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2021年9月14日 (火)

まさかの3枚目!

Title:ジェニースター
Musucian:ジェニーハイ

川谷絵音を中心とした5人組バンドの新作・・・というと、非常に簡単な紹介文になってしまいますが、こちらのバンド、川谷絵音のほか、tricotの中嶋イッキュウに、例のゴーストライター事件で知名度をあげた現代音楽家の新垣隆、さらには小藪千豊、野生爆弾のくっきー!という癖のありまくりな異色メンバーによるバンド。もともとはBSスカパー!で放送されているバラエティー番組「BAZOOKA!!」から誕生したバンドだそうで、いわば「企画モノ」的なバンド。ただ番組自体は2019年に終了しており、番組終了後もバンド自体は継続的に活動を続けています。

そんな企画モノのバンドなのですが、これが前作「ジェニーハイストーリー」は個人的にもビックリするほどの傑作アルバム。川谷絵音がIndigo la Endで聴かせてくれるメランコリックなメロディーラインと、ゲスの極み乙女。で聴かせてくれる実験的なポップスセンスを上手く融合させた上で、自虐ネタも飛び出すユニークな歌詞に、さらには新垣隆の独特なピアノの音色まで加わるという非常に個性的かつ参加メンバーの実力を存分に生かした傑作となっていました。

それに続くニューアルバムということもあって、個人的にもかなり楽しみにして聴いてみた作品だったのですが・・・今回も彼らの才能を生かしたポップスが並んでいるものの、残念ながら前作ほど魅力的な傑作には至っていませんでした。

メランコリックなメロと挑戦的なサウンドがほどよくバランスされていた前作に比べると、今回のアルバムはメランコリックに聴かせるタイプのポップスにグッと寄ってしまっていました。1曲目「華奢なリップ」ではちゃんみなをゲストに迎えているのですが、HIP HOPのテイストはなく、メランコリックなポップ路線になっていますし、その後も基本的には哀愁感漂う歌を強調したポップスが続きます。

もちろん今回のアルバムに関しても「良いんだって」のようにジャジーなベースラインを取り入れ、メンバーが交互にボーカルを取るなど、挑戦的な作品もありますし、「ジェニーハイボックス」のような非常にユニークでコミカルな曲も登場します。また新垣隆のピアノの音色も今回でも健在。そういう意味ではゲスともインディゴとも異なる魅力を持っているバンドであるには間違いありません。

ただ、そういう魅力的な部分は感じつつも、ビックリするような傑作アルバムだった前作と比べると、聴いていて物足りなさは感じてしまったのは事実。あまりよくない意味で守りに入りすぎてしまったのでは?とも思うような作品でした。次回作は、再び前作にような、ある意味「暴走気味」とすら感じさせるような作品を聴いてみたいのですが・・・。

評価:★★★★

ジェニーハイ 過去の作品
ジェニーハイストーリー


ほかに聴いたアルバム

三千世界/yonige

約1年3ヶ月ぶりとなるガールズロックバンドyonigeの新作は6曲入りのミニアルバム。メロディアスなギターロックを主軸としつつ、メロはちょっと悲しげでノスタルジックな雰囲気を醸し出しているのが印象的。全体的にはちょっと地味でインパクトは薄いかな、という印象はあるものの、次の一歩にも期待したい1枚でした。

評価:★★★★

yonige 過去の作品
gilrs like girls
HOUSE
健全な社会

鳩の撃退法(オリジナル・サウンドトラック)/堀込高樹

KIRINJI堀込高樹ソロ名義となる新作は、藤原竜也主演の映画「鳩の撃退法」のサントラ盤。ラテン風の作品があったり、ジャジーな作品があったりと、いつものKIRINJIとは一風変わった作風にも挑戦しているものの、全体的には劇伴ということもあり1曲1曲は短く、堀込高樹のアイディアは出し切れていない印象も。ただそんな中でも耳を惹くのがやはり歌モノ曲。井上陽水の名曲「氷の世界」のカバーはよりファンキーに仕上げているリズムが印象的な他、主題歌「爆ぜる心臓」も軽快な女性ラッパーによるラップにバンドサウンドも加わりスケール感が。この2曲だけでも聴いて損のないアルバムではあります。

評価:★★★

堀込高樹 過去の作品
あの人が歌うのをきいたことがない

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