC STREET PREACHERSの、約3年ぶりとなるニューアルバム。本作でも、イギリスの公式チャートで見事1位を獲得。当然の結果・・・と言いたいところなのですが、ちょっと意外なことにオリジナルアルバムで1位を獲得するのは1998年にリリースされ、彼らの代表する1枚とも言える「This Is My Truth Tell Me Yours」以来、実に23年ぶりという快挙。その間にリリースされたアルバムのうち、実に4枚が最高位2位、2枚が3位を記録しているにも関わらず、意外なことに本作が彼らにとって2作目となるチャート1位獲得作となりました。

また今回のアルバム、日本人にとってうれしいのがいきなり1曲目のタイトルが「Still Snowing in Sapporo」であるということ。もちろんここで言う「Sapporo」とは、北海道の札幌のこと。和訳すれば「札幌にはまだ雪が降る」とともすれば歌謡曲的なタイトルですが、メロディーラインもそのイメージにマッチするメランコリックなもの。さらにスケール感あるバンドサウンドに、彼ららしい大物然を感じさせます。

それに続く「Orwellian」は、まさにマニックスらしい楽曲と言えるでしょう。イントロで連打される爽やかなピアノの音色は、実にマニックスらしさを感じますし、爽やかながらも切なさを感じさせるメロディーラインの妙も、彼ららしい実力を感じさせます。「Don't Let the Night Divide Us」も同じく、メロディアスでポップな、外連味のないギターロックなのですが、どこか切なさを感じさせるメロディーラインも彼ららしいと言えるでしょう。

また今回もゲストが参加。「The Secret He Had Missed」ではアメリカのシンガーソングライターJulia Cummingが参加しており、基本的にマニックスらしいメランコリックな作品なのですが、女性ボーカルが加わることにより楽曲の大きなインパクトが加わっています。「Blank Diary Entry」では、元Queens of the Stone AgeのMark Laneganが参加。こちらは渋いボーカリストが加わることにより、楽曲が泥臭い雰囲気に。こちらも他のマニックスとはちょっと異なる作風が大きなインパクトとなっています。

基本的には、いつものマニックスらしい、ピアノやシンセの音を入れつつ、スケール感を覚えるサウンドにメランコリックなメロディーラインの作品に。前々作、前作とメロディーラインの良さが際立つ傑作に仕上がっていましたが、本作は残念ながら前2作は超えられなかったように思います。ただ、ラストを締めくくる「Afterending」は、まさに彼らのメロディーラインの良さが光る泣きメロのインパクトが強い楽曲になっていましたし、前2作、いやいつものマニックス同様、メロディーラインの良さは存分に発揮された、十分「傑作」と言えるアルバムだったと思います。正直、目新しさはないものの、ベテランバンドらしい安定感といい意味での卒のなさを感じさせてくれる作品。あらためて彼らの実力を感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

MANIC STREET PREACHERS 過去の作品
Journal For Plague Lovers
POSTCARDS FROM A YOUNG MAN
NATIONAL TREASURES-THE COMPLETE SINGLES
Rewind The Film
FUTUROLOGY
Resistance Is Futile
This Is My Truth Tell Me Yours - 20 Year Collectors' Edition

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2021年10月 9日 (土)

ポップでインパクトもある5枚目

Title:Back In Love City
Musician:The Vaccines

イギリスのギターロックバンド、The Vaccinesの5枚目となるアルバム。デビュー時には日本で大きな話題となったものの、最近では新譜がリリースされても、あまり大きく取り上げられなくなっていまいました。一方で、本国イギリスでは一定の人気を確保しており、本作もチャート5位を記録するなど、その人気のほどがうかがえます。

ここでも毎回、彼らの作品を紹介していますが、その際のポイントとしては「シンプルなギターロック」というのを特徴とあげています。基本的に毎回、いい意味で外連味のないストレートでポップなギターロックが特徴的な彼ら。基本的に今回もその路線は貫かれています。このシンプルでポップなギターロック路線こそ、彼らが本国イギリスで人気を確保している理由でしょうし、また、日本でさほど大きく取り上げられない理由なのかもしれません。

さてそんな彼らの楽曲、前作ではポップでキャッチーという表現のピッタリ来るようなメロディーラインのインパクトがより増していたのですが、今回のアルバムでもその方向性により磨きがかかっていました。冒頭を飾るのは、いきなりタイトルチューン「Back In Love City」なのですが、ちょっと80年代的な懐かしさも感じさせるメランコリックなダンスチューン。リズミカルなテンポにのって歌われる哀愁たっぷりのメロが一度聴いたら思わず口ずさんでしまうようなインパクトがあります。さらにインパクトがあるのが「Jump Off The Top」。打ち込みのリズムとギターサウンドというバランスもインパクトですし、ギターに載って歌われる明るく疾走感あるメロもインパクト満点。一度聴いたら忘れられないようなポップソングに仕上がっています。

