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2021年9月 6日 (月)

矢野顕子の王道路線

Title:音楽はおくりもの
Musician:矢野顕子

純然たるオリジナルアルバムとしては2015年の「Welcome to Jupiter」以来、少々久しぶりとなる矢野顕子のニューアルバム。もっとも、「久しぶりのオリジナルアルバム」といっても、ご承知おきの通り、その間、休んでいた訳では全くなく、その後リリースされた「Soft Landing」はピアノ弾き語りアルバム、さらに前作「ふたりぼっちで行こう」はいろいろなミュージシャンとのコラボ作を集めたアルバムと、逆に意欲的な彼女の挑戦心を感じさせる企画盤が続いていただけ。その他にもTIN PANや上原ひろみとのコラボによるライブ盤のリリースもあったりして、大ベテランでありながらも、若手並のリリーススペースが続く彼女の創作意欲には驚かされるものがあります。

そんな中リリースされた、逆に「久しぶり」となる企画的要素のない久々の純然たるオリジナルアルバムが本作。純然たる企画的要素のない1枚だから、ということがあるからでしょうか、今回のアルバムはある意味、矢野顕子の王道を行くように、実に彼女らしい作品が並んでいました。冒頭を飾る「遠い星、光の旅。」もファンタジックながらどこかユーモラスな自由度の高い歌詞は彼女らしさを感じますし、「魚肉ソーセージと人」も、日常生活に立脚した暖かい雰囲気の歌詞とメロディーラインが彼女らしい感じ。相変わらず食べ物ネタが多い彼女ですが(笑)、「魚肉ソーセージ」という、実に庶民的な食べ物の選択もまた彼女らしさを感じます。

アコギとエレピで郷愁感たっぷりで聴かせる「大家さんと僕」も彼女らしい暖かみを感じさせるナンバー。お祭り的なビートで聴かせる「なにそれ(NANISORE?)」もこのユーモラスな感覚が彼女らしいですし、ラストも「Nothing Is Tow」も英語詞で洋楽テイストの強い楽曲。ここにも矢野顕子の音楽的な深い素養を感じさせます。

アルバムとしては非常に矢野顕子らしい作品であり、間違いなく彼女の魅力が出ているアルバムになっているとは思うのですが・・・率直に言うと、アルバム全体としてはいまひとつピンとこないものがありました。というのは、矢野顕子のアルバムとして予想していたものがそのまま出てきただけの作品であったため。どの曲ももちろん優れた楽曲ではあったのですが、これといってインパクトのあるような作品もなく、意外性のある作品もなく、そういう意味でアルバムとして良作であることは間違いないのですが、若干物足りなさも感じてしまいました。

また、今回「津軽海峡・冬景色」のカバーにも挑戦しているのですが、こちらについても力作ではあるのは間違いないのですが、彼女のカバーとしては石川さゆりのオリジナルに引きずりこまれすぎていて、彼女らしい自由度がいまひとつ出せてないかった感も。こちらも悪くはないけど、矢野顕子のカバーとしては・・・と思ってしまいました。

作品としては間違いなくファンの期待に沿った内容ですし、そういう意味でファンなら安心して楽しめる良作であるとは思います。ただ、個人的にここ数作の意欲作と比べると、彼女としては小さくまとまってしまったかな・・・と感じてしまうような内容でした。もっとも、いつも挑戦作ばかりではなく、こういう彼女らしい王道を行くような作品も必要なんでしょうね。

評価:★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈
Soft Landing
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
ふたりぼっちで行こう

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