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2021年9月 4日 (土)

環境に配慮した1作

Title:Solar Power
Musician:Lorde

2012年にリリースされたシングル「Royals」が彼女の本国、ニュージーランドとオーストラリアから火が月、2013年には世界的な大ヒットを記録。一躍、時代の寵児となった歌姫Lorde。早くものでそれから9年。前作「Melodrama」から約4年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。本作では、前作「Melodrama」にも参加し、最近ではテイラー・スウィフトのアルバム「Folklore」にも参加したプロデューサー、ジャック・アントノフとタッグを組んだことでも話題となっています。

今回のアルバム、ちょっと話題となったのがそのリリース方法。本作はCDのリリースはなく、配信とLPがメイン・・・というのは昨今のアルバムでよくあるスタイルなのですが、CDをリリースしないのはそんな昨今の流行にのっかかった訳ではなく、「2年後に埋立地になってしまうようなものを作らない」という環境上の配慮だからだそうで、その代わりにプラスチックを使用しないボックスに、ビジュアルコンテンツや手書きのメモ、限定の写真、高音質のダウンロード+限定のボーナストラック2曲のアクセスチケットなどが入っているそうで、環境への配慮を意識したコンテンツとなっているようです。ただ、amazonでは「CD」表記で販売してしまっているため、レビューで叩かれているようですが、これは本人というよりもamazonの責任のような・・・。海外からのレビューでも「CDが欲しかった」というレビューコメントが書かれており、海外だとCDはもうほとんど廃れたものと思っていたのですが、まだ海外でもCDという物理的アイテムが欲しい方も少なくないのでしょうね。

そんな環境への配慮の結果、異色の形態でのリリースとなった本作ですが、「Solar Power」というタイトルの通り、アルバム自体も「自然への賛美」がテーマとなっていいるようで、彼女は本作リリースにあたって、以下のようにコメントしているそうです。

"このアルバムは、自然への賛美であり、屋外にいるときに感じる深い超越的な感情を不滅にする試み。心痛、悲しみ、深い愛、混乱を感じる時、私は自然界に答えを求めているの。私は息を吐いて、耳を傾けることを学んだ。そうして出来上がったのがこの作品なの。"

ある意味「意識の高いアルバム」となっている本作ですが、基本的にシンプルな歌がメインになっている点は彼女のいままでのアルバムと変わりありません。タイトル曲「Solor Power」もシンプルなアコギをベースとしたサウンドをバックにスタート。途中から伸びやかな歌声が印象的な作品になっていますし、「Stoned at the Nail Salon」もギターの弾き語りというシンプルなサウンドに切ない歌声が魅力的な作品。「Dominos」もギターを中心としたシンプルなサウンドに切ないメロディーが印象的な作品に。「Mood Ring」もシンプルなアコギをバックに、メランコリックなメロディーラインが魅力的な作品に仕上がっています。

そんな感じで、非常にシンプルで良質なポップアルバムという印象を受ける本作。ただ一方で、そこにプラスアルファがなく、デビュー作にような衝撃的な要素も薄く、残念ながら若干「面白みの欠ける」という印象も受ける作品だったように思います。そのため、各種メディアの評価もあまり芳しくないようです。とはいえ、そんな印象から駄作か・・・と思って聴き始めると、Lordeの魅力はしっかりと発揮されており、シンプルな歌は十分魅力的。そんな傑作とまでは絶賛できないけど、十分魅力的と言える良作に仕上がっていた作品でした。

評価:★★★★

Lorde 過去の作品
PURE HEROINE
Melodrama


ほかに聴いたアルバム

King's Disease II/Nas

2020年にリリースし、自身初のグラミー受賞作となった「King's Disease」に続く続編。「EPMD2」ではかのENIMEMと初コラボを果たしたほか、「Nobody」ではローリン・ヒルとのコラボも披露。かなり豪華な大物ゲストが参加している作品となっています。全体的には正直言って目新しさはありません。トラップ的なリズムを入れている曲はあるものの限定的。保守的といえば保守的ですが、一方ではベテランらしい卒のないつくりといった印象を受ける作品。耳を惹きつけてやまない「これ!」といった作品はないものの、最後まで飽きることなく楽しむことが出来た佳作でした。

評価:★★★★

NAS 過去の作品
Untitled
Distant Relatives(Nas&Damian Marley)
Life Is Good
Nasir
King's Disease

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