また、「Jump Off The Top」では打ち込みも用いているのですが、アルバム全体としては打ち込みを含めて楽曲のバリエーションのバランスも絶妙。基本的にシンプルなギターロックを軸としつつも、一方ではダイナミックなガレージロックの「Wanderlust」、エキゾチックなサウンドも入って荘厳さも感じる「El Paso」、疾走感あるハードロック風の「XCT」と続き、最後はミディアムチューンでサイケポップ風の分厚いサウンドがドリーミーで心地よい「Pink Water Pistols」へと続きます。

ただどの曲も、主軸はインパクトあるメロディーラインを持つポップな歌となっており、サウンドもバリエーションがあるとはいえ、必要以上の複雑さはありません。そういう意味では、いままでのThe Vaccines同様に多くのリスナーに訴求するような安定感あるポップソングが並んだアルバムと言えるでしょう。しかしその中でも、前作よりさらに楽曲にいい意味でのインパクトが増してきましたし、また楽曲のバラエティーといい、しっかりリスナーの壺を抑えるような楽曲づくりが出来ていているように思います。これで5枚目で、そろそろ「中堅」の域に入る彼らですが、いい意味で中堅バンドらしい安定感とポピュラリティーを持ってきているといえるでしょう。日本ではさほど人気の高まりを見せていないのですが、これだけポップなメロを書けるのであれば、日本でも徐々に人気は高まってきそう。さらなる大物への予感もする新作でした。

評価:★★★★★

THE VACCINES 過去の作品
WHAT DID YOU EXPECT FROM THE VACCINES?
Come of Age
Please Please Do Not Disturb EP

English Graffiti
COMBAT SPORTS


ほかに聴いたアルバム

Saturday Night, Sunday Morning/Jake Bugg

デビュー直後は日本の音楽メディアで騒がれつつ、作品を経るごとにほとんど取り上げられなくなった、といえばJake Buggも同様かもしれません。ただ、前作「Hearts That Strain」でデビュー当初の荒々しさは消え、カントリー風ともいえる爽やかなポップ路線にシフトしたことから、日本のメディア的には取り上げられずらくなったのかもしれません。今回のアルバムに関しても、前作と同様、メランコリックなメロが特徴的で全体的に軽いポップスに。メロディーラインの良さは相変わらずですが、ただ、シンプルなメロの中にインパクトがあった前作と比べるとちょっと弱いかな。悪いアルバムではないのですが、全体的に印象が薄すぎる感のある作品でした。

評価:★★★★

JAKE BUGG 過去の作品
JAKE BUGG
SHANGRI LA
On My One
Hearts That Strain

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2021年10月 8日 (金)

奥深いブルースの歌詞の世界へ

今日も最近読んだ、音楽系の書籍の紹介です。

今回紹介するのは、ブルースの歌詞を通じて、その奥深い世界を案内する1冊「黒い蛇はどこへ~名曲の歌詞から入るブルースの世界」。大阪府立大学及び関西大学名誉教授でもある中河伸俊による著作であり、現在でもBlues&Soul Records誌で連載中のコラムを1冊にまとめた内容になっています。

本書ではブルースのスタンダードナンバーを中心に35曲を取り上げ、その歌詞を紹介。歌詞から浮かび上がるブルースの世界の背景を紹介するとともに、その曲を歌ったミュージシャンについての紹介も加えています。ブルースの歌詞といえば、比較的シンプルな歌詞ながらも、当時の文化的背景が色濃く紐づいた歌詞がゆえに、直訳するだけではなかなかその意味がわからず、また、当時の黒人のスラングや、はたまた固有名詞なども飛び出すだけに、単純に英語を直訳したり、和訳を読んだりしても、その意味するところはなかなかわからなかったりします。

本作では、そんなブルースの歌詞を1曲ずつ丁寧に解説。注釈なども用いつつ、歌詞に登場する黒人特有の言い回しや、当時の黒人らしいダブルミーニングの歌詞の意味、さらにはスラングや固有名詞の意味などもしっかりと解説がなされており、単純のようで実は奥深い、ブルースの歌詞の世界をしっかりと理解することが出来る1冊となっています。しっかり原著にあたっていたり、歌詞の内容についても時代背景に基づいた分析までしっかり行われているのは、さすが大学教授の著者らしい仕事ぶりといった感じではないでしょうか。特にエルヴィス・プレスリーがカバーし、ロックのスタンダードナンバーともなった「HOUND DOG」が、ビッグ・ママ・ソーントンが歌うブルースの原曲と比べて、どのような変化を遂げているか、という第10章の解説などは非常に興味深かったですし、p55で書かれている、専業のソングライターによるブルース曲(1曲3分で単線的な筋を持っている歌詞)と、伝統的なカントリーブルースの曲(歌詞とメロディーの組み合わせが固定化されておらず、他作・自作の歌詞のストックから、いくらでも長く演奏できる)の区分は非常に興味深く感じました。特に後者に関しては、その視点から今後、ブルースを聴くことにより、ブルースに対する見方も変わりそうな、新たな知見を得ることが出来ました。

