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2021年9月17日 (金)

メランコリックな打ち込みの楽曲が目立つ

Title:FATE
Musician:ビッケブランカ

約1年半ぶりとなるビッケブランカのニューアルバム。このアルバムリリースに先立ち、「HEY」「BYE」という2枚のEPをリリースした上での、ある意味、満を持してのリリースとなりました。前作「Devil」は軽快でユニークなポップスが並ぶ傑作アルバムで、昨年の私的年間ベストの8位にもランクインしてきたほど、個人的にも壺にはまった傑作でした。ただ一方、このアルバムリリースに先立って配信された2枚のEPは、「Devil」での楽曲に比べると、物足りなさも感じてしまう作品になっており、そのため今回のアルバムに関しても、正直なところ、期待半分不安半分といった内容になっていました。

そして、まずアルバムの結果としては、先行リリースのEPの「HEY」「BYE」のイメージが、比較的そのまま踏襲された作品になっていたように感じます。先行EPにも収録されていた「夢醒めSunset」「蒼天のヴァンパイア」のような、メランコリックなメロディーラインの軽快なポップチューンがまずは目立ちます。ドラマ主題歌になった先行シングル「ミラージュ」も同じく哀愁感たっぷりのメロディーラインをスケール感を持って歌い上げるナンバーですが、このような哀愁感を覚える楽曲が、アルバム全体として目立ちます。

もう1点、今回のアルバムで目立つのがエレクトロサウンドを前面に押し出した楽曲。こちらもEPに収録された「Death Dance」もリズミカルなエレクトロビートが軽快なメランコリックで怪しげなダンスチューン。「Little Summer」も同じくエレクトロサウンドが前面に押し出されたメランコリックなダンスチューンとなっていり、この2曲を中心としつつ、全体的にも打ち込みによるアレンジが目立つ構成になっていました。

このメランコリックな楽曲が目立つアルバム前半については、ビッケブランカらしいメロディーメイカーとしての実力を感じさせつつ、ただ一方で、似たようなパターンの楽曲も目立ち、メランコリックな味付けは、若干、悪い意味での歌謡曲的な安直さも感じさせ、悪くはないけど・・・という印象も抱いてしまいました。

しかし、個人的に今回のアルバムで一番耳を惹いたのは後半の「ポニーテイル」。こちらも先行シングルとなる作品ですが、切ない印象も受けるメロディーラインが爽快なポップチューンで、ちょっと懐かしさを感じさせるメロディーラインは、どこか90年代の男性シンガーソングライター、具体的には大江千里や槇原敬之あたりからの系譜も感じさせるポップスになっており、私の壺にかなりはまるポップチューンに仕上がっていました。

それに続く「天」も同じく90年代の男性SSW路線を彷彿とさせるナンバーで、軽快で明るく楽しいポップチューンで耳を惹きます。前半、似たようなポップチューンが多く、物足りなさを感じさせていた本作ですが、終盤の2曲の出来で一気に盛り返した、そんな印象を受ける構成になっていました。

そういうこともあってアルバム全体の出来、と言われると評価が難しいなぁ、というのが本作の感想。いままでのフルアルバムの中では一番微妙な出来だったのかな、というのは間違いありません。ただ、前半でもメロディーメイカーとしての彼の実力は発揮されていましたし、それなりのインパクトもあって、アルバムの1曲としては佳作とも言える出来であるのは間違いありません。個人的に最後の2曲の出来が良かった点も合わせて、以下の評価は若干甘めな感じもするのですが・・・。

評価:★★★★★

ビッケブランカ 過去の作品
FEARLESS
wizard
Devil
HEY
BYE

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