超豪華なゲスト陣が目を引く
Title:How Long Do You Think It's Gonna Last?
Musician:Big Red Machine
The Nationalのアーロン・デスナーと、Bon Iverのジャスティン・ヴァーノンによるプロジェクト、Big Red Machineの2作目となるアルバム。もともとのプロジェクトの開始は2008年のエイズ撲滅のためのチャリティ・アルバム「Dark Was The Night」への参加がきっかけだったそうですが、そこから10年が経過し、2018年にようやくセルフタイトルによる1枚目のアルバムがリリース。そしてそれから3年というスパンでこの2枚目のリリースに至りました。
この3年間、特にアーロン・デスナーを巡ってはその仕事ぶりが大きな話題となりました。ご存じの通り、今やポップス界を代表するミュージシャンとなったTaylor Swiftのアルバムへのプロデューサーとしての参加。メインカルチャーの中心にいるようなスウィフトへのアルバムに、インディーフォークという、メインカルチャーとは程遠い場所にいるアーロン・デスナーがプロデューサーとして参加したことが大きな話題になりました。
今回のアルバムは、そのスウィフトのアルバムのプロデュース作業の傍ら作成されたそうですが、その縁でしょうか、今回「Birch」「Renegade」の2曲にTaylor Swiftが参加しています。「Birch」はピアノの幻想的な音色に打ち込みのリズムも加わった幻想的な作風で、Bon Iverの楽曲の延長線上に位置するようなインディーフォークな作品。こちらは主にコーラスに参加しているゲスト的な役割になっているのですが、一方、もう1曲の「Renegade」は彼女のボーカルをメインに据えられたフォーキーな作品。スウィフトのファンでも楽しめそうな、ポップな作品になっており、耳を惹きます。
このTaylor Swiftがゲストとして参加しているだけでも目を引くのですが、とにかく豪華なゲスト陣が特徴的な作品になっています。ほかにFleet Foxesも参加しており、こちらも日本の音楽ファンにもおなじみな面子。他には、WEEZERやSam Smithにも楽曲提供を行い、売れっ子になってきているソングライターのIlseyや、イギリスで人気のシンガーソングライター、Ben Howard、グラミー賞を獲得したことあるアメリカのフォークシンガー、Anaïs Mitchellに同じくアメリカのシンガーソングライターSharon Van Ettenなどなど、彼らの人脈の広さを感じさせます。ちなみに今回のアルバムタイトルはTaylor Swiftが名付けたそうです。
さてそんな豪華ゲストを集めた今回のアルバムですが、フォークからエレクトロ、ヘヴィーなロック路線までバラエティー富んだ前作と比べると、全体的にメランコリックなメロディーラインが耳を惹くフォーキーな雰囲気の作品にまとまっており、多彩なゲストが参加しているためあえてでしょうか、逆に全体的には前作より統一感を持った作品に仕上がっていました。
もっとも一言でフォーキーな雰囲気といっても、そこは多彩なゲストが参加した作品なだけに様々な切り口の音楽を楽しませてくれます。前述の通り、Taylor Swiftが参加した「Birch」ではインディーフォーク的な作風に仕上げていますし、同じく「Hoping Then」なども打ち込みも入れて幻想的かつ実験的なサウンドを感じさせるインディーフォーク的な作品になっていますし、かと思えば、Fleet Foxesが参加した「Phoenix」などはノスタルジックな感もあるフォーク路線。「The Ghost of Cincinnati」なども、アコギ一本で哀愁感たっぷりのメロディーラインを聴かせてくれており、まさに70年代フォークをそのまま体現化したような作品になっています。
また「Easy to Sabotage」はギターロック的な作品になっていますし、「Hutch」に至っては、荘厳的でゴスペルの要素も感じさせる作品になっているなど、全体的にフォークな要素で統一されているとはいえ、音楽的なバリエーションを感じさせる作品も楽しむことが出来ます。また「Mimi」みたいな軽快なポップチューンも耳を惹きます。こちらはゲストのIlseyが作家陣としても参加しており、売れっ子ライターの彼女の実力を垣間見れるメロディーラインの妙が楽しめます。
そんな豪華なゲストがフォーキーな作風をベースに、様々な音楽を楽しませてくれる本作ですが、前作に引き続き、やはり特筆すべきはデスナーとヴァーノンの書くメロディーラインの美しさ。とにかくポップで美しく耳を惹くメロディーラインの連続で、多彩なゲスト以上やサウンド以上に、まずは歌とそのメロディーに耳がいく作品になっており、最後まで耳の離せない内容になっています。基本的にはデスナーがメロディーとプロデュースの主体となっているのですが、ヴァーノンも要所要所でその個性を発揮しており、そういう意味では前作同様、2人の持ち味がいい形でバランスされた作品にもなっていたように感じます。前作に引き続きの傑作アルバムですし、今年を代表する1枚とも言えるかも。2人の才能をあらためて実感した作品でした。
評価:★★★★★
Big Red Machine 過去の作品
Big Red Machine
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