さらに本編ラストには付録として「黒人英語とライム」として、非常に短い構成ながらも、黒人英語の特徴について簡単な記載があります。さすがに非常に簡単なさわりの部分だけの紹介だけでしたので、既知の事項がほとんどだったのですが、ブルースの歌詞解説に合わせて読むと、よりブルースの歌詞の世界が広がるような内容になっています。

さて、ブルースを歌詞の世界から紹介した1冊という意味では、音楽評論家の小出斉の書いた「意味を知らずにブルースを歌うな!」という本を以前、紹介したことがあります。ただ、「意味を知らずに~」は比較的ブルースの入門書という位置づけ。登場するミュージシャンもシーンの流れに沿って初心者でもわかるように紹介されているので、ブルースを聴いたことがないという方でも違和感なく読める1冊になっています。

一方、本書に関しては、入門としていきなりこの本を読むと、ちょっとヘヴィーかもしれません。ミュージシャンの紹介もしっかりと書いてあるので、最初の1冊としても丁寧に読み込めば、おそらく本書をきっかけにブルースの世界に入っていけるとは思うのですが、登場するミュージシャンがブルースの中でどのような位置づけなのか、わからずに読んでいくと、さすがに最後まで読み切るのは難しいかも。ただ一方で、「意味を知らずに~」では入門書であるがゆえに、歌詞の背後にある黒人社会への言及がほとんどなく、それが物足りなさを覚えたのですが、本書では、前述のとおり、そういった文化・社会的背景の記述もしっかりと記載されています。

また入門書ではない、といっても決してマニアックな1冊でもないため、「手に取りずらい1冊」でもありません。ブルースを聴き始めて、有名どころをそれなりに一通り聴いて、この本の目次を読めば、大抵のミュージシャンまたは曲を知っている(登場するミュージシャンや曲は有名どころばかりなので、ある程度ブルースを聴きかじった方ならば、おそらくご存じの方ばかりです)という方でしたら、すんなり読んで楽しめる内容だと思います。奥深いブルースの歌詞の世界が楽しめる1冊。それなりのボリュームのある内容ですが、それに見合うだけのズッシリとしたブルースの歌詞の奥深さを知ることが出来る作品でした。

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2021年10月 7日 (木)

今週は男性アイドル勢が1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位から5位までが初登場。その中で男性アイドル勢が1位2位に並びました。

1位初登場はSnow Man「Snow Mania S1」。ジャニーズ系アイドルグループSnow Manによる、本作がデビューアルバムとなります。CD販売数及びPCによるCD読取数1位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上84万1千枚で1位初登場を記録しています。

一方、2位は韓国の男性アイドルグループ2PM「WITH ME AGAIN」が獲得。日本オリジナルのミニアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数5位を獲得しています。オリコンでは初動売上4万8千枚で2位初登場。直近作は韓国盤の「Must:2PM Vol.7」で、同作の8千枚(9位)よりアップ。日本盤で直近作はベスト盤「THE BEST OF 2PM in Japan 2011-2016」で、同作の7千枚(7位)よりもアップしています。

3位にはBank Band「沿志奏逢4」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数3位。小林武史、ミスチルの櫻井和寿、坂本龍一の3人が拠出した資金に基づいて、環境保護や自然エネルギー促進事業を行っている団体・個人に低利で融資する非営利団ap bank。その「ap bank」の活動資金にあてるために結成された、小林武史と櫻井和寿を中心とするバンドがBank Band。今回は、そのBank Band4枚目のアルバムにして、初のベスト盤。コンスタントにap bank fesへ出演したり、配信限定のシングルをリリースしていたりはしたのですが、アルバムとしては実に11年3ヶ月ぶりの新作となりました。オリコンでは初動売上4万7千枚で3位初登場。前作「沿志奏逢3」の8万6千枚(2位)よりダウン。ただ間が11年以上空いているにも関わらず、売上的にはかなり善戦した感があります。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に星街すいせい「Still Still Stellar」がランクイン。バーチャルYou Tuberであり、バーチャルアイドルによるデビューアルバム。CD販売数5位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数10位。オリコンでは初動売上1万6千枚で6位初登場。

5位初登場はそらる「ゆめをきかせて」。こちらもニコニコ動画やYou Tubeへの歌唱動画投稿で人気を博したシンガー。CD販売数4位、ダウンロード数44位、PCによるCD読取数18位。オリコンでは初動売上2万6千枚で5位初登場。前作「ワンダー」の4万4千枚(2位)よりダウンしています。

7位には増田俊樹「origin」がランクイン。男性声優による2枚目のオリジナルアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動売上9千枚で9位初登場。前作「Diver」の1万2千枚(5位)からダウンしています。

8位には「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE2 01」がランクイン。男性向けアイドル育成ゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ!」からのキャラクターソング。CD販売数10位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動売上5千枚で14位初登場。同シリーズの前作「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 08」の初動1万3千枚(6位)から大幅にダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日!

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2021年10月 6日 (水)

なんか久しぶりに名前を聞いた気がする・・・

今週のHot100

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先週に引き続き、秋元系のグループが1位獲得です。

今週1位初登場はAKB48「根も葉もRumor」が獲得。CD販売数1位、PCによるCD読取数9位、Twitterつぶやき数6位を獲得。一方、ダウンロード数は23位、ラジオオンエア数は30位、その他のチャートは圏外となっています。久しぶりに名前を聞くと思ったら、シングルとしては約1年6か月ぶりと少々久しぶりの新作となっています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上35万枚で1位初登場。前作「失恋、ありがとう」の116万7千枚から大幅ダウンという結果となっています。

2位も初登場。back number「黄色」がこの位置にランクイン。ABEMAオリジナル恋愛番組「虹とオオカミには騙されない」主題歌。CD販売数4位、ダウンロード数2位、ストリーミング数5位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数44位、You Tube再生回数9位。多くのチャートにまんべんなくランクインし、総合順位では2位につけてきました。オリコンでは初動売上2万6千枚で3位初登場。CDでのシングルとしては前作「HAPPY BIRTHDAY」から約2年7ヶ月ぶりの新作となります。その前作の初動3万1千枚(7位)からはダウンしています。

ちなみにback numberは「水平線」が先週から4位をキープ。こちらはストリーミング数で5週連続の1位を獲得しています。これでback numberは2曲同時ランクインとなりました。

3位にはCOLDPLAY×BTS「My Universe」が先週の9位からランクアップし、初のベスト3入り。ダウンロード数は1位から3位にダウンしましたが、ストリーミング数が58位から15位に、You Tube再生回数も32位から5位に、ラジオオンエア数も13位から1位に、それぞれ大幅にアップしています。

ただ一方BTSは今週「Permission to Dance」が3位から6位に、「Butter」も7位から9位にそれぞれダウン。前者は13週連続、後者は20週連続のベスト10入りとなりましたが、今週はいずれも下落傾向に。さらに今週「Dynamite」が12位にダウン。まだストリーミング数7位、You Tube再生回数8位と上位につけているものの、ベスト10ヒットはとりあえず通算56週でストップです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は1曲だけ。5位に男性アイドルグループINI「Rocketter」が先週の92位からランクアップし、ベスト10初登場。韓国のオーディション番組「PRODUCE 101」の日本版「PRODUCE 101 JAPAN SEASON 2」から登場した男性アイドルグループによる配信限定のシングル。ストリーミング数2位、Twitterつぶやき数1位、You Tube再生回数1位で総合順位でベスト10入りを果たしました。

さらに今週のロングヒット曲ですが、Official髭男dism「Cry Baby」は6位から7位にダウン。ダウンロード数、ストリーミング数共に4位から5位に、You Tube再生回数も12位から14位にと、いずれも失速気味。これで通算15週目のベスト10ヒットとなりましたが、さすがに上位復活は厳しいかも。

また、優里「ドライフラワー」も5位から8位にダウン。カラオケ歌唱回数は今週も1位をキープしているものの、ストリーミング数は5位から6位、You Tube再生回数も5位から7位にダウンと下落傾向。唯一ダウンロード数が今週10位から9位とアップしているものの、こちらもそろそろ厳しそう・・・。ただ、これで46週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年10月 5日 (火)

バンドサウンドと「歌」のアンバランスさがユニーク

Title:HEY WHAT
Musician:LOW

アメリカはミネソタ州を拠点として活動するインディーロックバンド、LOWのニューアルバム。いわゆるスロウコアを代表するバンドだそうで、現在のバンドメンバーであるAlan SparhawkとMimi Parkerの男女デュオによるコーラスハーモニーが大きな魅力のひとつとなっています。なにげに1993年結成という、既に結成から28年が経過しているベテランバンド。ある意味、知る人ぞ知る的なバンドでしたが、ここに来て本作はイギリスの公式チャートで23位にランクインするなど、人気も徐々に高くなってきている模様。本作は約3年ぶりとなるニューアルバムとなります。

さて、そんな彼らの新譜ですが、アルバムは1曲目「White Horses」は、まず空間を切り裂くようなメタリックで歪んだギターの音からスタートします。そんな不穏なスタートに、ある種の期待は否応なく高まるのですが、イントロが終わると、意外な展開が待っています。それが、Alan SparhawkとMimi Parkerのデゥオにより高らかに歌われるメロディーライン。その後ろには相変わらず不穏でメタリックなギターの音が鳴り響きつ受けるのですが、分厚いギターノイズの中、メランコリックな歌が流れるという、ユニークなバランスによる楽曲になっています。

基本的に、この歪んだ、ノイジーでサイケデリックな分厚いギターサウンドと荘厳さも感じられる男女デゥオによる歌モノというユニークなバランスが本作の肝。特に中盤「Disappearing」では荘厳な聖歌のような雰囲気まで醸し出す歌声と、それに被さる分厚いバンドサウンドが耳を惹きますし、続く「Hey」も静かなギターノイズの中で清涼感ある歌声が響き、厳かな雰囲気のドリーミーな作風が魅力的。独特な世界観を作り上げています。

特に、サイケデリックで、時として凶暴さも感じられるギターノイズと反して、メロディーラインが意外とポップである点もまた、彼らの大きな魅力で、特に中盤以降はこのメロディーラインのポピュラリティーが際立つ作品が続いていたように感じます。アルバムの折り返し地点である「Days Like These」などはその典型例で、ちょっとフォーキーなメロディアスな歌が印象に残る作品。終盤の「More」もノイジーでダイナミックなギターサウンドをバックに歌われる歌が意外とポップでインパクトがあります。

ラストを締めくくる「The Price You Pay(It Must Be Wearing Off)」は、やはりAlan SparhawkとMimi Parkerのデゥオが印象に残る曲で、不穏な雰囲気のギターサウンドも印象的。ただ、アルバムのラストを締めくくる曲であるためか、どこか明るさも感じさせる楽曲になっており、7曲に及ぶ長尺ながらも、最後は爽やかな気持ちでアルバムは幕を下ろします。

このようにバンドサウンドと歌とがアンバランスなようで、実は絶妙に噛み合っている非常に個性的でユニークな作品。知る人ぞ知る的なバンドながらも高い評価を受けるのも納得であり、結構メロがポップでインパクトがあるだけに、意外とブレイクという可能性も?間違いなく、今後にも注目していきたいバンドによる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

LOW 過去の作品
Double Negative

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2021年10月 4日 (月)

コロナ禍だからこそ誕生した共演

Title:Silver Lining Suite
Musician:上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット

上原ひろみの約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「Spectrum」は実に10年ぶりとなるピアノソロアルバムとなっていたのですが、それに続く本作は、新プロジェクトが発足。今回のプロジェクトでは「ピアノ・クインテット」(クインテット=五重奏)と名付け、彼女のピアノと弦楽四重奏の共演というスタイルとなりました。

もともと今回のプロジェクト、コロナ禍の中で彼女のバンドメンバーが来日できなくなり、そんな中、日本で出来ることはないかと模索した結果、弦楽四重奏との共演を思いついたとか。また、今回のアルバム、冒頭の4曲が組曲形式となっているのですが、それぞれ「Isolation」=隔離、「The Unknown」=未知なるもの、「Drifters」=漂流者、「Fortitude」=不屈とコロナを意識したタイトルに。また、「Silver Lining Suite」というアルバムタイトル自体、直訳すると「希望の光組曲」となり、まさにコロナ禍を意識した、その上での未来への希望をテーマとしたアルバムになっており、プロジェクトの結成からアルバムの内容に至るまで、コロナ禍だからこそ誕生したアルバムと言えるでしょう。

そんなアルバムですが、今回のアルバム、ある意味、上原ひろみの奏でるピアノの音色と、弦楽四重奏の音色が絶妙に対比している構造が非常に面白い作品に仕上がっています。上原ひろみの奏でるピアノは、非常にフリーキーな要素が強く、アバンギャルド感あふれる展開。一方、弦楽四重奏の奏でる音色はメロディアスで、奇をてらわない、弦楽器の美しい音色を響かせる内容。そのバランスがある意味スリリングに感じられる構成に仕上がっていました。

1曲目「Silver Lining Suite:Isolation」はまずはピアノの音色もメロディアスで、ピアノとスリリングがしっかりと重なった内容からスタートします。そこが微妙に変化するのが「Siliver Lining Suite:The Unknown」で、「未知なるもの」というサブタイトル通り、どこか不気味な雰囲気を醸し出す音色からスタートします。この作品では特に途中から繰り広げられる上原ひろみのピアノが非常にスリリング。ここに弦楽四重奏の音色が絶妙に絡まり、なんともいえない不気味な雰囲気を醸し出します。ちなみにこの組曲、最初はメロディアスにスタートし、途中は不気味な展開が入りつつ、最後の「Silver Lining Suite:Fortitude」では明るさを感じさせる締めくくりとなっており、タイトルにふさわしい、コロナ禍の現状、そして未来の希望を感じさせる曲になっていました。

このアバンギャルドなピアノとメロディアスな弦楽四重奏の絶妙な組み合わせという意味では、その後に続く「Someday」「Jumpstart」、さらには「11:49PM」なども同様で、この微妙に絡みつきつつ、微妙に対峙するピアノと弦楽器の共演に耳を奪われます。上原ひろみのアバンギャルドさが表に出た作品というと、バンドサウンドを組み合わせて「ロック」なテイストの作風が多いのですが、今回は弦楽器との組み合わせで、その世界を表現したあたりに、彼女の音楽の新たな可能性も感じました。

一方今回の作品は、弦楽器との共演ということもあり、基本的に特に弦楽器にパートは譜面に起こし、彼女が作曲を手掛けたそうですが、そのメロディーラインの良さも際立ちます。冒頭の組曲で聴かせてくれる優しくメロディアスな弦楽器にフレーズも魅力的ですし、ラストの「Ribera Del Duero」も微妙にラテンっぽいフレーズのメランコリックなメロディーラインも印象的。今回のアルバムでは彼女のメロディーメイカーとしての魅力も強く感じさせる作品になっていたように感じました。

まさにコロナ禍だからこそ誕生した傑作アルバム。コロナ禍はライブシーンを中心に音楽業界に大きなダメージを与えましたが、一方でこのような副産物も生み出しています。こういう逆境の中でも、時代に即した作品を作り上げてくるのは人間のたくましさでもあり、またポピュラーミュージックの大きな魅力のようにも感じさせます。また新たなプロジェクトをスタートさせた彼女。その可能性が大きく広がった1枚でした。

評価:★★★★★

上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK (上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ライヴ・イン・モントリオール(上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ)
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
Spectrum


ほかに聴いたアルバム

TV ANIMATION"Sonny Boy"original soundtrack

今年7月から10月にかけて放送されたアニメ「Sonny Boy」のサントラ。かの江口寿史がキャラクター原案を手掛けた絵柄もあか抜けていてなかなか良い感じなのですが、参加したミュージシャンが主題歌「少年少女」を歌う銀杏BOYZにVIDEOTAPE MUSIC、ザ・なつやすみバンド、ミツメ。さらには台湾のシティポップバンド、落日飛車に韓国の宅録系ミュージシャン空中泥棒と、なかなか興味深いセレクション。劇伴的なインストも多かったため、彼らの魅力が存分に発揮されているとは言い難い点は否めないのですが、メランコリックに聴かせるメロディーラインが魅力的。エレクトロやバンドサウンド、ラテン風の曲やポストロック的な曲まで飛び出して、非常にユニークなサントラに仕上がっていました。

評価:★★★★

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2021年10月 3日 (日)

CKBのルーツをカバー

Title:好きなんだよ
Musician:クレイジーケンバンド

今年、デビューから40周年を迎えたクレイジーケンバンドの横山剣。今回リリースされたのは、彼のルーツである音楽をカバーした、彼ら初となるカバーアルバム。「好きなんだよ」というタイトルがあまりにもストレートですが、その名前の通り、横山剣が好きでたまらない曲ばかりを収録した作品となっています。

取り上げられている作品は主に70年代から80年代の歌謡曲やニューミュージックがメイン。誰もが知っている名曲が数多く収録されていますが、そこはクレイジーケンバンド、自分たちの色をそれなりに出しつつ、卒ないカバーとなっています。矢沢永吉の「時間よ止まれ」は、歌い方もまるっきり永ちゃんっぽい感じになっていますし、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」は軽快なリズムでAyeshaとのデゥオでうまくカバー。「横須賀ストーリー」はホーンセッションを入れて、スカ調での軽快なカバーなのもユニーク。「よこはま・たそがれ」「空港」では力強いこぶしを聴かせてくれており、迫力あるボーカルが耳を惹きます。

また、コーラスのAyeshaがメインボーカルを取る曲がなかなか良い味を出していて、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」でも魅力的な歌声を聴かせてくれますが、さらにラストの「あまい囁き」ではムーディーな雰囲気が非常に魅力的。このアルバムの中で絶妙なインパクトとなっています。

ただ、基本的には原曲重視のカバー。上にも書いた通り、それなりにクレイジーケンバンドとしての色は出しているものの、原曲を大きく逸脱するようなカバーはなく、良くも悪くも予想通りといったカバーで目新しさはありませんでした。また、選曲にしてもクレイジーケンバンドのルーツを選曲ということですが基本的には予想通り。70年代80年代のムード歌謡曲がメインで、90年代の曲では中西保志「最後の雨」やオリジナル・ラブ「接吻-kiss」が取り上げられているのですが、どちらも他の曲と比べて想定の範囲内といった感じはします。

それでも、その楽曲のルーツとして、ムード歌謡曲と演歌、さらにはシティポップが等距離で取り上げられており、そういった「昭和歌謡曲」といっても雑多な音楽性を取り込んでいるのがクレイジーケンバンドの音楽の大きな魅力なのでしょう。今回のカバーアルバムで、そういったクレイジーケンバンドの魅力を感じることが出来るカバーアルバムでした。

しかし一方、カバーアルバムの内容としては選曲もカバー自体も良くも悪くも予想の範囲内。彼らなりに原曲の解釈を大きく変えてきたような曲もなく、そういう意味では若干物足りなさも感じたアルバムでした。あとちょっと残念なのが、このアルバムがオリジナルアルバムよりも売れているという事実・・・。先日の宮本浩次のカバーアルバムもそうなのですが、カバーがオリジナルより売れちゃうというのは複雑な心境になります・・・。もちろん、決して悪い作品ではないのですが、次はオリジナルアルバムを。売れたから、という理由でカバーアルバムを量産するようなミュージシャンではないとは思うのですが。

評価:★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC
NOW

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2021年10月 2日 (土)

NONA REEVES総集編

Title:Discography
Musician:NONA REEVES

前作「未来」でWARNER MUSIC JAPANとの契約が切れ、あらたにタワーレコード傘下のインディーレーベル、daydream park recordsへ移籍したNONA REEVES。インディーレーベルからのメンバーのソロアルバムのリリースは続いており、積極的な活動は目立ちましたが、NONA REEVES名義となると2019年のアルバム「未来」以来、約2年半ぶりのニューアルバムとなります。

今回のアルバムのテーマは「全曲、シングル曲をつくるつもりで制作されたアルバム」だそうで、今年で結成26周年を迎える彼ら。この四半世紀の彼らの楽曲を彷彿とさせるようなアルバムになっており、オリジナルアルバムでありつつ、NONA REEVESの活動を総括できるベストアルバム的な感覚で作られているアルバムになっていました。タイトルや、いかにもシングル曲的なフックの効いた曲の連続に、確かに聴いていて一瞬、ベスト盤ではないか、という錯覚を抱いたほどです(笑)。

実際、1曲目「Seventeen」などか、90年代あたりの渋谷系ポップを彷彿させるようなポップスで、彼らのデビュー期を彷彿させるような軽快なポップチューン。「New Journey」も、いかにも90年代初頭を彷彿とさせるようなシンセのサウンドが軽快なポップチューンで、こちらもどこか懐かしさを感じさせます。

「Music Family」もファンキーなリズムのポップチューンが実にNONA REEVESらしさを感じさせる曲ですし、前半の核となっているのが「Disco Amigo」。軽快なディスコチューンなのですが、一方、メロディーラインには歌謡曲的な要素も強く感じさせるインパクトあるポップチューン。NONA REEVESの中に残る歌謡曲からの影響を色濃く反映させた1曲で、こちらもまた、彼ららしいと感じさせる曲になっていました。

そして後半の核となるのがマーヴィン・ゲイとタミー・テレルの「Ain't No Mountain High Enough」のカバーでしょう。爽快で明るいモータウンのポップな名曲を選ぶあたりが彼ららしいのですが、デゥオ相手の真城めぐみのボーカルが印象的。西寺郷太のボーカルはソウルに歌い上げるタイプではなく、マーヴィン・ゲイのボーカルとは異なるのですが、その分を真城めぐみのソウルフルなボーカルで補っている感じ。彼ららしいカバーと言えるでしょう。

そんな訳で、「全曲、シングル曲をつくるつもりで制作されたアルバム」といううたい文句の通り、全体的にインパクトのあるポップな作品が並んでいるアルバムとなっており、フックも効いていて耳に残りやすいアルバムに仕上がっていました。一方では、NONA REEVESの活動を総括というコンセプトの通り、良くも悪くもNONA REEVESらしい作品が並んでいたため、目新しさという面ではちょっと物足りなさも感じるかもしれません。

そういう意味ではNONA REEVESの初心者には非常に聴きやすいアルバムだったといえるかもしれません。また、NONA REEVESのファンにとっても、昔の彼ららしい作品も混じっていたりするため、懐かしさを感じつつ聴けるアルバムのように感じます。インパクトが強い面と、その一方で若干マンネリ気味というマイナス要素のバランスで、評価は難しい面もあるのですが、最後まで素直にポップな彼らのメロをワクワクしながら楽しめるという意味で下の評価に。ポップで楽しい彼ららしさが良く出ている良作でした。

評価:★★★★★

NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM
POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES
MISSION
未来

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2021年10月 1日 (金)

oasisが絶頂だった日

先日に引き続き、また音楽系で見たい映画があるので足を運んできました。

Oasislive

「オアシス:ネブワース1996」。これは、今なお伝説のライブとして語り継がれているoasisのネブワースで行われたライブの模様を収録したライブドキュメンタリー。1996年8月10日、11日に行われたこのライブは、2日間で25万人を動員。予約の段階で250万件の申し込みが殺到し、実に全イギリス人の2%が申し込みを行ったという、今でも数多くの興行成績の記録を持ち続けているイベントです。1996年というと、前年にかのアルバム「(What's The Story)Morning Glory」をリリースし、全世界で2,500万枚を売り上げるという大ヒットを記録。まさに彼らにとって絶頂期に実施されたライブイベントとなっています。

今回は、その彼らの伝説とも言えるライブの模様を、oasisやRADIOHEADのプロモーションビデオも手掛けている映画監督のジェイク・スコットがメガホンを取り制作。未公開映像も数多く収録したほか、メンバー本人のコメントももちろん収録されたライブドキュメンタリーと仕上げています。

まずライブ自体の方は申し分ありません。彼らが脂にのりまくっていた全盛期のライブであり、この2日間で25万人という莫大な広さを持つ会場のスケール感でも違和感のない大物然とした雰囲気を既に兼ね備えています。選曲も、この時点のライブなので当たり前ですが、基本的に彼らの最高傑作といわれる1枚目、2枚目のアルバムからの選曲がほとんどなので捨て曲が全くない名曲揃い。さらに今となっては、やはりリアム、ノエルのギャラガー兄弟が同じ舞台で仲良くたっているというのが何とも言えず感無量な感も・・・。この2人が仲直りして、oasisが復活する日は来るのでしょうか・・・??

さて今回の映画ですが、ただ、今回の映画は単なるライブ映像を公開した映画ではなく、基本的にはドキュメンタリー仕立てとなっています。そのテーマが、ファン視点からのoasis。映画の中には数多くのファンのインタビューが登場し、それを中心に映画は構成されています。さらに映画のスタートは、このライブの開催が発表された段階からスタート。まだインターネットが普及していなかった当時、チケットを取るために電話をかけまくったというエピソードも披露されるなど、徹底的にファンの視点から描かれるドキュメンタリーとなっており、ある意味、私たちにとっても、ネブワースを追体験できるような、そんなドキュメンタリーになっていました。

そのため、あらためて感じるのは、oasisの音楽が生み出すファンの一体感でした。もちろん、この2日間で25万人という会場にファンが集まり、一緒に盛り上がるという点で大きな一体感を生み出しているのですが、加えて、インタビューでも述べられていましたが、みんながみんな、oasisの曲の歌詞を覚えていて歌えているという事実。確かにoasisの曲は、映画を観ていても一緒に歌いたくなるような、そんな衝動にかられるような曲がほとんど。そんな曲だからこそ、ファンはより一体感を覚え、この一体感の強さこそが、oasisがあれだけ歴史的な人気を獲得した大きな要因だったのではないでしょうか。今回の映画を観て、あらためてそんなことを強く感じました。

ただ今回の映画、そんなことを気が付かせてくれた一方、構成的に気になる部分もありました。それは、ドキュメンタリー仕立てにするために、ライブ映像にファンのインタビューを重ね、かつほとんどフルでの演奏がなかって点でした。確かに先日見たばかりの「サマー・オブ・ソウル」もそのような構成になっており、演奏の部分はブツ切れになっていました。ただそれは、あのライブをめぐる社会的状況を説明するために、限られた時間の中に情報を詰め込んだ結果、仕方なくライブ映像がブツ切れかつナレーションをかぶせた結果のようにも感じました。しかし、この映画に関しては、正直、ライブ映像に重ねるほどのインタビュー音源が必要とは思えません・・・。ファンからのインタビュー部分はしっかりとライブ映像とわけて、もっとライブ自体をしっかり見たかったなぁ、とは強く感じました。

そういった点は気になり、ライブ映像の部分では物足りない、もっと見たかったなぁ・・・と思う部分はありましたが、それを差し引いても、やはりoasisの最盛期のライブには、あらためて見入ってしまいました。あらためてすごいバンドだったんだなぁ、と再認識できた映画。これはDVDも買わなくては!あと、ライブアルバムのリリースも予定されているので、そちらも間違いなく買う予定です!DVDで見ると、また新しい感想も生まれてくるのかも。そちらも楽しみです。

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